超高濃度炭酸の“ラムネ湯”、爆発しそうな異臭、“サンゴ触感”な浴槽…二度見必至の「ヤバい温泉」ベスト10――2021年BEST5

超高濃度炭酸の“ラムネ湯”、爆発しそうな異臭、“サンゴ触感”な浴槽…二度見必至の「ヤバい温泉」ベスト10――2021年BEST5

思わず二度見してしまうような「ヤバい温泉」ベスト10を発表!

2021年(1月〜12月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。ライフ部門の第5位は、こちら!(初公開日 2021年12月26日)。

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 異様に赤茶けた浴室、漂う石油くさい匂い、触るとピリピリしびれるようなお湯……。日本には、そんなエッジの効いた温泉が隠れている――。

 日に日に寒くなってきたこの頃、お風呂で肩まで湯に浸かりたい季節がやってきた。家のお風呂やスーパー銭湯のみならず、近年のレトロブームで懐かし温泉も注目を集めている。

 そんな長い年月営業している「秘湯」では、思わずぎょっとしてしまうような「月日の蓄積」が見られることがある。今回は日本各地の知られざる温泉を探訪した異色の書「侘寂温泉」シリーズ(辰巳出版)の執筆者で、写真家・文筆家の魚谷祐介氏に、全国各地にあるそんな思わず二度見してしまうような「ヤバい温泉」ベスト10を選んでもらった。

■10位 温泉津温泉 元湯 泉薬湯@島根県

 温泉津と書いて「ゆのつ」と読む温泉津温泉は、島根県の日本海に面した小さな漁港の町に湧く1300年の歴史がある名湯だ。元湯 泉薬湯は温泉街の中でも最も渋い雰囲気の公衆浴場。

 レトロな浴室は自家源泉100%の激熱の温泉と析出物がコッテリと堆積した湯船がヤバい。ヌメっとした見た目だが手触りは石膏のような感じだ。泉質は含土類食塩泉という緑がかった濁り湯で有効成分がもの凄く濃厚だ。

 小さい方の浴槽は45度以上とかなり熱く1分入るのがやっと。パンチ力のある強力な湯だが浴後はとてもさっぱりしていた。

■9位 篠原温泉 高尾の湯(こうおのゆ)@広島県

 中国山地ののどかな山奥の渓流沿い、瓦屋根の民家のような日帰り温泉が高尾の湯(こうおのゆ)だ。現在の建物で65年以上になるが、10年ほど前から日帰り入浴のみとなったそうだ。

 急な階段を降りると男女別の脱衣所があり、渓流を真横に見る小さな浴室には古びたポリバスがヤバい味を出している。

 もちろん浴槽の表面の色は汚れではなく温泉成分が固着したものでこのポリバスの歴史を物語っている。しかも源泉は全国でも有数のph11.2という高アルカリ放射能冷鉱泉で、とろっとした浴感の名湯だった。

 渓流の爽やかな瀬音を聴きながらまったりと入浴できる穴場の秘湯だ。美しい紫色に反応する試薬を見せてくれたり、話好きな女将さんとの会話も楽しかった。

■8位 七里田温泉 下ん湯@大分県

 数多くの名湯が湧く温泉天国の大分県に日本でもトップクラスの高濃度天然炭酸泉、七里田温泉がある。別名ラムネの湯とも呼ばれる共同浴場の下ん湯の、こぢんまりとした湯小屋の中は温泉の成分で赤茶けており、温泉の強力さを物語っている。

 いざ入ってみるとまさにラムネの中に浸かっているという感じでシュワシュワ感がヤバい。泡付きが尋常でなくみるみる身体が泡に覆われていく。源泉は37.5度と人肌の温度だが、炭酸の効果で身体中の血行が良くなり浴後はとても温まり爽快だった。

■7位 吉田温泉 鹿の湯@宮崎県

 霧島連山を一望する雄大な景色が広がる宮崎県のえびの高原。火山帯のこの地域は泉質の種類も豊富な温泉の宝庫で、昔ながらの共同浴場も多く残っている。あまりの古さに入らずに帰る客もいるという激渋な共同浴場が吉田温泉 鹿の湯だ。

 明治時代に建てられたという本館がヤバい。“お化け屋敷”のように建物全体が傾き歪んでいる。廊下は波打ちふすまも傾き閉まらない。

 昭和50年ごろ建てられた浴舎のほうは、本館よりはマシだがかなりの年季が入っている。昆布茶のような湯はおがくずを炊いて加温されており柔らかい。温泉宿の風情が色濃く残る本館が気に入り、話好きな館主と意気投合して6泊もしたが、くたびれた部屋と滋味深い湯に癒された日々だった。

