駅前で20年以上体を売り続けた女性(53)が語るコロナ禍のリアル 常連客の高齢者は「行かない!死にたくない!」

駅前で20年以上体を売り続けた女性(53)が語るコロナ禍のリアル 常連客の高齢者は「行かない!死にたくない!」

写真はイメージ ©?iStock.com

出会いは「売春婦」と「買春客」という関係で…池袋駅西口で体を売る女性(39)が明かす“街娼の恋愛事情” から続く

 体を売っても貧困は解決せず、日々ギリギリの生活を強いられている女性は決して少なくない。新型コロナウイルスと政府による自粛要請は、そうした日本の貧困女性たちを地獄に叩き落とした……。

 そんななか、ノンフィクションライターの中村淳彦氏は、コロナショックに喘ぐ女性たちに直接取材を行い、『 新型コロナと貧困女子 』(宝島社新書)を執筆した。彼女たちの生活実態はいったいどうなっているのか。ここでは、同書の一部を抜粋し、池袋駅西口で20年以上街娼を続ける女性の生々しい声を紹介する。(全2回の2回目/ 前編 を読む)

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■緊急事態宣言延長は確実…池袋で盛りあがるのは街娼スポットだけ

 売春は売春防止法で禁じられている違法行為だ。

 ソープランドもアダルトビデオも、デリヘルの裏引きもパパ活も、解釈によっては売春防止法違反となる。しかし、この法律が売春する女性に適用されるのは基本的に街娼だけである。理由は法律が生まれた時代背景にある。

 売春防止法が施行されたのは、昭和32(1957)年。戦後、戦争未亡人が困窮して次々に売春婦になったことから生まれた法律で、街から街娼をなくすことを目的としている。売春防止法で罰せられるのは売春婦を管理・斡旋する業者であり、売春婦は保護対象となる。売春婦が刑事罰に処せられるのは、売春の勧誘行為だけだ。街娼が不特定多数の男性に売春を目的に声をかけること、誘うことが厳しく禁止されている。

 池袋西口の街娼たちは、それぞれ営業努力や工夫はしているのだろうが、基本的にわいわいして遊んでいる。目立つように声かけはしていないが、街娼は完全な違法行為だ。違法なので暴力団のテリトリーにもなっている。

 2020年5月3日。5月6日を期限としていた緊急事態宣言の延長は確実視され、池袋の閑散状態は続いていた。営業を継続していた家電量販店も店を閉めている。盛りあがっているのは駅近くにある街娼スポットだけで、今日も直射日光を浴びながらホームレス、無職、独居老人、街娼たちが集まってバカ騒ぎをしている。 前編 で紹介した美香さんは、今日も群がる男たちの真ん中にどんと鎮座していた。

■常連客は高齢者ばかり「悪い! 行かない! 死にたくない!」

 数少ない池袋駅西口の街娼たちにも派閥があるようだ。今日は美香さんとは違うグループの街娼と待ち合わせている。桜田美子さん(仮名・53歳)は池袋駅西口を拠点として20年以上、路上に立ち続けている女性だ。

「私は自粛に殺されちゃいます。もう、誰を恨めばいいんですか」

 池袋西口にある喫茶店は、今日も混んでいた。ネットワークビジネスや宗教の勧誘だろうか、客層は悪い。杖をついてやってきた美子さんは椅子に座るなり、そう嘆きだした。新型コロナが街娼活動に大きく影響を及ぼしているようだ。

――新型コロナで売り上げが下がったんですか。

「そう、もうめちゃくちゃ。収入はコロナのせいでなにもなくなった。前はあったの。1月までは普通にあった。家賃を払って光熱費を払って、生活ができる程度のお金は入ってきていた。コロナで客足がなくなっちゃって、もう殺されちゃうくらい」

――何月くらいからおかしくなったんですか?

「2月末から急によ。うちの常連さんは、みんなお年寄り。みんな怯えて家に籠もるようになっちゃった。『大丈夫だよ。マスクをしてくれば!』って電話しても、『万が一があるから。悪い! 行かない! 死にたくない!』って。電話切って『バカヤロー!』みたいな。いま電話も止まっちゃった。お金がなくて支払いができなくなったんで『お客様のご都合により……』っていう状態。客に連絡もできないわ」

――路上じゃなくて電話で客を呼ぶんですね。

「常連は電話で呼んで、あとは西口に直接来る人もいる。路上に立っていれば声をかけられるけど、常連を電話で呼ぶほうがメインだね。今日来なよって呼ぶんではなくて、前もっていつ来れる?って。電話つながっているときは連絡しまくったけど、『こんな状態で行けると思う? コロナにかかったら死ぬんだぞ』って逆に言われた」

――客は本当に高齢者ばかりなんですね。

「みんな60歳以上。定年退職を迎えた老人ばかりで、太った女が好きっていう人が集まったのかな。生活保護の人はいないかも。太った女好きの高齢者。売春代は最低1万円で、最高1万5000円。ほとんど収入がなくなっちゃった。私はこれでも15人くらいは常連がいるの。みなさん必ず月1回は会ってくれてた。だからどうにか食べていけたけど、みなさんコロナに怯えてもうだめです」

■常連を大事にする戦略的な売春

 池袋駅西口の街娼スポットは目立つ場所にある。東京都板橋区在住の筆者は池袋に行くことが多い。事情を知っているので、そのスポットを通るたびにメンバーを眺めている。美子さんはだいたいいる。

 美子さんの外見もお伝えしておこう。とにかく太っている。髪の毛はボサボサで、歯は半分程度がない。体重が重すぎることが原因なのか、最近は満足に歩けないようだ。今日は杖をついている。成り行きに任せる美香さんと比べると、美子さんは常連と頻繁に連絡を取るなど、それなりに戦略的に売春活動をしていた。

――月15万〜20万円くらい稼げていたの?

