「書き換えだけど改ざんじゃない」 2018年“見出し大賞”はこれしかない理由

「書き換えだけど改ざんじゃない」 2018年“見出し大賞”はこれしかない理由

麻生太郎副総理 ©getty

 新聞を12紙購読する者として、今年の見出し大賞を発表したい。

 大賞は5月30日の日刊スポーツ。

「書き換えだけど改ざんじゃない」

 である。

《麻生太郎財務相は29日の衆院財務金融委員会で、森友学園への国有地売却をめぐる財務省の決裁文書改ざんに関して「改ざんといった悪質なものではないのではないか」と発言。あくまで「書き換え」との認識を示した。》(同)

 小見出しには「麻生財務相いまだかつてない言い訳」。

■27年前のネタなんて説明なしにわかるのかよ?

 これは「書き換えだけど改ざんじゃない」と併せて読むと、27年前の1991年にヒットした「さよならだけどさよならじゃない」(やまだかつてないWINK)のもじりであることがわかる。

 27年前のネタなんて説明なしにわかるのかよ? と思ったあなた、スポーツ新聞はおじさんが発信しておじさんが受信する新聞であるから大丈夫なのである。

 私はこの見出しをみて、やまかつWINKの曲であると当然理解。その一方でゲスの極み乙女。の「私以外私じゃないの」も思い出したので「ゲスの極み乙女。の新曲か」とツイッターでつぶやいた。すると、

「それはやまかつWINKでしょ」

「やまだかつてないWINKの方かと思った」

 などのリプライをいただいた。少し感動した。なぜなら、

 日刊スポーツのこの見出しを作った人もおっさん、「ゲスの極み乙女。の新曲か」と改ざんツイートした私もおっさん、それに対し「それはやまかつWINKでしょ」とすぐ反応したのもおっさん。皆おっさんだからだ(もしくはおばさん)。

 中年でぐるぐるまわっていたのである。ツイッターは匿名性が売りだが内容によっては年代がすぐにわかるという、同志感すら抱いた例だった。

■今年の永田町は「言葉のすり替えブーム」に沸いた

 それにしてもこの「書き換えだけど改ざんじゃない」は今年を象徴する見出しだ。

 同じく日刊スポーツのコラム「政界地獄耳」は、「言葉のすり替えブーム 発端は永田町」(11月20日)と書いた。本質を正面から見据えることを避け、聞こえのいい表現に変換すれば解決するとでも思っているのか、と。その発端は政治にある、と。

《「公文書を書き換えたけど改ざんではない」「武力衝突はあったが戦闘ではない」「つぶせとは言ったけど反則しろとは言っていない」と事態を正面から受け止めず、ごまかしたりすり替えたりしていたものも、最近では「残業代ゼロ制度は高度プロフェッショナル制度」に「移民を実技実習生や外国人労働者」に「日米FTAを日米TAG」に言い換える。》(同)

■「あった」はずのものが「なかった」論法はトレンドに

 言葉のすり替えだけではない。今年はまだトレンドがあった。「あった」ものが「なかった」という件である。

 私のこのコラムを振り返ると、そのテーマについて書いたものが今年何回かあった。

 たとえば、

紙面で振り返る、赤坂自民亭から加計問題まで2018年前半『政治的うそ』 」(8月17日)

 以下、抜粋する。

◆ ◆ ◆

 安倍首相と加計孝太郎氏の面会が「なかった」という件。加計学園の担当者が「二人の面会があったと自分がウソをついた」と言い出した。 なぜか政権がらみで「あった」ものが「なかった」というのは多い。

 首相が6月20日の夜に銀座のステーキ店で麻生財務相、自民党の二階幹事長、二階派の河村建夫衆院予算委員長らと会食したときのこと。その席で首相は延長国会について「もう集中審議は勘弁してほしい」と発言したと河村建夫氏が証言した。しかし、

《この発言を報道陣に紹介した自民党の河村建夫衆院予算委員長が21日、急きょ党本部に報道陣を集め、「勘弁」発言について「そういう言い方は一切なかった」と説明し、前日の発言を撤回。》(「『集中審議は勘弁』首相発言は『なかった』」 日刊スポーツ 6月22日)

 まだある。

「岸田氏の安倍首相との会談、菅氏が否定」(朝日新聞デジタル 7月25日)
?
《自民党の岸田文雄政調会長が党総裁選への立候補見送りに絡み、安倍晋三首相と23日に会談したと説明したことについて、菅義偉官房長官は25日の記者会見で「(首相は)会ったことはないということだった」と否定した。岸田氏は立候補見送りを表明した24日の記者会見で「昨日(23日)直接会って、(首相と)話をした」と説明している。》

◆ ◆ ◆

 さてここにきて驚くのは、なんとこの12月にまたステーキ屋の「うそ」があったことだ。

■「6カ月ぶり2回目」のステーキ屋の「うそ」

 12月13日の読売新聞が報じた。

?「『もっとヤジを』『首相発言』撤回」(12月13日)。

《安倍首相は12日夜、麻生副総理兼財務相や河村建夫・元官房長官らと東京・銀座のステーキ店で会食した。河村氏は終了後、会食中の首相の発言について記者団に問われ、「『最近の若い連中、もっと(国会で)元気出してヤジが出てもいいのに』と言っていた」と述べたが、直後に撤回した。》

《河村氏は今年6月の首相との会食後、首相が「(予算委員会での)集中審議は勘弁してくれと(話していた)」と記者団に説明し、翌日に撤回した経緯がある。》

 ああ、場所も同じステーキ屋でメンバーもほぼ同じ! 河村氏の撤回は「6カ月ぶり2回目」!

 河村氏がよほどウソつきなのか、それとも……。

 私は「1回目」の撤回のとき、次のように書いた(「 各紙も首をかしげる、安倍首相“銀座のステーキ屋発言”の謎展開 」6月29日)。

◆ ◆ ◆

 首相のマイナスになりそうな言葉や事実はすぐに訂正、否定されることが続く。本当に不思議だ。(中略)しかしこんな小さなことまでいちいち「なかった」ことになると、「大きな事実」に対しての態度もついつい想像してしまうではないか。

◆ ◆ ◆

 言葉のすり替え、書き換え、改ざん、そして「なかった」という撤回。

 もしかして2018年は「なかった」?

 そんなことすら考えてしまう年の瀬である。

(プチ鹿島)

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