いじられる確率、遠隔コントロールされるスロット台…元闇カジノ店のオーナーが語る闇スロット店の“秘密”

いじられる確率、遠隔コントロールされるスロット台…元闇カジノ店のオーナーが語る闇スロット店の“秘密”

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「散々、痛い目を見たけど忘れられない」1日200万負けてもハマり続ける「闇スロット」の沼 から続く

 闇スロット(以下・闇スロ)店に出入りしたがために身を滅ぼした有名人は少なくない。

 有名人の闇カジノ通いがスキャンダルとして報道されるとき、同時に闇スロも愛好していたことが明らかになるケースも多い。

 例えば2016年に発覚したバドミントン・オリンピック選手の桃田賢斗氏らが闇カジノ店で賭博をしていたことが発覚した事件は記憶に新しい。

 男子シングルスで日本人初のBWFスーパーシリーズ優勝を果たしたバドミントンの桃田賢斗選手と、BWF世界ランキング3位にまで昇りつめた田児賢一選手が闇カジノに出入りしたことは世間に大きな衝撃を与えた。桃田選手は闇カジノ店以外にも闇スロ店に出入りしていたことが後に明らかになっている。

 文春オンラインのスクープで明らかになった ジャニーズJr.内ユニット・宇宙SixのY(後に解雇)の場合 も、問題となったのは闇スロ通いだった。同記事ではパチンコ店と闇スロ店に出入りし“玄人のように”スロットを楽しむYの様子や、開店と同時に闇スロ店に入り閉店まで滞在した後に朝帰りするアイドルの姿が報じられた。現役アイドルが闇スロ店に出入りしていたという事実は衝撃的だった。Yは後にジャニーズ事務所を解雇となり、宇宙Sixは解散という憂き目に遭う。

 元闇カジノ店のオーナーで、業界に精通している漆原康之氏が語る。

「Yが通っていたのは新宿のKという店だと聞いています。あまりお金を使わない客なのに、報道が大きく出てしまった為にKは大慌てしていたようです。いまは店名をMと変えることを余儀なくされたようです。

 有名人の闇スロ通いが発覚しやすいのは、闇スロに強い『中毒性』があるからだといえるでしょうね。依存性が高いために闇カジノよりも足しげく通ってしまうことになる。だから週刊誌に追いかけられたらバレやすい。

 同じ理由で身を滅ぼす客も多い。大きな金額をかけないだけに通いやすく、つい回数を重ね、借金も重ねてしまう。店のオープン前から並ぶお客さんとかもざらにいますよ」

■打ちながら仮眠する客も…

 闇スロ店の営業時間は夜中(21時〜翌朝10時)であるから客は朝まで目を血走らせてスロット台に向かうのだ。闇スロ→仕事という生活を何日も続け、オート設定で打ちながら椅子で仮眠するような客もいるという。中毒性が高いゆえに危険だともいえるギャンブルが闇スロなのである。

 じつは闇スロ店には“秘密”がある。今回の記事ではその秘密について掘り下げて行きたいと思う。

 漆原氏は06年に自らの闇スロ店を開業してから、他の様々な闇スロ店の開設に関わるようになった。

「私の店では闇スロはノーマルな形で営業していました。お客さんがちゃんと遊べる店をやりたかった。私が闇スロに求めていたものはみんなでワイワイ語り合える社交場という雰囲気です。前回お話しした野球選手Aもそれを楽しんでくれていたと思います。1万円を握りしめてドキドキしながらスロット台を初めて打ったという感覚を大事にしたいと、常々思ってました。ところが、いろんな店の立ち上げを依頼され協力し、その内実を知っていくにつれ闇スロ店の多くには“裏”があることが分かったのです」

■闇スロット“3つの種類”

 闇スロ店には大きく分けて「3つの種類」が存在するという。その3つとは以下のようなものだ。

〈【ノーマル店】 スロット台に細工をしていない普通の闇スロ店。店側の儲けは10〜15%ほどと小幅で赤字になることもある。漆原氏が経営する闇スロ店はノーマル店だった。

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【ロム細工店】 スロット台に「カットロム」「ダウンロム」と呼ばれる「裏ロム」などを仕込んでいる店。店側の儲けは20〜30%と中幅。

