神戸再開発から取り残された「さんプラザ」の真相 市の外郭団体は“4億5000万円の架空請求”に手を染めて…

神戸再開発から取り残された「さんプラザ」の真相 市の外郭団体は“4億5000万円の架空請求”に手を染めて…

神戸市役所 ©AFLO

「ここまでやるかね…」181枚の公文書から“衝撃の不正”が発覚 国をも欺いた卑劣な手口を暴く《神戸再開発の闇》 から続く

 神戸市の外郭団体、神戸サンセンタープラザ(以下「サン社」)が、さんプラザビルの高層階をめぐり、訴訟で対立する所有者を排除するため、元「地上げ屋」にその一部を売り渡した、同社が「所有者に対して保有する」と主張する債権「約929万円」――。

 だが、この「約929万円」は、阪神・淡路大震災で倒壊した、さんプラザ7〜10階の解体撤去工事が、公費負担によって行われたのにもかかわらず、サン社が、所有者にその工事費の支払いを要求していた、つまりは「4億5000万円」の“架空請求”から生み出された“架空債権”だった( #4参照 )。

 そして、驚くべきことに、サン社は今日に至るまでなお、訴訟相手の「大倉産業」( #1参照 )だけでなく、裁判所にまで、このありもしない“架空債権”を、「大倉産業に対し保有している」などと虚偽の主張を繰り返しているのだ。(集中連載最終回/ #5から続く )

■繰り返された“架空請求”

 サン社が、この“架空債権”を捏造した具体的な手口について説明する前に、まずは、その母体となった、同社による“架空請求”の顛末について説明しておこう。

 サン社による“架空請求”の事実が明るみに出そうになった2週間後の1996年3月14日、当時のサン社の社長で、神戸市助役だった小川卓海氏が自らの体に火を放ち、焼身自殺を遂げたことは、中編( #3 、 #4 )で述べた。

 ところが、信じられないことに、サン社は、この小川助役の自殺後も、大倉産業に対し、「4億5000万円」の“架空請求”を続けていたのだ。

 私が入手した、神戸市の〈平成07年度 支出命令書〉によると、さんプラザ7〜10階の解体撤去工事を請け負った「鉄建建設」は、 #4 で詳述した公費解体の「三者契約」に基づき、小川助役の自殺から11日後の3月25日、神戸市に対し、契約書に記載された工事費〈4億2984万9890円〉を請求。同年4月3日付で、当時の市の指定金融機関から、その全額が支払われている。

 繰り返すが、この工事費〈4億2984万9890円〉は全額、国と神戸市から拠出された公費によって賄われたものである。

 にもかかわらず、サン社は〈平成8年7月10日〉付で、大倉産業に対し、〈代表取締役 鷹取治〉名で、〈さんプラザ7階〜10階の解体撤去工事費として〉の但し書きのついた、「4億5000万円」の請求書と、サン社の指定銀行が記された振込依頼書を送付するのだ。

■預金口座を差し押さえた上で……

 一方、連載の #1 でも触れたように、両者は震災前から、大倉産業が滞納を続けていた共益費の支払いをめぐる訴訟を抱えており、神戸地裁は96年7月1日、サン社側の主張を認め、大倉産業に対し、滞納していた共益費約3億円の支払いを命じた。

 前述の「4億5000万円」の請求書と振込依頼書が、サン社から大倉産業に送られてきたのは、その一審判決から僅か9日後のことである。

 さらにサン社は8月9日、前述の判決を受け、大倉産業の、すべての取引銀行の預金口座を差し押さえた上で、約1カ月後の〈平成8年9月10日〉付で、前回と同様の「4億5000万円」の請求書を送りつけるのだ。

 これだけでも、大倉産業に対するサン社の異様な“執念”が感じ取れるが、問題は、 #4 でも詳述した通り、この「4億5000万円」自体が“架空請求”だったこと、である。

■約929万円の“架空債権”を主張

 サン社による全預金口座の差し押さえによって資金ショートに陥った大倉産業は97年10月1日、銀行不渡りを出す。さらには、その1週間後の同月8日、前述の共益費をめぐる訴訟の控訴審で、大阪高裁は一審判決を支持。大倉産業に、滞納していた共益費約3億円の支払いを命じたのだが、この時すでに同社には、最高裁へ上告する余力は残されておらず、判決が確定した。

