〈江東マンションバラバラ殺人〉肉骨片を前に「以上が、遺族の元に還ったAさんの全て」 犯行後も“何食わぬ顔”でテレビに出た犯人の“性奴隷”計画

〈江東マンションバラバラ殺人〉肉骨片を前に「以上が、遺族の元に還ったAさんの全て」 犯行後も“何食わぬ顔”でテレビに出た犯人の“性奴隷”計画

現場マンションに詰め掛けた報道陣

〈江東マンション神隠し事件〉「私のセックスで依存していただいて…」“二つ先の部屋”の隣人が23歳の女性をバラバラに“解体”した理由 から続く

 2008年、東京都江東区のマンションで、会社員の女性Aさん(23=当時)が、殺害された「江東マンション神隠し殺人事件」。犯人の星島貴徳(33=逮捕当時)が、被害者の2部屋隣に住んでいたこと、ノコギリなどで遺体を切断しトイレに流すといった凶悪さ、何食わぬ顔で犯行後も報道陣の取材を受けるといった行動が、世間を震撼させた。星島の公判を傍聴したノンフィクションライターの高橋ユキさんが、公判の様子を振り返る。(全2回の2回目。 前編 を読む)

◆ ◆ ◆

■警察は複数回、星島の部屋を尋ねたが…

 裸の写真を撮影して脅迫に使おうと思うも、星島はデジカメを持っていなかった。仮に脅迫がうまくいったとしても、怪我の痕が残ることで不審に思われ、いつか自分のしたAさんへの行為が明るみに出る。そんな不安から勃起もせず、無理矢理Aさんを襲うこともできない。AVを観ても状況は変わらなかった。こう着状態の22時20分頃、部屋のドアを叩く音がした。Aさんの姉からの通報を受け、警察が来たのだ。

 性奴隷という実現可能性の低い計画を実行するいっぽう、星島は機転のきくところがある。このとき、自ら部屋を出て「事情を知らない住人」を装ったことで、Aさんがいる部屋の中を見られることがなかったのだ。

 のちも警察は複数回、星島の部屋を訪ねた。しかしいずれにおいても、星島がやりすごしている。だがこの初回の警察とのエンカウントが星島の心を決めさせてしまった。

■「自分の道具を人殺しに使いたくない」

「918号室に入られると、すぐにAさんが見つかって逮捕されると思った。逮捕されると仕事も住む場所も、将来も、全部なくなると思いました。助かる方法を考えました。

 自分が女を拉致、強姦目的で連れ去った、そんな前科が付くことをとても恐れてたと思います。むしろそっちの方が強いのかもしれない。前科がついて、後ろ指をさされる……。逮捕されずに帰す方法を考えました。

 Aさんと私が付き合ってて痴話喧嘩で殴ったことにする……ただそれはAさんと口裏を合わせないと意味をなさない。到底無理だと思いました。いきなり拉致して殴りつけた男の願いを聞くわけがない。包丁で脅しても意味がない。

 結局、痕跡を消すために、警察に見つからないように、バラバラにして部屋に隠そうと考えた。そのためにはAさんを殺さないといけない。殺す方法を考えました。確実に殺すためにAさんを失血死させようと思いました」

 Aさんの痕跡を消したのちは、前のような生活に戻るつもりだったとも語った星島は「自分の道具を人殺しに使いたくない」との理由から、916号室から持ち去っていた包丁を手に取り、血が飛び散るのを防ぐためタオルで覆いながら、無抵抗だったAさんの首をいきなり深く刺した。

■ゴールは“元通りの生活に戻ること”

「早く死んでくださいと、早く死んでくれと、そのことだけを考えていました」

 しかし、Aさんは5分ほど経過しても、生きていた。

「……早く死なないかと焦りを感じていました。包丁を刺しっぱなしなことに気がついて、引き抜けば、早く血が流れて早く死ぬと思いました。右手は口を押さえたまま、左手で首の包丁を引き抜きました。抜いた後、血の流れる量が増えた……。抜いてから呼吸が止まるまで5分くらいだったと思います。その間、早く死んでください、早く死んでくれと……それだけだったと思います」

 こうしてAさんを殺害した星島は、凄まじい勢いで、その遺体の解体にとりかかる。彼のゴールは“元通りの生活に戻ること”だった。何日もかけ、ノコギリや包丁を用いて遺体をバラバラにし、トイレに流したり、ゴミとして投棄するなどした。その最中、警察が部屋の中を見に来ることがあったが、遺体の一部を隠している段ボール箱を指し「この中も見ますか?」など、逆に自分から見せるような態度を取ることで、発覚を逃れている。

■一部の遺体は下水道管より発見

 遺体をどう解体し、遺棄したかについては、被告人質問でも相当長い時間をかけて尋ねられた。特に陰惨な頭部の解体方法のみ、星島が法廷で語るのではなく、調書を読み上げる方法に切り替えるなど、一定の対応がなされていたようだが、衝撃的な内容であることに変わりはなかった。Aさんの関係者は時折、法廷を出たが、外から泣き叫ぶ声が聞こえてくる。のちに検察官は論告で「死体損壊、死体遺棄の態様は壮絶かつ悪辣」と述べていたがその通りだった。

