「青あざを通りこして血が滲み、汁が出る」“太宰府女帝”傷害致死 “普通の主婦”への暴行と恐喝の全容とは?

「青あざを通りこして血が滲み、汁が出る」“太宰府女帝”傷害致死 “普通の主婦”への暴行と恐喝の全容とは?

ホストに囲まれる山本被告(左)と瑠美さん

「ホストに手を握らせ、手の甲に割りばしを突き刺した」太宰府の女帝が主婦を“精神支配”した手口《法廷証言》 から続く

 普通の主婦が、ホスト通いで借金を背負わされ、度重なる暴行の末に2019年10月20日に死亡した「太宰府“主婦ホスト漬け”傷害致死事件」。

 今年3月、山本美幸被告(42)と交際相手の岸颯被告(25)が主婦・高畑瑠美さん(当時36)を精神的、身体的に抑圧し死亡させたとして、福岡地裁で傷害致死や監禁、恐喝などの罪で有罪となり、それぞれ懲役22年と15年を言い渡された。両被告は判決を不服として控訴し、現在は福岡高裁での控訴審を控えている。

 裁判で明らかになったのは、山本被告と岸被告による、瑠美さんへのマインドコントロールの詳細だ( 「太宰府主婦ホスト漬け事件」裁判?#1 )。山本被告は瑠美さんとは2008年ごろに知り合い、もともと恐喝行為をしていた瑠美さんの兄の借金を、瑠美さんに肩代わりさせて支払わせていた。2015年頃には、当時30代後半だった山本被告と交際関係にあった、17歳年下の岸被告も恐喝に加担する。

■いびつな共同生活「同じ服を着せられ、ひどい悪臭が」

 2019年2〜3月頃からは、山本被告が瑠美さんをホストクラブに連れて行き、支払いを建て替えることで瑠美さんの借金を増やしていった。2019年8月下旬には、山本、岸両被告の自宅に瑠美さんを住まわせ、ひとつ屋根の下でのいびつな共同生活が始まった。

「瑠美さんは山本被告から、毎日のように食パン1袋とカップ焼きそばを無理矢理食べさせられ、急激に太っていきました。服も同じ服を着せられ、風呂にも入らせてもらえず、ひどい悪臭がしたそうです。口紅を目のまわりに塗るなど奇抜な化粧もさせられていた。ホストクラブで衆人環視のなか、瑠美さんに暴行することもあり、『人としての尊厳』を奪うことで、マインドコントロールを強めていったと見られています」(地元社会部記者)

 瑠美さんが山本、岸両被告の自宅に住み始め、ほどなくして暴力がエスカレートする。

■山中での約40分間「顔を拳で殴ったり、根性焼きをした」

 判決文によると、2019年9月25日、山本被告は瑠美さんとホストクラブに行った後、岸被告の運転する車で福岡県筑紫野市の山中へ向かった。そこで瑠美さんの態度が気に入らないなどという理由で、約40分にわたり、暴行をしたとされる。

 この時について、山本被告は法廷で「瑠美さんの髪を引っ張って、2、3回頬を平手で叩いた。岸被告は木の棒をライターで炙り、足の裏に押し付けていた」と自らは軽微で、岸被告が残酷な暴行をしていたと主張。一方の岸被告は「山本被告は腹部を蹴ったり、顔を拳で殴ったり、根性焼きをした。木の棒で4、5回叩いていた」と主張している。

 いずれも責任を押し付け合って証言は相容れないが、瑠美さんへの暴行の凄まじさが浮かび上がる主張だった。

「ホストクラブでの瑠美さんの言動に腹を立てた末の暴行だったという主張ですが、これだけの暴行を加える理由にはならないほど些細なことです。暴行は瑠美さんに対して、自分たちが支配しているんだという誇示の意味合いもあったのでしょう」(同前)

■バタフライナイフを太ももに「落とした」?

 山本被告らの自宅からは、瑠美さんのDNA型と一致する血痕が付着したバタフライナイフが見つかっている。これについて山本被告は「山中での暴行の2、3日後に自宅で、瑠美が指名していないホストに抱きつくなどしたことを注意した際、太ももの膝に近い部分に5センチの高さから2、3回バタフライナイフを落とした」と証言している。

「しかし法廷では、後に山本被告が『(バタフライナイフで)刺した』と話している録音が公開されている。5センチの高さから落とすことを『刺した』と言うでしょうか。暴行の多くは目撃者がいない上、客観的な証拠が少ない。それを良いことに、両被告は自分に有利になる発言を繰り返しているんです。判決では2人の供述が一致する範囲での暴行のみを認定していますが、実際の暴行はそれ以上のものだったと見られています」(同前)

