「10代の女子生徒を家に誘って避妊具を買いに行かせ…」高校女子バスケットボール部の男性コーチが犯した“ゲスすぎる”性暴力の実態

「10代の女子生徒を家に誘って避妊具を買いに行かせ…」高校女子バスケットボール部の男性コーチが犯した“ゲスすぎる”性暴力の実態

"スポーツ毒親"恐るべき実態

「10代の女子生徒を家に誘って避妊具を買いに行かせ…」高校女子バスケットボール部の男性コーチが犯した“ゲスすぎる”性暴力の実態

この写真はイメージです ©iStock.com

「娘さんが叩かれたこと、だれかに言った?」30人に囲まれて4時間の“犯人探し”…パワハラ監督を守る毒親たちの“ヤバすぎる倫理観” から続く

 近年、スポーツの指導現場におけるハラスメントが社会問題になっている。そこには、指導者による暴力・パワハラ・セクハラだけでなく、わが子の活躍のためになりふり構わない“スポーツ毒親”たちの恐るべき実態も潜んでいるのだ。

 ここでは、スポーツライターの島沢優子氏が“スポーツ毒親”の姿を記した『 スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか 』(文藝春秋)から一部を抜粋。九州の私立高校女子バスケットボール部での、外部コーチCの性的暴行事件を紹介する。(全4回の3回目/ 4回目へ続く )

◆◆◆

■女子バスケットボール部の外部コーチCがホテルで部員に性的暴行

 晃一(以下全員仮名)は、思い切ってひとりの生徒に事の真偽を尋ねた。

「Cさんから、遠征先でホテルの部屋に呼ばれたことはあります。いま、ここで、俺の横に一緒に寝てくれたら、スタート(先発メンバー)に、してあげるよって言われました」?

 生々しい内容だった。覚悟はしていたものの、現実に証言を聞くとショックだった。?

「私はそこまでしてスタートになる必要はないので、断りました」

 大人の欲望を振り払った18歳は、しっかりと答えた。

 先発で出たいという子どもの意欲をもて遊ぶようなCのやり方に、晃一は同じ指導者として恥ずかしい気持ちでいっぱいだった。

「昼間は殴って、夜は一人ひとり(部員を)自分の部屋に呼んでやさしい言葉をかければ、?部員はついてくるようになる」

 Cの性的暴行の容疑が固まり3度目の逮捕をされた際、Cが他校のコーチに語ったと報じられたものだ。この「殴られた後にやさしくされると従ってしまう」心理は、DVにも見られる特徴だ。

 自分がレギュラーになれるかどうかを決めるCに対し、立場の弱い生徒らがトラウマ性の結びつき、もしくはそれに近い心理に陥るのは当然のことに思える。そして、この心理構造は、Cと親たちの間にもあったのかもしれない。

 試合で活躍したり、勝利すれば、それはCのおかげとなり、ひいてはその暴力さえ認めてしまう。なぜなら多くの親が、暴力を非としない環境で育てられている。その先に性暴力の危険があるとは思いもしなかっただろう。

「そっか、そっか。ご、ごめんな。こんな嫌なこと聞いて」

 晃一が声を震わせながら謝ると、生徒は「いえいえ」と胸の前で手を振って否定した。?

「別にいいですよ。それにね、私たち女子部員は、晃一さんが(男子部のコーチとして)?いてくれて、少し救われてたんです。だって、Cさんが私たちに暴力をふるうと、あんたやりすぎだよって、Cさんを羽交い絞めして注意してくれたでしょ。冗談みたいにやってたけど、それでも私らにとっては救いだったんですよ」

 たった 17か18で言い表せない苦しみを味わったはずなのに、自分のことを気遣ってくれる。女子生徒の思いやりに、晃一は胸が詰まった。胸の中で(そんなこと言ってくれてありがとう。何も気づかなくて本当にごめん)とつぶやくしかなかった。

■Cは生徒を家に呼んで……

 晃一は事実と向き合い始めた。時を同じくして取り調べが進み、被害届が6人出た、7人出た、と少しずつ増えていった。人数や犯行の状況などの情報も耳にするようになった。?

 氷山の一角だ。被害者はもっといる。

(性暴力が始まったのは)ここ数年の話じゃない。?

 Cは生徒を家に呼んでいた。

 生徒に避妊具を買いに行かせた――。

 聞きたくない情報ばかりだった。Cの弁護士を探していた母親も、さまざまな事実が明らかになっていく過程で「被害者の会」のほうに移っていった。晃一自身も事情聴取されたが「何も知りませんでした」と答えるしかなかった。

 被害届を出した生徒、出さなかった生徒、そして被害に遭わなかった生徒。その全員が、 実は卒業生やその保護者から激しいバッシングを受けている。

「Cさんは(被害生徒の)親にはめられたと言ってる。あなたたちが〇〇(高校名)をダメにしたのよ」

 被害生徒の保護者によると、国体メンバーに選ばれた生徒が、同部出身の社会人選手に試合で肘打ちをされるなど報復ともとれる行為を受けたという。卒業生からすれば、自分たちが功績を残したバスケット部の名誉を傷つけられたこと、恩義を感じているCを告訴したことへの怒りがあったのだろう。

 事件の影響から、娘を退学させて家族全員で別の土地へ引っ越す親もいた。職を替えた親もいる。なかには、こころを病みPTSDと診断された人もいた。

 2008年3月。地裁で懲役11年の判決が下された(その後控訴するも判決は確定)。被害者側代理人の弁護士は会見でこうコメントした。

「部の成績さえよければという考えが、暴力などを容認するベースとなり、次第にエスカレート。保護者が予想もしない事態を招いてしまった」

 加えて、同事件は特殊なケースではなく、どの部活動でも起こりうると警鐘を鳴らした。?

