「緊急事態宣言で渋谷のライトが消えて…」“公序良俗”を掲げるギャル集団は、なぜはんだごてを片手に立ち上がったのか

「緊急事態宣言で渋谷のライトが消えて…」“公序良俗”を掲げるギャル集団は、なぜはんだごてを片手に立ち上がったのか

左がまおさん、右がきょうこさん

5歳でギャルに目覚め、9歳でタイに…異国で1人ギャルを続けた女性が、電気電子工学科に入学したワケ「どうすれば盛れるかだけを考えて…」 から続く

 大学で電気電子工学を学んでいたまおさんと、元ポールダンサーのきょうこさんは、ギャルで電子工作を楽しむギャル電というユニットで活動している。

 そんなお2人に電子工作について詳しく話を聞いた。(全2回の2回目/ 前編 を読む)

◆◆◆

■うちらが光っているのはモバイルバッテリーのおかげ

――お2人は普段から電子装飾品をつけて、街を歩いたりするんでしょうか。

きょうこ 前はしていたんですけど、2年ぐらいはこのご時世なので自粛しています。

まお 前まではフェスとかクラブとかに行くときにつけたりしてましたね。周りのお客さんにすごく褒められました。「それいいね!」って。「わたしもつけたいんだけどどこに売ってるの?」とか言われたりします。興味ある人が多いですね。

 TikTokにいるギャルたちも部屋がめっちゃネオンなんですよ。すごい親和性あるなと思っています。部屋を飾る電子装飾品を作るのもありなんじゃないかって最近は考えています。コロナでお家時間も増えたので。

――デコトラのような電子装飾も電子工作でできるんですか?

きょうこ 私は特にデコトラカルチャーが好きなので、自分がデコトラになりたいと思った時期がありました(笑)。ヤンキー文化もすごく好きなので、ああいうやんちゃっぽさにも憧れていますね。

 どうやったら自分はデコトラになれるのかを模索してたんですけど、あるとき挫折したんです。トラックで使われているバッテリーは24Vで、普通車は12V。それに対してうちらが電子工作に使っているモバイルバッテリーや電池は5V〜9V(笑)。モバイルバッテリーの力だけではどう考えてもデコトラ並みに光らせるのは難しい(笑)。うちらが光っているのはモバイルバッテリーのおかげなんで(笑)。今のスキルでは車と同じように光らせることはできないので、近寄っていくしかないですね。

■「つけま」つけるノリで電子工作

――お2人のお部屋も電飾をつけたりしてるんですか?

きょうこ 部屋は100均のもので飾り付けをしています。

まお 私の部屋は結構光らせちゃいますね。友達を呼んで、部屋を光らせていると「ああ、やっぱギャル電じゃん」みたいな感じになるので。それが嬉しいですね。

 LEDを自由自在に使えるとすごく便利です。例えば間接照明とかも秒でできるし。買ってきた照明がちょっとイケてないなって思った時に、配線を切ってはんだごてで繋げれば、好きに照明を変えることができるので。

■ギャル電の目標

――ギャル電の目標って何でしょうか?

きょうこ テクノロジーっていうとすごく難しいような気がするかもしれないですけど、私たちが電子工作の魅力を伝えることで、なんだ〜電子工作ってつけまと同じようなもんじゃん! って思ってくれたら嬉しいです。

まお つけま(笑)。

きょうこ 同じレベルで使いこなしてる方がかっこいい未来じゃないですか。つけまつけるノリで電子工作するとか。なんか賢くなさそうと思われているギャルが当たり前にはんだごてを使いまわせたり、プログラム組んでいたり。そしていつか部品が足らないやってなった時に、渋谷のドンキで買えるってなったら最高です(笑)。秋葉原は遠いし、Amazonは待てない(笑)。

まお 私はギャル電自体がもっともっとオープンソースになっていって欲しいですね。今回出版した本にも書いてあるんですけど、電子装飾品を作って身に着ける人が増えたら嬉しいです。そしてシェアして誰かがまた興味を持つ。そうやって電子工作カルチャーが広まって欲しいと思いますね。

■「光る帽子」に秘められたオカルト理論

――さっきからきょうこさんの帽子が突然ピンクに光ったりしているんですが…。

きょうこ これは私がオカルトがむちゃむちゃ好きで、オカルトっぽいものを電子工作で作ろうと思って作った帽子です(笑)。

――どのあたりにオカルトの要素があるんでしょうか?

