「客がいきなりイソジンを…」コロナ前より“収入増” 吉原の真理子(33)が告白した“驚きのタンス貯金”

吉原で働く風俗嬢の女性、コロナ前より収入増 客だった男性5人から毎月仕送り75万円

記事まとめ

  • 東京・吉原で働く女性に、ノンフィクション作家・八木澤高明氏が話を聞いた
  • コロナでソープの仕事を辞めたシングルマザーの女性は、客から毎月援助があるという
  • ソープの仕事に復帰したが、5人から仕送り75万円と、ソープの仕事で月に130万円以上に

「客がいきなりイソジンを…」コロナ前より“収入増” 吉原の真理子(33)が告白した“驚きのタンス貯金”

「客がいきなりイソジンを…」コロナ前より“収入増” 吉原の真理子(33)が告白した“驚きのタンス貯金”

静まりかえった吉原の街(羽田さん撮影)

「ホストに月80万円は使ってる」吉原勤務のルナ(27)がスマホを置いて真剣に語った“将来の展望”とコロナ から続く

 江戸時代に産声をあげて、400年以上の歴史を持つ色街、東京・吉原。この街で働く女性たちは、長引くコロナ禍をいかに生き抜いているのか――。『娼婦たちから見た日本』(角川文庫)、『青線 売春の記憶を刻む旅』(集英社文庫)の著作で知られるノンフィクション作家・八木澤高明氏が現地を歩いた。(全3回の3回目/ #1 、 #2 を読む)

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■コロナが怖くてソープの仕事を辞めたけど…

「毎年お正月は、予約のお客様でお店はいっぱいになるんですけど、全部の部屋が埋らなかったのは私が7年仕事をしていて初めてのことでした」

 新型コロナウイルス感染者の急増によって、東京に2度目の緊急事態宣言が出されたのは2021年1月7日のことだったが、年末から年明けにかけての感染者の急増によって、吉原の客足は例年とは比較にならないほど落ち込んでいた。

 以前取材したデリヘル経営者が紹介してくれたソープ嬢の真理子(33歳、仮名)も、コロナの影響を受けていた。昨年4月に1回目の緊急事態宣言が出された際、ソープでの仕事を辞めたという。

「小学生の娘がいて、彼女と2人で生活をしているので、コロナが怖かったんです。ソープの仕事はもろに濃厚接触じゃないですか。もし私が感染しても、ひとりで生きているのなら、自分だけが苦しめばいいんですけど、娘にうつしたら学校にも迷惑がかかりますし、どこで感染したんだということにもなるじゃないですか。いろいろ考えていたら、続ける気になれなかったんです」

「仕事を辞めてもその先の目処は立っていたんですか?」

「ソープ時代には、ある時から毎月100万円を目標に貯金をしていました。それなので、今も4000万円ぐらいは貯金があるんです。私は貯金をすることが大好きで、お金を見ていると落ち着くんです。そのお金はすべて銀行には入れないで、家に置いてあります」

「銀行にはなぜ入れないんですか?」

「こういう仕事ですけど、ダミーの会社でアルバイトをしていることにして、確定申告もしています。ただ、きっちりと収入をすべて申告しているわけではないので、そんなに貯金があったら、すぐにおかしな申告をしていることがバレますよね。それなので、銀行に大金を入れて目をつけられないようにしているんです」

■「生活が厳しいだろうから」とお客さんからの毎月援助が

 1年どころか数年は食うに困らない貯金があったものの、彼女はそれを取り崩そうとは思わなかった。 

「昔から私は、ものすごいケチで、貯金を1円でも取り崩したくないんです。たかが500円のサンダルを買うか悩んで、買わないこともあります。それに風俗の仕事はいつまでもできる仕事ではありませんし、一寸先は闇だと思うんです。すぐに昼のアルバイトをすることにしたんです。名前は出せないんですけど、日本人なら誰もが知っている公共施設の誘導係を週に3日やって、月に10万円もらっていました」

