《津久井やまゆり園》「精神鑑定」で浮かび上がった植松聖の本性…“やんちゃなお調子者”が“戦後最多の殺人犯”に変貌したワケ

相模原の津久井やまゆり園殺傷事件 植松聖死刑囚は“やんちゃなお調子者”と精神科医

記事まとめ

  • 2016年の相模原障害者殺傷事件は死者19名・重軽傷者26名を出した戦後最大の殺人事件だ
  • 植松聖死刑囚は明るく社交的で目立ちたがり屋、精神科医は"やんちゃなお調子者"と評す
  • 第8回の被告人質問では、イルミナティカードについて被告人の弁護士が質問をした

《津久井やまゆり園》「精神鑑定」で浮かび上がった植松聖の本性…“やんちゃなお調子者”が“戦後最多の殺人犯”に変貌したワケ

《津久井やまゆり園》「精神鑑定」で浮かび上がった植松聖の本性…“やんちゃなお調子者”が“戦後最多の殺人犯”に変貌したワケ

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 2016年7月26日に発生した相模原障害者殺傷事件は死者19名・重軽傷者26名を出した戦後最大の殺人事件だ。犯人の植松聖は事件後自首し、2020年3月に死刑判決が確定。裁判中に動機の一つとして語った「社会に貢献するため」という言葉は世間を震撼させた。

 ここでは、自身も津久井やまゆり園に勤務していた経験がある専修大学の西角純志講師の著書、『 元職員による徹底検証 相模原障害者殺傷事件 裁判の記録・被告との対話・関係者の証言 』(明石書店)より一部を抜粋。精神鑑定を通じて見えてきた人物像について紹介する。(全2回の1回目/ 後編 を読む)

◆◆◆

■精神鑑定から浮かび上がった人物像 

 2016年の事件発生当初、公開された数々の被告写真や映像を見ると、とても正常な人間が起こした事件とは思えない。被告は、事件発生以前からツイッターなどで刺青やクラブでの写真などを公開していた。「世界が平和になりますように」という文言は、最後の投稿である。現在ではアカウントは削除されているが、いわゆる「ヤンキー文化」のなかで育ったのだ。友人の証言によれば、当時、オーシマグループと相模湖グループという大麻を吸うグループがあったという。植松本人は相模湖グループであったが、クラブで会えば互いに話もするし、よく遊んでいたという。ツイッターやフェイスブック、インスタグラムなどを駆使し、世界情勢などの情報を摂取するとともに、社会に対して発信している。裁判では紹介されなかったが、「ドレの深夜食堂」で知られる動画配信サイト「アフリカTV」もその1つであった。ここでは、公判の鑑定人尋問から浮かび上がった人物像について紹介することにしたい。

■素直で手がかからない子

 植松聖は、父が小学校図工教師、母が漫画家という家庭環境で育った。兄弟はいない。出生時、新生児黄疸で、血液交換治療をしたが特に後遺症はなく、発育発達に遅れはなかった。素直で手がかからない子だった。小学生の頃は勉強は中の下。明るく人なつっこく、目立ちたがり屋でもあった。クラスに自閉症の子がいたが、普通に接していた。

 中学生の頃も勉強は中の下。バスケ部に所属。中3から友人に誘われ飲酒や喫煙、万引きを時々していた。いわゆる「不良」と呼ばれる友人との交友があった。思春期には親に反抗して物を壊したり、壁を殴って穴を空けることもあったり、教師に反発して教室の窓ガラスを割ることもあった。いわゆる、優等生キャラではなく、リーダー的な存在でもない。問題行動も見られたが、明らかに反社会的な逸脱した行動はなかったという。明るく社交的で目立ちたがり屋である。他方で、人の影響を受けやすく、場当たり的で、キレやすい性格の持ち主である。精神科医は「やんちゃなお調子者」だと評している。

■長続きせず様々な職場を転々とする

 高校は、面白そうだという理由で調理科に進学。勉強は中の下くらい。バスケ部に所属した。高校2年生の時にバスケ部員を殴り1か月停学になったが、夏休みと被っており特段影響はなかった。女性と交際したり、バイトをしたり、バイクを乗り回したり、学生生活を楽しんでいた。

 父が小学校の先生だったこともあり、「先生になりたい」と言い、AO入試で大学では教育学部に進んだ。しかし勉強には熱心に励まず、飲み会中心のサークルに所属していた。大学2年生のころ、脱法ハーブに手を付ける。週数回吸引。大学3年頃、刺青を入れた。他方で学童保育のバイトや障害者施設で教育実習をした。しかし採用試験は受けなかった。自意識過剰でナルシストで、他人の意見を聞かないといった面が見られ、その一方で気遣いができる人なのではないか、という精神鑑定での評価もあった。

■「脳が壊れた」ので大麻を吸うように

 卒業後は、「楽そう」と考え運送会社に就職。自販機に飲み物を補充する仕事をしたが、わずか8か月で退職している。彫師をめざして師匠の許可なく勝手に客をとったこともあったという。当時は違法ではなかった脱法ハーブを使い、後に「脳が壊れた」ので大麻を吸うようになったという。社会人になってからは、街でけんかをすることもあった。車の運転で暴走したり、赤信号を無視したり交通違反で捕まることもあった。この頃から金儲けの意識に目覚め、「出会い系」で知り合った女性をアダルトビデオに出演させようとしたことがあった。

