「あの家族、実はMが殺した?」ピザの配達後に起きた惨劇…“最後の目撃者”が高校時代から口を閉ざし続けた理由

「あの家族、実はMが殺した?」ピザの配達後に起きた惨劇…“最後の目撃者”が高校時代から口を閉ざし続けた理由

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「封印してるから話せない」男子大学生が旅先で出会ってしまった“年上の男”…安宿で繰り広げられた恐怖体験の全貌 から続く

『稲川淳二の怪談グランプリ』で優勝経験もある、オカルトコレクターの田中俊行氏が友人から聞いた“奇妙な話”。友人がかつて旅先で出会ったMさんとの記憶は、想像もできない結末へと向かっていきます。その衝撃の実話とは――。(全2回の2回目/ 前編から続く )

◆ ◆ ◆

「昨日は学校終わって、えっと、ピザ屋にバイトに行って……帰りました」

 Mさんが職員室でそう答えると、警察は「Tさん、ご存知ですよね?」と、ある女性の名前を口にした。だが、その名前はMさんにとって聞き覚えのないものだった。

「いやわからないですね」

「大阪府◯◯の??のTさんです」

 その住所を聞いてピンと来た。昨日、ピザの配達で最後に届けたお客様のことだ。確かにTさんという名前だった気がする。そう答えると、警察は配達時の様子を聞いてきた。

■昨夜、Tさんの家で起きた事件

「母親らしき人が出てきたのでピザを渡して……、そういえば奥に小さい子供がいましたね」

 そう答えながら、なぜTさんのことについて聞いてくるのか疑問に思ったMさんは、「何かあったんですか」と尋ねた。すると、昨夜、Tさんの家で無理心中があったのだという。

 Mさんがピザを配達した後、間もなく帰宅した夫がTさんと子供の2人を絞殺、そして自らも部屋で首を吊って亡くなったのだという。犯人は夫だとわかっているものの、Tさんに最後に会ったのがMさんであったため、一応警察が事実関係とアリバイを確認してきたそうだ。

 思わぬ話にショックを受けつつも、警察から解放されたMさんは、今度は先生からバイトのことを咎められ、そして教室に戻った。

■「あの家族、実はMが殺したんじゃないのか?」

 それから1週間ほどが経つと、誰にも話していないのに学校には事件の噂が流れ、Mさんは注目の的となっていた。

 はじめは嫌がっていたものの、それまで学校で目立つこともなかったMさんは徐々に気持ちがよくなり、事件の詳細を自ら友人たちに話しはじめたという。そして、事件を茶化すような話までするようになった。

「あの家族、実はMが殺したんじゃないのか?」

「そうやねん。実は俺が……」

 そうしたやりとりで友人たちと盛り上がるようになっていった。

■「あと1回、その話をしたら……」

 そんなある日、これまで一言も話したことがないクラスメートの女子、Sさんに声をかけられ、Mさんは階段の踊り場で話をすることになった。何の話かと思ったら、Sさんは「事件の話をするのはもうやめた方が良い」と、真面目な表情で言ってきた。

 人が亡くなった事件をあんな風に話すなんて、不謹慎だとでもいいたいのだろうか。自分でも少し調子に乗っている自覚はあったものの、Sさんから注意される筋合いはない。そう思い、「関係ないだろ」と返すと、Sさんはボソッとこう言った。

「あと1回、その話をしたら死ぬよ」

 その真剣な顔にゾッとしたMさんは、どう言う意味だと聞いた。するとSさんは、淡々と説明をはじめた。Mさんが教室で事件の話を初めてした瞬間、教室の入口扉のあたりに白い両腕のようなものが浮かんだのだと言う。そしてMさんが事件の話をする度、それはちょっとずつ近づいて来ている……。

「今どんな状態なんよ?」

 そう聞くと、Sさんは自分の首を絞めるような形をとって、「こういう状態だから……、あと1回でも喋ると、あなた死ぬよ」。

 それを聞いたMさんは心底怖くなり、話を封印することにした――。

■そして送別会は終わった

 久保さんをはじめ、怪談で盛り上がっていた他の仲間たちもさすがに嫌な話を聞いてしまったなという表情で、重い空気が流れた。そして、そのまま送別会はお開きになった。

 次の日、久保さんは宿から発つ前に、帰国するMさんと連絡先を交換した。

「帰ったら連絡します」

 そうMさんに伝えて、2人は別れた。

 そこから久保さんは予定通り1ヶ月かけて三国志ゆかりの地を回り、帰国した。そして落ち着いたところで、Mさんに連絡を取ってみた。携帯にかけるのだが、何度かけても繋がらない。勤めていたカメラスタジオの名前も聞いていたので、電話番号を調べて連絡してみた。すると、1ヶ月前から仕事に来ていないと言われてしまった。1ヶ月前といえば、Mさんが上海から帰国した頃だ。

 そして、そこからMさんの消息は未だにつかめないままだという。

■やはり“封印”すべきだったのか……

 久保さんは私に「あの時、俺が封印解いても大丈夫って言ったからかな。多分、偶然やと思うけど……」と、自分を責めるような、どこか釈然としないような表情で言った。

 その話を聞きながら、私はふとあることが気になった。

「もしSさんの言っていたことが正しかったとしたら……、今、この話を俺にした久保さんも危なくない?」

 すると久保さんは何かを考えるように少し黙ってから、「確かに、この話はあんまり人にはせんほうがええかもな」と言った。「でも、不思議と話したくなるんよな」

 その久保さんの表情に、なぜか私は少し寒気を感じた。

 やはり、この話は封印すべきものだったのだろうか――。だが、気づけば私も、こうして彼の話を語りだしてしまっている。

(田中 俊行)

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