ナゾの新幹線通過駅「三河安城」周辺に“ガチすぎる外国料理店”が密集していた

ナゾの新幹線通過駅「三河安城」周辺に“ガチすぎる外国料理店”が密集していた

ゆるい空気が流れる異国風の料理店

 海外旅行、行くのが難しくなりました。とほほ。

 そのかわりと言ってはなんですが、日本国内で「ジェネリック海外旅行」を楽しめるスポットがあります。未知のところにいってワクワクドキドキするのが海外旅行の醍醐味だと思うのですが、その一部分を濃縮したような体験ができるのです。それは、店員も客も内装もテレビも飛び交う言葉も、すべて異国そのままの「ガチ外国料理店」。2015年以降の外国人在留者の増加に合わせ、目に見えて増えてきたことで身近になりました。

■愛知県は「ガチ外国料理店」が異次元

 東京では、池袋などの「ガチ中華」がメディアに登場するようになりました。でも何度も行くと予想できちゃうようになってしまいます。

 海外旅行で知らないところに行って、「一体なにを頼めばいいんだ、メニュー渡されてもさっぱりわからんぞ」と悩む。なんだかわからないものを前に「こんな食べ物があるんだ!」と驚く。食べた後に「この国のレストラン来たのははじめてで、おいしかったです!」という初々しい体験をしたいのに、食べ続けると大方の新鮮味は失われてしまう。僕だけではないと思います。

 ところが、そんな「ガチ外国料理店」のなかでも愛知県は異次元です。外国人労働者が多数働くモノづくりの県ですからね。ベトナム人やブラジル人やフィリピン人やネパール人が多く、加えて東京や大阪ではあまりみかけないペルー人、インドネシア人、トルコ人も暮らしています。

■全メニュー食べ放題1500円小皿付きという破格のお店も

 ケバブ屋台以外のトルコ料理や、シュラスコ以外も提供するブラジル料理が各地にあるんです。おまけに料理店だけではなく食材店まである。内装とか配置とかの店内の雰囲気も各国の店で共通しているもので、ネットで繋がるブラジル人に「これどう?」と愛知のブラジル商店の写真を見せれば、「どうみてもブラジルです!」と爆笑の顔文字をつけて返信してくるものだから、「これは間違いないわ!」とテンションもあがります。

 内装は本物ですが、現地に馴染もうと名古屋でよく見るパトランプを店に置いたり、モーニングを提供したりする店もあります。例えば、僕がたまげた「TRトルコ料理レストラン(あま市)」は全メニュー食べ放題1500円小皿付きという、天国のようなメニューを提供していました。食べきれないよ。

■地元民向けのガチ外国飯が集まる新安城駅

 そんな愛知県の中でも大好きな異国飯タウンが、名鉄の新安城駅にあります。東京から新幹線「のぞみ」に乗って名古屋方面に向かうと、「……列車は定刻通り三河安城を通過しました。およそあと10分で名古屋に到着します」のアナウンスで知られる、あの三河安城駅の安城市ですね。

 三河安城駅から新安城駅へはコミュニティバスも出ていますが、「名鉄名古屋」から特急に乗ると25分程度で到着します。東京からだと、名古屋経由でも2時間半くらいでつきます。「日本一のカオス駅」と名高い名鉄名古屋から、360円で名鉄の名車「パノラマスーパー」の最前席を予約して向かうと、鉄道旅行の気分も高まり一石二鳥です。

 愛知県は車社会と言われ、ガチ外国飯が駅から離れたところにありがちなのですが、新安城だけは駅前に多数ある、これもまた何度も通いたくなる理由です。

 新安城には地元民向けのブラジル、ペルー、インドネシア(しかも2店)、スリランカ、バングラデシュの料理屋が駅徒歩圏に揃っています。商店ではベトナムとインドネシアとブラジルの店があります。いやあ、これだけ東京や大阪で見つけにくい国のガチな店が集まるのは新安城だけなんですよ。

■はちみつの小袋をツイッターで紹介したら、大バスり

 日本人にはまだマイナーで日本人客はほとんどなく、扉の中に一歩入れば現地在住のそれぞれの国の人が会話をしながら、食べたり買い物をしたりして楽しんでいます。

 Googleマップで「エスニック料理」や「外国料理」を検索すると、新安城のあたりにたくさん店が出てきます。「なんか新安城にいっぱい店があるぞ」とスマホを片手に歩いてみると、「何買えばいいんだ、何食べればいいんだ」と未知のものを前にテンションが上がりっぱなしでした。しかも、次から次へと知らない国の店が出てくるわけで。

 新安城駅北口を背にすると、左手にバングラデシュの食堂とブラジルの店が並んでいます。ブラジルの店「Brazilian Foods」に入ると、ジュースに調味料にインスタント食品にリングイッサと呼ばれるソーセージが売られています。このソーセージ、いろいろ味があって家で焼くと美味いんですよ。独特な香りのシャンプーや石鹸や化粧品なども売られています。

 レジ近くにはブラジルの駄菓子もあって、それを買うのもいい。はちみつの小袋が35円で売られていて、これを子どもたちは口で端を切って吸うんだそうです。これをツイッターで紹介したら、えらいバズりました。