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【ポンコツ店】 スロット台に「遠隔」という確率操作システムを仕込んでいるインチキ店。店側の儲けは遠隔の設定次第。もちろん大幅に利益を出すことも容易い。〉

 漆原氏によれば、現在、都内に存在する闇スロ店は「ロム細工店」か「ポンコツ店」ばかりであり、「ノーマル店」はほとんど存在しないというのが実情のようだ。

 まず「ロム細工店」について解説していこう。「カットロム」や「ダウンロム」などは「裏ロム」と総称される。

 パチスロ台はメーカーによって、その「設定」や「出率(当たり確率)」が公表されている。パチスロにおける設定とはパチスロ機のボーナス・小役等の確率を変更し、最終的な出率を上下させることができる機能のことだ。 1〜6などの数段階の設定があり、例えば設定1だと101%の出率になるなどの数字が、メーカーによって公表されているのだ。

 この出率を上げたり、下げたりするために裏ロムを仕込むのである。例えば裏ロムにより設定1・101%の出率とされているものを、90数%などに落とすことなどが出来るのだ。

■裏ロムの極秘仕様書をみると…

 ここに数枚の文書がある。裏ロムの極秘仕様書の数々である。

 例えば1枚目は裏ロムを仕込むことで、“裏モノ”と呼ばれるギャンブル性の高い台に変えるための仕様書だという。「通常設定」をどう「裏設定」に変更するのか、その方法が細かく記述されている。

〈(1)通常設定変更

 ↓

(2)基盤リールLEDを確認し、第一リールのLEDが消える状態までリールを手で回す。第二、第三は点灯状態

 ↓

(3)電源OFFにして設定キーを回す

 ↓

(4)1BETボタンを押したまま電源ON

 ↓

(5)表側セグ版が設定ボタンにて変化する。・表示1(十の位):1〜4(裏設定)・表示2(一の位):1〜5(モーニング数)

 ↓

(6)スタートレバーON、設定キーを戻して完了。〉

 そして裏設定にしたときの当率一覧表も添付されている。その出率は77〜238%と大きな波があることが分かる。

 2枚目は“カット系”の仕様書である。「連チャン回数設定」で連続ボーナスの回数が細かく設定できることが明記されていたり、「ベースカット率設定」という項目では出率を10〜30%までカットできる、というような事柄が詳細に記述されている。まさに裏ロムを使用することでスロット台の細かい設定変更をすることが可能であることが仕様書からわかるのだ。

「1枚目の仕様書は通称“裏モノ”と呼ばれるもので、裏ロムを入れることで波が荒い超博打台に変えることが出来るのです。ノーマルの台では119%くらいがマックスで238%という出率はありえない。お客さんは射幸心を強く煽られることになり、嵌っていくのです。気を付けなければいけないのは闇スロで『当率238%!』と謳っておいて、裏では96〜110%で調整しているなんてこともあることです。

 2枚目の仕様書はカットロムと呼ばれる裏ロムのものですね。出率をカットすることで店の利益率を上げるために使う。当率が下がって当りが来るまでの波が荒くなるぶん、お客さんはかえって射幸心を煽られて嵌るというパターンもあります」(漆原氏)

 裏ロムによって超博打台に変えて集客したり、カットロムによってボーナスや小役を制限したりと、闇スロではあの手この手を使って台に細工を施しているのだ。総じて多いのが通常台よりも店の利益率を上げるために、カットロムやダウンロムを巧妙に仕込んで客を欺くというケースだ。

 裏ロムを仕込むためには、まずスロット台の上部を開けて基盤に裏ロムを設置する。再び蓋を閉めてしまえば、客からはその台にロムが仕込まれているものか、そうではないかを判別することはできない。

 ロムの値段は6万5000円〜30万円とピンキリで、値段によって出率をいじれる精度が違うのだという。闇カジノ店の「売上率」を上げるために使用されるのが裏ロムである。しかし確率論の中での調整なので利益幅は絶対ではなく、ブレが出ることもままあるという。

■100万円を超える遠隔の機材

 一方で「遠隔」は基盤やサブ基盤に専用ロムを仕込む形や、ハーネス(電線)や電源ボックスにICチップを仕込む形など、いくつかのパターンがある。これらの機材は送受信できる機能を持つことが大きな特徴だ。

