〈江東マンション神隠し事件〉「私のセックスで依存していただいて…」“二つ先の部屋”の隣人が23歳の女性をバラバラに“解体”した理由

〈江東マンション神隠し事件〉「私のセックスで依存していただいて…」“二つ先の部屋”の隣人が23歳の女性をバラバラに“解体”した理由

マンションを調べる捜査員ら

 2008年、東京都江東区のマンションで、会社員の女性Aさん(23=当時)が、殺害された「江東マンション神隠し殺人事件」。犯人の星島貴徳(33=逮捕当時)が、被害者の2部屋隣に住んでいたこと、ノコギリなどで遺体を切断しトイレに流すといった凶悪さ、何食わぬ顔で犯行後も報道陣の取材を受けるといった行動が、世間を震撼させた。星島の公判を傍聴したノンフィクションライターの高橋ユキさんが、公判の様子を振り返る。(全2回の1回目。 後編 を読む)

◆ ◆ ◆

■「女性を性奴隷にしたかった」

 2008年4月18日、金曜日の夜。東京・江東区の賃貸マンションに住む会社員の女性・Aさん(23=当時)が行方不明になった。

 Aさんは一緒に住んでいた会社員の姉に対して、帰宅直前にメールを送っていたが、姉が帰ると、Aさんの姿はなく、部屋の壁には血がついていた。防犯カメラには、その日の夜にAさんがマンションに帰宅する様子は記録されていたが、外に出ていったことを示す映像はなかった。

 突如としてAさんの姿が消えたこと、すぐには居所が判明しなかったことなどから、当時この事件は“神隠し”として連日大きく報じられた。事件から1ヶ月以上が経ち、逮捕されたのはAさんとその姉が住む部屋の、ふたつ隣で一人暮らしをしていた星島貴徳(逮捕当時33)。“神隠し”マンション住人のひとりとして、報道陣からの取材に何食わぬ顔で答えていた男だった。

 Aさんは、帰宅したところを星島に捉えられ、その日のうちに殺害されていた。また遺体は、完全にバラバラにされて遺棄されていた。金目的ではない。星島は当時、SEとして稼働しており、月約50万円の収入があった。現在すでに無期懲役が確定している星島は、かつて一審公判で「女性を性奴隷にしたかった」と語っていた。

* * *

■自室でAさんの遺体を細かく切断し、遺棄

 住居侵入、殺人、死体損壊、死体遺棄、わいせつ略取の罪で起訴された星島の公判は2009年1月13日から東京地裁104号法廷で開かれた。裁判員制度が始まったのは同年5月。全国初の裁判員裁判が同地裁で開かれたのが8月。まさに直前のタイミングである彼の公判は、早晩始まる裁判員裁判の、いわば“予行演習”にも見え、非公開で争点や審理計画を決める公判前整理手続を経て、公開の法廷では集中審理が行われた。裁判員のいない裁判員裁判のようなイメージである。

「全てその通りです」と起訴事実を全て認めた星島に対する被告人質問は、初公判のその日から始まった。

 星島は事件当日、Aさん方に性的暴行目的で玄関から侵入。Aさんを殴って両手首を縛り、部屋にあったズボンを顔に巻いて目隠ししたうえ、首に包丁を突きつけて自分の部屋に連れ込んだのち、包丁で首を刺して殺害した。その後、自室でのこぎりや包丁を使いAさんの遺体を細かく切断し、水洗トイレから下水道管に流したり、ごみ箱に捨てたりなどして遺棄した。

■素性も知らない“916号室の住人”を欲望のはけ口に

 事件を起こした年の2月に星島は、現場となったマンション最上階の角部屋、918号室に入居。のちに916号室に住み始めたのがAさんとその姉だった。だが星島は“916号室は女性の一人暮らし”だと思い込んでいた。

星島「3月中旬に、(Aさんの)お姉さんとすれ違いました。普通のOLが住んでると思いました。最上階は家賃が高く、学生とかは他の階を選ぶ。狭い思いをして2人で住むことはない、1人で住んでると思っていました」

検察官「916号室に女性が住んでいるということ以外、知っていたことは?」

星島「ありません」

検察官「名前や年齢、住所や職業も?」

星島「はい」

 つまり星島は、916号室にはAさんの姉が1人で暮らしていると思っていたのだ。接点はなく、素性も知らない。なのに彼はその“916号室の住人”を、欲望のはけ口にすることを決めた。事件の1週間ほど前に自室でAVを観ながら自慰行為に耽り、思いついたのだという。

■セックスをして調教しようと思っていた

検察官「この事件前に、その女性をどうしたいと?」

星島「自分の部屋に連れ去って、性的快楽を与え、自分の言いなりにしようと思っていました。自分なら、できると思っていました」

検察官「あなたの何にしようと思っていたんですか?」

星島「性奴隷です」

 聞き慣れない“性奴隷”という言葉が出たためか、検察官は改めて尋ねた。

検察官「もう一度、説明してください」

星島「……私のセックスで、私に依存していただいて、私のことが必要な女性にすることだと思います」

検察官「セックスをして調教しようと?」

星島「思っていました」

検察官「どうやって?」

星島「自分の部屋へ連れて行き、長い時間をかけて性的快楽を与えようと思っていました。女の部屋に押し入って、自分の部屋に、連れてくる……できると思っていました」

■本気で成功させるつもりでいた

検察官「性奴隷にすることができたらどうなると思っていたんですか?」

星島「恋人のようになれると思っていました。それ以上、深く考えてなかった」

 彼は性奴隷のターゲットに対して顔や性格のこだわりはなかった。

「一番近くで一人暮らしをしている。連れ込むのは難しくないだろうと思いました」

 逮捕前に報道陣の取材に答えていた時と同じような黒いタートルネックに、黒いズボン。メガネをかけ、淡々と答える。Aさんの関係者らが座る傍聴席前列のほうから、すすり泣く声が聞こえていた。

