内幕本でNHK激震 「森友スクープ記者」今度はvs.佐川元局長

内幕本でNHK激震 「森友スクープ記者」今度はvs.佐川元局長

籠池泰典前理事長 ©共同通信社

 森友事件の本質やNHK報道の舞台裏を記した『 安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由 』(文藝春秋)。その著者で元NHK記者の相澤冬樹氏が今回、直撃取材を試みたのが、森友事件を巡って虚偽答弁を重ねてきた佐川宣寿理財局長(当時=61)だ。財務省のごく一部のOBとは顔を合わせているという佐川氏だが――。

◆ ◆ ◆

 本はNHK内にある書店でも完売し、さらに追加分が平積みされているというから、NHK内でも関心が高いのだろう。かつての同僚からは「よく書いてくれた」との評価や、「もっと核心に迫るものを期待していた。さらに踏み込んでほしい」というお叱りと励ましの声が伝わってくる。

 私が本で「特ダネに激怒した」と書いた小池英夫報道局長。発売日に行われた報道局の編集会議では「私の意向で報道内容が恣意的に歪められたことはない」と述べていた。だが、その言葉を額面通りに受け止める記者は少なかろう。彼らは「Kアラート」と呼ばれる“圧力”に直面してきたのだから。

 事件の一方の主役、森友学園の籠池泰典前理事長もすでにこの本を読んでくれている。「森友事件は森友学園の事件ではなく、国と大阪府の事件」との指摘について「的を射ている」とした上でこう語った。

「小学校設立は、安倍(晋三)首相と昭恵夫人、それに大阪府の松井(一郎)知事のスクラムによって始まった。ところが17年2月に問題が明らかになると、私がトカゲのしっぽ切りにされた。真犯人の責任は問われていない。相澤さんにはそこを追及してほしい」

 その厳しい指摘に応えることこそ、記者の務めだ。

 しっぽとして切られた最大の被害者は、自ら命を絶つところに追い込まれた近畿財務局の職員だろう。仮にBさんとする。Bさんについての元同僚たちの評判は極めていい。誠実に仕事をこなす有能な役人――そのBさんが公文書改ざんという常識外れの不正行為を押しつけられたのだ。

 その無念の思いをBさんはメモのような形で書き残している。完全な形では明らかになっていないが、改ざんについて「もとはすべて佐川理財局長(当時)の指示だ」とはっきり記しているという。財務省の中枢にいる人物の指示で、自分はこんな不正をやらされたのだという思いを文書に残していたのである。

 その無念の思いについて、当の佐川氏はどう受け止めているのか。NHK在職中も知人を通じて取材を依頼していたが、直接話すことは結局叶わなかった。

■私は佐川氏の自宅を訪ねた

 12月のとある朝。私は都内の閑静な住宅地にある佐川氏の自宅を訪ねた。しばらく姿を見せるのを待ったが、ゴミ収集日なのにゴミを出す動きすらない。近所の人の話では、最近は誰もこの家には住んでいないようだ。だが、玄関の花は生き生きしているし、誰かが定期的に訪れて手入れをしているようだ。本に手紙を添えて郵便受けの中に入れた。佐川氏が受け取り読んでくれることを願って。

 翌朝、私は再び佐川氏の自宅を訪ねた。昨日は玄関前に止まっていた車が、今朝はない。誰かが来た証拠だ。再び手紙を書いて、郵便受けに投函した。

 考えてみれば、佐川氏が関与したのは国会答弁と公文書改ざんだ。もちろんそれらは許されることではないが、肝心の国有地売却には関与していない。首相答弁との整合性を取ろうとした結果、役人人生を棒に振ってしまったことを思えば、彼もしっぽとして切られた一人なのかもしれない。

 森友事件は多くの人の人生を変えた。私の人生も変えた。亡くなった近畿財務局職員の無念の思いを晴らすまで、真相追及の手を緩めるわけにはいかない。

(相澤 冬樹/週刊文春 2019年1月3・10日号)

関連記事(外部サイト)