寝坊、停車駅スルーから、三角関係のもつれで殺人事件まで…「撮り鉄」だけじゃない鉄道マンたちの「やらかし事件簿」

寝坊、停車駅スルーから、三角関係のもつれで殺人事件まで…「撮り鉄」だけじゃない鉄道マンたちの「やらかし事件簿」

写真はイメージです ©iStock.com

 一部の「撮り鉄」と呼ばれる鉄道ファンのトラブルが、ここ数年、ネット動画で拡散されることが多くなっている。つい最近も、「江ノ電」の撮影が目当ての撮り鉄と、自転車に乗る外国人とのトラブルの動画が話題になったばかりだ。

 実は歴史を紐解いてみれば、鉄道関連のトラブルは、ファンや乗客由来のものにとどまらない。ふりかえってみると、鉄道マン自身もライトなものからヘビーなものまで、多くのトラブルに巻き込まれている。

■鉄道マンのやらかしといえば「寝坊」

 例えば「またか」と年に数回聞かれる鉄道マンのやらかしがある。寝坊である。駅員の寝坊が原因で、始業時間になっても駅があかず、数人が始発列車に間に合わないというトラブルだ。

 2020年11月には、JR鹿児島線基山駅の駅員が寝坊し、乗客4人が始発列車に乗車できなかった。またJR両毛線の前橋大島駅の駅員が寝坊し、乗客6人が乗車できなかったことも報道された。乗車できない人数の多かったトラブルでは、2014年東京メトロ丸ノ内線の南阿佐ケ谷駅で駅員が寝坊し、34人が始発列車に乗れなかったこともがあった。乗れない人だけでなく、駅に降りた2人が一時、駅から出られなくなったそうだ。

 夜は終電後まで働き、朝は始発前から出勤という過酷な鉄道マンたち。「疲れていたんだろう」と同情せずにはいられない。寝坊は誰しも経験のあることだけに厳しい批判はなかなかしづらいが、始発電車に乗り遅れた人はさぞ困ったことだろう。

■鉄道マン御用達、起き上がる目覚まし装置

 ところで朝、絶対に起きなければならない駅員を起こすのは、一風変わった目覚まし装置である。目覚まし時計のように音が鳴るものではない。肩の下に空気袋を敷いて寝ると、セットした時間に空気が入ることで袋が膨らみ、体が自動的に起き上がるというものだ。興味深い。

 これを体験できるのも駅員だけの特権、と思いきや、JR東日本が運営するECサイト「JRE MALL」で販売しているようである。その名も定刻起床装置個人簡易型[SAC-5A型]、価格は105,000円(税込)。高額だが、「どうしても起きられない」という人は試してみる価値はありそうだ。

■新幹線運転中にまさかの腹痛! トイレ直行の運転士

 2021年5月にも、思わず同情してしまうトラブルがあった。東海道新幹線の運転士が腹痛を覚え、運転席を離れてトイレに行ったというのだ。その間、運転資格のない車掌を呼び、時速150キロで走る新幹線の運転を任せていたという。

 列車は東京発新大阪行きのひかり633号。乗客160人を乗せ、熱海〜三島駅間を走行中だった。幸い、運行に支障は出なかった。JR東海の規定では、運転士が体調を崩した際には、運行を管理する指令所に連絡することになっており、運転資格のある車掌がいる場合は運転を交代できるそうだ。

 時速150キロという猛スピードの運転を、無資格の車掌に任せていたと考えると恐ろしいことである。しかし、激しい腹痛は一刻を争う不測の事態だ。この一件に関しては「人間だもの」と肩を抱いて慰めたくもなるが、人命にかかわる話だけに再発防止に努めてほしい。

■日本一の秘境駅を誤って通過、乗客2人は取り残される

 やらかし事件のなかでも、思わず鉄道ファンの胸を熱くさせた出来事もある。

 2016年1月、JR室蘭線の長万部発東室蘭行き普通列車が、途中駅の小幌に停車せず、通過してしまったというのだ。

 小幌駅は、周囲に人家などがなく、四方を山と海に囲まれた知る人ぞ知る秘境駅だ。鉄道以外では到達できない駅として、秘境駅訪問家・牛山隆信氏による「秘境駅ランキング」では1位に君臨する。「やらかし事件簿の舞台に、あの小幌駅が名を連ねるとは…!」と、どこかそそられる鉄道ファンは筆者だけではないはずだ。

 小幌駅を通過した際、乗車予定だった2人がホームに取り残された。この2人も住人ではなく、きっと鉄道ファンなのだろう。秘境駅に取り残され、さぞ心細かったに違いない。この約1時間後に特急「北斗」が臨時停車し、2人を乗せたようである。そのうちの1人が撮った動画を見ると、すでにあたりは暗く、雪がちらついていた。

 停車予定の駅を通過してしまうのは、あってはならないトラブルだ。しかし、「小幌に北斗が停まる日が来るなんて…」と、違う意味で鉄道ファンが興味を寄せるトラブルだった。

■欲求には勝てない?酒とタバコでやらかした鉄道マン

 嗜好品もときにトラブルのもとになる。2021年8月、走行中の列車内で名古屋鉄道の車掌が加熱式たばこを吸っていたことが発覚した。報道によれば、名古屋本線の国府〜本宿駅間を走行していた快速特急の車掌が、列車最後尾にある乗務員室で、加熱式たばこを約2分間吸ったという。列車は8両編成で、約70人の乗客が乗っていた。車掌は2月ごろから複数回車内で吸ったことを認めており「我慢できなかった。加熱式なら煙やにおいが残らないと思った」と話しているという。

 タバコだけではなく、酒のトラブルもある。2012年6月、愛知環状鉄道の運転士が、勤務の前に行うアルコール検査を車掌に受けさせ、検査から逃れていたというのだ。運転士は他の乗務員らと前日深夜まで飲酒をし、勤務前の検査を逃れ、通常業務についたという。幸い事故は起きなかったが、万が一の事態につながっていたら…とヒヤッとする。

 酒、たばこ関連のトラブルは世間に大きなインパクトを残す。「たばこの名鉄」「酒の愛環」などと鉄道会社自体に良からぬレッテルが貼られ、鉄道ファンにいじられ続ける運命となっては最悪だ。

■三角関係のもつれで…京急社員による殺人事件

 2020年7月、鉄道会社社員による凄惨な事件が起きた。京急電鉄の運転士だった男が、同僚である運転士をめった刺しにして殺害したのだ。一体なにが起きたのか。

 2人の関係性は、とある女性の元カレと今カレ。その女性も京急の車掌で、社内恋愛の三角関係だったようだ。加害者は女性から別れを告げられ、その後彼女の部屋を訪れる。郵便受けの隙間から部屋を覗くと、被害者となった男と情事に及んでいるところを目撃。激昂し、刃物で男の心臓を貫いたというなんとも恐ろしい事件だ。

 恋する気持ち、その情動は快特列車のように止められなかったとでもいうのか。鉄道マンやらかし事件簿の中でも、もっとも恐ろしい事件のひとつに数えられるだろう。

 私たちの生活を便利に安全に運んでくれる鉄道。鉄道マンは人間、誰しも失敗はある。しかしながら乗客である私たちからすれば、安全に運行されることをただ願うばかりだ。

(東 香名子)

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