加害者男性が明かす“私が盗撮に耽溺した理由”…「通勤時もプライベートも盗撮できるチャンスがあればやる」

加害者男性が明かす“私が盗撮に耽溺した理由”…「通勤時もプライベートも盗撮できるチャンスがあればやる」

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 検挙件数がこの10年で倍増している「盗撮」は、やめたくてもやめられない「依存症」の一つだ。果たして、男たちはなぜ盗撮を始め、やめたくてもやめられなくなってしまうほど、その行為に耽溺してしまうのだろうか。

 ここでは、精神保健福祉士・社会福祉士としてさまざまな依存症治療に取り組む斉藤章佳氏の著書『 盗撮をやめられない男たち 』(扶桑社)の一部を抜粋。加害者男性の生の声を紹介する。(全2回の1回目/ 後編 を読む)

※登場する人物や事例は、本人が特定できないように内容を一部改変しています

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■通勤時もプライベートもチャンスがあれば盗撮

斉藤 盗撮行為は通勤時に行っていたのですか?

H 通勤時もプライベートで移動するときもやっていました。盗撮できるチャンスがあればやるといった感じです。例えば電車が混んでいるときは、相手から死角になって見えない角度を狙って撮ったりしていました。そうしてどんどん盗撮枚数が増えていった感じです。

斉藤 盗撮に使っていたのはやはりスマホですか?

H はい、最初は自分のAndroidのスマホを使っていたのですが、会社から支給されたiPhone7のほうがシャッター音が小さく、カメラの性能も使い勝手が良かったため、盗撮するときはもっぱらiPhoneを使うようになりました。

■コレクションの感覚で盗撮写真を撮りためていた

斉藤 当時、平均して1か月に何枚くらい撮っていたか覚えていますか?

H う〜ん……仮に一日平均20枚撮っていたとして、1か月で約600枚ですね。なので、5年間で数千枚は撮りためた計算になります。僕、もともと収集癖があってジャンパーやボールペン、ペットボトルのキャップについているコレクションや、アニメのフィギュアなどを集めていたので、それと同じ感覚で盗撮写真を撮りためていました。まさに“ため込み”です。

斉藤 すごい回数ですね。でも、スマホに何千枚も写真をため込んでいると、なかには見ていない写真も出てくるのではないですか?

H はい、盗撮していた期間の後半は撮るだけでまったく見返していないものも多数ありました。だからといって、一括で消去してしまうのはもったいなくて。消去する前に一回は確認しておきたいという変な気持ちもあって、どんどんたまっていきました。

■お酒がトリガーになっていた

斉藤 盗撮した大量の写真は、自己使用(マスターベーション)していましたか?

H はい。家では家族がいてできないので、通勤中に喫茶店のトイレに入ってしていました。思い返せば、盗撮を始めてからも盗撮モノのアダルトコンテンツでマスターベーションすることはよくありましたね。特に出張に行ったときは、写真週刊誌の女性アナウンサーや女性アスリートのパンチラショットなどを見て興奮することがありました。また、ビジネスホテルには有料のペイチャンネルでアダルトビデオを見られるところが多いので、そこで盗撮モノを見ていましたね。

斉藤 Hさんはどんなときに盗撮したくなっていましたか?

H 自分が性的に惹かれる女性が現れたときや、お酒を飲んで気が大きくなったときです。

斉藤 お酒がトリガー(引き金)になっていたんですね。

H 今は、外では絶対、お酒を飲まないようにして、夜、自宅で飲む程度にしています。

 それと、以前は仕事でイライラすることがあったときやヒマなときも盗撮したくなっていました。特に、ぽっかり空いた時間が一番危ないんですよね。日曜はヒマで時間を持て余していたので、お酒を飲んで気分を高揚させてから電車に乗って、下着の見えそうな女性の前に座るという行動を繰り返していました。今はクリニックでスケジュール管理表をつけて、ヒマな時間がないようにタイムマネジメントしています。

■「お前、今撮っていただろ」と腕をつかまれて

斉藤 Hさんは盗撮が見つかって逮捕され、当クリニックにつながりましたよね。見つかったときの状況を詳しく教えてください。

H いつものように電車内で盗撮をしていたところ、ほかの男性客に「お前、今撮っていただろ」と腕をつかまれたんです。最初は「していない」と否定しましたが、スマホを取り上げられて画像を確認され、駅員室に連れていかれました。そこから警察で事情聴取され、逮捕されました。もう俺、人生終わったな、と一度は絶望しました。

斉藤 その後はどんな流れをたどったんですか?

H 結局、そのときは厳重注意だけで勾留はされずに帰されました。被害者の女性は被害届を出していたようですが、処分保留、自宅待機といったかたちでした。最終的には起訴されず、弁護士を経由して示談金70万円を支払うことで終わりました。ただ、聞くところによると被害に遭った女性は「絶対に示談なんかしない」と言っていたのを、弁護士さんが示談で交渉してくれたようです。70万円というのは盗撮の示談金としては高額だとか。

斉藤 逮捕されて盗撮行為が発覚したとき、ご家族の反応はどうでしたか?

