世界的カリスマCEOたちに共通する3つの「CEOの資質」〈ツイッター、MTV…外資系企業でキャリアを積んでわかったこと〉

世界的カリスマCEOたちに共通する3つの「CEOの資質」〈ツイッター、MTV…外資系企業でキャリアを積んでわかったこと〉

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 2014年からツイッタージャパンの代表取締役を務める笹本裕氏。外資系企業でキャリアを積む中で、ツイッターの創業者で現在のCEOであるジャック・ドーシー氏をはじめ、多くのカリスマCEOとともに仕事をしてきた。世界的な大企業のCEOを間近で見た笹本氏は、「CEOの資質」として何を語ったのか――。

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■CEOの資質その1:ビジョナリーであること

「2030年、ツイッターは宇宙に行く」――。

 昨年の1月、ヒューストンで開かれた社員総会で、ジャック・ドーシーが高らかにぶち上げました。全世界から集められた社員たちも最初は当然「宇宙?」とキョトンとなります。

 よくよく聞いてみると、僕らが宇宙に実際に行く、行かないという話ではありませんでした。2030年の世界を想像したとき、宇宙と地球ぐらい距離があっても、情報がしっかりと伝達され、会話が生まれるようになっている。場合によっては人間同士だけではなく、AIと会話しているかもしれない。そうした宇宙スケールにおけるコミュニケーションのプラットフォームとして、ツイッターは役割を果たしていく。僕らは今後10年間、そういう世界観を持って事業構築や、サービスの開発をしていくんだ、というジャックの壮大なビジョンを象徴する言葉が「宇宙」だったのです。

 その後、本格化したコロナ禍で半ば強制的に人と人の「距離」が見直されざるを得なくなりました。そこで一気に可視化された形ですが、実際、技術的にはすでに、人と直接対面せずとも何か事が起こったり、事が完結したりが可能な世の中です。これからの社会は、多かれ少なかれそうしたことが進んでいくと思います。

 いわゆるカリスマと呼ばれるCEOに共通する資質があるとすれば、それは第一に「ビジョナリーであること」だと思います。ジャックはその代表と言っていいでしょう。彼は常に先のことを見ていますし、彼が描く世界観を形にしていくのがツイッターという会社だというイメージが僕の中にあります。

 もちろん、ビジョナリーなリーダーと伴走するのは本当に大変です。通常運転のままでは、ジャックが2030年に到達したいと思っている世界観には到達しない。社内の意識を変え、ギアを上げるという意味で、ツイッタージャパンではあえて「今は第二創成期である」という言葉を使っているほどです。

■CEOの資質その2:プリンシプルを持っていること

 もうひとつ、ジャックがすごいのは「正しいことをやる」という軸がぶれないことです。ツイッター社は上場企業なので当然、市場や株主から収益や成長を求められます。ジャックはそれでも「正しさ」を優先します。

 例えば、2019年には他のSNSに先駆けて「世界中で政治広告を禁止する」という方針を打ち出しました。背景には、アメリカ大統領選挙をはじめとして、ソーシャル業界で有料広告を使った操作ともいえるような行為が問題になっていたことがありました。

 もちろん、単純に収益のことだけを考えれば、幅広く広告を出してもらった方がいいわけです。それでも、ジャックはいち早くやめる、という決断を下しました。「世の中をごまかしてはいけない」「我々は正しいことをやる」という価値観がジャックをはじめとするツイッターのリーダーたちの中に強くあるからです。

 ウォールストリートで上場している会社というのは成長を求められて、成長のためだったら何でもやるみたいなところがあるのですが、ツイッター社は真逆なところがあると、すごく感じます。たとえ収益を毀損したとしても正しいことをやる、という前提が崩れることは決してありません。

■CEOの資質その3:チャーミングな人間性

 今まで自分が転職するとき、その会社の経営陣がどういう人たちなのか、どういう仲間と仕事をするのかという点をすごく見ていました。中でも経営者にとって、人間的な魅力がいかに大事かを教えてくれたのはMTVのトム・フレストンでした。MTVのファウンダーではなく、もともとヒッピーみたいな生活をしていて、インドでTシャツの露天商をやっていた時に英字雑誌でMTVの求人を見つけて参画した、という変わった経歴の持ち主です。

 トムはMTVがアメリカで一時経営難になったときに、ダイアー・ストレイツの「I want my MTV」という歌詞が出てくる曲を使ったマーケティングで窮地を救ったことで有名です。I want my MTV〜というフレーズが、僕の世代にはすごく刺さっていたので、「あれを仕掛けた人なんだ」という憧れがすごくありました。

 彼に初めて会ったのはニューヨークにあるハリウッド映画に出てくるような大きなオフィス。その頃はちょうど売上が芳しくなく、全世界から社長を呼んで、壇上でみんなに話がある……と登場したのです。

 てっきり「リストラだ!」みたいな話になると思って、みんなドキドキして待っていましたし、私自身、雰囲気に気圧されて怖いイメージを持っていたのですが、すごくナイスガイな白髪のおじさんが出てきた。そして壇上に上がってきて、マイクをポンポンポンと叩き、「キーン」とハウリングが響き渡った後、ひと言「頼むから売ってくれ!」と(笑)。

 みんなドッと笑って、その年、MTVは史上最高の売上になりました。この人を成功させよう、このブランドを成功させようという思いが湧き上がってきたのを覚えています。

 また、トムが日本に来たときに六本木で飲んでいたら、彼の携帯に親会社のバイアコムの会長から電話がかかってきて、MTVネットワークスのCEOから、バイアコムのCEOに昇格するという連絡だった、ということもありました。僕が今でもMTVにロイヤリティを持てているのは彼の存在が本当に大きいのです。

■しばしば経営者は「株価がどうだ」などで影響されがちだが…

 それはジャック・ドーシーも同じで、二人に共通しているのは、すごく共感できるビジョンを持っていてそれが揺るがないこと。そして確固たるプリンシプルを持っている。経営者は株価がどうだとかそういうことで判断が変わってしまうことも多いのですが、彼らに限ってはそういうことがなかった。だから「この人に一生ついていこう」という気持ちにさせてくれる人たちでした。

 彼らのように、会社の未来を描くビジョンと人を惹きつける魅力を持ち、ブレない信条がある。そんなCEOであれば、カリスマと呼ばれるようになるのも当然だと言えるかもしれません。

写真=佐藤亘/文藝春秋

(笹本 裕,竹村 俊助)

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