「旦那に夜の営みを打診したことはあるけど…」20年以上セックスレスだった53歳主婦が女性用風俗を利用した“切実な理由”

「旦那に夜の営みを打診したことはあるけど…」20年以上セックスレスだった53歳主婦が女性用風俗を利用した“切実な理由”

この写真はイメージです ©iStock.com

 近年、着々と市場を拡大している「女性用風俗」。大学生や専業主婦、会社員のような“普通の女性たち”が気軽に利用するようになった背景には、深刻なセックスレスや女性の社会進出、性経験年齢の高齢化などの社会的な要因が関係している。

 ここでは、女性用風俗の全容に迫ったノンフィクション作家・菅野久美子氏の著書『 ルポ 女性用風俗 』(筑摩書房)から一部を抜粋。20年以上セックスレスだった53歳の主婦が女性用風俗を利用した経験談を紹介する。(全2回の1回目/ 2回目に続く )

◆◆◆

■湧き上がってきた狂おしいほどの女としての性衝動

「母さん、今まで心配かけてきてごめんね。僕は自分の人生を歩いていくから、母さんは母さんの人生を歩んでください」

 就職が決まった日、息子はそう言って床に膝をついて泣き崩れた。

 ああ、そうか、ようやく息子は親離れしたんだ。ずっと小さいままだと思っていた。これまで夫と共にがむしゃらに働き一人息子の学費を稼いで、さらに家事にと明け暮れていた。しかし気がつくと自分は中年になり、息子は大きくなって、立派に私から卒業しようとしている。これからは、息子の学費も稼がなくていい。私の母としての人生は終わったんだ――。

 大きくなった息子の姿を見て頼もしく思う。その反面どこか寂しくもあり、心にぽっかり穴が空いたようだった。これまでの人生でずっと張り詰めていた緊張の糸が、プツンと切れた。

 そんな喪失感とともにムクムクと湧き上がってきたのは、狂おしいほどの女としての性衝動だった。それが40代も後半に差しかかろうとする中年期に、突如として襲ってきたのだ。

「今思うと、これまで妻や母として生きるのに必死で、ずっと女の面を封印してきたんでしょうね。それが息子が離れた途端、突然自分の内部に溢れ出してきた。性欲がぶわっと湧いてきて、それ以降は食事をする気にもならないし、夜も眠れなくなって、自分の欲望を抑えきれなくなったんです」

 佐伯幸子(兼業主婦・仮名・53歳)さんは、そう言うと真剣に私に向き合った。幸子さんの外見は大人しそうな普通の主婦といった印象である。そんな幸子さんから、開口一番飛び出したのは、「ぶわっ」とした性欲の話だった。

■「誰かと無性にセックスしたい」

 とにかく、幸子さんは「ぶわっ」と湧いた欲望を持て余していた。誰かと無性にセックスしたい。誰かに触れてほしいし、抱き合いたい。ふと気がつくと、はるか昔、夫と結婚する前に付き合っていた人の連絡先を無意識にスマホで漁っている自分がいた。「私ったら結婚してるのに何やってるんだろう」――慌ててスマホを投げ出し、踏みとどまった。

 思えば夫とは20年以上、夜の生活はご無沙汰だった。

 夫は大病を患ってからというもの、セックスしたがらなくなった。どうやら、勃起しないことも気にしているらしい。それでも、何度か夫を誘ってみたことがある。

「旦那に夜の営みの打診はしたことがあるんです。挿入がすべてじゃないし、最近だと抱き合うだけのセックスもあるみたいよって。でも要は、旦那は自分中心なんですよ。昭和の人間だからか、相手を気持ちよくさせてあげようという奉仕の心がない。自分が気持ちよくないとつまらないみたい。結局私がフェラとか手でやってあげるばっかりになっちゃって、興ざめして疲れちゃった。私はやりたいけど、あまりしつこくも言えない。家庭の雰囲気も壊れるからもういいやって、この人に何を期待しても無駄だって、諦めたんです」

