《韓国女子バレー》イジメ双子姉妹との人間関係トラブル、日本での辛い生活…韓国の“絶対的エース”が語った「日本の恩人」

《韓国女子バレー》イジメ双子姉妹との人間関係トラブル、日本での辛い生活…韓国の“絶対的エース”が語った「日本の恩人」

キム・ヨンギョン選手 ©getty

 7月31日、因縁の日韓女子バレー戦は、フルセットの末、韓国が勝利した。

 先にマッチポイントをとったのは日本だったが、韓国が追い上げた。大接戦の末の勝利に、韓国では歓喜の声があふれている。

 女子バレーボールのオリンピック対決は、2012年のロンドン五輪、16年のリオ五輪に続いて3回目。ロンドン五輪では3位決定戦で顔を合わせ、日本が3-0で銅メダルを手にしたが、リオでは、韓国が3-1で勝ち、共に5位に終わっていた。

 1勝2敗で臨んだ日本と、2勝1敗だが強豪セルビア戦を控えている韓国にとって、この一戦は共に負けられない試合だった。

「やはり、バレーはキム・ヨンギョン」(キム・ヨンギョンのInstagramより)

 攻守ともに八面六臂の活躍を見せたキム・ヨンギョン。ひとりで30点という得点をたたき出し、フルセットの土壇場でも選手を激励し、見事な守りも見せてチームを勝利に導いた。

■日本のプロチームに2年在籍

 1988年生まれの33歳。サッカー、野球に続いて、韓国では、“絶対エース”キム・ヨンギョン選手最後の五輪といわれる女子バレーにことのほか注目が集まっていた。

「100年に一度の逸材」、「女子バレー界のメッシ」と数々の異名をとり、英国BBCが「世界最高というのはこういう選手だ」と表したグローバルスター。先に始めていた姉の練習を手伝ったことがきっかけとなりバレーボールの道に入り、中学生時代は背が低いほうで――といっても170cmはあったというが――、控えの選手として攻撃よりも守備の練習をすることが多かったそうで、これがその後のバレー人生に大きく役に立ったと語っていた(『Korea.net』)。

 韓日電算女子高校時代に背が20cmほど伸び、実力もめきめきと上がり、アジア、世界ユース選手権に続けて出場。高校卒業後はドラフトでプレミアリーグ、現在の「興国生命ピンクスパダーズ」(以下、興国ピンクスパイダーズ)入りした。

 日本との縁も深い。2009年、日本のプロチーム「JTマーヴェラス」に移籍した。韓国人の女子バレーボール選手としては初めての海外移籍。当時の韓国は世代交代など女子バレーボール界不振の時代に入っていて、世界ランキングでも10位圏内から外れていた(日本の当時の世界ランキングは7位)。

■「ともかく実力を見せるほかないと思いました」

 キム選手は、「最初はしんどかった。日本のバレーの実力が韓国よりも上だという考えから私を認められないような雰囲気がありました。(日本の)選手も少し私を見下しているような気もして、ともかく、実力を見せるほかないと思いました(中略)それでもプレイが生きてくると選手たちから認めてもらえるようになって少しずつ寂しさなども忘れていったように思います」(日曜新聞、2012年8月19日)と当時の心境を語っていたが、こうも振り返っている。

「JTマーヴェラスは今までのバレーボール人生の中でいちばん成長させてくれたチーム。この2年間がなかったらヨーロッパでの活躍もなかった」(『Number』、2012年7月6日)

 当時のJTマーヴェラスには、2012年のロンドンオリンピックで日本代表を銅メダルに導いたスター、セッターの竹下佳江選手が在籍していた。キム選手は「世界的に有名なセッターのトスを打てる喜び」を語り、「特にテンさん(竹下)から学ぶことが多かった」(同前)と回想している。この竹下と共にチーム開幕25連勝の立役者となり、2010-11シーズンではMVPを獲得した。

 2011年にはトルコの最強チーム「フェネルバフチェ」に移籍。翌年チームは欧州チャンピオンとなり、キム選手はアジア人としては初めてMVPを獲得。2017年には上海国華人寿チームに移籍し、翌年には再びトルコの「エジザージュバシュ」に移籍するなど海外で活躍した。

 韓国に戻ったのは2020年。11年ぶりに古巣「興国ピンクスパイダーズ」に復帰した。新型コロナの影響と東京五輪に向けたコンディション作りのためといわれた。キム選手の復帰で、「興国ピンクスパイダーズ」は“無敵のチーム”と持て囃されたが、好事魔多し。

 同チームのイ・ダヨン選手が先輩からイジメを受けていると匂わせるコメントを自身のインスタグラムに投稿し、すぐにこの先輩はキム選手といわれ、ふたりの不和説が浮上。当時、イ・ダヨン選手は双子の姉イ・ジェヨン選手とともに韓国ではスター的な存在で、スターどうしの不和説に韓国女子バレー界は騒然となった。

 が、ほどなく、キム選手はクールに認め、「自分たちはプロなので話し合う」と語り、収拾するかに見えたのだが、この問題に端を発し、イ姉妹の学生時代のイジメ問題が発覚。これはサッカーなどの他のスポーツ界、芸能界を巻き込む大騒動となった。

 イ姉妹の10年前のチームメイト4人はイ・ダヨン選手のインスタグラムの投稿を見て告発を決意したことを明らかにし、イ姉妹から暴力やイジメを受けたことを21個のリストにして訴えた。

■セッターのイ・ダヨン選手が抜けたことは痛手だったが……

 イ姉妹はこれを認めて謝罪したが、このイジメ問題により、所属していた「興国ピンクスパイダーズ」はイ姉妹ふたりの試合出場を「無期停止」とし、韓国バレーボール協会は国家代表権を無期剥奪した。これによりイ姉妹の東京五輪出場も消えた。韓国紙運動部の記者が言う。

「当初、ふたりが抜けた穴は大きいといわれ、特に相手の動きを読んだトス回しができるセッターとして定評のあったイ・ダヨン選手が抜けたことは痛いと言われていました。

 5月から6月にかけて行われたネーションズリーグ(VNL)では16カ国中15位という大不振。やはり戦力不足が囁かれましたが、東京五輪ではキム・ヒジンなどのベテランも復帰して、チームの雰囲気もいい。メダルにも期待がかかっています」

 ちなみに、イ姉妹は、現在完全なFA(フリーエージェント)の身分となっている。所属していた「興国ピンクスパイダーズ」はイ姉妹を選手として登録しその保有権を維持しようとしたが、抗議が殺到し断念。イ・ダヨン選手はギリシアのチームと接触しているといわれている。

 韓国は日韓戦での勝利によりベスト8進出が決まり、メダルに期待がかかっている。 

(菅野 朋子)

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