H 妻はもちろん怒り狂っていました。一報を聞いて自分ひとりでは抱えきれなかったのか、私の会社の上司に連絡をして、一緒に警察署まで迎えにきてくれました。娘が2人いるのですが、このことは彼女たちには今も知らせていません。会社は3か月休職した後、人事委員会にかけられたのですが、「長年お世話になった会社なので続けたい」旨を伝えたところ奇跡的に復職できました。この事件は上層部にしか知らされず、同期には知られていません。

■「相手には迷惑をかけていない」と思っていた

斉藤 その後、弁護士さんに紹介されて当クリニックに来られたのですよね。

H はい。警察や弁護士から「絶対に病気だから専門病院に行け」と強くすすめられて。最初はどこの病院に行ったらいいのかわからなかったのですが、ほかでかかりつけだった精神科で今回の事件を素直に話してみたところ、榎本クリニックを紹介していただきました。ここで専門の再発防止プログラムを受けて、自分の認知の歪みに気づきました。以前の自分は「撮った画像をネットに上げるわけでもなく自分で楽しんでいるだけだから、人には迷惑をかけてない。相手を傷つけているわけではないから何をしたっていい」と思い込んでいたのですが、そうではないことにはっきりと気づけました。

斉藤 あと、性犯罪被害者でもある写真家のにのみやさをりさんとの対話プログラムも大きなきっかけだとおっしゃっていましたよね。

H そうですね。被害者のことを考えられるようになったのは、にのみやさんがプログラムに来て対話をしてくださったおかげだと思ってます。それで、被害者女性のその後のことを考えられるようになりました。それまでは盗撮しても相手は気づいていないから大したことではないと思っていました。でも、被害者からすると、日常の安全が脅かされる恐怖があることを知ることができました。おひとりであそこまで大勢の加害者と対話して、ある意味闘えるのはすごいと思います。にのみやさんとの対話のおかげで性犯罪被害者の心境を知ることができて、盗撮は絶対にやってはいけないことだと心から思えるようになり、過去の自分の気持ちが劇的に変わりました。

■再発防止に取り組む

斉藤 今、Hさんは再発防止のためのプログラムに取り組んでいる最中ですよね。

H はい。今は、トリガーになるような性的な雑誌や動画は見ないようにしています。先ほども言いましたが、お酒もトリガーになるので外では飲まないようにし、家にいるときも妻が夜勤でいないときは禁酒しています。また、ヒマになってしまうのもいけないので、スケジュールをしっかりと組むようにしました。特に以前は日曜がヒマだと盗撮に出かけてしまっていたのを、今はペースはゆっくりですが一日8時間ほどかけてジョギングするようにしています。

斉藤 最初に盗撮をしたとき、ジョギングで前を走っている女性のお尻が目に入って撮ってしまったのがきっかけだと言ってましたが、今、目の前を女性が走っていたらどうしてるんですか?

H 基本的に自分の足元、斜め下45度だけを見て走るようにしています。それでも、もし女性が目の前を走っているのが目に入ってしまったら、二度見せずにコースを変えるか追い越すかしています。

斉藤 対処行動(コーピング)をあらかじめ自分で決めておくようにしたんですね。

■治療とつながり人生に前向きになれた

H 今は2年以上継続してクリニックに通って治療プログラムに参加することで、自分をいい意味で縛り、また盗撮をしないための習慣を身に着けています。でも、自分のことをどこか信用していない部分があるので、プログラムに参加しなくなって気を抜いたらまた元に戻る可能性が十分にあると思いながら、気を抜かないよう過ごしています。

斉藤 こういう言い方はどうかと思いますが、Hさんは結果的に逮捕されて当クリニックとつながれて良かったですよね。物事の見方や考え方、被害者や人生のあり方について、改めてじっくり向き合うことができたみたいですからね。

H そう思います。本当に運が良かったと思っています。もしあのとき捕まっていなかったら、「ツイてる」 「俺は大丈夫なんだ」というさらに重度の認知の歪みが形成されて盗撮行為を繰り返していたと思います。最初の逮捕で治療につながって盗撮行為を断つことができたのは幸運でした。

斉藤 何がいちばん変わりました?

H 治療プログラムを受けて変わったのは、マイナスの悪い気持ちにならない生活を心がけ、人生に前向きになれたことです。それまでは、あと数十年会社勤めをこなして家にお金を入れて、趣味も楽しみもなく適当に生きていればいいやと思っていました。でも、持病の手術を機に禁煙したこともあって、それまでは特になかった「やりたいこと」が思いつくようになりました。クリニックとつながれて本当によかったです。以前のように昼間から酒を飲んで盗撮していたころよりも、今の生活のほうが充実していて緊張感があります。

 もともと生来の衝動性の高さや、のめり込みやすい勉強熱心な性格もあり、かねてからの性癖だった「素人投稿雑誌」の再現を求めて盗撮に耽溺してしまったHさん。逮捕を機に当クリニックとつながり、再発防止プログラムで盗撮するヒマを持て余さないようなタイムマネジメントを心がけるように。すると、やりたいこともなく漫然と暮らしていた生活にハリが生まれ、人生にも前向きになれたと言います。彼に必要だったのは、問題行動に代わる生きがいや、やりがいだったようです。

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 学ぶことに貪欲なHさんには、これからも治療の柱の一つである「加害行為に責任を取る」という視点を忘れずに、盗撮を「やめ続ける」ことを実践していってほしいです。

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「盗撮さえしなければ本当にいい人なんです」妊娠中に夫が逮捕された妻が明かす“辛すぎる胸の内” へ続く

(斉藤 章佳)

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