「ホテルに着いたら『お前、全部証拠はあるぞ』と…」大阪・泉の広場で会った男性が警察だった話〈体を売った女性61人逮捕〉

大阪・梅田の「泉の広場」で売春をしていた女性61人逮捕 警察が1年がかりで捜査

記事まとめ

  • 大阪・梅田の「泉の広場」で売春をしていた当時17〜64歳の女性61人が逮捕された
  • マッチングアプリを使った捜査で、やり取りしていた相手が警察だったそう
  • 大阪府警は令和元年から2年にかけて約1年がかりで捜査していたという

「ホテルに着いたら『お前、全部証拠はあるぞ』と…」大阪・泉の広場で会った男性が警察だった話〈体を売った女性61人逮捕〉

「ホテルに着いたら『お前、全部証拠はあるぞ』と…」大阪・泉の広場で会った男性が警察だった話〈体を売った女性61人逮捕〉

「泉の広場」の近くにあるラブホテル街 ©八木澤高明

「女子高生に覚醒剤を…」体を売った女性61人逮捕 大阪“ど真ん中”地下街で起きていた悲劇 から続く

 大阪・梅田の地下街の待ち合わせスポットとして知られる「泉の広場」。ここで売春をしていた当時17〜64歳の女性61人が、売春防止法違反で大阪府警に現行犯逮捕されていた。府警は令和元年から2年にかけて約1年がかりで捜査していたという。

 大都会の真ん中で、何が起こっていたのか――。この事件を取材して、文春オンライン上に 「日本色街彷徨 大阪・泉の広場」 として公開したのが、『娼婦たちから見た日本』(角川文庫)などの著作で知られるノンフィクション作家・八木澤高明氏だ。「文春オンラインTV」(4月29日放送)では、八木澤氏にインタビューを敢行し、原稿に書ききれなかった出来事を語ってもらった。

◆ ◆ ◆

■ホテルに行って「お前、全部証拠はあるぞ」と逮捕

――取材で話を聞いた、「泉の広場」に昨年8月まで立っていた杏梨さん(30)。彼女の友人は逮捕されたそうですね。

八木澤 昨年8月に逮捕されました。この逮捕が、杏梨さんが広場にいかなくなった理由にもなりましたね。友人の本業はソープ嬢。実家暮らしで生活費に困っている雰囲気じゃないのですが、服を買ったり、自分で遊ぶお金のために広場で売春していた。売春への垣根が低くて、ちょっとお金が欲しいと簡単に飛び越えていっちゃうという感じだそうです。

――友人はどのように逮捕されたのですか?

八木澤 マッチングアプリを使った捜査でした。友人が客だと思ってやり取りしていた相手が警察だったんです。1カ月ぐらいアプリでやりとりして、「泉の広場」でその警察の人と会って、ホテルに行って、「お前、全部証拠はあるぞ」と逮捕された。アプリでお金の話もしていましたから、言い逃れできないですよね。

――警察は「泉の広場」で張り込みもしていたわけですよね?

八木澤 そうです。ただ、杏梨さんいわく、警察かどうかは見れば分かると。立ちんぼを買いに来る人はガン見してくる。女性をジーッと見てくるらしいんです。だけど、警察の場合は視線が動く。彼女たちはずっと居るから、イレギュラーな人が来たら「なんか雰囲気違うな」と分かるんですね。

――杏梨さんは週何回ぐらい立っていたんですか?

八木澤 月によりますが、工場勤務を終えてから週3日ぐらい行っていたようです。行けばほとんどお茶を挽くことはなかった、つまりお客さんがつかない日はなかったと言っていました。

――現在、杏梨さんは広場に立ってないそうですが、工場の収入だけで生活されているんですか?

八木澤 アプリはまだやっているみたいですね。アプリの中で特定のお客さんがついたそうで、月に2〜3人会うと言っていました。新型コロナの影響で、工場の収入が半分以下になってしまって生活できないので、体を売らざるを得ない状況がいまだに続いているそうです。

■大規模摘発「そんなことあったんですか」

――八木澤さんはもう1人、「泉の広場」に立っていた女性に取材されていますね。みどりさん(仮名)は、30代前半の方でした。

八木澤 大阪の郊外の町で待ち合わせをして、話を聞きに行ったんですけど、30代前半とおっしゃっていましたが、白髪が目立っていて、服装など外見も生活に疲れた雰囲気がありました。

――みどりさんは、いつごろ「泉の広場」に立っていたんですか?

八木澤 7年前から立っていて、3年ほど前に辞めたそうです。摘発が始まる前なので、今回の大規模摘発についても「そんなことあったんですか」という感じでした。自分の居た頃は全然なかった、と話していました。

――みどりさんが「泉の広場」に立った理由は?

八木澤 20代前半に家庭の事情で大阪に来て、最初は「見えチャット」という風俗で働いていたんですけど、そこで全然稼げなかった。それで困って、「泉の広場」近くのラブホテル街にある風俗店で働き始めた。その時、一緒に働いていた子から「泉の広場」のことを聞いて立ち始めたと。当時はデリヘルとの掛け持ちだったそうです。

――みどりさんも、お茶を挽くことはなかったんですか?

八木澤 そうですね。とにかく一番稼げた時代だったようです。月40〜50万はコンスタントに稼げたと。「『泉の広場』があった時代はいい時代だった」と話していました。

 それが3年ほど前に辞めるころには競争が激しくなったと。安く売る人が出てきたそうなんです。彼女は基本1回2万円ぐらいでお客さんを取っていたのが、1万円ぐらいでやる人が出てきた。

――何となく相場があるものなんですか?