 これらを受け、サン社は翌月の11月27日、大倉産業の本店所在地の大津地裁に対し、同社の破産宣告申し立てを行うのだ。が、その際、サン社が大津地裁に提出した「破産宣告申立書」の中に、奇妙な記述が残されている。

「申立書」の中で、サン社は、自らが大倉産業に対して保有する債権として、前述の大阪高裁判決で確定した、大倉産業が滞納していた共益費約3億円などとともに、次のような〈債権の存在〉を主張しているのだ。

〈(大倉産業)神戸営業所解体撤去費用の一時支弁金としての金九、二九八、一四七円〉【( )内は筆者補足】

〈(大倉産業)神戸営業所〉とは、公費解体された、さんプラザ7〜10階のことを指している。

 そう、この〈金九、二九八、一四七円〉こそが、“架空債権”「約929万円」なのである。

■裁判所にも虚偽の申請をしていた

 さすがのサン社も、裁判所に対してまで、「4億5000万円」の“架空請求”をそのまま、「大倉産業に対して保有する債権」と主張するのは、まずいと思ったのだろう。ここにきてはじめて、さんプラザ高層階の解体撤去工事が、公費負担で行われた事実を認め、実際の工事費を差し引き、請求額を大幅に減らしたわけだ。

 とはいえ、この「約929万円」の母体となる「4億5000万円」がそもそも“架空請求”だったという事実に変わりはない。にもかかわらず、サン社は、この、ありもしない〈債権の存在〉を裁判所に申し立てたのである。

 つまり、サン社は大津地裁に行なった破産宣告申し立ての中で、虚偽の申請をしたわけだ。

 このサン社による破産宣告申し立てから約5カ月後の98年4月、大倉産業の服部躬依(きゅうえ)社長( #4参照 )は、失意のうちにこの世を去るのだ。が、大津地裁もまさか、神戸市の外郭団体という公の組織が、裁判所に虚偽を申請するとは、想定していなかったのだろう。この“架空債権”「約929万円」を含めたサン社の申し立てを認め、2000年7月、大倉産業に対し、破産宣告を下したのである。

 そしてサン社は、この“架空債権”の存在が大津地裁に認められたことを奇貨として、今日に至るまで、それを「大倉産業に対し保有している」との主張を続けているのだ。

 後にサン社が、この「約929万円」の一部を、元「地上げ屋」の室鋭三郎氏に売り渡したことによって、室氏の経営する「有限会社MURO」と大倉産業関係者との間で、さんプラザ高層階の所有権や抵当権などをめぐる、新たな訴訟が生じたことは前編( #1 、 #2 )で述べた。

 これらの訴訟の中で、原告の「有限会社MURO」側の申し立てによって行われた、神戸地裁による調査嘱託に対し、サン社は「約929万円」の根拠などについて、2017年4月と7月の2度にわたって文書で回答している。

■“架空債権”の計算式を辿っていくと……

 調査嘱託とは、裁判所を通じて、第三者に対し、情報開示を求める制度だ。

 それらの「回答書」によると、サン社はまず、解体撤去工事終了後の〈平成8年〉、鉄建建設との間で、当初の〈請負代金 4億5000万円〉から、公費によって賄われた実際の工事費〈4億2984万9890円〉+〈大企業に対する公費負担額312万6963円〉を引いた、〈1702万3147円〉を、最終請負代金とする契約変更を行った――としている。

〈大企業に対する公費負担額〉とは 前回(#5) でも述べた、瓦礫の「撤去」費用のみが対象となった「大企業」への補助金のことである。

 そして、サン社はさらに、この最終請負代金〈1702万3147円〉から、その他の〈公費負担等〉によって賄われた諸経費を引き、最終的に、サン社が大倉産業の代わりに立て替え、鉄建建設に支払った金額は〈929万8147円〉と算出している。

 よって、さんプラザ7〜10階の解体撤去に伴い、サン社が今も大倉産業に保有している債権は〈929万8147円〉、すなわち「約929万円」となる――という主張だ。

■なぜ低層階の撤去費が含まれているのか?

