「封印してるから話せない」男子大学生が旅先で出会ってしまった“年上の男”…安宿で繰り広げられた恐怖体験の全貌

「封印してるから話せない」男子大学生が旅先で出会ってしまった“年上の男”…安宿で繰り広げられた恐怖体験の全貌

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『稲川淳二の怪談グランプリ』で優勝経験もある、オカルトコレクターの田中俊行氏が友人から聞いた“奇妙な話”。友人がかつて旅先で出会ったMさんとの記憶は、想像もできない結末へと向かっていきます。その衝撃の実話とは――。(全2回の1回目/ 後編に続く )

◆ ◆ ◆

 これは、私が友人の久保さんから聞いた話だ。

 久保さんはカメラマンで、神戸でカメラスタジオを経営している。現在は展覧会や商品撮影の仕事などで大忙しの久保さんだが、彼がまだカメラを勉強していた学生の頃、夏休みを利用して中国を旅した事があった。

 昔から久保さんは三国志が好きで、いつか現地に行って所縁の地を回るのが夢だったようだ。まだ学生の身分でお金は無いが、時間はたっぷりある今が好機と、貧乏旅行を覚悟して中国に行くと決めたという。

 早速旅に出た久保さんは、まず、神戸から船で上海に渡った。上海では旅の綿密な計画を立てるため、1週間滞在することにして、その後、1ヶ月程かけて三国志の所縁の地を回るつもりだった。

■安宿で出会ったMさんという男性

 久保さんが上海で泊まったのは安宿だった。いわゆるバックパッカーが泊まるような所で、1泊1000円もしない。

 部屋はドミトリーで6人部屋だったが、幸いにも日本人が3人いて、言葉が通じたためすぐに打ち解けた。そのなかでも、久保さんは特に大阪から来たMさんという男性と仲良くなった。

 久保さんよりも少し年上のMさんは、大阪でカメラマンのアシスタントをしていた。仕事の休みを利用し、プライベートで昔から興味があった上海の街並みを撮影しに来ていたという。プロのカメラマンを目指す久保さんにとっては仕事の先輩だったが、まるで同年代の友人同士のように会話は弾んだ。

 久保さんがその宿に着いたとき、Mさんはあと1週間で帰国する予定だと言っていた。その日は丁度、久保さんが上海から旅立つ日でもあった。そこからの1週間、日中はMさんの撮影に同行し、夜は部屋のみんなと楽しく過ごし、あっという間に時間が過ぎていったという。

■最後の夜に飲み会が開かれ……

 久保さんが宿を出る前日、すなわちMさんが帰国する前日には、部屋のみんなが2人のために飲み会を開いてくれた。酒を持ち寄り、遅くまで騒いだ。そして夜も深くなり、話すことも徐々になくなって来たとき、その中の1人が上海のとあるホテルの話をした。

「前に泊まったあのホテルでえらい思いをしたんだよ。金縛りにあってさ……」

 それをきっかけに、それぞれが心霊体験や怪談話をする流れになった。久保さんも人から聞いた話や、自分が体験した不思議な話を披露した。

 しかし全員が盛り上がって話すなか、Mさんだけは蚊帳の外だった。別に眠っているわけではないのだが、かといって話を聞いている感じでもない。久保さんは気になって、「Mさんも何か話してよ。人から聞いた話でもいいし」と声をかけた。

■「封印してるから……」

 すると、Mさんはちらっと此方を見て、「いやー、俺そんな話もってないわ」と、興味なさそうにして、また顔を下げた。だが、お酒が入っているせいもあり、久保さんと他の仲間はしつこくMさんに絡んだ。

「いやあーなんかあるでしょ。聞いた話でもええねんから」

「だから無いって」

 そんな会話が何回か続いた後、Mさんはボソッと、

「封印してるから……」

 と言った。一瞬、部屋に沈黙が降りた。久保さんも思わず言葉を失ったが、すぐに堰を切ったように「封印した話? 面白いやんか、教えてよ」と、Mさんをけしかけた。

 しかし、やはり「封印しているから話せない」と言う。それでもしつこく聞くが、Mさんは教えてくれない。そこで久保さんは苦し紛れにこんなことを言った。

「封印してるって、それは日本での事やろ? ここは上海やし、国境超えてるから封印解いてもええんちゃうの?」

 自分で喋っていても適当な話だと思ったが、意外にもMさんは「そういうもんなの?」と、前向きな反応を示した。「そうやで」と久保さんが言うと、Mさんは安心したような表情で話しだした。

■高校時代に体験した“奇妙な話”

 それはMさんが高校時代に体験した話だった。当時、Mさんは学校には内緒でバイクの免許を取得し、ピザ屋でアルバイトをしていた。その日も学校が終わるとアルバイトに行き、そして家に帰った。だが次の日、朝一で職員室に呼び出されてしまった。

「とうとうバイトしてるのがバレたな」と覚悟して職員室に行くと、明らかに先生ではない見知らぬ大人が2人いて、昨日の事について聞いてきた。彼らは警察だった。

「昨日は学校終わって、えっと、ピザ屋にバイトに行って……帰りました」

 そう言うと、警察は「Tさん、ご存知ですよね?」と、ある女性の名前を口にした。だが、その名前はMさんにとって聞き覚えのないものだった。

「あの家族、実はMが殺した?」ピザの配達後に起きた惨劇…“最後の目撃者”が高校時代から口を閉ざし続けた理由 へ続く

(田中 俊行)

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