「その額だと生活は厳しいですよね?」

「そうですね。月の家賃ぐらいにしかなりませんからね。ソープ嬢の知り合いの中には、持続化給付金の不正受給をしている人もいました。私にも、30万円が申告の手数料で70万円が入るという話がまわってきましたけど、それは簡単にバレるだろうと思ったので、さすがにやりませんでした。店を辞めてから、しばらくして生活が厳しいだろうと、有難いことに援助してくれるお客さんが現れたんです。東京から車で2時間ほど離れた街に住んでいる方で、何年も週に1度は通って来てくれていた人でした。今も月に30万円援助してくれているんです。貯金のことはもちろん一言も言ってません」

「それはかなりの金額ですね」

「そのお客さんからは、もう仕事には復帰しないで、普通に生活して欲しいと言われました。ソープをやめてから、誘導係の仕事と彼からの送金で生活をしていたんですが、昨年の末にコロナが増えて施設が休みになってしまったので、このままではまずいなと思って、彼には申し訳ないですが、年末から黙って(ソープに)復帰することにしたんです」

■「お客さんが急にイソジンを自分で用意して尿道に…」

「30万円だけでも生活は何とかなりますよね?」

「彼は既婚者で、結婚を迫ってきたりすることはないのですが、彼に頼りきりになるというのが嫌なんです。それと、母子家庭ですし、いつまでもやれる仕事ではないので、少しでも多く稼いで貯金したいという思いがある。それで、新規のお客さんを取らず、店のホームページにも載せないで、彼以外のお客さんの予約だけを取って、働きはじめました」

 このコロナ禍にも関わらず、通ってくる客に変化はあるのだろうか。

「以前から来てくれているお客さんが、急にイソジンを自分で用意してくるようになったんですよ。何をするのかと思ったら、いきなり尿道からイソジンを入れたんです。それで、ある程度入ったら、おちんちんを握って、噴水みたいにピュッ、ピュッと出して、それを何回か繰り返したんです。『これをやっておけば、コロナにも性病にもかからないから大丈夫』って言ったんです。それまで、そんなことする人ではなかったですし、イソジンでうがいはしますけど、尿道に入れる人なんて見たことなかったんで、びっくりしましたね。そこまでしてもやりたいんだなって、おかしくなりましたし、ありがたいなって思いましたね」

■真理子はなぜソープ嬢になったのか?

 そもそも真理子がソープ嬢となったきっかけは何だったのだろうか。

「離婚して、シングルマザーになってしまったので、手っ取り早く稼げる風俗の世界に入ったんです」

 離婚の理由について尋ねてみると、10年ほど前のこととはいえ、傷は癒えていないのだろう、彼女はあまり言いたくなさそうだった。これまで、はきはき話していた口調とはうって変わって、噛みしめるように話した。

「DVです。元夫は中学時代の初恋の相手だったんです。彼が美容の専門学校を卒業して、美容師をしている時に、再会して20歳の時に結婚しました。付き合っている時から、ちょっと酒乱の気があるなと思っていたんですけど、暴力を振るわれるようになったのは、結婚してからです。3年ほどの結婚生活だったのですが、最後の方は毎日のように殴られ、時にはバットで叩かれたりして、このままでは殺されると思って、逃げ出したんです」

 考えられないことで常に元夫の拳が飛んでくる地獄の生活だったという。

「一度、夕飯に牛肉のケチャップ炒めを出したことがあったんです。その時、何が気に入らなかったのか、突然ボコボコに殴られたんです。他にも、カツ丼を作ったら同じ目に遭ったり、こちらの理解の範疇を越えていました。本人は、悪いと思っているんでしょう。殴ったあとに謝ってくるんですけど、暴力は止まりませんでした」