――それにしても40代後半にもなってこんなに性欲が出てくるなんて、私ってちょっとおかしいのかもしれない。

 そう思った幸子さんは、ネットで中年期の女性の性欲について検索することにした。ネットの情報によると、自分の身に起こった衝動は決して異常なことではないらしい。女性ホルモンの関係で、中年になって性欲が強くなることもある。そして、あるサイトでは女性の性欲解消の手段の1つとして女性用風俗を紹介していた。そうはいっても、これまでの結婚生活で1度も不倫したこともないし、ましてや風俗なんて男がいくものじゃないの。そう思った。

 そもそもバブル世代真っ只中で、その時代を駆け抜けた幸子さんにとって、食事やデート代などは男性が支払うのが当たり前だった。そのため、自分が男性にお金を払うという行為にまず葛藤があった。若い頃、男性にモテモテだったのにというプライドが頭をもたげてくる。それでも1度燃え上がった悶々とした衝動は、いくら待っても収まることを知らない。背に腹は代えられない――。そう思った幸子さんは、意を決して女性用風俗の利用を決めたのだった。

 それは、普通の主婦として生きてきた女性の性をめぐる「大冒険」の始まりだった。

■「40代の優しいお兄さんが行きますよ!」

 おばさんだし、若い男の子に自分の裸を見られるのは抵抗がある。だから、相手の年齢はなるべく高い方がいい。そう思った幸子さんは、ネットで探したお店に直接電話して、自分の条件を伝えることにした。

「できれば年齢が高い人の方がいいんですけど」

「それなら、40代の優しいお兄さんが行きますよ!」

 電話の向こうの男性は、明るい声でそう答えてくれた。

 40代って私には全然「お兄さん」じゃなくて、同世代なんだけどな、心の中で思わずそう突っ込んでいる自分がいた。

 平日の昼間。夫も息子も家にはいない。そんな時間を指定して、幸子さんはこっそりと都心に出かけた。待ち合わせ先にやってきたのは、清潔感のある40代のセラピストだった。彼の案内通りラブホテルに2人で入る。

「まずはお風呂に入ってゆっくり温まってください」と促された。幸子さんにとっては何もかもが初めてのことだ。指示されるまま、1人で服を脱いで風呂に入る。とにかく言われた通りにしよう。幸子さんは馬鹿正直に湯船にずっと浸かっていた。あまりに長時間浸かり過ぎて、徐々に頭がのぼせてクラクラしてくる。それにしてもいつまで風呂に入り続けていればいいのだろう。そう思っていた矢先、長風呂を不審に思ったのか、心配そうなセラピストのかけ声で我に返った。

「あのぉ、大丈夫ですか?」

 いつお風呂から上がればいいのかわからないと幸子さんが訴えると、セラピストは「えっ!」と驚いている。そしてドア越しに「好きなタイミングで上がってもらえればいいんですよ」と困った様子で返事した。

 そういうものなのね。安堵してようやく浴室から解放されると、ベッドに横たわることを促された。全身の揉みほぐしが始まり、いよいよ念願の性感となる。

 しかし、20年間閉ざされた扉はそう簡単に開かれるような生易しいものではなかった。セラピストが持っていたディルドをいざ入れる段になって、膣に激痛が走ったのだ。ディルドとは張形とも呼ばれ、ペニスの形をした大人のおもちゃだ。そのおもちゃが、痛かった。

「これまで20年間開かずの扉だったので、いきなりこじあけようとしてもとにかく痛いんですよ。おもちゃを使ってみましょうと言われて入れてもらったんですが、それでも痛い。最後は、僕の指だけでと言われて、かろうじて指は入ったんですけど、気持ちいいという感覚はなくて、違和感しかない。それでなんかよくわからないうちに、コースの2時間があっという間に終わっちゃったんです」

