メンタル専門医が解説 仕事始めの日につらくならない年末年始の過ごし方とは?

メンタル専門医が解説 仕事始めの日につらくならない年末年始の過ごし方とは?

山本晴義医師

 平成最後の正月休みは、1月4日の金曜日を休めば、9連休も夢じゃない。

「連休」がうれしくない人はあまりいない。しかし、その反動で「連休明け」はつらくなる。連休が長ければ長いほど、仕事始めの朝、会社に向かう足は重くなる。働き方改革が叫ばれる中、現代人は連休の上手な過ごし方も身に付けておく必要がありそうだ。

 そこで、横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長で心療内科医の山本晴義医師に、「仕事始めの日につらくならない正月休みの過ごし方」を解説してもらった。

■連休中も、普段と同じ時刻に起きること

「連休に限らず、普段の土日もそうですが、1日のリズムを狂わせないことがもっとも重要です。これが狂うと元の生活に戻すのに苦しむことになる。そうならないために実践したいのは、“起床時刻を変えない”ことです」

 山本医師によると、普段仕事のある日の理想的な起床時刻は、始業時刻の3時間前。つまり、9時に始まる会社なら6時に起きるともっともスムーズに仕事を始められるという。

 日頃からそうした「起床時刻の定時化」を励行し、会社が休みの日でも同じ時刻に起きるように習慣づけることが、連休明けのダメージを最小限にしてくれるという。

「せっかくの休みですから、日中は何をしてもかまわないし、夜は何時に寝ても自由です。ただ、朝起きる時刻だけはきちんと揃える。それだけのことで、体内時計は順調に回り続けます。これを徹底するか否かで、連休明けの体調はだいぶ違ってくるのです」

■過去の反省から「暴飲暴食」を予防する

「何をしてもかまわない」という山本医師だが、「暴飲暴食だけには気を付けてほしい」と釘をさす。連休中に酒浸りの日々を送ってしまったのでは、どんなに起床時刻を整えたところで、連休が終わる頃には体が労働に耐えられない状態になってしまう。

「過去に正月休みに飲み過ぎて、つらい仕事始めを経験したことのある人は、その時のことを思い出すことでセーブできることはあります。ただ、あまり楽しい取り組みではないですね」

 連休の目的はあくまで「リフレッシュ」と考え、適度に体を動かして、年末年始を楽しむ姿勢を堅持したい。

■仕事のことは考えてもいいが、メリハリを付けて

 せっかくの休みの日に、仕事のことは考えたくないものだ。しかし、気になる人は気にするし、気にしないように努力することで気疲れしてしまう人もいる。こうなると負のスパイラルだ。

「仕事のことは、忘れられるなら忘れたほうがいいでしょう。でも、無理に忘れようとして、それでストレスを背負い込むのでは意味がない。どうしても仕事のことが気になるなら、『○時から1時間は仕事の整理をする』と時間を決めて、それ以外は仕事から意識を遠ざけるようにするといいでしょう。メリハリを付けることが重要で、四六時中メールチェックをしたり、ことあるごとにパソコンやスマホで調べ物をしたり、ということは避けるべきです」

■出勤日が近づいたら、自分の仕事が誰に役立っているのかを考える

 たっぷり休んで、家族との団らんも楽しんで、いよいよ明日は仕事始め――となった時、急に会社に行くのが憂鬱になる人は少なくない。「ブルーマンデー症候群(サザエさん症候群)」の新春スペシャル版だ。

「『自分の仕事が誰かの役に立っている』と思えないと、人は仕事に戻るのがつらくなるものです。でも、誰の役にも立たない仕事などありません。連休明けに会社に行くのがつらくなる人は、連休中にゆっくり考えてみるといいかもしれません。

 消費者のため、顧客のため、株主のため、上司や同僚のため、会社のため、家族のため……。自分の仕事が誰にとって役立っているのかを明確にし、自覚を持てれば、会社に行くことが憂鬱になることはないはずです」

■家族サービスで「やりがい」を身に付けておく

「メンタルヘルスのキーワードは『自分の存在意義が感じられること』。すなわち自分が人の役に立っているという感覚がもてることです」

 と語る山本医師は、会社に行ってから「誰かの役に立つ」ことを意識するために、正月休みのうちにトレーニングをしておくことを奨励する。もっとも手っ取り早く、効果的で、周囲にも喜ばれるトレーニング法がある。いわゆる「家族サービス」だ。

「大掃除、料理、買い物、子供の世話など、何でもかまいません。忙しくて普段できないことに積極的に取り組むことで家族から喜ばれ、“役に立っている”という自信を持つことにつながります」

 そう語る山本医師は、こうも言う。

「“お役立ち感覚”は“存在意義”でもある。仕事でも家庭でも、この感覚を実感することでその組織の一員としての自覚が醸成され、やりがいを持つことができるのです。これはワーク・ライフ・バランスを考える上でも非常に重要なことなのです」

 家族の喜ぶ顔に勝る栄養剤はない。「やっぱりお父さんね!」「さすがママ!」という反応が得られるよう、楽しみながら家族の時間を過ごしてみてはどうだろう。

■「気の持ちよう」を利用してテンションを高める

 もう一つ、山本医師が勧めるのが、「シミュレーション」だ。

「前年の自分の仕事を振り返り、やり残したことがないかを考えるのです。未完のままだったり、手つかずのまま放置してあったりする事案を頭の中で整理し、どうすればその仕事を成功させられるのかを、仕事始めの前日に、具体的に検討するのです。年の初めという独特の高揚感もあって、普段にはない夢を描ける可能性が高まります。そして、その高揚感を利用して、ヤル気に満ちた状態で出社すればいいのです」

 何事も気の持ちようだ。嫌々会社に行くよりも、嘘でもいいから「今年はいい年にするぞ!」と思い込むだけでも、気分は違ってくる。

 年の初めくらい、意識的に自分の気持ちを昂らせてもいいのではないだろうか。もしかしたら本当にいい年にできるかもしれないし、少なくとも憂鬱なまま出社するよりは気分もいいはずですよ。

(長田 昭二)

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