行き詰まる小池百合子都政 国政転身ならば「降臨」する選挙区はどこになるのか

行き詰まる小池百合子都政 国政転身ならば「降臨」する選挙区はどこになるのか

小池百合子都知事 ©?AFLO

「過労で倒れた」と言われたら、批難しづらいよね。

 東京都知事の小池百合子さんのことなんですよ。先般コロナワクチンを受けておられたので一時的な体調不良なら早く快癒してねと思います。身体が資本の政治家ですから、健康第一。アンパンでも食べて元気百倍となっていただければと思います。

■「東京オリパラ中止ならず」「都ファ大苦戦」と相次ぐ都政行き詰まり

 もちろん、小池百合子さんが過労になったよという話も分からんでもありません。目の前の東京オリンピックは、本来ホスト都市の知事であるにもかかわらず小池百合子さんを外して話が進んで見事に行き詰まりました。3月ぐらいまでは小池百合子さんはオリンピック開催中止を決断するタイミングを計っているという観測が流れ、実際そのような話を都庁内で調査させたようですが、関係者が小池さんを羽交い絞めにして「何らかの形で開催に合意」という道筋になったという逸話まで出たのはいい思い出です。

 同じく目前に控える東京都議会選挙も、小池百合子さんが主体として結党に絡み顧問になっている都民ファーストの会が大苦戦予想で、これまた行き詰まりました。前回は「小池百合子旋風」といって多くの1年生都議を輩出したはずの都民ファーストは、まるでマンボウの産卵のようにほとんどが稚魚のまま政治家としての死を迎えようとしています。

■コロナ対策の目立つ機会も失策、問題は山積み

 さらに、東京では目下、デルタ株と呼ばれる感染力の極めて強いコロナ変異ウイルスの感染者が増加に転じ、小池百合子さんが積極的に取り組んできたコロナ対策が完全に行き詰まりました。それも、9,000億円以上あった東京都の貯金を休業要請などコロナ対策費用でほとんど吐き出してしまい、困っている事業者に対する支援金の給付が遅れているだけでなく財源不足で政府と東京都の間でどっちが払うかで殴り合いになっています。コロナ対策でアテクシ小池がオホホと目立つ機会を得たはずが、やったことが概ね失政だったためにどうにもならなくなってしまいました。

 要するに、昨年7月5日に2期目の東京都知事に就任してみたものの、小池百合子さんは五輪も都議選もコロナ対策もやることなすこと全部うまくいかず、1期目の公約であった「7つのゼロ」も実現には程遠くて、都知事としての職責をうまく果たせなかった、というのが小池さんが過労に至った最大の理由でしょう。

 これから長期にわたって都民全体の高齢化や少子化対策、湾岸VS三多摩の貧富の格差問題、老朽化した交通インフラや上下水道の更新、止まらない通勤ラッシュに開かない踏切、西部の人口減少にともなう空き家問題などなど、問題は山積です。今後、東京の高齢化率がもっとも高くなる2050年代に向けて東京のレガシーを策定し、長期のビジョンに立って東京をどうしていきたいかという話もそこそこに、虎の子であった東京都のお金を全部使っちゃったぞというのが小池都政なわけですね。

■「政治家として最後の挑戦」について

 でも、俺たちの小池百合子はたぶん次なる手を考えています。おそらく、もう東京都知事として東京都の施政に力を尽くすことには関心を失っているのか、小池さんの有力な支持者に対して(入院する直前まで)「政治家として最後の挑戦」についてお話しされていました。おそらくは、来たる解散総選挙か衆議院の任期満了にともなう選挙が予想される9月末から11月に向けて、電撃的な自民党復党と国政復帰を考えているのでしょう。

 それどころか、9月5日の東京オリンピック・パラリンピックの閉幕までに菅義偉政権の支持率が上がらず解散を打てないようであれば、9月末に予定される自民党総裁選の延期を行わず小池百合子アテクシ最強の自民党総裁選出馬のシナリオすら囁かれる始末です。普通の知事の支持率はおおむね7割ぐらいが平均のところ、57%ぐらいとやや低迷している東京都において、もう小池百合子さんにやれることはそれほど残っていません。

 辛気臭くて不人気な菅義偉さんを前に立てて向かい風の不利ななか自民党が衆議院選挙に打って出て30議席近く失ってギリギリ弱小連立政権にしがみつくよりは、我ら選挙互助会文句あるかの掛け声とともに非常に高い国民的知名度(だけ)はある小池百合子新総裁をカシラに「日本憲政史初の女性総理の実現を目指す」と号して選挙戦を戦い抜くのだと言われれば何となく勝てそうな気がします。少なくとも、トップに菅義偉さんを置くよりは。

 それもあって、自民党幹事長の二階俊博さんとの深い関係を軸に会合を重ねたり、小池さんとゆかりの深い野党関係者とも連絡を取り合って、都知事後釜問題も含め病室から電話で調整中といったところでありましょうか。

■女帝・小池百合子が降臨するべき選挙区はどこか?