 気づかなかったとはいえ慚愧に堪えなかった晃一は、男子バスケット部のコーチを辞任した。

■「殴ってもやさしい言葉をかければ」性被害を生んだ主従関係の実態

 後になって考えると、思いあたる節はあった。

 ある年、男女そろって九州大会にアベック出場したことがあった。いつもは男女別々の遠征がほとんどだが、このときは大会中に泊まるホテルも同じ。したがって、晃一はCや応援に来ている保護者らと食事に行った。

 午前0時を回る深夜にホテルへ戻ると、マネージャーたちがロビーでCの帰りを待っていた。Cを部屋まで連れて行くためだ。

「そこまでしなくていいよ。俺が一緒にいるんだし。俺が連れて行くから。おまえたちは先に寝ていいよ」

 晃一がそう伝えても「いえ、大丈夫です」と言い、翌日もロビーで待っていた。ホテルの廊下に消えていく生徒とCの背中を見送りながら、不思議な気持ちではあったが「不審」には思わなかった。

「今思えば、やはりおかしなことです。でも当時はそんなこと(性暴力)があるとは露ほども思わなかったし、彼がそんなことをやっていたなんてまったく気づかなかった」

 上述したように、Cは他校のコーチに「昼間は殴っても、やさしい言葉をかければ部員はついてくる」などとほのめかしている。だが、それに似た発言を晃一には一切していない。

 晃一がまだ中学生を教えていた時代、Cは自分のチームがなかなか勝てないことを悩んでいた。

「なんで俺のチームは勝てないんだよ」?

 苛立つCを、晃一は懸命に諭した。

「Cさん、いい選手が途中で退部しちゃうんだから、勝てるわけないでしょう。鍛えるのはいいけど、もっと愛情持ってやらないとダメだよ」

 何が何でも勝とうとするがゆえに、暴力や激しい練習がエスカレートしていた。Cからすれば痛いところを突かれたはずだが、そのときは晃一の話に素直に耳を傾けていた。正義感が強く生徒思いの晃一は、性暴力を知られたくない相手だったに違いない。

■揃い過ぎていた性暴力が生まれる条件

 その後、Cはある実業団チームの監督にバスケット指導のノウハウを教わるようになる。その監督に師事しコーチングスキルを身に付けたCは、全国大会で上位進出を果たすなど、チームを強豪校に育て上げた。

 ただし、その頃から晃一はCと疎遠になる。快進撃を続けるCが、師のように仰いでいた実業団の監督を袖にするように見えたからだ。この年以来、晃一はCとふたりで出かけたり、食事をともにすることはなかった。

 一方の晃一は、中学校のコーチ時代、福岡大学附属大濠高校を率いた田中國明(故人)を訪ねている。現在は田中が育てた卒業生が新監督に替わったが、2021年度ウインターカップも制した名門だ。挨拶もせず2階のギャラリーで練習を見ていた晃一を呼び寄せてくれた田中に「指導力を向上させたいと思って見学にきました」と言うと、「何でも聞いてくれ」と招き入れ、4日間通わせてくれた。そんな恩を大事にしてきた晃一は、Cが許せなかった。Cとの距離が埋まらないまま、時は流れていった。

 事件が発覚する3年ほど前くらいから、Cのチームは県内のライバル校に勝てなくなった。相手校に長身の外国人留学生が入学してきたのだ。

「どの試合も僅差ですが勝てなくなった。それでCさんがちょっと焦ってるなというのは 感じていました」

 晃一は隣のコートでCが生徒に厳しくあたるのをじっと見ていた。留学生封じのための対策を教え込むが、生徒はなかなかうまくできない。

「そういうときの怒り方はちょっと激しくなられました。だんだん生徒が萎縮し始めるのがわかりました」

 晃一はCに苦言を呈した。

「子どもたちは何をどうしていいのかわからずパニック状態だ。子どもたちも、あなたも、ストレスが溜まっているのではないか」

 何度も指導を見直すよう勧めたが、聞き入れてはもらえない。それどころか、Cから反論された。

「これをやらないと、全国(優勝)なんか獲れないだろう」

 全国大会で上位に進んだプライドが邪魔したのか。あるいは晃一との関係性の変化も影響しただろうか。かつての同胞の言葉に、Cは耳を貸さなかった。

 20代からともにバスケットに情熱を傾けてきた晃一との関係の変化は、大きな影を落とした。周囲のバスケット関係者からは「関係さえ悪くならなければ、晃一さんはCさんの重石になっていたはずなのに」と残念がる声も聞かれた。

 勝てない苛立ちやストレスは間違いなくあった。それに加えて、学校や親による盲目の崇拝。親たちに乏しかったリスク管理。遠征や大会などでつくられる密室――。動機付けも、隠れて犯行に及ぶ環境も、性暴力が生まれる条件は揃い過ぎるほど揃っていた。

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「子どもの試合観戦中はスマホ禁止、3回言われてから座らないと…」スポーツチームの毒親内で横行する“どうでもいい謎ルール”の正体 へ続く

(島沢 優子/週刊文春出版部)

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