 性奴隷にしたい、相手が誰であっても自分のセックスで依存させることができる……突拍子もない考えだが、決行の日を金曜日にしたことは、彼なりに熟考した結果のようだ。

星島「普通のOLは金曜の夜から土日休みだから、そうすれば3日かけて調教できる。会社にも行かなくていい」

検察官「3日間、何するつもりだった?」

星島「セックスです」

検察官「つまりそれは強姦?」

星島「調教……」

検察官「強姦しても女性は快感を感じると思っていたんですか?」

星島「そのように思っていたフシはありました」

検察官「AVやそういったものの影響?」

星島「と思います」

検察官「性奴隷にすることに失敗するとは?」

星島「考えていませんでした」

 そのような計画がうまくいくはずはない、と多くが思うだろう。しかし星島は当時、本気で成功させるつもりでいた。だから事件が起きたのだ。

■玄関ドアの開く音を聞き、916号室に押し入った

 法廷では、星島が描いたという同人誌やイラストも大型モニターに映し出された。同人誌のタイトルは『外道』。いわゆる巨乳ロリ顔の女性が性的暴行を受けながら、徐々にそれに快感を覚えていくという筋書きのものである。星島は「強姦という趣旨ではない」と否定していた。あくまでも“調教”のつもりだったのか。

 女性は手段や経緯がどうであれ、セックスで快感を得れば相手に依存していくものだ……そんな歪みきった思い込みは星島の中で肥大していた。916号室の女性を連れ去る方法を思案した末、「帰宅してドアを閉める瞬間を狙うのが一番確実」だという結論に至り、実際にそのようにして、Aさんを自分の部屋に連れ込んだ。

 事件当日、18時半に帰宅した星島は、自室の玄関に体育座りをして耳をすまし、“916号室の女性”の帰宅を待った。靴音がしないよう、靴は履いていなかった。そして約1時間後、玄関ドアの開く音を確認すると、自室のドアを素早く開けて916号室に押し入ったのである。

■一連の事件の始まりとなるAさんの異変

「顔をきちんと見たのはこれが最初で最後でした。『嫌だ』とか『キャー』とか叫んでいました。声はとても大きかった……予想していなかったので、比べようがないが、とにかく大きい声。そして私を押し出そうとしてもみ合いになりました」

 “思わぬ抵抗”を受けたことで、星島はAさんを殴りつける。この時の血が、部屋に残されていた。のちにAさんの姉が見つけたものだ。殴りつけただけでなく目隠しをしたうえ、916号室の包丁で脅し、抵抗を封じた。自室に連れ去る際「脅迫に使えるかも」と、Aさんの持っていたバッグも一緒に持ち去った。

 星島の部屋に連れて来られたAさんは、さらに口にタオルを押し込まれ、ビニール紐で手足を縛られた。星島はAさんのバッグから携帯電話を取り出し、バッテリーを抜いたが、ここでようやく、目隠しで鼻まで覆っていたことからAさんが苦しそうにしていることに気づいた。そしてもうひとつ、一連の事件の始まりとなるAさんの異変に気づく。

■自分のものにすることができないと…

「左のおでこが、大きな傷口になっていました。3センチくらい……出血していました。最初に考えたのは、痛がってるんだと。それと、このように怪我をしてしまったことで、月曜に帰すことが簡単にできなくなったと思いました」

 血痕が残っているのではと慌てて918号室を出ると、廊下にAさんの血が落ちていた。916号室に入ると、自分の足跡とAさんの血の痕を見つけた。これらを拭き取り、また自分が触ったドアノブなどの指紋も拭き取って自室に戻ったが、星島は計画通りに物事が進んでいないことに激しい不安を感じていた。

検察官「月曜の朝まで監禁して強姦することが計画でしたよね。実際の状況はどう違いましたか?」

星島「激しい抵抗にあい……怪我をさせてしまい、とても強姦する気持ちになれませんでした。怪我を見て、自分のものにすることができないと……Aさんを気持ち良くさせることができないと思いました」

 裸の写真を撮影して脅迫に使おうと思うも、デジカメを持っていなかった。仮に脅迫がうまくいったとしても、怪我の痕が残ることで不審に思われ、いつか自分のしたAさんへの行為が明るみに出る。そんな不安から勃起もせず、無理矢理Aさんを襲うこともできない。AVを観ても状況は変わらなかった。こう着状態の22時20分頃、部屋のドアを叩く音がした。Aさんの姉からの通報を受け、警察が来たのだ。

―― 後編 では、警察が部屋を訪ねたときの星島の対応や、Aさんが語っていた将来の夢について、公判を振り返る。

〈江東マンションバラバラ殺人〉肉骨片を前に「以上が、遺族の元に還ったAさんの全て」 犯行後も“何食わぬ顔”でテレビに出た犯人の“性奴隷”計画 へ続く

(高橋 ユキ)

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