気絶させ、姦淫した元死刑囚・鈴木泰徳の性的異常行動「中学生のころから女性の下着に執着して窃盗」「20代の半ばから強姦モノのビデオを…」

気絶させ、姦淫した元死刑囚・鈴木泰徳の性的異常行動「中学生のころから女性の下着に執着して窃盗」「20代の半ばから強姦モノのビデオを…」

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3人の女性を殺害した元死刑囚・鈴木泰徳の素顔「奪った携帯でアダルトサイトにアクセス」「パチンコやスナック遊びで夫婦生活を拒絶され…」 から続く

「蚊も人も俺にとっては変わりない」「私の裁判はね、司法の暴走ですよ。魔女裁判です」。そう語るのは、とある“連続殺人犯”である。

 “連続殺人犯”は、なぜ幾度も人を殺害したのか。数多の殺人事件を取材してきたノンフィクションライター・小野一光氏による『 連続殺人犯 』(文春文庫)から一部を抜粋し、“連続殺人犯”の足跡を紹介する。(全2回の1回目/ 後編 を読む)

◆ ◆ ◆

CASE3 鈴木泰徳

福岡3女性連続強盗殺人事件

■ヤミ金業者「逆ギレがすごいったい」

 鈴木による3件の殺人が大きく報じられるなか、私が記事を書いていた週刊誌の編集部に、1本の“タレコミ”電話が入った。

 福岡市の郊外にある喫茶店で、私がその電話の主・横山武史さん(仮名)と会ったところ、彼は持参したカバンから何枚かの紙を取り出した。それは鈴木の免許証と健康保険証、さらに実家の自動車整備工場の名前が入った名刺のカラーコピーだった。

 横山さんはさらにもう1枚の書類を私の前に差し出した。そこには「借入申込書」と書かれている。

 横山さんの仕事は非合法のヤミ金業者。かつて鈴木に何度かカネを貸していたと語る彼は、「ニュースを見たら、鈴木は何の罪もない女の人らに、ひどいことをしとるやろ。それが許せんけん、この書類ば出しちゃろうって思ったと」と口にした。

 手渡された「借入申込書」に鈴木は、自分の役職について「工場長」だと?を書き、他社で借り入れている金額については「1件、20万円」と少なく申告していた。

「電柱の張り紙を見て電話してきたとやけど、確認すると実家がしっかりしとるけんね、それで貸すことにしたと。うちはトイチやけん、たとえば10万円貸すなら、15万円の借用書を書かせるったい。それで10日に1万5000円ずつ利子がつく。鈴木の場合、最初のときは10万円貸して、さすがに一発で返してきた。けど、次のときからは返済が遅れて、結局3カ月くらいかかったね」

 借金の目的については「パチンコ」だと話していたと、横山さんは明かす。

「?も多かったね。よそで借りてないとか言いよったのに、調べてみると他に2軒で借りとったとかね。あと、最初はおとなしい印象やったけど、逆ギレがすごいったい。『払うんやから、よかろうもん』て声を上げたりとか、あと、警察に行くとか、その筋の者を知っとるとか、キレると尋常やなかった」

 横山さんは10万円ずつ、3回にわたって鈴木にカネを貸している。

「去年(04年)3月ごろ、『50万円くらい貸してくれんやろか』て来たけど、その前の返し方が悪かったけん、それは断った。3回目のとき、連絡が取れんで自宅に行ったとやけど、他にも借金取りが来とるみたいでね、奥さんは『離婚したいんです』て話しよった。そのときは鈴木からすぐに電話がかかってきて、『自宅に来られちゃ困る』て、キレとったね。父親のとこにも行ったとやけど、親父さんは私の顔を見るなり『また(鈴木が)借金ですか?』て、呆れ顔やった。もう何回も同じことがあったとやろうね……」

■拘置所の面会室

 拘置所の面会室。扉の覗き窓からこちらを見た鈴木は、顔を引っ込めた。続いて扉が開き、刑務官とともに私の前に姿を現す流れだ。まずはなにを訊こう。頭のなかを整理した。

 しかし……。

 面会室に入ってきたのは、刑務官だけだった。

「知らない人なので、会わないそうです」

「そう……ですか」

 予想を裏切られたような、しかし、これこそが予想通りだったような気持ちを抱きながら、面会室を出た私は拘置所を後にした。

 05年6月22日、福岡地裁で開かれた初公判の法廷に現れた鈴木泰徳は、髪の毛を短く切りそろえ、黒いTシャツに濃紺のジャージ姿で、180センチメートル近い巨体を縮め、うなだれていた。

 検察側は冒頭陳述で、鈴木が中学生のころから女性の下着に執着して窃盗をくり返したことや、20代の半ばから強姦モノのビデオを好むようになり、自宅から同種のビデオやDVDが大量に押収されたと指摘。03年からは出会い系サイトで、見知らぬ女性とわいせつな内容の会話やメールのやり取りをしていたなど、その少年時代にまでさかのぼり、性的に異常性があることを暴露した。

