「家族に嘘をついているのが心苦しかった」5万円のギャラでAV出演、48歳で風俗嬢デビューした女性の“告白”

「家族に嘘をついているのが心苦しかった」5万円のギャラでAV出演、48歳で風俗嬢デビューした女性の“告白”

©iStock.com

「風俗とか水商売にはすごく偏見があった」それでも…女子大生の私がソープで働く道を選んだワケ から続く

 この数年、子どもの学費のために風俗勤めや売春するお母さんが増えている。そう語るのは、長年にわたって貧困や介護、AV女優や風俗といった社会問題の取材を続ける、ノンフィクションライターの中村淳彦氏だ。

 ここでは同氏の著書『 女子大生風俗嬢 性とコロナ貧困の告白 』(宝島社新書)より、48歳の“お母さん”が風俗で働き始めるようになった背景、そして彼女の考えを紹介する。(全2回の2回目/ 前編を読む )

◆◆◆

■お母さんはデリヘル嬢

「5年前に主人がリストラされまして、それでこの仕事に。主人はリストラされたのと同時にうつになって、しばらく働けなくなりました。子どもが大学生で学費がかかる時期と重なったので、まだまだやめられません」

 酒井美恵さん(仮名/48歳)は大塚の熟女デリヘル嬢だ。外見はぽっちゃり体型のどこにでもいる普通のお母さんという印象。誰も風俗嬢とは思わないだろう。51歳の夫、それに大学2年生の娘の3人家族、東京郊外に35年ローンで買った小さな持ち家で暮らしている。

 実は、この数年、子どもの大学学費のために風俗勤めや売春するお母さんが増えている。最低賃金に張りついたパート労働が象徴するように、中年女性が対象の良質な雇用はきわめて少ない。一家の大きなアクシデントといえる夫のリストラや失業だけではなく、夫が低賃金というだけで共稼ぎしても生活は苦しく、その苦しさから逃れるため、お母さんが風俗や売春に踏み切る。さらに子どもの進学費用が重なると、もう現実を乗り切る改善策はなく、“私が風俗か売春するしかない”と多くのお母さんたちが決断している。

 お母さんの売春は、夫や子どもにとっては考えられない事態だ。しかし、全国的に実質賃金が下落し、大学進学費用という大きな負担を強いられるなかで、お母さんの売春が激増していることは間違いない。もうひとつ、日本の人口ピラミッドがその異常な現象に影響している。現在、日本は70代の団塊の世代、40代後半の団塊ジュニア世代が消費市場の中心だ。風俗産業、売春業では男性客の高齢化で30〜40代の中年女性にニーズがあり、今は実質的に肉体や女性性を売るビジネスは年齢の上限がなくなっている。

 かつてコンビニで成人誌が販売されていたころ、筆者は男性の性のニーズを把握するために、毎月入れ替わる雑誌棚をチェックしていた。中年女性が登場する商品は、タイトルなどに「人妻」や「熟女」と冠される。2000年代半ばからコンビニの雑誌棚には“人妻”“熟女”“不倫”という文字が溢れていた。逆に、若い女性たちに冠される“清楚”“美女”“女子大生”という言葉は少なかった。

■夫のリストラと精神疾患

 所属する熟女デリヘルは「本デリ」と呼ばれる業態だ。違法である本番サービスを提供するので“裏風俗”ともいわれる。本番を提供することで一般のデリヘルと差別化され、集客やリピート客を掴むことが容易になる違法営業をする。東京・大塚、鶯谷には中年女性を積極的に採用する本デリはたくさんあり、実際にたくさんの“普通のお母さんたち”がセックスを売っている。

 美恵さんは今日も16時までの出勤だった。2人の男性客が付き、みっちりセックスを提供したという。

「主人はずっと工場で働いていました。突然、営業にまわされた。営業がやりたくないから工場で働いていたのに、できないことをやれと言われておかしくなりました。パワハラですよね。主人はパソコンがまったくできない。でも、できて当たり前という環境になって、上司にも年下の社員にも、そんなこともできないの? みたいな。どんどん追い込まれて、退職勧告で詰められて精神疾患になって辞めました」

 夫の年収は600万円ほど。裕福ではなかったが、貧しくもなく、普通に平穏に生活していた。夫は真面目、勤勉な性格で、その会社に専門学校卒で新卒入社、入社26年目に営業所へ移動となって1年間で壊れてしまった。

「一番キツそうなときは、帰ってきても何もしゃべらない。黙って晩酌していて、何を言っても返事をしない。そのうちにやっとしゃべりはじめると、ちょっともう泣きながらしゃべりが始まる。泣くんです。もう悔しいのと、自分が情けないのもあるのと、つらいのと、いろいろあったみたい。工場のときは係長的な立場で、そのうち工場長をやってもらうからってことで営業だったけど、実際はリストラだった。飛び込み営業をやらされて、まったく結果を出せなかったようでした」

