読売新聞「値上げ」から考える“新聞配達留学生”の見過ごせない問題

読売新聞「値上げ」から考える“新聞配達留学生”の見過ごせない問題

FAで巨人入りする丸選手と握手する原監督 ©?時事通信社

 12月12日の読売新聞。スポーツ面には広島からフリーエージェント(FA)で巨人入りした丸佳浩外野手の入団会見の記事が。

「5年総額25億5000万円で、年俸は4億5000万円。(金額は推定)」が目に入る。下世話ですいません。

■「丸巨人入り報道」の日の1面に

 巨人のFA補強は丸選手含めて総額50億とか報道されていて、新聞社ってお金を持っているんだなぁと感心していた。

 すると同じ日の読売1面には「読者のみなさまへ」というお知らせが。

 読売新聞からの「本紙購読料改定のお願い」であった。

 現在の朝夕刊セットの月ぎめ購読料4037円(消費税込み)を、来年1月から4400円(同)に改定するという知らせ。363円の値上げである。読者は月に1日当たり10円余の負担増。

 これを「読売FA大補強の補強費か!?」と茶化してみるのも一興であるが、この記事は真面目に考えて新聞界にとって大きいと思った。新聞の今がみえてくるかもしれない(読売は消費税率引き上げに伴い、購読料は2度改定したが、本体価格は25年ぶりの値上げ)。

■見えてくる「新聞配達」の独特さ

 読売は値上げの詳しい説明を2面に掲載。そこには「戸別配達網を維持」という大きな見出しが。

 抜粋してみる。

《社会情勢が大きく変化し、新聞業界を取り巻く経営環境の悪化は、読売新聞社も例外ではありません。全国の読売新聞販売店では、深刻化する人手不足の影響で、従業員の労務難がこの1、2年で加速しています。従業員数は1年前に比べて5%弱(東京本社管内)も減少しました。》

「人手不足」という社会情勢がリアルにわかる。

 さらに次。

《本社と販売店は、労務環境の改善などに取り組んでまいりました。輸送コースを徹底的に見直すなどしております。

 しかし、ガソリン価格が上昇するなど配達コストが増大しています。》

 強調されるのは「人件費や輸送費上昇」だ。その理由には新聞独特の宅配制度がみえてくる。戸別配達網を維持するためにはコストがかかるのだ。

■日刊ゲンダイの短期連載を思い出した

 ここでハッとした。そういえば……と思い出した記事があったのだ。

 日刊ゲンダイが今月から始めた短期連載である。外国人労働者受け入れ拡大のための入管法改正案が成立したが、そのずさんさゆえ、これまでの「技能実習制度」も注目された。

 しかしゲンダイはジャーナリスト出井康博氏による「留学生」に注目した短期連載だったのだ。実習生にも増して留学生がひどい待遇を強いられている、という告発。

 なかでもインパクトがあったのが12月11日付の「“奴隷労働”が支える全国紙の配達網」という回。現在の新聞の宅配制度は留学生なしではありえない現実が書かれていた。

《新聞配達は今、留学生なしでは回らない職種のひとつだ。特に都市部の新聞販売所では人手が足りず、留学生頼みが著しい。東京都内には配達員全員がベトナム人留学生という販売所まである。》(12月11日付)

 かつては「新聞奨学生」が大きな戦力だったが、時間的にも体力的にも厳しく最近では日本人の若者は敬遠。「そのため、留学生に頼る状況となる」という。

《新聞業界で最も早く「留学生」に着目したのは「朝日新聞」だ。1980年代初めに「朝日奨学会」を通じ、中国から新聞奨学生の受け入れを始めた。ただし、当時は中国との友好事業の一環で、人手不足とは無関係だった。そして近年、販売所の人手不足が進むと、ベトナム人奨学生が急増していく。昨年は300人近くが来日し、首都圏の販売所に配属された。》(同)

■もはや「偽装留学生」と告発する理由は

 発端は朝日新聞の奨学生受け入れであった。さらに注目すべきは留学生の「違法就労」だ。留学生のアルバイトは「週28時間以内」に収める必要があるが、出井氏は次のように書く。

《筆者は過去4年間で、50人以上のベトナム人奨学生にインタビューし、彼らの新聞配達への同行取材も2度行った。結果は、「週28時間以内」で仕事を終えている者などひとりもいなかった。》

 うーーん……。

 他の全国紙の販売所でも留学生アルバイトが急増中であり、違法就労を強いられる留学生が少なくないという。もはや「偽装留学生」であると。

 記事の締めは、

?《全国紙は、実習生に対する「人権侵害」を頻繁に報じる。一方で、偽装留学生問題を無視し続けているのは、配達現場の違法就労問題があるからなのだ。》

 日本の新聞を支える宅配制度にはこんな現実があったのだ。


 ここで今回の読売新聞の値上げ理由「戸別配達網を維持」「人件費や輸送費上昇」があらためて頭をよぎる。つまりこれは読売だけの話でない。値上げに関しても、他紙も今後足並みをそろえてくることが予想できる。

 ゲンダイ師匠の今回の特集は外国人労働者問題と新聞の宅配制度がつながっていることを指摘した。

■宅配制度が抱えている「闇」

 ここで私は以前自分で書いたものを思い出した。新聞の軽減税率についてである(増税されても一般紙は日用品扱いで8%のまま)。

「定期購読で週2回以上発行される新聞」が軽減税率を適用されることについて思うところを書いたのだ。

《何か思いませんか。駅売りで買う限り、『東スポ』、『日刊ゲンダイ』、『夕刊フジ』などの夕刊紙、タブロイド紙は軽減税率の対象外なのだ。タブロイド紙は除外されており、『日刊ゲンダイ』はそもそも雑誌扱い。軽減税率の対象は当初「新聞・雑誌」といわれていたが、いつのまにか新聞だけになっていた。》(「軽減税率を各紙はどう報じたか」『芸人式新聞の読み方』幻冬舎より)

《ああ、新聞界でもこんな差別が発生している。「民主主義を支える基盤だ」と言うならどの新聞も平等ではないか。「税率を高くする新聞、据え置きの新聞」の差があってよいのだろうか。必要な情報、必要じゃない情報はお上が決めるのか?不自然ではないか。『朝日』『読売』『毎日』はこの理不尽を見て見ぬふりでよいのか。噛みつかないのか? 『東スポ』『日刊ゲンダイ』『夕刊フジ』の逆襲がみたい。》(同上)

 以上は昨年出版した本に書いたものだが、今回ゲンダイは一般紙の宅配制度の「闇」に見事に噛みついたと言えまいか。

 それにしても新聞社は資金が潤沢でお金持ちだと思っていたが、宅配制度を保つには大変な時期に差し掛かっていることが「値上げ」と「留学生」の記事を読み比べたらわかったのである。

(プチ鹿島)

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