 被告人質問に先立つ証拠調べの段階で、Aさんの遺体の一部そのものの写真が、法廷の壁に備えつけられた大型モニターに映し出されてもいた。

「以上が、遺族の元に還ることができたAさんの全てでもありました」

 こう検察官が述べたとき、モニターにはバットに並べられた肉片や骨片が映し出された。星島がバラバラにして遺棄したAさんの遺体は、逮捕後に警察が下水道管を捜索したことにより一部が発見されたからだ。

■星島が語った、女性との交際経験がなかった“原因”

 昨今の裁判員裁判では、遺体の写真は「刺激証拠」と呼ばれ、その取り扱いには注意が払われている。白黒に加工する、イラストにするなど、元の写真を裁判員に見せない配慮がなされる。そのうえで、刺激証拠を見せる旨を、前もって告げて覚悟をさせるなどの流れがいまでは一般的だ。だが当時は加工のない遺体写真が映し出されていた。

 Aさんがかつてアルバイトとして働いていた現代美術の画廊の経営者が調書で、彼女の人柄を振り返る。

「明確に将来の夢を持っていた。アートのことを勉強して、将来ファッション業界で働きたいと言っていた。あるレセプションでは得意の英語でインタビューをしてくれた。物おじせず、いつも自信を持って仕事に取り組んでいた……」

 将来に向けて邁進するAさんを突然襲った星島は、事件を起こすまで、給料が入るとデリヘルや風俗に通っていたというが、女性との交際経験はなかった。それは“幼い時の両足のやけど”が原因だったと、自ら語っている。

■現実の女を好きになろうとしたことは一度もない

星島「キモいと言われるのが絶対に嫌だったと思う。もしそんなことを言われたら殺してしまうかもしれません」

検察官「世の中の全ての女性があなたを馬鹿にすると?」

星島「男も女もです。また私も馬鹿にしてます」

検察官「だから現実の女性に声をかけても無駄だと思っていたんですか?」

星島「はい、いつかやけどの痕を見られて、気持ち悪い、そう言われると思っていました」

星島はやけどの痕で幼少期にからかわれ、親に相談したが、逆に怒られたという。こうした体験から「庇ってくれなかった」と感じ、事件当時は「殺したいほど憎い」のではなく「殺す」と思っていたとも語った。

検察官「女性の好みはあったんですか?」

星島「体格的なものやフェチなどは特にないです。精神的な優しさと、受け入れてくれる器の大きさがあれば……」

検察官「芸能人での好みは?」

星島「全くありません」

検察官「どうして?」

星島「人の気持ちを考えてなかったからです。現実の女を好きになろうとしたことは一度もないと思います。毛嫌いというか、諦めに近い。自己嫌悪の裏返しかも……」

■星島の死刑を希望するかの言動

検察官「あなたの好きなのは自分の意思を持たず、あなたのことを好きで、尽くしたいというだけの女性?」

星島「そうです」

検察官「現実にはいると思いましたか?」

星島「いないと思いました。いないので、作ろうと思いました」

 自分の欲求を全て受け入れる性奴隷を作ろうと思い、うまくいかなくなれば殺害し、その痕跡すら消そうとした星島は、逮捕当日は関与を否定したが、翌日朝に全てを認めた。被告人質問の最中、唐突に「絶対に死刑だと思います!」と叫び、終盤には「早く処刑していただければと願ってやみません」と述べ、死刑を希望するかのような言動が見られた。実際に検察官も「あまりにもむごい被告の所業が万死に値するのは誰の目にも明らか」と死刑を求刑したが、判決は「殺害行為自体は執拗とはいえない」などとして無期懲役となった。

■「女の子の希望や夢を壊さないで」

 共に暮らし、当日も直前までメールを送り合っていたAさんの姉は尋問の最後に、こう語っている。

「今、人を殺そうとか、犯してやろうとか、犯罪しようと考える人、どうか思いをとどめてください。たくさんの人がみんな傷つく。本当に生きていくのが怖くなる。たった1人の行動で、どれくらいの人が傷つくと思いますか。

 せっかく命があるから、自分の欲望のため、人をどうにかしようと思うんじゃなく、周りの人を幸せにするように動いて欲しい。そうしたら、何か変わると思います。幸せになりたいと思っている女の子の希望や夢を壊さないでください。お願いします!」

 星島に対しては検察官が控訴したが、これは棄却された。2009年に無期懲役が確定している。

 現場となったマンションはいまも東京・江東区にある。近隣の不動産業者によれば、事件の後、918号室は「入居中」とし、例の物件は家賃を7000円下げていただけでなく、周辺の物件相場も1万円ほど下がっていたという。

(高橋 ユキ)

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