八木澤 そうですね。暗黙の了解みたいな感じで、私が取材してきた横浜でも決まっていました。その中で1人が安くしちゃうと、どんどん価格競争が始まる。すると女性の側も大変なんです。

――みどりさんは稼いだ月40〜50万のお金は何に使っていたんですか?

八木澤 パチンコやホストクラブだそうです。特にホストクラブが楽しくて、今も行っているそうです。あり金は全てパチンコとホストに使い、貯金は今までの人生でしたことないと。だから、「泉の広場」で稼いでも全部遊興費に消えたということですね。

■ホストクラブのためにアプリで月1人2人…

――みどりさんが「泉の広場」に立たなくなったのには、お子さんが生まれたこともあるそうですね。

八木澤 そうなんです。一番の理由は子どもができたからです。彼女の場合、男性を相手にする時にコンドームを付けないで、ちょっとお金を多めに取っていた。なので、誰が父親か分からない子どもが3人居ると。7年前から始めて、子どもができる度に広場から一時的に離れていた。

――子どもたちとは一緒に住んでいるんですか?

八木澤 今は一緒に住んでいません。3人のうち一番上の子どもは実家で、両親の養子になっている。あと2人は施設に入っているということです。だから結局、彼女は今1人で暮らしているんです。

――育児放棄とみなされたのでしょうか?

八木澤 そういうことです。それで養護施設に保護されたんです。

――現在お仕事はされているんですか。

八木澤 今は仕事はしてないです。基本は生活保護で、彼女自身はそこから抜け出したい気持ちもある。そのために、取材当時も介護施設で体験のようなことを週3でやっていました。それをこなしながら、月1でお子さんに会いに行っている。いずれ連れて帰りたいと話していました。

 だけど、生活保護のお金だけではホストクラブなどに行けないので、アプリを使って月に1人2人、相手にしているそうです。それも最近はすごく競争が激しくて、お客さんを見つけるのが大変らしい。

――切ないですね。

八木澤 そうなんですよね。お金をもう少しちゃんとつかえないのかと思ってしまいます。彼女自身も、必死にもがいているんだと思うんです。だから気づいてほしい。彼女自身が気づかないと、いくら外から言ったところで変わらない。頑張ってほしいと心から思います。携帯に子どもたちの写真が入っていて、見せてもらったんですけど、とてもかわいいお子さんで……いつの日か一緒に暮らしてほしいです。

■色街は「摘発直前が一番燃え上がるんです」

――「文春オンラインTV」の読者から、「今まで取材されていて、身に危険を感じることはありましたか?」という質問が届いています。

八木澤 横浜の黄金町という街が、一番初めに取材した色街だったのですが、やっぱりヒリヒリした場所でしたね。

 大阪の飛田新地でも携帯のカメラでパッと撮っても「兄ちゃん、駄目だよ」と怒られたものですが、黄金町ではそもそもカメラを出せなかった。カメラを壊されてしまう。僕自身、何とか見つからないように写真は撮っていましたが、大岡川という川越しに写真を撮っているだけで、カメラを掴まれたことがあります。「お前、何やってるんだ」と。ちょうど黄金町が潰れる前ですから、2003年ごろの話ですね。

――「今は、泉の広場に立っている女性はいるのですか」という質問もありました。

八木澤 立っていることもあるようです。「泉の広場」に近い兎我野の風俗店従業員から、そういう話を聞きました。僕は見てないのですが。「泉の広場」から上がったところのラブホテル街に立っていたのは僕も見ました。

――「泉の広場の全盛期はいつの話だったの?」という質問も来ています。

八木澤 10年くらい前から、摘発が始まる2年ほど前までは、にぎやかな時代が続いていたのではないでしょうか。色街を取材していると、摘発直前が一番燃え上がるんです。線香花火がパッと落ちる時みたいに。また黄金町の話になって申し訳ないんですが、あそこも潰れる1、2年前は娼婦がいっぱい居た。当時は新宿の浄化作戦も始まって、他の町から横浜に流れてきていたんです。

「泉の広場」で摘発された女性の中には四国や九州から来た方もいたようですが、結局別のところで商売にならないから、流れてくることが多い。そうすると女性が急に増えて、周りの店から警察に陳情が行くわけです。それだけ目立つので。そうやって大掛かりな摘発が起きる。「泉の広場」でも、そういう流れがあったのではないでしょうか。

――「女性たちは、なぜお店じゃなくて個人でやるの?」という質問についてはいかがでしょうか。

八木澤 例えば飛田の店やデリヘルもあると思うんですが、そういう店だと競争が発生する。飛田なら「青春通り」に若い子が集まることで有名ですが、そこではなかなか稼げない女性たちが立ちんぼに流れたりするんです。お店だと、どうしても若さや見た目が重要視される。何となく雰囲気は分かる写真も出していますから。それより立ちんぼのほうが、お客さんをつかまえやすいからではないでしょうか。

――いまコロナ禍ですが、全国各地で立ちんぼ行為は続いているんですか?

八木澤 なくなってはいませんね。逆にマッチングアプリも含めて、個人で売春する人は増えているんじゃないかと思います。コロナで、他の風俗や水商売にお客さんが来なくなっていますから。僕の聞いた限りですが、そういう動きは起きているようです。

「文春オンラインTV」の動画は下記のリンクから無料で視聴できます。

文春オンラインTV「体を売った女性61人が現行犯逮捕された『大阪“ど真ん中”の待ち合わせスポット』で何が起きていたのか?《直撃ルポ》」

(八木澤 高明/Webオリジナル(特集班))

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