「年末年始の出勤を強要された」そんなときに読みたい実践的対策とは?

「年末年始の出勤を強要された」そんなときに読みたい実践的対策とは?

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「年末年始に出勤を強要された」。「帰省しようと思っていたのに、勝手にバイトのシフトを入れられた」。年末年始が近づくこの時期、私たちのもとにはこのような相談が多く寄せられる。

 一方で、工場で働く非正規労働者など、年末年始のような連休になると、収入が減少し生活が苦しくなるという問題を抱える人々もいる。来春のゴールデンウィークが10連休になることが決まり、不安を抱えている方も多いのではないか。

 いずれの問題も、共通しているのは、働く日を一方的に決められてしまうという問題だ。実は、これらの問題は、法律の権利を活用することで解決できる可能性がある。今回は、この点について解説していこう。

■「シフトの強要」にどう対処する?

 先日、スーパーで働くアルバイトの学生がTwitterに投稿した写真が話題になった。写真はアルバイトのシフト表と思われ、その余白には、手書きで次のようなメッセージが書かれていた。

「わかっていると思いますが、12月22日から1月6日は出勤お願いします。帰省もあると思いますが、スーパーで働くということはそういうことです」

 シフトの作成を担当する店員が書いたものであろう。アルバイトの学生に帰省を諦め、強い表現でシフトに入るよう求めている。投稿者によれば、年末年始も時給は上がらないという。それにもかかわらず強気に出勤を求める店側の姿勢に対し、投稿者は違和感を訴えていた。

 この画像を見たネットユーザーからは、メッセージを書いた店員を非難し、投稿者に共感するコメントが相次いだ。同じような経験をした学生が多いようだ。読者のなかにも、学生時代にこのような経験をしたという方は多いのではないだろうか。

■多大な販売ノルマが課せられることも

 飲食店や小売業では、年末年始でも営業をするところが多い。昨今の人手不足を受けて年末年始の営業を見合わせる企業も見られるが、店舗にとってはかき入れ時でもあるため、それは一部の動きに過ぎない。

 営業をするための人手が確保できずに苦しんでいる店舗は少なくない。というのも、筆者がこれまで「 ブラックバイト 」問題として訴えてきたとおり、こうした業種では、学生のアルバイトが店舗運営の主戦力となっていることが少なくないからだ。学生たちが帰省し、シフトに入れるアルバイトがいなくなると、たちまち店舗は人手不足に陥ってしまう。

 このため、学生たちへの「シフトの強要」が後を絶たない。さらに、年末年始には多大な販売ノルマが課せられることも多い。学生たちの間では「年末が近づくと憂鬱になる」という声も聞かれるほどだ。

■まず、「契約」の内容を確認してほしい

 では、シフトに入ることを強要された場合には、どう対処すればよいのだろうか。この場合には、まず、「契約」の内容を確認してほしい。当初の契約で、週◯回、時間帯は◯時から◯時までといった形で定められていれば、その約束以上にシフトに入る必要はない。一方、勤務する日や時間帯があらかじめ「契約」で決まっていない場合、企業がシフトに入るよう求めることを規制する法律はないが、当然、労働者はそれを断ることができる。

 しかし、法律上はそうであっても、実際には断りづらい。従わなかったことを理由に嫌がらせを受けたり、ペナルティを課せられたりすることがあるからだ。シフトに入るのを断った後に急激にシフトを減らされたという事例も多い。

 このような場合に役に立つのがユニオン(労働組合)だ。仕事のシフトをどのように決定するかといった日常の店舗運営について、アルバイトが個人で交渉することは難しい。このため、社内の労務管理について、労働者に過剰な負担が出ないよう「対等な交渉」を実現するために労働組合法が定められている。ユニオンに加入することで、企業と集団的に交渉でき、合理的な解決を図ることができるのだ。

 トラブルになった場合は、すぐにユニオンに相談しよう。「ブラックバイトユニオン」など、アルバイトの相談を受け付けているユニオンも多く存在する。こうした個人加盟型のユニオンには、一人でも加入することができる。

■塾の講師全員が書面で契約を交わすことになった

 ユニオンに相談して実際に解決した事例も多い。例えば、ブラックバイトユニオンの ホームページ には多くの解決事例が掲載されている。そのうち一つを紹介しよう。

 塾でアルバイトをしていた大学2年生のFさんは、当初、週2日のシフトを希望していたが、塾長から週5、6日のシフトを強要された。大学の授業があってシフトに入れないと伝えても、「講師の都合で負担をかけるな」と無理やりシフトを入れられていた。

 Fさんは、ブラックバイトユニオンとともに塾側と団体交渉を行い、その結果、きちんとした雇用契約書が作成され、塾の講師全員が書面で契約を交わすことになった。そして、週3日、月曜日は休む、1日4時間を限度、22時半以降の仕事はしないといった事項が定められた。その上で、「学業安心シフト協約」というルールを作り、代行授業、試験監督などの通常シフト外の出勤を拒否できるなどといった規定を定めることができた。