「そのくらいはあった。常連は大事。うちの仕事は立ちんぼだけど、立ってフリー客を捕まえるのは難しい。ましてやうちはキレイな容姿じゃないし、太ってこんな体型だから声をかけてくる人はいない。けど、太っている女が好きっていう人に引っかかれば、その人を離さないように一生懸命サービスして好いてもらってっていう努力はしたよ。立ちんぼ歴20年以上にして、やっと15〜16人を捕まえることができた。やっと普通の生活をつかんだのに、こんなことになっちゃった」

―― 20 万円稼いだら、あそこではトップクラスですよね。

「じいちゃんたちも他の太っている女を探すのが面倒くさいから、『いいや、このコで』っていうのもあるのかも。それでも私にとっては貴重なお客さんで、ただコロナちゃんで全部だめになりそう。先月はどうにか5人来てくれたけど、5人じゃ生活できないよ」

――立ちんぼを20年間以上もやっているんですか。

「そうですね。33歳で東京に出てきてるので、それくらい。それまでは普通の派遣で働いてたけど、派遣でグッドウィルってあったじゃないですか。あれがダメになって潰れちゃって。あとパチンコもしていて、どっちも稼げなくなっちゃって、それでちょうど親と喧嘩して池袋に家出みたいな。そこに何日かいたら、おじさんに声をかけられた。『遊ばないか?』って。『カネやるぞ』って。ちょうどお金も底をついていて『あっ、ラッキー! お金もらえるなら行くべ!』って。あ、その前から地元でパチンコ売春していたので、軽い気持ちで立ちんぼになったのよ」

■“パチンコ売春”という原体験

――パチンコ売春ってなんですか?

「25年前くらいかな。20代後半のときからパチンコにハマった。地元は神奈川県で女子高校卒業して派遣していたの。工場の仕分けみたいな。昔から運動も勉強もできないし、趣味もなにもないみたいな人生で、パチンコだけはハマったの。『海物語』って知ってます? あれにハマった。工場で働いている以外の時間は、全部パチンコ屋にいるようになった。で、月給が1日でなくなった日があった。魚群が何度出ても外れた。泣きながら店内を歩いていたら、おじさんから声かけられた。ホテルに行ってセックスしたら1万5000円もらった。なにこれ、えーすごいって」

――それがパチンコ売春のはじまりなんですね。

「そのとき、そのおっさん、テクあってうまくて、気持ちよくなってお金もらってマジですごいって。それからパチンコ売春です。勝てばいいけど、負けたときは景品交換所とかウロウロして、声かけられるのを待つの。負けたらその場で売春したから、朝から晩までパチンコになっちゃった。それで母親からあきれられて絶縁されたんだけど」

――どうしてパチンコやりすぎで絶縁になるの?

「28 歳でパチンコはじめて、朝から晩までだったからじゃないですか。母親に何度もいい加減にしなさいって怒られて、最後は母親が『お前なんか産まなきゃよかった』とまで言いだした。その言葉を聞いて家出を決意した。勢いで家を出てそのまま電車に乗って池袋に来たの。それが20年前。家出した何日後かに立ちんぼになったのね」

――立ちんぼって、そんなすぐになれるんですか。

「パチンコ売春でエッチでお金が稼げることは知っていた。だから、もう勝手にやった。最初、私は片手の5000円でやってたの。そしたら他の立ちんぼに怒られて、『そんな低い値段で遊ばせないで! こっちの単価が下がるでしょ!』って。うちらのルールがあるんだからって。みなさんはいくらでやっていらっしゃいますか?って聞いたら、1万〜1万5000円って。値段を上げたときに客は減ったけど、あれから、なんだかんだで20年も経っちゃったよ」

■セックス、セックス、セックスの20年

「池袋に来てから20年間、毎日、毎日セックスしているよ。でも、最近コロナでご無沙汰。こんなこと初めて。うち、実は本当にセックスが好きで、仕事と趣味の境目ないから」

 喫茶店で30分くらい話している。美子さんはそんなことを言いだした。性欲が異常に強いらしい。街娼としていくらセックスしても、全然飽きないらしい。もともとの性格が好色だったことで街娼を20年間も続け、これからもずっと続けると言う。

 池袋駅西口の街娼スポットで、美子さんは他の女性たちにも増して群がる男性たちに触られていた。無職、ホームレス、独居老人たちは胸を中心に念入りに触り、当たり前のように豊満な胸を揉みまくり、みんなで盛り上がっていた。一般的な女性には当然、また風俗嬢や売春婦にでも、仕事以外で触ったりすることは常識的に許されない。しかし、美子さんにはそういう感覚はなかった。

「ちゃんと売春を商売にしなきゃって、反省はある。だけど、触られると感じちゃうんだよ。それで勢いでホテルに行ってお金もらわなかったり。そんなふざけた感じだったから、しばらく立ちんぼになっても稼げなくて。ちゃんと商売として売春するようになったのは、せいぜいこの5年くらいかな。おばさんになって、やっとまともになったというか」

 新型コロナが始まってから常連客は来なくなった。外出自粛要請の影響で路上で声をかけてくる人もいない。収入減と同時に性行為の回数も減っていることになる。美子さんは日々売春して性行為をして、特定のパートナーをつくることはしてこなかった。男なら中年でも高齢者でも、ハゲでもデブでもOKで「みんなのセフレみたいな感覚」だそうだ。

【前編を読む】 出会いは「売春婦」と「買春客」という関係で…池袋駅西口で体を売る女性(39)が明かす“街娼の恋愛事情”

(中村 淳彦)

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