 以下、公判で明らかになった犯行状況を簡易に記しておく。

■気絶させ、姦淫

 鈴木は1989年ごろ車で人身事故を起こし、被害弁済のために消費者金融でカネを借りたことをきっかけに、借金をするようになった。後にパチンコやスナック遊びなどの遊興費で、妻に隠れて約800万円の借金を抱えた鈴木は、そのことが発覚すると妻から小遣いを止められ、夫婦生活を拒絶される生活を余儀なくされた。

 そこで04年12月の初旬から、1人歩きの女性を襲って、金品を強奪して生活費などを得たうえ、強姦で性欲を満たそうと考え、車で女性を物色するようになったのである。

 飢えた鈴木の目に、12月12日午後11時半ごろ、友人宅から帰宅しようとする安川奈美さん(仮名)の姿が、飛び込んできた。

 鈴木は彼女が人気のない公園の前に差しかかったところで、背後から口をふさいだ。そして逃げ出そうとする奈美さんを抱え上げて園内に入ると、彼女の腹の上に馬乗りになり、マフラーの両端を左右に引っ張って気絶させ、姦淫した。

 欲望を遂げた鈴木は、奈美さんの手提げバッグを奪おうと考えたが、自分の顔を相手に見られたことを思い出し、彼女の胸のあたりに馬乗りになると、ふたたびマフラーを使って死亡するまで絞め続けた。そのとき、公園の近くにトラックが停まり、運転手が降りてくる気配があった。慌てた鈴木は逃走し、結果的に彼女のバッグがその場に残されることになったのである。

 次の犯行は12月31日の大晦日。前夜に襲う相手を見つけることのできなかった鈴木は、午前7時ごろに北九州市内の駐車場に車を停め、車内から“獲物”を探した。

 そんな鈴木の視界に入ったのが、若々しい赤いフード付きのコートを着てパート先に向かう、大倉聡子さん(仮名)の後ろ姿だった。皮肉なことにその日は雪で、聡子さんはふだん乗っていた自転車を使えず、いつもと違うルートを歩いていた。

 帽子を目深(まぶか)にかぶり、軍手をはめた鈴木は、車内に置いていた刺身包丁をジャンパーの内側に隠し持ち、聡子さんの後を追った。すぐそばまで近づくと、彼女が50歳以上の女性であることが判明したため、強姦を諦めてエナメル製のショルダーバッグを奪うことに方針を変更した。そこで彼が選んだのは、極めて乱暴な手段だった。

■「命だけは助けて」

 鈴木はいきなり聡子さんの背後から包丁を突き刺したのだ。

「命だけは助けて」と60メートル近く逃げる彼女を執拗に追い、路上に倒れたところに馬乗りで背部や胸部を何度か刺したあと、順手に持った包丁で心臓部分を深く刺して殺害した。そしてバッグを奪い取ると、停めていた自家用車に駆け戻り、現場を後にしたのだった。

 翌年1月18日になると、鈴木は仕事で保冷車を運転するときも、包丁を持参するようになった。午前5時20分ごろ、徒歩で福岡空港へと向かう福田祥子さん(仮名)を移動中に見かけた鈴木は、車をUターンさせて駐車場に停め、包丁を隠し持って尾行した。彼女が公園の前に差しかかったところで、背後から口をふさぎ、面前に包丁を突き付けて園内に引きずり込んだのである。続いて祥子さんの顔面を殴りつけ、馬乗りになって首を絞めながらさらに数回殴りつけた。公園の奥では彼女のセーターを下着ごとたくし上げ、露出した乳房を弄(もてあそ)んだ。ストッキングを引きちぎり、パンティをはぎ取ると彼女の口に押し込み、抵抗できないよう殴りつけた。

 鈴木は姦淫しようとしたが、前の路上をバイクが通りかかるなどしたため断念。意識を取り戻した祥子さんの背中を包丁で3回刺し、さらに仰向けになった彼女の腹部を2回刺し、財布と携帯電話やCDプレーヤーの入ったバッグを奪って公園から逃走した。

 犯行後は仕事に戻り、その日の配送業務を終えた鈴木は、午前6時半ごろ現場の公園に戻っている。近づいて様子を見たところ、祥子さんの腹部が痙攣(けいれん)していたので、間もなく死亡するだろうと思い、保冷車に乗って立ち去った――。

 3人の女性の命が無残に奪われる様子が、検察官によって淡々と読み上げられると、被告人席の鈴木は手に握りしめた白いハンカチで、時折涙をぬぐった。だが、それが反省によるものかどうかは、疑わしい。

 というのも鈴木は、かかる犯行内容にもかかわらず、聡子さんと祥子さんへの殺意を否認するなど、その後ずっと、公判において悪あがきを続けたからだ。ほかにも奈美さんへの殺害行為、さらには奈美さんと祥子さんへの強姦、強盗の故意についても否認していた。( #14 に続く)

《福岡3女性強盗殺人事件》反省も謝罪もない鈴木泰徳の“逆ギレ”「奥さんがさせてくれん」「これで駄目なら、どんな態度をすればいいのですか?」 へ続く

(小野 一光/文春文庫)

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