池袋から1時間20分 SLだけじゃない秩父鉄道「3つの魅力」

池袋から1時間20分 SLだけじゃない秩父鉄道「3つの魅力」

秩父鉄道の西の端、三峰口駅

 秩父鉄道は埼玉県北部で東西方向の路線を運行している。西の端は三峰口駅。東の端は羽生駅。羽生駅で東武伊勢崎線、熊谷駅でJR高崎線、上越新幹線、北陸新幹線、寄居駅で東武東上線とJR八高線と接続する。御花畑駅付近に西武秩父線の西武秩父駅がある(特急ちちぶ号に乗れば池袋から約1時間20分で着く)。西武鉄道とは線路がつながり、直通列車もある。これらの路線を経由して、秩父や長瀞に訪れる観光客も多い。

■東武鉄道と秩父鉄道の線路がつながっている

 過去には東武東上線、国鉄時代の八高線、JR高崎線と直通する列車もあった。東武鉄道は伊勢崎線系統と東上線系統の線路が離れているけれど、両系統をつなぐ役割が秩父鉄道だ。実は、東上線の車両は定期検査や配置転換のため、秩父鉄道を通って伊勢崎線へ行き来している。

 秩父鉄道と言われてピンと来ない人も、SLが走る路線といえばわかるかもしれない。週末に熊谷駅と三峰口駅を往復する「パレオエクスプレス」だ。パレオというと南国の民族衣装や女性の水着のスカートを連想するけれど、パレオエクスプレスのパレオは古代の海棲哺乳類「パレオパラドキシア」に由来する。秩父で化石が見つかり、このあたりが大昔は海の底だったと証明された。

■近年は故障と運休が増えていたが……

 パレオエクスプレスは1988年から運行開始。今年は30周年を迎えた。関東のSL復活運転の第1号だ。近年は真岡鐵道、JR東日本高崎地区、東武鬼怒川線でもSL運行が行われてライバルが増えているけれども、パレオエクスプレスの人気は衰えていない。都心から西武鉄道や東武鉄道、湘南新宿ラインなどで訪れやすいからだ。

 しかし、そんなパレオエクスプレスも近年は故障と運休が増えている。2018年も9月に故障が見つかり修繕が長引いていたが、2019年1月1日より約2年ぶりの冬期特別運転が再開されることになった。

 ただし、SL列車が走らなくたって秩父鉄道は面白い。ふだんはSL列車の陰に隠れてしまう魅力を紹介したい。

■秩父や長瀞を巡る旅にはもってこいの「秩父路号」

 秩父鉄道の魅力その1。急行電車秩父路号だ。平日は朝と夕方を中心に熊谷駅〜影森駅間で6往復運行している。休日は1往復減って5往復になるけれど、日中を中心として羽生や三峰口駅まで延長運転する。停車駅は寄居、長瀞、秩父、御花畑など。乗換駅や観光地の最寄り駅を結ぶ。

 SLパレオエクスプレスは秩父鉄道の目玉商品だけど、観光にちょうどいい時間帯に1往復だけだから、SLに乗るだけで1日が終わってしまう。しかし秩父路号は運行本数が多く、朝の便から夕方の便まで選べるから、秩父や長瀞を巡る旅では便利だ。

 秩父路号に使われている6000系電車は西武鉄道の通勤型電車を改造している。座席は西武鉄道の特急電車「レッドアロー」の中古品で、2人掛けのリクライニングシート。オススメは車両の中央部で、通勤電車時代に片側に3つあった扉の1つを潰して大きな窓ガラスをしつらえた。秩父鉄道沿線の景色を楽しむにはここがオススメ。

 秩父路号に乗るためには乗車券のほかに急行券が必要だ。1乗車につき大人200円、子ども100円だ。ほとんどの利用者は「各駅停車で充分」と思っているようで、繁忙期の休日でも秩父路号は比較的空いている。ゆったりと2人掛けシートで景色を楽しもう。

■秩父鉄道は数少ない貨客混在路線の一つ

 秩父鉄道の魅力その2は、多彩な車両たち。各駅停車に使われている電車は、東急電鉄や都営地下鉄で活躍した懐かしい車両だ。5000系は都営地下鉄三田線で活躍していた6000形電車、7500系と7800系は東急電鉄で活躍した8090系電車。7000系は元東急8500系で、2022年度までに東急線では引退予定となっている。都会で活躍した電車の第二の人生が秩父鉄道というわけだ。

 三峰口駅には引退車両を保存する公園もある。機関車や電車、貨車は内部も覗ける。車体の痛みは激しくて、悲しくも寂しい印象だ。鉄道輸送の歴史的財産のはずだけど、修繕費を集めるためにクラウドファンディングなどを活用したらどうかと思う。

■はたらく鉄道の頼もしさを感じる

 秩父鉄道の魅力その3は貨物列車だ。私鉄で旅客列車と貨物列車が混在する路線は全国でも少なく、ここ秩父鉄道と三重県の三岐鉄道、岡山県の水島臨海鉄道だけだ。秩父鉄道の貨物列車は、武甲山から掘り出したセメントの原料・石灰石を運ぶ。黒い貨車がズラリと連結されて、その先頭で小さくてかわいい電気機関車が引っ張っていく。

 時代の変化でトラック輸送に押されて減ってしまったとはいえ、現役で活躍する貨物列車は頼もしくカッコいい。秩父鉄道では電車と貨物列車がすれ違う場面や、途中にある広大な貨物駅に佇む黒い貨車たちを眺められる。はたらく鉄道の頼もしさを感じる。

 秩父鉄道といえばSL列車「パレオエクスプレス」だ。そこに異論はないけれども、ぜひ2度目は急行秩父路号に乗ってほしい。SL列車に隠れてしまった沿線の観光や秩父鉄道の魅力を再発見してみよう。

写真=杉山秀樹/文藝春秋

(杉山 淳一)

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