 ところが、である。

  前回(#5) でも述べた通り、震災当時、さんプラザビル高層階は、大倉産業の一社所有で、他の区分所有者は存在していなかった。

 その一方で、撤去費のみが公費負担の対象となった「大企業」は当時、 前回(#5) でも述べた通り、すべてが3階以下の低層階の区分所有者だったのだ。

 にもかかわらず、なぜ、高層階の解体撤去費を算出する計算式に、低層階の撤去費が含まれているのか。

 この一点だけでも、サン社が「約929万円」を捻り出した計算式が筋の通らないものであることが分かるが、不審な点はまだある。

■日付が空欄の〈工事請負変更契約書〉

 サン社は、神戸地裁の調査嘱託に対する回答の〈根拠資料〉として、前述の〈平成8年〉に鉄建建設との間で、最終的な請負代金を〈1702万3147円〉とする契約変更を行った際の〈工事請負変更契約書〉を提出している。

 だが、この契約書、肝心の締結日の日付が〈平成8年 月 日〉と、空欄になっているのだ。

 契約書の文面から、少なくとも、前述の「三者契約」に基づく工事費〈4億2984万9890円〉が、神戸市から鉄建建設に支払われた96年4月3日以降に作成されたものと推測されるのだが、この中にはこんな一文がある。

〈甲(サン社)は残額金9,298,147円也を平成8年8月31日に乙(鉄建建設)に現金にて支払う〉【( )内は筆者補足】

 ここでもう一度、かつてサン社が大倉産業に送りつけていた“架空請求”「4億5000万円」の請求書の日付を思い出していただきたい。

〈平成8年7月10日〉と〈平成8年9月10日〉である。

 では、このサン社と鉄建建設との間で交わされたとされる〈工事請負変更契約書〉は一体、〈平成8年〉のいつの時点で締結されたものなのか。

■神戸地裁にも虚偽を主張していた

 私は今回、鉄建建設の関係者を通じて、この〈契約〉のもう一方の当事者である、当時の鉄建建設「神戸営業所」の所長と、事情を知る同社「大阪支店」の常務取締役支店長に取材を申し込んだ。が、大阪支店長は既に他界されており、神戸営業所長には取材に応じていただけなかった。

 つまり、サン社が神戸地裁の調査嘱託に対し、その回答の〈根拠〉として提出した、この〈工事請負変更契約書〉の存在自体、極めて疑わしいものなのだ。

 これでもう、お分かりだろう。

 神戸市の外郭団体「神戸サンセンタープラザ」は、大倉産業の破産申し立てを行なった大津地裁だけでなく、神戸地裁の調査嘱託に対しても、虚偽を主張していたのである。

■被災自治体の外郭団体としてあるまじき“4つの不正”

 今回の連載で私が告発した、「神戸サンセンタープラザ」の、阪神大震災から現在に至るまでに犯した、被災自治体の外郭団体としてあるまじき不正は、4つある。

 1つ目は、さんプラザビル高層階が公費解体されたにもかかわらず、その事実を、所有者に隠し、工事費「4億5000万円」の“架空請求”を続けたこと。

 2つ目は、その“架空請求”の事実を隠すため、国が被災者救済のために設けた「公費解体」制度において、虚偽の申告を行い、制度を悪用したこと。

 3つ目は、「4億5000万円」の“架空請求”から、「約929万円」の“架空債権”を捏造し、訴訟相手の大倉産業だけでなく、裁判所にまで虚偽の主張をしたこと。

 そして4つ目は、高層階の所有者を排除するために、その“架空債権”の一部を元「地上げ屋」に売り渡したこと、である。

 このうち2つは、今のサン社にとって、もはや「過去のあやまち」として、忘れたいことなのかもしれない。が、残念ながら、それらはすべて、現在進行形の残りの2つに繋がっている。

 そして、ひいてはそれが、さんプラザビルの建て替えを妨げている、高層階をめぐる訴訟を徒らに長引かせているだけでなく、新たな訴訟をも生み出しているのだ。

 つまりサン社は、阪神大震災以降、四半世紀にわたって、嘘に嘘を重ねてきたことによって、自らの首を、今も締め続けているわけである。

■神戸市は傍観しているだけでいいのか

 だが、そのサン社を管理・監督する立場にある神戸市も、「当面は推移を見ていく」( #3参照 )などと、ただ傍観しているだけで果たして、いいのだろうか。

 これまで私が指摘してきたサン社による数々の不正は、阪神大震災における神戸市の復興行政の「正当性」を揺るがせかねない、「過去のあやまち」だけではない。

 特に4つ目は、神戸市のコンプライアンス条例に抵触しかねない“禁じ手”であり、かつ、目下、同市が推し進める「三宮再整備」の手法についても、疑問を抱かざるを得ない話だ。

「外郭団体に対するコンプライアンスの徹底」を掲げる神戸市にはそれこそ、「徹底」した検証を求めたい。

(西岡 研介)

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