■どの店の食事も異国飯で素晴らしい

 ブラジルの商店をもうちょっと先に行くと、食べ放題の店「サンパウロ」がありました。ってオイ、もうどうするよ、食べたらもう今日これ以上食べられないじゃないか。ある日ここで食べるぞと入ってみれば、ビュッフェでは肉に豆のブラジル人のパワーの源に加え、サラダも用意されてました。あと肉にふりかける「ファロッファ」というのもありました。なんかブラジルのエコノミーホテルのビュッフェだとこんな感じなんですかね。

 線路を越えて南口に行くと、イトーヨーカドーがあります。このイトーヨーカドーから1本入ったところに、モスク「新安城マスジド」があり、そのまわりにスリランカ、バングラデシュ、インドネシアの食堂に加えインドネシアの商店があります。

 どこの国のドアを開けるか悩ましすぎます。どの店に入ってもゆるい空気が流れていて、しかもどの店の食事も異国飯で素晴らしいんですよ。スリランカ料理屋の料理が遠慮なく辛いとか、見たことないちまきのような食べ物がホットスナック入れに入っているとか。世界は広いなあ。

■新安城デートにおすすめのお店

 あえていうなら、インドネシアの店ALAMINがおすすめです。辛くなく、インドネシアの混ぜ混ぜ食「ガドガド」や南国の屋台的なジュースを安価で出してくれるので最高です。新安城巡回の際には、どこかで食べた後、ALAMINでジュースを飲みながらインドネシア人との会話や、店員と会話をしながらゆったりした時間を過ごすという楽しみ方をしています。

 ALAMINの誘惑を抜けて先に行くと、またインドネシアの店「Pelangi(プランギ)」が。見た目は小洒落てキレイなのですが値段はお手頃もあって、インドネシア人が夜な夜な多く集まって食べるところでして、バリに行ったつもりの新安城デートに向いています。

 さらに前に歩くと、「De la koncha」というペルー料理店があり、ここがまた美味しいんです。日本に日系ペルー人は少なくなく、ペルー料理店は横浜の鶴見など日本に点々とあるのですが、ここは見たこともない郷土料理が出てくるんですね。店内も清潔で、こちらも新安城デートにおすすめです。

■ブラジルの音楽、雰囲気の中で飲むピンガは最高

「どうしてくれるんだ、どこに行けばいいんだ」と悩ましい街が新安城なのですが、さらに名鉄の隣駅「牛田駅」に向かって歩くと、日本最大級のブラジル人が集住する団地「知立団地」があります。知立団地の看板を見るとポルトガル語での表記があり、小学校の下校時間を過ぎれば子どもたちがポルトガル語で楽しそうに会話をしています。

 そんな知立団地には団地内に1軒、周囲に2軒ブラジル軽食屋があり、軽食屋では大衆酒「ピンガ(カイピリーニャ)」をはじめとしたブラジルではおなじみのお酒も飲めます。

 ブラジルの子どもたちも駄菓子屋感覚でやってくる店「CAFETERIA?Familly」でジュースや濃厚なブラジルスイーツを食べるなり、団地の外にある「Cheiro Verde Chiryu」や「Nosso Lanche」というブラジルバーで「ピンガ」を飲むのもいいです。西原理恵子さんがアマゾン旅行するという企画でスタッフ一同ピンガにハマって「ピン中」になったというほどの酒ですから、ブラジルの音楽、雰囲気の中で飲むピンガというのは旅の〆として最高なのです。

■イスラム系住人と南米系住民が交わる珍しい場所

 かくして「山谷さん、また安城ですか? 安城好きねえ〜」と名古屋の友人に言われるほど新安城に通ってしまいました。店にリピートしても知らない食べ物ばかりなので、行っても行っても知らない食べ物ばかり。ジェネリック海外な店内で食べる飯は実にうまい。

 新安城が急に伸びてきたのは、どこの国の店で話を聞いても「ここ3年くらいですかねえ」とのこと。安城のある西三河地方はトヨタ、デンソー、アイシンなどが集う産業の一大集積地で、新安城にはマキタの本社もあります。知立団地に住むブラジル人をはじめとして外国人労働者も多くこの辺に住み、インドネシア人などが利用する新安城マスジドが駅からすぐ近くのところにありイスラム系住民の交流の場となっています。

 ともなると、さらに交流の場としてガチ食堂ができるわけで、イスラム系住人と南米系住民が交わる珍しい場所になったわけです。日本の中には工場が停止すると外国人労働者も仕事がなく、別の場所に移住せざるを得ず、併せて店もなくなってしまうものですが、さすがに西三河地方で仕事がなくなることはないでしょう。新安城はイッツ・ア・スモールワールドとして今後も期待できそうです。

写真=山谷剛史

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 外国文明の十字路の新安城をはじめ、東京や大阪や神奈川などを舞台に、スマホを片手に場所を外国人コミュニティを探し出し、外国人ばかりの店で料理を食べて買ってお祭りに参加する。ジェネリック海外旅行の最強マニュアル「 移民時代の異国飯 」、星海社より発売中です!

(山谷 剛史)

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