黄色いベスト運動 マクロン大統領はなぜみんなに嫌われるのか?

黄色いベスト運動 マクロン大統領はなぜみんなに嫌われるのか?

マクロンの支持率は23%まで急落 ©共同通信社

 マクロン大統領(40)にとってゴーン逮捕はまずいタイミングで起きた。ゴーンの経営とは要はルノーの部品生産をモロッコなどに移し、その穴を日産車や共通部品の生産で埋めることだった。日産が離れたら? いまフォードの工場閉鎖で900人の解雇が話題だが、それでは済まない。だからこそ、G20で安倍首相に首脳会談をしきりに求めたのだ。あの時、手違いでマクロンを空港で出迎えたのは整備士だけだった。よりによって、黄色いベストを着て。

 フランスでは、20年以上前から「上」と「下」の「社会的亀裂」が一番の問題となっている。いま全土で起きている「黄色ベスト運動」は「下」の反抗だ。マクロンは大統領選の時から「上」と見られることは致命的だとよく分かっていた。そこで、ブランドが大好きな25歳年上の妻を表に出さないようにした。彼自身もプライドは高いが、ギラギラしたサルコジとははっきりと違う。そのおかげか、資産について批判はない。

 ではなぜ不人気なのか?

■マクロンが嫌われる理由は「庶民じゃないから」?

 ゴーン同様、マクロンもプロ経営者だ。エリート学校出身で、下積み経験などなくいきなり幹部になる。庶民と違う人生を歩む。ゴーンはまだメーカーだったから現場と多少の接点はあったが、マクロンは投資銀行だ。だから庶民の気持ちを理解できない。

 経済財務大臣時代に長距離バスを認可した時、つい「貧乏人が旅行できるようにしました」などと言ってしまった。今日、ガソリン代に苦労する人に「電気自動車」を語っても「パンがなければお菓子を食べればいい」と言ったマリー・アントワネットと同じだということが分からない。

 おまけに政治の素人。大統領になってすぐ金融資産への富裕税を廃止した。サルコジでさえ諦めたことで、周囲の古参の政治家は一部廃止に留めろと注意をしたのだが、強行した。その一方で、年金への税負担を引き上げた。この2つがどんな効果を生むのかが、彼には読めないのだ。

 ベテラン政治家は次々とマクロンのもとを去り、いまや、彼の周囲には同じエリート学校の秀才だけ。ここに来て燃料増税延期や最低賃金引き上げなどを打ち出してきたが、マクロンが嫌われる理由は彼自身の存在そのものにある。それだけに根が深い。

(広岡 裕児/週刊文春 2018年12月27日号)

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