■6位 国見温泉 石塚旅館@岩手県

 秋田県との県境に近い岩手県雫石町を走る国道から県道に入り終点に辿り着くと、そこに奥羽山脈の山深き秘湯、国見温泉がある。

 標高850mの大自然の中にある鄙びた風情のある宿が石塚旅館で、浴室を見てまず驚くのが温泉の色だ。バスクリンより更に濃い、毒々しいほどに美しいエメラルドグリーン色がヤバい。泉質は含硫黄炭酸水素塩泉。硫黄等の成分が濃すぎてこんな色になるそうだ。

 重曹なども多く含まれているため温泉が掛け流される浴槽の周りには、まるでサンゴのように析出物が固まりその模様も美しい。油臭と硫黄臭のWパンチの匂いも強く、長湯していると硫化ガスで頭がクラクラするほどだ。

■5位 会津東山温泉 東山ハイマートホテル@福島県

 私は30年前から日本全国を自転車、オートバイ、ヒッチハイクやクルマなどあらゆる方法で旅してきた。いつも古くて味のある鄙びた温泉を探してきたが、この東山ハイマートホテルほど昭和40〜50年代のレトロ感を現在も味わえる宿は珍しい。

 福島県会津若松市の東山温泉街はリゾート系ホテルが進出し、昔ながらの旅館が少なくなったが、東山ハイマートホテルは昭和の雰囲気がそのまま残り、館内に入ると昔にタイムスリップしてしまう。

 懐かしい色合いの階段を地下に降りると河鹿風呂と子宝の湯の浴室があり、どちらも昭和の全面タイル貼りが美しい。

 自家源泉を持つ温泉はぬるつるの名湯で、他のホテルなどにも配湯しているほど湯量が多いそうだ。鄙びた浴室の窓からは渓流を見下ろせて、川を渡る風も爽快だ。

■4位 新屋温泉@青森県

 青森県は個性的な湯が多く湧出する温泉天国だ。津軽地方の平川市にある新屋温泉は地元住民に30年以上愛される温泉銭湯で、昭和レトロな雰囲気の建物が郷愁を誘う。

 浴室に入ると目に飛び込んでくるきれいなエメラルドグリーンの湯と、石油のような強烈な匂いがヤバい。

 浴槽の真ん中の管から源泉がとめどなく注がれているかけ流しの湯は、入ってみるとぬるぬるの肌ざわりで炭酸の泡感もありなんとも心地良い。浴後もいつまでもポカポカとよく温まる。色、石油臭、硫黄臭、炭酸と温泉好きには堪らない全部入りの名湯だ。

■3位 湯ノ岱温泉 上ノ国町国民温泉保養センター@北海道

 今や全国的にも珍しくなった体育館のような佇まいの湯ノ岱温泉 上ノ国町国民温泉保養センターは昭和50年に開業し、現在も当時のままの建物で昭和の雰囲気が熟成している。

 天井の高い広い浴室には温度別の浴槽と打たせ湯があり、成分の濃い炭酸泉がふんだんに掛け流されている。45年ほどの間に温泉の成分が石化し湯船や床には見事な模様を描いている。

 打たせ湯の壁は完全にコーティングされており艶めかしい生き物のようだ。炭酸泉により身体は芯から温まり疲れも取れる。長い年月に思いを馳せながら自然の芸術を味わいたい。

■2位 新津温泉@新潟県

 今は合併されて新潟市になった新津本町の住宅街に、一見すると温泉施設とはわからないほど鄙びた外観の新津温泉がある。昭和風情の残る民家のような館内は凄く味がある。

 奥にあるこぢんまりとした浴室に入るとむせるような石油の匂いがヤバい。それもそのはずこの地域はかつて産油量日本一だったこともあり、石油を狙って掘削したところ温泉が湧いたそうだ。

 とろっとした湯はぬるつる感が肌に気持ちよく意外にさっぱりしていて、べとついたりということはない。上がってからも少しの間は身体が石油臭いが肌はすべすべ。アトピーなどにも良いと全国から療養に訪れるという名湯である。

■1位 知内温泉 ユートピア和楽園@北海道

 道南の山間部にある知内温泉は、北海道で最も古い温泉で約800年前に発見されたといわれている。ユートピア和楽園は昔ながらの浴室が湯治場の渋い雰囲気を残している。

 浴槽や浴室の床は長い年月をかけて湯の花が固く石化し、幾重もの段になっていてまるでサンゴのような触感だ。

 ステンレスの手すりに丸く石化した湯の花がかわいい。どれくらいの年月をかけてここまで大きくなったのだろうか。5つの源泉があり、旧館の上の湯、新館の下の湯、露天と3つの風呂に入浴できる。

 自然噴出している源泉の温度は65度と高温で力強い。鉄分や炭酸を感じる湯は濃厚で、浴後なかなか汗が止まらないタイプの熱い湯だった。

写真=魚谷祐介

(魚谷 祐介)

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