 不完全燃焼だった幸子さんは、その後セラピストに、ツイッターのDMで相談することにした。高まったときに1人で性欲を解消するにはどうすればいいのだろう。するとセラピストは、やはり、ディルドで慣らし、そこからオーガズムを得る方法を勧めてきた。その中でも一番小さいサイズの「ジュニア」がお勧めだという。ジュニアはディルドの中でも、直径がスリムなものだ。芯がなく柔らかいものもあり、初心者にも扱いやすい。まずはそれから始めて徐々に大きいサイズに拡張し、ステップアップしていけばいいとアドバイスしてくれた。

 どこで買えるのかと聞くとAmazonで買えるという。Amazonでは、お茶とか日用品しか買ったことない。幸子さんは、さっそくディルドを購入し、コンドームを被せて膣内に挿入してみた。最初は痛かったが、何度もやるうちに徐々にその大きさに慣れていった。

■元AV男優のセラピストとの行為は「自分の体に何が起きたかわからなかった」

 女性用風俗店は、それぞれ様々なキャンペーンを行っている。ある日、別のお店の「平日昼顔デー」というキャンペーンを見つけた。これなら昼間だから家を抜けられるし、前の店より金額もかなり安い。しかも、プロフィールに元AV男優と書かれているセラピストがいた。今度はこの人を指名してみよう、そう思って早速会うことにした。

「僕は1日1人しかお客さんは受け付けないんです。それは、自分も相手のことを好きにならないと、そういう行為はできないから。今日1日幸子さんのことを好きになってもいいですか?」

 現れた男性は会うなりそういって、幸子さんをときめかせた。なんて素敵な人なんだろう。元AV男優という肩書きは伊達ではなかった。そのセラピストは会った瞬間から女性との甘い時間と空間を作りだすことに長けていた。見事に魔法にかかった幸子さんは、まさしく身も心もシンデレラとなったようだった。

「今日のこの時間だけは、幸子さんをずっと好きでいさせてくださいね」

 そう言うと、セラピストは部屋に入るなり幸子さんを抱き寄せた。

「僕の膝の上に座ってください」

「いや、私、重いから」そう言って遠慮しても、「大丈夫だから、座って」と抱き寄せてくる。

 セラピストは幸子さんをだっこする姿勢で、やや強引に膝の上に座らせた。そして、ゆっくりと体を密着させた。これから、私の身にどんなことが起きるんだろう。そう思うとドキドキが止まらなかった。

「その人は、1人目の人と全然違ったの。性感では指を入れられたんですけど、久しぶりにこんなに声を枯らしたというくらい絶叫した。すごく気持ちよかった。自分の体に何が起きたか、わからなかったんですよ。そのぐらいすごかった」

 女性は、男性の所作を思いのほか観察しているものだ。女風のセラピストの場合、日常的な何気ない行動がマイナスポイントになることも多い。例えば、ホテルにあった水のペットボトルを当然のごとく持って帰る、飲食物を汚い状態のまま放置する。靴を揃えない。

 細かいことだが、こういったがさつさに女性たちは幻滅する。そんな振る舞いは女性たちの心を萎えさせ、その細かい積み重ねにより、リピートに?がらなくなったりする。しかし、そのセラピストは動きのすべてがスマートだった。

 セラピストは行為が終わった後、ベッドメイキングをして、使用したタオルを自然な動作で畳んでいた。幸子さんのロングブーツの着脱にもサッと手を貸し、ぐちゃぐちゃに乱れた服をきれいに畳んで手渡してくれた。完璧なエスコートだと感じた。

「僕、この後お客さん取ってないんです。だから、残りの時間はギリギリまで幸子さんの恋人でいさせてください」

 そう言ってホテルを出ると幸子さんの荷物を当たり前のように持ち、恋人つなぎをしながら、駅まで見送ってくれた。胸がときめいた。それでも多忙な兼業主婦に、タイムリミットはやってくる。夕食の時間が迫っている。幸子さんは、その日、新宿伊勢丹で総菜を買い込んで慌てて帰宅した。しかしそれ以降、世界がまるで違って見えた。それから、度々彼のことを指名するようになる。

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女性用風俗の43歳人気男性セラピストが考える“夫婦生活”で最も大事なこと「確かに技術は必要。だけど最後はやっぱり…」 へ続く

(菅野 久美子)

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