 送受信機能によりスロットのボーナスをいつ出すかとか、その台では小役しか出さないなど、スロット台を完全にコントロールすることが出来るようになるのだ。

 遠隔の機材は100万円を超えるものも多く高価だ。遠隔ではスロット台を完全にコントロールすることが出来るだけではなく、客ごとの収支もコントロールが出来る。つまり、その店が完全なイカサマ店であることを意味するのだ。売上を「確実」に取りに行くことが出来るのが、闇スロ店にとって遠隔を導入する大きなメリットとなる。

■「裏ロムも遠隔もどのパチンコホールでもやっている」

  前回 、闇スロとパチンコ業界の“グレーな関係”について書いた。

 漆原氏によれば闇スロ店で横行している台の細工も「パチンコ店の人間からは『裏ロムも遠隔もどのパチンコホールでもやっているという認識でいい』と聞かされていました。闇スロもその流儀に倣っただけ」と語る。ここでもパチンコ業界から大きな影響を受けていたのだという。

「ロムや遠隔はもともとパチンコ店が確実に儲けるための仕組みだったのです。それを裏スロ店も踏襲している訳です。ロムだとその台に誰が座ってどう遊んでいるかは、見張ってないとわからないのですが、遠隔の店は客収支をパソコンで管理できる。『この客を200万円負けさせる』というようなイカサマも簡単に出来るのです。

 気をつけなければならないのは、遠隔はあるていど業界に長けている人間でないと上手く操作できないということです。客にイカサマだとばれれば警察に密告される可能性もあります。客を大切しているという演出を上手くいれながら適度に勝たせて搾り取っていく。これはパチンコ店も闇スロ店も同じだと思うのですが、遠隔のようなイカサマを店が行っているということは店の一部の人間しか知らない。多くの従業員は知らない“秘密”でなくてはならないのです。

 特に闇スロ店が気を付けないといけないのは、アングラビジネスなのでパチンコ店のような大規模な宣伝が出来ず一見の客を広く集めることができないということです。そこで口コミの評判が大事になるのです。だから客にはイカサマだと絶対にバレないようにやらないといけないのです」(漆原氏)

■「おれはハメられているんじゃないか」と言い出す客も…

 ロムや遠隔が存在するという噂は、闇スロに通う客もある程度は耳にしているものだという。だから「おれはハメられているんじゃないか」と言い出す客も少なくない。ポンコツ店では、イカサマだと悟られないよう客の目を逸らす演出が求められるのだ。

 例えばあるポンコツ店では客前にパソコンを設置していた。パソコンで闇スロの収支表を客の目に触れる形で公開していたのだ。

「もちろんそのパソコンで公開しているのは偽収支表です。裏のキャッシャーで本当の収支をキッチリ管理している。どの客がいくら使って、いくら負けているのかをリアルタイムで管理しているのです。まさにキツネとタヌキの化かしあいですよね」(同前)

■何が闇スロットを生んだのか

 漆原氏はここで悩まし気な表情を見せた。「本来、遠隔は負けすぎている客を、勝たせてあげるためだったはずなんですけどね。いまでは客を嵌めるために利用されることばかりです」と、小さなため息をついた。ポンコツ店が横行することはギャンブラーの世界にとっても決していいことではない、と感じているようだ。

「渋谷や新宿の各街に手広く出店しているあるグループの闇スロ“ポンコツ”店では、月アベレージで2000万円の純利益を上げていました。遠隔でコントロールして、経費・人件費を差し引いた上で現金2000万を残すことを店として徹底していた。まさに荒稼ぎですよね。この店は警察の生活安全課のOBと癒着していたので摘発を逃れ続けていました」

 漆原氏の証言から浮かびあがってくるのは、パチンコ・パチスロ店が闇スロを誕生させた大きな要因となっているという現実である。パチンコ店と警察の絶妙なバランスで成り立っている表のギャンブルがパチンコやパチスロならば、それらの全てを手本としつつ地下に潜って行ったのが闇スロなのだ。

 その経営手法から、高い射幸性を忘れられない客まで、闇スロを構成するものの全てのベースとなっているものが“表のギャンブル”なのである。

(赤石 晋一郎)

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