 その後は知人から「楽だよ」と聞き、やまゆり園に2012年、就職した。当初は「障害者はかわいい」と話していたが、働く意義を見失いはじめ「給料のために働いている」と思うようになった。一人暮らしを始め、時間に余裕ができたことと、親の目がなかったこともあり、クラブに行ったり、出会い系アプリで出会った女性と交際したりするなどした。大麻を使うようになったのは23歳の頃である。一方で「自宅に盗聴器をしかけられている」という被害妄想的な発言もするようになった。この頃から職場での仕事が雑になった。私生活でも信号無視をしたり、殴り合いのけんかをしたりする。イルミナティカードにはまった他、美容整形をしたり、髪を金髪に染めたりしたのだ。

■イルミナティカードの暗示

 衆院議長宛ての手紙の衝撃的な内容については知られているが、イルミナティカードの複写が入っていたことはあまり知られていない。イルミナティは、フリーメイソン系の団体である。ドイツのバイエルンで18世紀後半に結成され、ごく短期間活動をした。近年では、ダン・ブラウンの『ダ・ヴィンチ・コード』や『天使と悪魔』でも話題になった。イルミナティカードは、1982年に発売されたスティーブ・ジャクソン・ゲームズ社が開発したものである。このゲームのカードに描かれたイラストが、後の重大事件を予言しているとして「都市伝説」で話題になっている。被告人質問では、13013という数字が出たが、圧縮するとBOB、すなわち、「伝説の指導者」であるボブを意味する。カードと事件との関係はあるのだろうか、それともないのであろうか。第8回の被告人質問では、この点について被告人の弁護士が質問をした。

被告人弁護士 イルミナティカードはどうやってみつけましたか?

被告 ネットやテレビ番組で見ました。

―どんなことが書かれていましたか?

被告 なるほどと思うような真実ばかり書かれています。例えば、コマーシャルに出ている俳優の足下には大金が置かれているとか、ケチャップは野菜だというふうに言っていました。大切な要求をするときには拳銃を突き付けたほうがいいと。

―他には?

■日本が今年滅びる

被告 日本が滅びると書いてありました。

―いつ滅びると?

被告 今年滅びると思います。

―どういう形で?

被告 首都直下型地震など、いろんな問題が起きると思います。

―ここは横浜ですが、何か横浜については書いてありましたか?

被告 横浜には原子爆弾が落ちる、と。

―それはいつですか?

被告 2020年の6月7日か9月7日です。

―それはイルミナティカードに書いてあったのですか?

被告 それは『闇金ウシジマくん』に書いてありました。

―実際に起きたことでイルミナティカードに書いてあったことはありますか?

被告 9.11、ビットコイン、トランプ大統領、世界情勢のことが書かれていました。

■社会に貢献するために重度障害者を殺した

―他には?

被告 3.11とか。

―イルミナティカードに植松さんのことはありましたか?

被告 ありません。

―あなたが書いたノートに5つの数字が書いてありましたが、覚えていますか?

被告 はい、13013です。

―それはどういう意味ですか?

被告 わかりませんが、聖なる数字と伺っています。

―その数字は何を示すのですか?

被告 わかりません。

―イルミナティカードに書かれてあることで、あなたは何を思いましたか?

被告 日本はヤバイと思いました。

―それを誰かに話しましたか?

被告 周りの友人です。

―日本が滅びたら大変ですか?

被告 はい。

―そのために何かしようとしましたか?

被告 社会に貢献しようと思いました。

―それは今回の事件とつながりがあるのですか?

被告 はい。

―社会に貢献するために重度障害者を殺したと。

被告 はい。

■人生がうまくいっている人はあまり興味なかったかも

―先ほど、友人に話したと言いましたね。友人の反応は?

被告 信じてくれる方と、信じてくれない方がいました。

―その割合は?

被告 人生がうまくいっている人はあまり興味なかったかもしれません。

―うまくいっているとは?

被告 充実している人です。

―あなたが思う充実とは?

被告 社会的地位や金銭的な面でしっかり働いている方です。

―お金持ちの方とか人生がうまくいっているということですか?

被告 はい、そうです。

■自分が世の中を変える

―イルミナティカードについて友達に話をしたとき、友達は何か言っていましたか?

被告 「すごいね、そういうのがあるんだね」と話していました。

―友達には自分のことをどんな言葉で表しましたか?

被告 「伝説の指導者」と、ネットには書いてあったのでそう言いました。

―「伝説の指導者」にあなたがなれるかもしれないと。

被告 そうです。

―他には?

被告 ありません。

―自分が世の中を変える話は友達にしましたか?

被告 したと思います。

―具体的には?

被告 重度障害者を殺すと話しました。

―何人ぐらいに話しましたか?

被告 50人ぐらいです。

―賛成する人、反対する人はいましたか?

被告 はい。

―その割合は?

被告 半分以上の方に同意してもらったと思います。

―どういう台詞で同意したんですか? 

被告 私はよく冗談を言うのですが、一番笑いがとれたと思います。

―それはあなたが冗談を言っていると思ったのではないですか?

被告 それが真実だと思ってくれたんだと思います。

■「悪いけど、悪いことじゃないね」

―例えば、友達はどんなことを言っていましたか?

被告 「悪いけど、悪いことじゃないね」と言ってました。

―「日本が滅びる」という話は、措置入院の前からしていたのですか?

被告 前からだったと思います。

―その後もしていたのですか。

被告 はい。

―どっちが多いですか?

被告 後の方が多かったと思います。

―「社会を変える」何か別な表現を使ったことはありますか?

被告 革命を起こす、と。

―革命を起こすこと自体について友達は何か言っていましたか。

被告 驚いていました。

―革命が成功すると思いましたか。

被告 わかりません。

(第8回公判 被告人質問より抜粋)

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(西角 純志)

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