関西の“ナゾの終着駅” 真反対の「網干駅」と「野洲駅」には何がある?

関西の“ナゾの終着駅” 真反対の「網干駅」と「野洲駅」には何がある?

終着駅の旅。今回の舞台は関西である

 年末年始は青春18きっぷのシーズンである。18きっぷを握りしめて全国各地の鉄道に乗りまくる正月休みを過ごす人も多いことだろう。で、そんな18きっぷの旅で特にありがたみを感じる列車が「新快速」である。関西を走る新快速ならば、米原から乗ってうとうとしているうちにあっという間に滋賀県を通り過ぎて京都、大阪、三ノ宮、姫路……と駆け抜けてゆくのだ。18きっぷで乗ることのできる列車の中ではいっとう速い列車である。

 と、そんな18きっぱーはもちろんのこと、普段から新快速を使っている人たちなら気になる駅があるはずだ。新快速やそのひとつ格下の「快速」などでしばしば終点の駅となっているあのふたつの駅。そう、網干駅と野洲駅である。というわけで、今回は終着駅の旅 年末年始特別版。関西地方なら外すことのできない二大終着駅であるこの2駅に足を運んでみた。

■■網干駅(JR山陽本線/兵庫県姫路市)

 地元の人や鉄道ファンなら馴染みのある駅だろうが、意外と難読。「あぼし」と読むのだが、どこにあるかというと姫路よりも西である。姫路から先、新快速も快速もすべての列車が各駅停車として走るから、当然に網干駅も全列車が停車する。日中ならば1時間に2〜3本ほどの快速が、夜遅くなるとほとんどの新快速も網干行となる。だからJR神戸線や京都線を使っている人も、「網干行」には耳馴染みがあるのではないか。

 ではそんな網干駅はどんな駅なのか。ご想像の通り、ごく普通の地方の小さな駅である。最近はやりの橋上駅舎(改札口や線路を跨ぐ自由通路が一体となった駅舎がホームの上にあるタイプ)ではあるが、できたてのピカピカではなくてちょっと古い感じが絶妙な“国鉄時代”の香りを誘う。さらに北口に出てみれば、これまたいかにも“昭和”な雑居ビルが建つ。都会の駅前ビルのような華やかな商業ビルではないけれど、これもまた“地方の駅前”感がムンムンなのだ。

■駅周辺にあるのは……駐車場

 そしてその周囲は……これでもかってほどに駐車場である。北口の駅前には小さなタクシープールもあって客待ちのタクシーも並んではいるが、駅から出てきた人たちの大半は足早に近くの駐車場へ消えていき、そこからマイカーで去っていく。北口だけでなく、南口にいたっては駅に隣接して立体駐車場まであるほどだ。そしてこれらの駐車場、実に安い。1日停めてもなんと600円。東京のど真ん中だったら1時間も停められない料金で、1日クルマを置きっぱなしにできるのだ。

「ここでね、朝クルマを停めて会社に行くんです。神戸も大阪も一本で行けるし駐車場だけじゃなくて家賃も安いからね」

 駐車場に急ぐ会社員らしき人に聞いてみたら、こんな答えが返ってきた。なるほど、確かに網干駅から始発電車に乗れば座って快適に通勤もできるし、悪くないのかもしれない。だから駅のあたりは駐車場だらけ。都心の駅前にはお決まりのコンビニやファーストフード店も見当たらないのは、すぐにクルマに乗ってしまうから駅周辺の滞在時間が短いということなのだろう。逆に言えば、駅の周りがちょっと淋しげでもあった。

■■野洲駅(JR東海道線/滋賀県野洲市)

 網干駅から新快速に乗り込んで約2時間20分。新幹線なら東京から京都まで行けてしまうほどの旅をしたら到着するのが反対側の終着駅、野洲である。こちらも1時間に2本ほどの列車が京都・大阪方面から走ってきて終点としている。近くには草津や守山、さらに東に行けば観光地としても知られる近江八幡などもある。野洲駅はその間に位置する駅なのだ。

 となれば、網干駅とそれほど違わない雰囲気じゃないか……と思って降り立ってみると、これがビックリである。琵琶湖とは反対側の東口駅前には大きなマンションがいくつもドーン! 背丈の高いビルはこうしたマンションくらいで、あとは商業ビルも少ない小さな駅なのだが、駅のあたりを歩く人の数も網干駅と比べると段違いに多いのだ。最近になって整備されたと思しきキレイな東口駅前のバス乗り場には長蛇の列も……。

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■「新大阪まで1時間なので便利ですよ」

 では反対側の西口に出てみればどうか。こちらも真新しい駅前広場に、その周囲には小さいながらも個人経営の飲食店が多く軒を連ねている。少し離れた場所には京セラやオムロンの工場もあるようだから、そこで働く人たちが使っている店なのだろうか。ともあれ、東西ともに網干駅とは比べものにならないほどに賑わっている野洲駅なのである。ここでも駅の利用者に声をかけてみた。

「近くに家を買いましてね、新大阪まで通勤してるんですけど、野洲からなら新快速に乗れば1時間くらいですから。最近はマンションも増えているし便利だと思いますよ。ちょっと駅から離れたら田んぼとか緑も多いから子育てにもいいですし」

 網干駅で聞いた話とよく似ているが、つまるところ京都・大阪・神戸などの都心に乗り換えなしでアクセスできるという点で野洲と網干は同じような立ち位置なのである。その上で、野洲は京都や大阪なら幾分か近く、鉄道沿いの“新興住宅地”。滋賀県は京阪神のベッドタウンとして人気があるようだから、野洲駅周辺も新たに引っ越してくるにはうってつけの町なのだろう。

■そして終着駅といえば「車庫」

 と、こうして網干駅と野洲駅という京阪神新快速の二大終着駅を巡ってみた。盛んに18きっぷを利用しているような人なら「どっちも車庫が近くにある駅でしょ」というくらいには想像がつくだろうが、それももちろん正解。網干駅近くには網干総合車両所があるし、野洲駅近くにも網干総合車両所宮原支所野洲派出所がある。終電間際に網干行・野洲行が増えるのはこうした理由からだ。でも、わざわざ途中下車して駅のあたりを歩いたことがある人はきっと少ないはず。年末年始、18きっぷを使って関西を旅するならば、あえてこうした“何の変哲もない終着駅”に降り立ってみてはいかがだろうか。意外な発見がある……かもしれない。

写真=鼠入昌史

(鼠入 昌史)

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