路面はボロボロ、斜面からは落石多数…日本屈指の「酷すぎる国道」を12時間かけてドライブしてみた

路面はボロボロ、斜面からは落石多数…日本屈指の「酷すぎる国道」を12時間かけてドライブしてみた

国道425号は「日本三大酷道」の一つにも数えられている

 数ある日本の道路の中でも、最高峰に君臨する国道。国道といえば、走りやすく快適な道路をイメージする方が多いと思うが、狭隘路でガードレールもなく、ハンドル操作を誤れば崖下に転落するような国道も少なからず存在する。

 そのような酷い国道のことを、物好きな人々は親しみを込めて“酷道”と呼んでいる。私もそんな酷道に魅了されて、全国を巡っている“物好きな人々”の一人だ。

■「日本三大酷道」にも数えられる425号

 数ある酷道の中でも、三重県尾鷲市を起点とする国道425号は、「日本三大酷道」の一つともされるほど、極めてハードな道だ。奈良県十津川村などを経由して紀伊半島を横断し、終点の和歌山県御坊市までを結んでいる。

 紀伊半島内陸部への数少ないアクセス路として欠かせない存在ではあるものの、延長約170キロのうち大部分が道路改良されておらず、一歩間違えれば転落死するような区間が連続している。

 ちなみに「日本三大酷道」とは、長野〜岐阜〜福井を結ぶ国道418号、 四国を横断する439号 、そしてこの425号とされている。誰が言い出したのか分からないが、単純に道路の酷さだけではなく、距離の長さや沿道の状況なども加味して選ばれたのかと思うと、実際に現地に行くと何となく納得してしまうから不思議なものだ。

■土砂崩れや路盤流出などの災害が絶えない道

 そんな酷道425号の特徴は、なんといっても酷い区間が長く続くこと。しかもその大部分が山間部で、降雨量が多いことで知られる大台ケ原にも近い。そのため、土砂崩れや路盤流出といった災害が絶えないのだ。

 三重県、奈良県、和歌山県の3県にまたがるこの酷道は、いつもどこかで災害が発生し、通行止めになっている。そのため、全線を走り通すことは非常に難しい。

■全線走破できたのはたった1回だけ!

 私が最初に425号を走ったのは、約20年前のこと。それ以来、10回ほど訪れているが、迂回せずに全線を走破できたのは、最初の一度だけだ。

 近年では2017年から今年にかけて5回チャレンジしているが、全て失敗している。

 長い酷道区間のうち、どこかが災害によって通行止めになっており、走行できなかったのだ。ある時は林道で迂回して先へ向かい、ある時はその後の行程変更を余儀なくされた。それゆえ、国道425号は、“開かずの国道”といっても過言ではないだろう。

 そんな酷道425号を、起点の三重県尾鷲市側から見ていこう。

■2車線の立派な道路かと思いきや……

 起点のすぐ近くに紀勢自動車道の尾鷲北インターチェンジが2012年に完成したため、ほんの少しの区間だけ2車線の立派な道路に整備されている。しかし、走り始めたら心の準備をする暇もなく、あっという間に目の前は酷道と化し、心細い道で山を登ってゆくことになる。

 対向車とすれ違うことが出来ないトンネルを抜けると、これまで並走してきた又口川と別れ、古川に沿って延々とクネクネ道が続く。

 奈良県に入り坂本ダムが近づいてくると、立派な滝が見えてくる。上の銚子滝と下の不動滝が2段になっていて、併せて125mもの落差がある。非常に壮観で、観光名所になってもおかしくないほどの名瀑だ。こうした絶景を道路上から眺めることができる。しかも、それを独り占めできるというのは、酷道の大きな魅力だろう。

■“本州最後の秘境”が中間地点

 尾鷲から2時間、奈良県下北山村の池原ダムを過ぎて集落に入ると、久しぶりに民家を見る。ただ集落があり、そこに人が暮らしているだけで、とても安心する。

 下北山村には、この行程で唯一となるコンビニが存在する。コンビニといっても夜には閉店してしまうヤマザキYショップで、2階は民宿になっている。釣り宿が営む商店といった雰囲気だ。

 さらに1時間以上走ると、十津川村で再び集落を目にする。十津川村は鉄道や高速道路から遠く離れ、どの方位からも到達が困難であることから“本州最後の秘境”と呼ばれている。沿道には貴重なガソリンスタンドもあるが、日曜日は営業していなかったり、夕方早い時間に閉まってしまうので、気が抜けない。この環境では、ジュースの自販機があるだけでもありがたいと思うしかない。

 十津川村がおよそ中間地点になるのだが、ここまで到達するのに半日かかってしまう。朝からひたすら酷道を走り続けると、正直、この時点でもう飽きてくるのだが、ここから抜け出すには、さらに酷道を走るしかない。じわじわと精神的にも追い込まれてくる。

■「転落死亡事故」と書かれた無数の看板

 だが、追い打ちをかけるように、この先、道はさらに酷くなる。ガードレールは姿を消し、川底まで遮るものは何もない。その代わりに設置されているのが“転落死亡事故”などと書かれた無数の看板だ。物理的に遮るのではなく、心に訴えかける作戦のようだ。

 しかし、その看板も功を奏さなかったのか、残念ながら実際に転落死亡事故は発生している。緊張感を取り戻して、慎重にハンドルを握ることが重要だ。

■携帯はもちろん圏外、パンクでもしたら命取り

 この国道の魅力は、ただ道が酷いだけではなく、景色がいいことだ。沿道には山々を眺望できるスポットや、複数のダムや滝が存在する。先に紹介した銚子滝・不動滝のほかにも多くの滝があり、どれも見応えがある。酷道の運転に疲れた時、そうした絶景が励ましてくれる。

 一方で、路面のアスファルトが剥がれて大きな穴が開いていたり、落石が転がっていたり、山の斜面から木々が落ちそうになったりしているので、一瞬たりとも気が抜けない。携帯電話はもちろん圏外。

 こんなところでパンクなどのマシントラブルに見舞われたら、命取りになりかねない。小さな落石も踏まないように、より慎重に運転する必要がある。

 和歌山県に入り、田辺市龍神で国道371号との重複区間に入ると周囲は街になり、道路状況は改善する。その後も狭い区間はあるが、これまでのことを思うと快適に感じるから、不思議なものだ。この行程の途中にある街は、奈良県の下北山村と十津川村、そしてこの和歌山県田辺市龍神の3箇所だけだ。

■2.8キロの改良工事に9年かかった

 途中、滝やダムに立ち寄りながら走っていると、終点の御坊市に到達するまでに12時間近くを要する。酷道を走っているだけで、1日が終わってしまうのだ。走り終わる頃には、酷道マニアでも酷道が嫌になるほどだ。さすがは“日本三大酷道”の一つと言えるだろう。

 そんな酷道425号だが、実は道路改良も少しずつ進められている。今年3月には、和歌山県印南町川又で行われていた改良工事が完了した。だが、2.8キロ間の改良に9年の歳月と、36億円の事業費を要したという。全線の改良など、まだまだ先の話になりそうだ。

 現状の国道425号で紀伊半島を横断するのなら、大きく迂回して他のルートを走った方が、はるかに早くて安全だ。確かに、そこには転落による生命の危険やガス欠のリスクはない。しかし、絶景を独り占めできることも、走破した後の格別な達成感も無いだろう。

 あなたなら、どちらのルートを選ぶだろうか。

撮影=鹿取茂雄

(鹿取 茂雄)

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