きょうこ 地球意識プロジェクトというオカルト理論を利用して作っています(笑)。

 0と1が完全に同じ確率で、ランダムに出る装置が世界各地にあって。その0と1が出る確率って人間が動揺するようなこととか、意識が揺れるようなことがあった時のログを見ると、偏りが激しくなっているんです。物理現象に人間の意識が干渉しているのではないかみたいなことも言われていて。どう考えても100%オカルトの話なんですけど、そういう理屈だったら、考えればプログラムに落とし込めるじゃないですか。

 マイコンボード(マイクロコンピュータと入出力回路などの周辺回路を1枚の基板に乗せ、手軽にマイコンを利用するための回路)の無線を受信する部品を利用した乱数発生機能を使って、0と1をランダムに発生させて、0と1の発生した平均をとって偏りがあると赤く光るんですよ(笑)。0が10回中9回連続で発生してるとか。乱数の偏りの程度によって色を設定していて、濃いピンクとかだと、ちょっとやばい…(笑)。

――さっき濃いピンクでした。

きょうこ 濃いピンクは結構頻繁に出るんですよ(笑)。これは本当に信憑性あるとかではなくて遊びです! でもそう言われるとちょっと気になっちゃうじゃないですか。肝試しするときとかにこの帽子をかぶっておくとより楽しめます(笑)。

――この般若みたいなものはなんでしょうか?

きょうこ これも帽子と仕組みは全く一緒です。乱数が乱れると般若の顔が光ります。帽子だと普段そんなに被らないという人もいると思うので、車につけられるちょうどいいやつを作りました。

 こういう置物、ヤンキーの車のミラーとかによくつるされているじゃないですか。セルシオとか(笑)。ヤンキーと肝試しは親和性高いのでこれはたぶん大ヒット商品になりますね(笑)。

■コロナ渦に生まれたアイデア電子工作品の数々

――きょうこさんの胸元で光っているのはなんでしょうか?

きょうこ これは、緊急事態宣言で、渋谷のライトなくなったじゃないですか。だったらうちらがライトつけちゃおうと。でもただ光らすだけじゃ…と思って「公序良俗」という四字熟語を使っています。これだったら百合子も怒んないだろうと(笑)。

――なるほど。まおさんのマスクも光る仕様になっているんですね。

まお これは、音に反応して光るんです。声を出すと光って、話すのをやめると消えます。Zoom会議とかでいいかなって(笑)。誰が話しているかすぐにわかるじゃないですか(笑)。それにコロナの飛沫感染も防げるし、これなら話している人がすぐにわかるので、いろんな意味で便利かなと思って作りました。

まお ここにはないんですけど、会いたくて震えちゃうデバイスも作りました。ぬいぐるみに、電飾や振動モーターを仕込んだもので、これを彼氏に持たせておけば、会いたいときにWEB上から指示を飛ばすと、ぬいぐるみの胸のLEDが光り、振動モーターが激しく振動します。彼氏に会いたい思いを伝えられるというものなんですけど「会いたい」「すごく会いたい」「会いたくて死ぬ」という 3つの振動レベルから選べます(笑)。

――これは光るお寿司ですね。

まお そうです。お寿司も光れば盛れてるし、日本人っぽいし、カバンとかにつけたら可愛いですよ。

きょうこ このバッグはソーシャルディスタンスバッグです。人が近寄ると赤く光るんです。最近は人と距離を取らないといけないじゃないですか。近くに寄ったらだめだよって反応してくれるので、面白いよねって(笑)。

――面白いです(笑)。距離はどうやってわかるんですか。

きょうこ ロボットとかでよく使う距離センサーというものがあるんですけど、超音波出して跳ね返った距離をセンサーで判断しています。

■バッグの中には、いつも「はんだごて」

――これがギャル電の持ち物ですね。

まお 一見普通そうに見えますが、これ、はんだごてです(笑)。はんだごては常に持ち歩いていますね。これがないと何もできないので。あとは配線を切る用のハサミ。でもちゃんとメイクポーチも持ち歩いています。全ては盛れるためなので、メイクが崩れたら元も子もないです。

きょうこ 電子工作始めたての時は体温で色が変わるのはどう? とか思ったんですけど、誰が体温に興味あるんだよと話していたんです。でも今じゃ毎日のように体温測ってるじゃないですか。人生何があるかわからないなと思いますね。

まお 最近は、今まで誰もファッションに取り入れなかったようなものを作っていますね。コロナがなければ誰も距離センサーをファッションに入れようと思わなかったじゃないですか。コロナ禍だからできたものはたくさんありますね。目立つだけじゃなくて生活する中で役に立てば、ものの意味は2倍にも3倍にもなるし。

■電子工作は難しくない!誰でも楽しめる

――たしかに。実生活で役に立つものばかりですね。

きょうこ 役に立ちまくるし、誰も考えなかったアイデアだけど、今まであったものの組み合わせで場面が違うだけみたいなものを作っています。コロナ自体はよくないんだけど、今までとは違った視点で考えるきっかけにはなりました。何回もいうけど電子工作は何も難しくない。うちらがやっているようなやつはみんなできるので、ぜひやってほしいです。はんだ付けと巻き髪を作るコテは、超大雑把に言えば似たようなもんだし。ネイルの細かいデコができるなら精巧な工作だって作れるはず!

まお 意外とギャル電ってモテるんです(笑)。パリピから声をかけられたり、みんなから視線を送られたり。それに自分で自分の欲しいものを作れたらバイブスは爆上がりです。ギャルは頭悪いとか、電子工作は真面目な奴がやることとかそういう凝り固まった考え方を捨てて、誰もが楽しめる世の中になればと思っています!

写真=今井知佑/文藝春秋

(「文春オンライン」編集部)

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