《警察から一斉摘発》 事件が絶えないトー横で、何が起きているのか「未成年誘拐で逮捕の男性(20)はトー横の英雄になっていた」

《警察から一斉摘発》  事件が絶えないトー横で、何が起きているのか「未成年誘拐で逮捕の男性(20)はトー横の英雄になっていた」

©今井知佑/文藝春秋

 昨今話題となっている「トー横界隈」(トー横とは新宿歌舞伎町のTOHO横のことである)。今年の5月11日、18歳の専門学校生の男性と14歳の中学生の少女が新宿のホテルから飛び降り心中を図ったり、15歳の少年がホームレスの男性に暴行を加えている画像がネット上で拡散され、その後傷害容疑で少年は書類送検された。こうした事件が常にあるにもかかわらず、10代の少年少女が日夜、歌舞伎町に集まっている。

 管理売春や淫行などの黒い噂も存在しているトー横で、今何が起きているのだろうか。トー横に出入りをしていたことがあるという中学生に話を聞いた。

■14歳少女が「トー横の男性からホテルに誘われた」

「TikTokでトー横のことを知ったのがキッカケでした。ここなら私にも居場所があると思って…」

 そう話すのは、14歳の田中アカリさん(仮名)。華奢な体つきにゴシックな服装がよく似合う。大きな黒いカラコンに強めに引いたアイライン。最近流行りの「地雷系ファッション」に身を包んだ彼女と初めて話したのは東京郊外のカフェだった。

「私みたいな服装をした子は学校にあまりいなくて。カワイイ同じような服装をした同年代の女の子たちが集まってると知って、横(トー横)に行きたくなって色々調べました。そしたら自分と同じように家庭環境が複雑な子がいるって聞いてもっといきたくなったんです」

 アカリさんの家は家族構成だけで言えば平均的だ。サラリーマンの父、専業主婦の母、妹。アカリさんは父親と価値観が合わず、喧嘩をすることが多いという。2年前に適応障害を診断され、それ以降なにかあるたびに「病気のせいにしている」と父から責められた。

 学校の部活で陰口を言われることからいじめが始まり、学校に行くのが嫌になった。部活をやめ、不登校気味に。去年から父親が在宅勤務で家にいることが多くなり、喧嘩も増えた。そこから精神的に追い詰められたアカリさんはほとんど学校に行けなくなり、現在は全く通っていないという。アカリさんにとって、家は安心してくつろげる場所ではなくなっていた。

 そんなドン詰まりだったアカリさんが救いを求めたのが、トー横だった。SNSのアカウントで「トー横にいってみたい」と呟いたら、普段トー横にいる青年から「待ってるね!」とリプライが来た。

 青年はトー横界隈でも有名な存在で、別の中学生の少女をホテルに連れ込んだとして、今年の5月に逮捕されていた。アカリさんはネット上で彼が逮捕されていたことを知っていたにもかかわらず彼と会うことを決めた。

 歌舞伎町が初めてだと伝えると青年は「歌舞伎町を案内してあげる」とアカリさんに持ち掛け、駅まで迎えにきてもらうことになった。

■新宿駅で待ち合わせ、ビジネスホテルで酒を勧められ…

 6月某日、アカリさんと青年は新宿駅で対面する。年齢を聞かれ答えると、「俺ロリコンなんだよね」と笑顔で返してきた。青年の奢りで寿司屋で食事をしたのち、青年はアカリさんに対し「お金を取りに行くから少し待っていてほしい。自分が借りている部屋で待っているか、歌舞伎町を1人で回って時間を潰しておいてほしい」と話したという。

 慣れない歌舞伎町を独りで歩くのが怖く、熱中症になる危険もあるような気温だったため、アカリさんは言われた通り、青年が泊まっているビジネスホテルで1時間ほど青年を待つことになった。

 1時間後、お金を受け取ったという青年は酒を買ってホテルに戻ってきた。「飲もう」と何度か促され、2口ほど口にした。そのままベッドに誘われた。その時、アカリさんは初めて青年の目的を察知した。無理やり攻められる中、何度も抵抗し、性行為自体は未遂に終わった。

 アカリさんは「こういうこと無しで普通に会いたい」と青年に話し、翌日はトー横で複数人と遊んだという。

 青年はアカリさん以外にも、ネットで出会った未成年と行為に及ぶことがある噂の絶えない人物であった。中には青年に金銭を直接渡している少女もおり、アカリさんによると、食事を終えた際の「お金を取りに行く」は銀行などではなく、そうした少女の1人に会っていたのではないかということだった。

■「英雄」のようにはやし立てられた青年

 逮捕された事実や黒い噂があったにもかかわらず、アカリさんはなぜ青年と会うことを決めたのか。トー横界隈ではある変化が起きていたのだ。

 青年は逮捕されてから程なくして、動画投稿を再開。TikTokなどのSNSでは、自分の本名をハッシュタグにして投稿し、コメント欄では「〇〇君カッコイイ」「本当に好き」「貢ぎたい」などのコメントであふれていた。

 逮捕によって知名度が上がり、一定数のファンが生まれるほどになったのだ。そして、そのファンのほとんどが18歳未満の少女たちであった。アカリさんもその1人だった。

 トー横界隈では「〇〇お帰り」「児ポ〇〇」(児童ポルノ)という言葉とともに、青年と一緒に動画を撮ったり、自撮りをして、ある種の「英雄」のようにはやし立てている風潮があった。青年は釈放後は、バーなどで働き一部のファンが通っていたが、現在SNSの更新は止まっている。

 アカリさんはそれ以来、トー横には足を運んでいないという。

「遊びに行ったときに皆で撮ったTikTokがバズっちゃって、学校の子にも知られちゃって。『アイツトー横界隈らしいよ』と陰口をたたかれました。学校中に私の噂が広まったことで、余計に学校に行けなくなりました。今後は多分行かないかな…」

■家庭や学校で生きづらい少年少女の拠りどころに

 トー横は、家庭や学校で生きづらい少年少女のサードプレイスとしての側面が存在している。しかし、そこには未成年と知りながら性的行為に及ぶ青年のような事例や、無知を利用して悪質な手口で売春をさせたり、不利益な行動をとらせる大人も存在する。

 しかし、そんなトー横に先日メスが入った。警察による一斉摘発が行われたのである。この摘発により、未成年の少年少女10人近くが、飲酒や喫煙などの非行をとがめられて、補導されることとなった。これまでは軽く注意する程度だったが、ここへきて本格的に「トー横キッズ狩り」を始めたのだ。

 トー横の一部には、猫よけのようなトゲ付きシートが設置され、座れないようになっている。後日、トー横に行ってみると、以前のように未成年が大人数で溜まっている様子は見られなかった。この摘発によって、トー横は良い方向に進むのだろうか。これからの彼らの動きに注目したい。

(佐々木 チワワ)

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