■「100万円集めんといかんのやけん」美容師の前でも恐喝

 暴行の激化に伴って、恐喝の手口も度を超えたものになっていく。

 10月13日、山本被告と瑠美さんは美容院にいた。その場にいた美容師の証言によると、山本被告は「さっさと始めろよ」と瑠美さんに指示し、瑠美さんは「必死に6、7人の親戚に電話をして金を貸してくれるように頼んでいた」。瑠美さんが電話の合間に休憩する際にも、山本被告は「休んでいる暇はないよ。100万円集めんといかんのやけん」などと追い込んでいたという。

「13、14日に山本被告が奪ったのは105万円。美容師が証言もあり、法廷で被害額として認定されました。未遂も含めて、瑠美さんや瑠美さんの夫ら計5人から総額500万円弱を脅し取っていたと認定されていますが、こうした目撃者がいたり、借用書などで金額が特定できたものだけです。山本被告の恐喝行為の全体像はよくわかりませんが、被害総額はとんでもない額になるでしょう」(同前)

■山本被告が息子Bさんの面前で瑠美さんを刺した

 この後、14日から15日にかけても、山本、岸両被告は瑠美さんに暴行を加えている。14日夜、山本被告と岸被告は瑠美さんとともにホストクラブを訪れた。この日は山本被告の息子Bさんも同席している。

 山本被告らはいつものような“無茶ぶり”で瑠美さんに度数の高いアルコールを無理やり飲ませた。喉が焼けるように熱かったのだろうか、瑠美さんが手づかみで氷を食べると、山本被告が急に立腹したのだという。

「山本被告は、同席したホストクラブの従業員に『瑠美が手を握りたいんじゃない? 手首をちょっと握っとってくれん? 手首を握ってテーブルの上に置いて』と指示し、瑠美さんの手を固定した状態で甲に割りばしを突き刺した。ホストは驚いて手を引いたようですが、山本被告は『ちゃんと握っとって』と命令し、割りばしをライターで炙って再度、手の甲に突き刺し、その後ライターの点火口も押しつけています」(同前)

 岸被告もこのとき暴行に加担している。山本被告の息子は法廷で「(岸被告は)折れた割り箸を瑠美さんの太ももに思い切り突き刺した」と証言。しかし岸被告は「刺すふりをしただけ」と反論し、山本被告は「酔っていてよく覚えていない」などとはぐらかしている。

■ガッツポーズ絵文字に《ひざの皿くだいた》《写メないの?笑》

 15日午前5時過ぎ、山本被告らはホストクラブから帰宅したが、自宅でも瑠美さんへの暴行は続いた。山本被告はホストクラブの従業員に電話し「(瑠美さんを)ガムテープで縛っている」「どついている」などと話しており、電話を受けたホストの男性は「岸被告が何かを言った後にドンとかバシッとかいう音が5、6回聞こえ、その音にあわせて瑠美さんのうめき声が聞こえた」と証言している。

 一方の岸被告は午前8時過ぎにBさんへLINEをし《(瑠美さんの)左ひざの皿くだいた》というメッセージとともに写真を送信している。岸被告はこの行為について、法廷で「暴行は山本被告がやっており、警察に通報してもらおうと思って送った」と主張している。しかし、福岡地裁の岡崎忠之裁判長は判決で「ガッツポーズを現す絵文字を送るなど、危害を加えることを楽しんだようにもとれる」と切り捨てた。

 「危害を加えることを楽しんだようにもとれる」のは、法廷で明かされた15〜16日の岸被告と山本被告の息子BさんのLINEを見ても明らかだ。

Bさん《生きとる?》
岸被告《左ひざの皿くだいた》
Bさん《まじかよ爆笑》
岸被告《うい》
Bさん《写メないの?笑笑》《どうやってやったの?踏んだの?》
岸被告《そだよ》
Bさん《相当痛かろ?歩けんのやない?》
岸被告《ぷにぷにしてる、知らん、たぶん無理かもね》
Bさん《泣き叫んでない?》
岸被告《口にガムテープとタオル巻いて紐で手縛ってたから悶絶してた》《うごーっても言っていた》
Bさん《会った時叩いてたやろ爆笑》
岸被告《やってみ、左ひざだから叩きやすいよ》
Bさん《次は肘にしよう》
岸被告《次は肘やけん》
Bさん《俺、絶対耐えれんわ爆笑》
岸被告《たぶん死ぬよ》《青あざを通りこして血が滲み、汁が出る》
Bさん《ただれてる笑笑》《生き地獄か》
岸被告《これがまさに、生き地獄》

 瑠美さんが外傷性ショック死で亡くなる10月20日まで、両被告の暴行が止むことはなく、瑠美さんは次第に衰弱していった。( #3 へ続く)

《左ひざの皿くだいた》”普通の主婦”が苛烈な暴行で絶命した「太宰府女帝事件」最後の5日間 へ続く

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

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