 そんな女帝・小池百合子大先生が降臨するべき選挙区はどこか。その前哨戦となる東京都都議会選挙の投開票日が7月4日に迫るなか、小池百合子さんが自民党総裁、日本憲政史初の女性首相・総理大臣を目指し戴冠する聖地はいずこになるのでしょう。

◆プロ泣かせの都市型選挙区・東京1区

 ご存じ我らが東京1区。千代田区全域と港区新宿区の一部が混ざっていて、次々回衆議院選挙10増10減ではほぼ千代田区(と一部港区)となると目される面白選挙区です。もともとは自民党きっての政策通・与謝野馨さんを選出した、日本の中枢の割に富裕層と公営住宅に囲まれ液状化現象もかくやと言うほど揺れ動く選挙民に翻弄される選挙のプロ泣かせの都市型選挙区であります。何より、住民がまばらに住んでいる上に、京浜東北線や南北線では大量の埼玉県民が、千代田線では大勢の足立区民が、つくばエクスプレスでは千葉県民や茨城県民がやってくることで昼間と夜の人口が20倍違うという特性が選挙戦をややこしくしています。ガチの千代田区民はどこに住んでるの。

 ちょっと前は都民ファーストが小池旋風で推した俺たちの石川雅己さんが千代田区長だったものの、例のタワマン事業協力者住戸問題で嫌疑をかけられ百条委員会マターに。追って就任した千代田区長・樋口「警視総監の息子」高顕さんを推すにあたり、自民党都連がこれへの支持を巡ってドン・内田茂さんの女婿内田直之さんが謀反。大分裂するぐらい地盤が緩いのも記憶に新しいことです。内田直之さん、どのツラ下げて自民党公認で都議選に出馬しているの?

 そんな小池百合子さん介入の地である東京1区では、民主党代表としては存在感の極めて薄かった海江田万里さんが出馬し、よりによって与謝野馨さん引退後の基盤を引き継いだ山田美樹さんに2012年衆院選で負けて比例復活するという屈辱を味わいました。次の2017年選挙では小選挙区当選して雪辱を果たしましたが、ここに山田美樹国替えからの小池百合子降臨でもあろうものなら、比例復活もままならず海江田万里さんは吹き飛ぶこと必至でしょう。年齢を考えてもそのまま後進に道を譲って引退もちらつく展開になっています。

◆練馬区民のための練馬区の選挙区・東京9区

 東京23区内で唯一近郊型(都市と農村の特性両方を持つ)選挙区という練馬区一部が区域の東京9区。次々回衆議院選挙10増10減後も練馬区であり続ける、練馬区民による練馬区民のための練馬区の選挙区です。練馬区には約74万人が住んでいて、都内随一のキャベツ、トマトを産出して地域付加価値に寄与しています。古来、自民党公認でガッツ石松が立候補してしまったという黒歴史が練馬区民の脳裏に刻まれておるのがトリビアです。

 なにぶん今回は派手に事件を起こした元自民党・菅原一秀さんが前職として無所属出馬を予定しているらしく、ここに前回参議院選挙東京選挙区では2万8000票あまり足りなくて落選した立憲・山岸一生さんが出馬を予定して、もう何だか勝ったような雰囲気で浮かれているというムカつく選挙区に小池百合子さん降臨でゴチャゴチャになる展開が期待されます。

 いやー、立憲・山岸一生さん、もうこれは楽勝だろと思ってたところに隕石落下のように小池百合子さんが来てトリプルスコアで負けて惜敗率下がって比例復活も大変という図式になったりすると面白いんですけどね。菅原一秀さんは仮に出てもたいした票は取らなさそうなので、東京比例票のことを考えると小池百合子出馬効果がもっとも高くなるのは東京9区と見られます。小池百合子さんが出るだけで議席1個だけでなく東京都比例の椅子も2つ3つもらえるという美味しい展開に。

◆豊島区の過半と練馬区、新宿区、中野区の一部を寄せ集め・東京10区

 俺たちの女帝・小池百合子が小泉郵政解散で寝返った小林興起さんへの「刺客」として国替えして以来の聖地となっている東京10区。豊島区の過半に練馬区、新宿区、中野区のあまりを寄せ集めた、比較的左翼・革新勢力が強いはずの地盤です。次々回10増10減ではほぼ練馬区で再編されるか、練馬区と中野区の面白プレイスが合体した選挙区になるかが注目される選挙区であります。

 もしも小林興起さんへの刺客に杉本彩さんが起用されていたら、いまごろ東京都知事は杉本彩さんになっていたかもしれないわけで、それを考えると運命というものは怖ろしいと思わずにはいられません。都知事選出馬で補欠選挙に勝利したのは、みんな大好き若狭勝さん。その後、「希望の党」の人身御供で夜空に輝く星となり、代わりに自民党比例区から転身した鈴木隼人さんが勝って2選という流れです。