 夫は3歳年上。26歳で結婚し、28歳のときに娘を出産。一人娘は素直にすくすくと育ち、家庭はずっと円満だった。夫の精神疾患、リストラが一家に起こった初めての苦難で、しばらくどうしていいかわからなかった。

 ずっと共稼ぎで10年以上、美恵さんは近所のスーパーで働いた。時給は最低賃金で、収入は毎月4万円ほど。夫は休養と療養が必要と診断され、すぐには働ける状態にならなかった。世帯年収は650万円(夫600万円+妻50万円)から50万円になった。当時、子どもは高校1年生。大学進学に意欲があった。とても「行くな」とは言えない。美恵さんは、途方に暮れた。

■5万円のギャラでAV出演

 リストラされたとき、退職金を含めて貯金は500万円ほどだった。結局、夫は2年間以上も働くことができず、収入は半年間の失業保険だけ。スーパーのパートを増やしても、せいぜい月6万円程度にしかならなかった。毎月7万円の住宅ローンを支払い、普通に質素な生活をしているだけでも、どんどん貯金は減っていく。

「最終的にもうダメってなったのが、大学の受験費用と初年度納入金でした。130万円くらいで、それを払っても毎年授業料が110万円かかる。奨学金とか教育ローンとか、いろいろやりくりしても、まったくお金が足りない。スーパーのパートをしながら、いろんな求人を見たのですが、せいぜい時給が最低賃金から100円上がるくらい。40代の女に普通に生活できる仕事はまったくなくて、風俗しかないって思いました。娘の受験のことなので、2年前のちょうど今頃、AV出演したんですよ」

 アダルトビデオの求人には年齢制限がなかった。メールで応募した。すぐに返信があって面接があり、全裸をチェックされて出演が決まった。ちなみにAV女優は裸が商品なので、面接の段階で全裸をチェックされる。

「パートしているスーパーは近所だったから、ちゃんと続けないと家族にバレちゃうじゃないですか。子どもも買い物に来るし。とりあえず、すぐにお金になる仕事ってことでのAV出演でした。“夫がリストラされた奥さんが生活のために応募してきた。面接即ハメ”って、そのままの設定でした」

 AV女優の出演料はプロダクションから即金で支払われる。もらったお金は5万円だった。もう、だいぶ前からアダルトビデオの出演料は安く、リスクや労働量(セックス)の割にはお金にならない。初出演から10本くらいに出演し、出演料とパート代で生活をしのいだ。信用金庫の教育ローンでお金を借りて初年度納入金を支払った。家にひきこもっていた夫は、妻がアダルトビデオに出演していることは、まったく知らない。

「主人はネットもスマホも使わないのでバレないでしょう。スーパーのレジを続けても生活できない。AV出演しているときに夫がなんとか働き出して、自由が効くようになったので、風俗店を探して、大塚の熟女デリヘルで仕事をすることにしました。最初から本番店です。100分で1万4000円になる。一日一人付けばって仕事ですね。AVと本番店でセックスまみれではあるけど、夫には会社に就職したって伝えた。それから毎日、朝家を出て風俗店に出勤しています。夫のほうが朝が早いので、全然バレないまま今に至っていますね」

■保険のセールスレディを掛け持ち

 ずっと嘘をつきながらAV女優をしたが、裸になったり、セックスするよりも、家族に嘘をついているのが心苦しかった。娘の中学時代のママ友に誘われ、2年前から保険のセールスレディを始めている。セールスレディは固定給+出来高制で、勤務時間の拘束がない。風俗をしながら働けるのがよかった。

「実は風俗のお客さんに保険を勧めています。大手の保険会社なのでお客さんも話を聞いてくれるし、けっこう入ってくれる。肉体関係があると他人じゃないみたいに感じるみたいで、風俗で働いていることが保険でもプラスになっていますよ。始めたばかりの頃、新規の人数は支店のセールスレディのなかではけっこう上位で、上司に褒められました」

 夫は宅急便の配送員の仕事を見つけた。家に月15万円を入れてくれようになった。美恵さんは本デリでコンスタントに指名客を増やし、指名客に生命保険を勧めている。風俗で月25万円、セールスレディで月20万円程度を稼げるようになった。

「夫のリストラと大学学費がなかったら風俗はしなかった。けど、やってみると面白いですよ。性欲発散にもなるし。好きめのお客さんがぎゅーって抱きしめてくれるのが、いい。お客さんも奥さん相手に抱きしめるとか、もう恥ずかしくてできないから、喜んでくれるし」

 世帯収入はリストラ前より増えた。少し無駄遣いができるくらいの生活ができている。娘の大学も、なんとか卒業をさせられそうだ。

【前編を読む】「風俗とか水商売にはすごく偏見があった」それでも女子大生の私がソープで働く道を選んだワケ

(中村 淳彦)

関連記事(外部サイト)