■「見知らぬ男の人の前で裸になるのは嫌でしたよ」

 それでも、何とか夫婦生活を続けたいと思っていたというが、結婚生活は3年が限界だった。

 娘の親権は彼女が持ち、養育費を払うという約束だったが、1年ほどでそれも途絶えた。さらに元夫が免許を持っていなかったので、車を購入し、水道工事の職人だった彼を仕事場へと送迎していたのだが、そのローンの残金200万円も彼女が払うことになった。

「離婚してすぐは、実家にいたんですけど、親のスネをかじるのは嫌だったんで、東京に出ることにしたんです。手元にお金はなかったんですが、払うものは払わなければならない。学歴もあるわけではないですし、そうなると私の中で風俗で稼ぐということしか思い浮かばなかったんです」

 それにしても、離婚の原因となったDVだけでなく、車のローンまで払わせるとは、とんでもない男である。それでも彼女は、淡々と事実を伝えるだけで、表情は変わらない。人間としての強さを感じずにはいられなかった。

 風俗で働くことへの抵抗感はなかったのだろうか。

「最初に働いたのはデリヘルだったんですけど、見知らぬ男の人の前で裸になるのは嫌でしたよ。友達で働いている子もいたんで、続けることができました」

 デリヘルでは月に60万円ほどの収入になったという。続けていくうちに、吉原ならもっと稼げると知り、どうせ体を晒すならできる限り稼ごうと移ることにした。

 最終的には、店でトップを張るまでになったが、吉原での仕事は、苦労の連続だったという。

「ベッド、マット、ベッドと3回するのが基本で、デリヘルとは違って、本番をしないといけないじゃないですか。最初の日は、家に帰る時に涙がこぼれました。あと、はじめはなかなか指名が取れなくて、悩む日々が続きました。お客さんに自分ができる範囲で恋人気分で接したり、特別な事をしてあげようと考えるようになったら、自然と指名が増えていったんです。それでも、毎日ラインのやり取りをしたり、仕事でキスしたことを食事中に思い出したりすると、吐いたりすることもありました。肉体的ばかりでなく、精神的にとても辛い仕事です」

■お客さんの仕送りの合計は月100万円以上にも

 現在は、予約が入った時に出勤するソープの仕事で月に30万円、仕送り30万円と合わせれば、60万円の収入になる。その額を確認すると、真理子が言いにくそうに口を開いた。

「実は、他にも昼間の仕事がなくって大変だろうと、お金を送ってきてくれる人がいるんです」

 このご時世でも金はあるところにはあるんだなと、驚いた。

「送ってくれる人が他にも5人いるんです。細かい仕事のことは言えないですけど、5人の仕送りは75万円になります。仕送り全部とソープの仕事を合わせると月に130万円以上になって、以前ソープで働いていた時より多い金額になります。送ってくれている人には、申し訳ないですけどソープに復帰したことは隠しています」

 コロナという風俗業界にとって未曾有の危機を彼女は逆手に取って乗り切ろうとしていた。男たちの良心を利用していると、不快に思う人もいるかもしれない。私は転んでもタダでは起きない彼女の強かさに拍手を送りたいと思った。

■空いた時間で始めた「新たな仕事」

 月に数回吉原で働き、客だった男たちから仕送りをもらい、コロナ以前以上の現金を得ている真理子だが、以前に比べ空いた時間で、もうひとつ仕事の掛け持ちもはじめた。

「私は家でのんびりするのが嫌なので、時間があったら働きたいんです。以前吉原にいた時は、生理の時しか休みませんでした。今は月に4、5日しか吉原に行かないので、空いた時間でデリヘルに在籍しています。それなら吉原のお客さんともまったくかぶりませんから。おそらくその収入は45万ぐらいになると思います」

 逞しいなと心から思った。国からは満足な補償もなく見向きもされない日陰の業界ではあるが、コロナ禍であっても、体を張り続け、働き続ける彼女に敬意を覚えたのだった。

(八木澤 高明/Webオリジナル(特集班))

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