 3選を狙う鈴木隼人さんは経産省出身の官僚派ということを考えると本来なら地盤固めのためにも温存を考えたいところ、小池百合子領ど真ん中であることも考えると鈴木さんを国替えで9区かどっかに移ってもらい、どうせ10増10減でゴチャゴチャになるから我慢してよという流れになるのでしょうか。東京も次の次は25選挙区から30選挙区に、さらにその次はさらに3議席ぐらい増えて33議席になって区割りし直される運命にありますので、どこから出ても勝手に国替えになってしまうんですよ。地盤とか気にしなくていいんじゃないですかね、しらないけど。

 ちなみに小池百合子さんの都知事支持率は、東京都全域で練馬区がもっとも高く80%台半ば、次いで豊島区も8割ちょいになっています。ただ、そんな小池さんをかつて「大年増の厚化粧」と批判した石原慎太郎さんも都知事時代に90%近い空前の知事支持率を出したのも豊島区や練馬区なので、単に長いものに巻かれたいだけという噂もあります。

■どこから出てもおそらく小池百合子圧勝

 このように、おそらく東京都選挙区ではどこで出てもおそらく小池百合子圧勝で、これだけ都政を滅茶苦茶にしていたとしても人気があるとはこういうことだという選挙の侘び寂びを感じさせる事例になっているのですが、やはり自民党総裁にでもなって、比例リストに入らず小選挙区一本で「不退転の覚悟で国政復帰するのよ、オホホホ」とか言われると東京都民はコロッとやられるのは間違いありません。怖しい。ああ怖しい。何より、小選挙区で絶対勝つので地方で応援演説やりまくれば、自民党はかなりの負けを現段階で予測しているところを一気にひっくり返せる算段になります。

 何より、次の次の選挙では10増10減で東京選挙区は25区から30区に、地方は10減と大幅な地殻変動があるだけでなく、さらに次の国勢調査がいまの人口推計のままでいけばさらに8増8減から13増13減まであり得るという、人口集中の都市型選挙と同時に地方の過疎化が進んでしまうことになります。自民党に限らず、都市型選挙、ネット選挙への戦術組み換えは必須であるところ、いままでのテレビ主導の選挙対策では駄目になっていくことは間違いありません。ネット選挙全盛の時代が来るとも言われますが、これからの都市型選挙はむしろ街頭演説や商店街練り歩きといった定番に加えて選挙期間以外にどれだけ選挙民にアピールできたかが勝負になってくるでしょう。

 さらに、東京、愛知、福岡と経済的に成功した都市部と、大阪(近畿)、宮城、広島と地盤沈下が覆い隠せない都市部とで優劣がこれからはっきりする状況で、どのようにして日本の社会、経済を切り盛りしていくのかが非常に強く問われる時代がやってきます。そういう新しい状況に対応するためのリーダーとして菅義偉が相応しいのか小池百合子なのかという、いま私たち日本人の目の前にとんでもなく重大な罰ゲーム選択が待ち構えていることは覚悟しておくべきでしょう。

■風を読み、人気を呼び、根無し草なのに上昇気流に乗り続ける

 もちろん、小池百合子さんというのは「孤独な女帝」なのであり、派閥を持てず、資金的にもたいしたことがありません。ただひたすらに風を読み、人気を呼び、根無し草なのに上昇気流に乗り続けることで、今回の決断でついに女性総理の座に手が届くかもしれないというチャレンジになります。小池百合子さんを近くで見ていると、権勢をふるう女帝としての側面よりも、五穀豊穣のために天気や空気を操る巫女のような振る舞いが多いようにすら思うのです。それだけ、派閥を作ったり組織を意識して番頭を置き、政治には必要なお金を適切に集めたり配ったりする技法にはまったく欠けている政治家が小池百合子なのだとも言えます。

 他方、先日ついに日本最高級の報道機関である東京スポーツが、小池百合子さんの有力なスポンサーの一人と目されていた太陽光発電会社「テクノシステム」の詐欺事件で舞台となったSBIグループ子会社の問題を報じてしまいました。東スポ報道によると「『特捜部は生田容疑者側から献金を受けていた複数の政治家へのカネの流れを把握。週刊文春が報じた小池氏の“金庫番”の男性がテクノ社の最高顧問のような役割をしていた件にも関心を寄せている』と捜査関係者は話している」とのことなので、伝言ゲームが高度過ぎて訳が分かりませんが凄いことになりそうな気もします。小泉純一郎・進次郎さんの話だけじゃなかったんですね。

巨額詐欺事件に絡みSBI子会社に業務停止命令 小池百合子都知事にも波及
https://www.tokyo-sports.co.jp/entame/news/3273084/

 こうなると、菅義偉さんとしては感染症でも経済対策でもいいから理由をつけて是が非でも9月末の総裁選を後ろに延ばし、自分の顔で解散か任期満了に伴う衆議院選挙に持ち込まないといけませんので、さてどうするのかといったところでしょう。

 そうこうしているうちに、小池百合子さんが無事過労から退院してこられましたが、都議会選挙にはあまり顔を出さない方針であると堂々と言いやがりました。小池チルドレンであったはずの都民ファースト、けっこう大変なことになるかもしれませんが、彼女にとってはお荷物なんだよ、ということでしょうか。自民党総裁を狙うのであれば。

(山本 一郎)

関連記事(外部サイト)