 このように、ユニオンを通じて交渉することで、働き手の生活や希望に寄り添った働きやすい労働環境を作ることができるのだ。

■一方で、人手不足に苦しむ正社員も

 ここまで、学生アルバイトの視点から記述してきた。しかし、冒頭のメッセージを書いた店員を批判するだけでよいのだろうか。アルバイトを管理する店長や正社員側の立場に立てば、違った事情も見えてくる。年末年始にシフトに入ってくれるアルバイトが集まらない場合、店長や正社員自身が休みを取らずに働き続けなければならない。その結果、休むどころか、少人数で店舗の運営を回さなければならず、店長や正社員が長時間労働を余儀なくされるケースは少なくない。

 通常、人手が集まらなければ、時給を上げてなんとか人手を確保しようとするであろう。しかし、大手チェーン店のような場合、各店舗には、時給について裁量が与えられていないことが多い。権限や裁量はないにもかかわらず、店舗運営の責任を担わされる店長や正社員。こう考えると、冒頭に紹介したメッセージを書いた店員の気持ちも分からなくはない。

 過大な責任と人手不足が、時に労働者の生命を脅かすこともある。

 2006年12月、東京都多摩市の喫茶店で「店舗責任者」を務めていた25歳の女性が、自宅マンションから飛び降り自殺をして亡くなった。もともとアルバイトとして働いていた彼女は、2006年8月に正社員として雇用契約を結び、その翌日からいきなり「アシスタントマネージャー」として店舗責任者を任されていた。接客業務はもちろん、アルバイトの募集やシフト管理、売上管理、クレーム処理までを一手に担っていたという。長時間労働と責任者としてのプレッシャーが彼女を追い込んでいった。

 最も彼女を追い込んだと考えられているのが、店舗の恒常的な人手不足である。彼女が店舗責任者になった時点で、13名の従業員のうち、正社員はゼロ、11名が学生であった。その後、アルバイトが立て続けに退職してしまい、彼女の業務量は日に日に増大した。残ったアルバイトにもしわ寄せがいってしまい、次々に退職者が増えていった。亡くなる前日には、さらに2名の学生アルバイトから1月いっぱいで辞めるとの申し出を受けていたという。

■問題を解決するもう一つの方法

 このような職場では、学生アルバイトは常に苦しい選択を迫られることになる。辛そうな正社員のために自分の時間を犠牲にして働くか、あるいは気まずくなってもかまわないからシフトを断るかといった選択だ。どちらも好ましい選択ではない。

 だから、もう一つの選択肢があることを知っておいてほしい。やはり、ここでも役に立つのがユニオンだ。ユニオンを活用すれば、正社員とアルバイトが協力して職場のあり方を変えていくことができる。たとえば、営業時間の短縮、人員体制の見直し、繁忙期の手当支給などを「交渉」によって求めていくことが可能だ。このように、職場や働く者の実情に応じて企業と「交渉」し、実現していけるところがユニオンのよいところだ。

 労働組合というと、「春闘」のような賃上げ交渉をイメージする方も多いと思うが、実はこのような職場の身近な課題を柔軟に話し合いによって解決していけることこそ、ユニオンの真骨頂であるといえる。

 ユニオンを活用することで、正社員とアルバイトで負担を押し付け合うのではなく、協力しあって、お互いにとってより良い職場を実現していくことができる。もし職場に働き過ぎで疲弊している正社員がいるなら、一度専門家や支援団体に相談することを勧めてみてはどうだろうか。

■連休で生活が脅かされる人々も

 一方で、冒頭でも述べたように、時給や日給で働く非正規労働者や派遣労働者には別の問題が発生する。これらの人々の収入は働く日数や時間によって大幅に変動するため、休みが増えると大きな収入減少につながってしまうのだ。来春のゴールデンウィークが10連休になることが決まったが、単純にこの間の収入がなくなると考えると、月収の3分の1近くの収入が減ってしまうということになる。生活への影響はものすごく大きい。

 実は、このような場合にも、ユニオンの活用は有効だ。たとえば、自動車工場で働く派遣労働者が会社との交渉によって連休手当を勝ち取った事例がある。まさに労働者の生活実態に根ざした要求を実現した典型例だといえる。

 特に非正規雇用の場合には、企業の都合によって勤務日や就労時間が左右され、一方的に決められてしまうことが多い。しかし、本来、どれだけ働くかというのは、労使の合意によって決まるべき問題だ。自らの生活を守れるように、法律上の権利や制度を活かして、勤務日や就労時間を労使間の「交渉」によって決めるしくみを作っていくことが大切なのである。

 このように、労働法やユニオンを活用することによって、職場の状況や労働者の生活の実情に基づいて、問題の解決を図ることができる。お困りの方、特に過労により健康状態に不安を感じている方は一刻も早くユニオンなどの支援団体に相談してほしい。

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(今野 晴貴)

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