下着の中に手を…愛知県の保育施設で起きた女児への性被害、野田聖子大臣はどう答弁したか

下着の中に手を…愛知県の保育施設で起きた女児への性被害、野田聖子大臣はどう答弁したか

少子化対策やこども政策などを担当する野田内閣府特命担当大臣 ©文藝春秋

下着の中に手を…愛知県大府市・保育施設での女児への性被害は、なぜ市議会の議事録から削除されたのか から続く

 愛知県大府市の私立保育施設で起きた性被害を訴える女児の問題が、4月27日の衆議院内閣委員会で取り上げられた。こども政策担当の野田聖子内閣府特命担当大臣は「子どもに対する性犯罪、性暴力がなくなるように取り組んでいきたい」と述べた。その上で、野田大臣は「なかなか答えが見出せない」などと迷っている様子がうかがえる答弁もした。

 質問したのは、日本共産党の本村伸子議員。「こども家庭庁設置法案」等に関連して、「幼児間、児童間性暴力をなくすために(こども家庭庁は)動くのか?」と質問した。取り上げられた幼児間性暴力の問題は、「 下着の中に手を…愛知県大府市・保育施設での女児への性被害は、なぜ市議会の議事録から削除されたのか 」でも記事化している。

■被害にあった姉は下半身を何度も触られ、妹も下着の中に手を入れられた

 当時5歳だった女児は、保育施設に通っているときに、1学年上の男児(当時6歳)から下半身を何回も触られた。その妹も下着の中に手を入れられるなどの被害にあい、結局は退園をしたという。姉妹の保護者は、自治体に相談したが、県や市でたらい回しにあっている。

 本村議員は「この問題は誰が責任を持つべきか?」と質した。政府側の見解として、内閣府子ども・子育て本部統括官はこう述べた。

「愛知県や大府市を通じて把握している。幼児間のこういう問題は早期発見、早期対応に努めることが重要。事案が発生した場合、被害園児に寄り添い、心のケアを第一に対応することが大切と考えている。

 私立幼稚園や認定こども園への対応については、一義的に園で関係者からの聞き取り、被害幼児へのケア、加害幼児への指導をするとともに、市町村や都道府県と連携して対応していくことが望まれる。内閣府も文科省などと連携をしながら、自治体の求めに応じて助言を行っている」

 つまり、現行制度では国は積極的な介入はできない、との答えだった。

■政治家としての立場と親としての苦悩「息子が性加害者になってしまったら…」

 そもそも、幼児間性暴力について、政府は把握しているのか。政府側は「認定こども園、幼稚園、保育所における幼児間の性暴力の事案の件数としては国として網羅的に把握していない」と述べた。しかし、一方では「関係府省会議で令和2年6月に決定された『 性犯罪・性暴力対策の強化の方針 』にあるように、子どもたちが加害者にも被害者にもならないように、発達段階に応じわかりやすく指導することが重要」と答えた。本村議員は「実態をつかむ努力をすべき」と質したが、政府は「就学前の実態を網羅的に把握するのは難しい」とした。

 野田大臣は、自身が母親である立場から、苦悩する答弁もした。

「母親として子どもを育てている。年齢は11歳ですが、知的には3歳、4歳。この該当年齢になる。私たちは子どもの性被害について一生懸命取り組んでいる。わいせつ教員対策やDBS(前歴開示及び前歴者就業制限機構)など、大人からの被害は絶対に止めようとやっている。しかし、息子が友達の加害者になると思ったときに、いったい、何ができるんだろう。自分に問いかけたときに、なかなか正直、答えが見出せない」

 親として、もし自分の子どもが加害者になった場合はどうするのか――。たしかに、誰かの立場に立って想像することは一定程度は必要だろう。しかし、その感情を超えて、政治家として、国として判断する必要もある。その点については、こう述べた。

「やるべきことは、被害を受けた子どもたちをしっかり守ること、心の傷を全力で癒すような環境を整備すること。加害者になった子は、本当にそれが悪いことだったかどうかわからない世代だ。

 いたずらに追い詰めることなく、非常に難しいが、その子の成長に応じて、友達が嫌がることをしてはいけない、ということを上手に諭せる指導者を常に園や地域社会は持つべき。幼児間の性被害は、被害者にとっては深刻だけど、逆に加害者を追い詰めて、子どもたちが萎縮することも望まれない。被害者をきちんと守れる体制を検討させていただきたい」

■小学校未満の幼児間性暴力を防ぐ法的根拠がない

 小学校の児童間性暴力であれば、「いじめ防止対策推進法」の「いじめ」に該当し、重大事態となる可能性がある。しかし、同法は小学校から高校までが対象で、認定こども園、幼稚園、保育所は対象外だ。本村議員は「愛知県も法的根拠がないから難しいと。幼児間の性暴力も第三者による調査が必要ではないか。制度として作っていただきたい」と問いただした。

 政府側はこう答えた。

「いじめ防止対策推進法は、子どもの発達段階にかんがみて定められた。園児は含まれていないが、 文科省のいじめ防止基本方針 では、発達段階に応じて留意すべき点が明記されている。『幼児期の教育においても、発達段階に応じて幼児が他の幼児と関わる中で相手を尊重する気持ちを持って行動できるよう、取り組みを促す』などと書かれている。未然防止が重要だが、万一、発生してしまった場合、被害園児や保護者に寄り添い、心のケアをしていく。内閣府としては、関係省庁と連携・連絡をしながら考え方の周知をしていく。自治体からの相談があった場合は、きちんと対応をしていきたい」

 野田大臣は「いじめの法律は議員提案ですから、改正するならしっかりと協力していきたい。幼児間の性被害が想定されていないが、方針に盛り込まれている。隙間事案になっているが、こども家庭庁がしっかりと埋めていく」と述べた。しかし、幼児間の性暴力での、第三者による調査委員会の設置については明言しなかった。

■「こども家庭庁」は幼児間の性暴力に対して何ができるのか

 被害女児の母親の苦悩は、報道の後も続いている。被害にあった長女も次女も、児童精神科に通っているという。

「今後の法整備も必要ですが、我が家の問題、性暴力被害に苦しんでいるうちの娘をなんとかしてほしいと伝えました。しかし、文科省の担当者は、加害男児の発達過程で起きたことだからしかたがない、というニュアンスでした」(母親)

 今年になっても、保護者は愛知県の私学振興室や大府市に対して交渉中だ。大府市に対しては、保育施設への対応記録や、愛知県への情報提供・調整記録、他課等との調整記録について、個人情報開示請求をした。しかし、不開示となり、異議申し立てをするが、棄却となった。

「結局、保育施設は、加害園児がどこの小学校へ入学するかなどの情報を出さないまま、長女は卒園になり、小学校へ通いました。最大限の配慮を求めて、担任や教務主任、スクールカウンセラーに事情を説明しました。

 どうやら保育施設側は市に対して、長女の被害内容を『スカートめくり程度の認識』と矮小化して伝えているようで、許せません。次女の場合、嘘つき扱いされ、退園に追い込まれました。その後、受け入れ施設も見つかりませんでした。子どもの権利がすべてない生活をしています。悪質な保育施設の認定について検証しない、取り消さない。いったい、誰のための保育施設なのでしょうか」

 法的な強制力がないのであれば、法整備をしなければならないだろう。「こども家庭庁」は、幼児間性暴力にどんな関与ができるのか。野田大臣が言う「隙間事案」に対して、どのような解決提案ができるのか。被害女児の母親は、野田大臣の答弁を踏まえ、愛知県私学振興室へ申し入れをした。

(渋井 哲也)

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