記者が現地に住んで分かった“トランプ支持者の実態”とは?

記者が現地に住んで分かった“トランプ支持者の実態”とは?

『記者、ラストべルトに住む トランプ王国、冷めぬ熱狂』(金成隆一 著)

「トランプ支持者は“高卒のブルーカラー層”などと一括りに形容されます。でも私は、彼らを具体的な人として描き、肉声を記録として残したかったんです」

 金成隆一さんは2016年の大統領選の震源地となったアメリカ中西部の「ラストベルト」(=さびついた工業地帯)で、選挙前からトランプ支持者たちを取材し続け、前作『ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く』(岩波新書)にその成果をまとめた。本書は、その後のラストベルトに「住み込んで」「定点観測」した異色作である。

「15年12月から通い続けて、友達も増えました。熱狂的なお祭り=大統領選が終わった後の彼らの日常はどんなものだろう。それを目撃したい、そしてここまで来たら、彼らのコミュニティに入って、同じ物を食べたい、と思ったんです」

 NYの国連本部担当の傍ら、17年10月から3カ月、オハイオ州の、かつて製鉄業と製造業で栄えた街にアパートを借りた。一帯は貧困率35%、薬物依存の犠牲者が相次ぐエリアだ。

■住んで分かったトランプ支持者の実態とは?

「カフェでコーヒーを飲み、飲み屋に行って、街の人たちと雑談しました。住み込んで初めて分かったのは、たとえば田舎の人はガソリン価格で景気を測るんです。『オバマの時は4ドルに迫ったが、トランプになって2ドル17セントに下がったぞ。トランプがいかに凄いかわかるだろ?』なんて言う。CNNやWSJが流すのは遠くの経済ニュース。彼らにとっては、角の工場が人員募集を始めた、という話の方が重要なんです」

 一人一人の顔がよく見える。例えばナンシーという女性は、かつてGMの工場で働いたことを生涯の誇りにし、貧困層への転落を恐れる。デイナというカフェの店員は、弟や高校の同級生を薬物中毒で失っている。

「街の衰退に打ちひしがれていた労働者は、大統領選でのトランプの言葉に心震えていた。自由貿易や環境問題もいいが、見捨てられた私たちの声を聞いて欲しい、というのが彼らの根底にある気持ちだと思います」

 トランプ礼賛本にならぬよう、白人民族主義団体やリベラル派の集会での声にも耳を傾け、一方でトランプの数々の嘘についても批判的に検討を加えている。

 先の中間選挙では、民主党が下院の過半数を取った。しかし、金成さんは言う。

「私が取材したラストベルトのトランプ支持者の7〜8割の支持は揺らいでいない。20年の大統領選でも引き続き、ここが勝負を決する地になるでしょう」

『記者、ラストべルトに住む トランプ王国、冷めぬ熱狂』
積極的にトランプを支持した元民主党支持者、消極的支持者、トランプに投票したことを後悔する人、就任後に積極的に支持に回った人――大統領選が終わり、日常に戻ったラストベルトの人々は、いま何を思うのか? 労働者の街に住んだ記者が丹念に声を拾い上げて見えてきた、もう一つのアメリカのリアルとは?

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2018年12月27日号)

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