日本維新の会・松井一郎氏にSNSで“公開パワハラ告発” の裏事情 維新議員が明かした「パワハラ問題は二の次」「“維新スピリッツ”が感じられない」ワケ

日本維新の会・松井一郎氏にSNSで“公開パワハラ告発” の裏事情 維新議員が明かした「パワハラ問題は二の次」「“維新スピリッツ”が感じられない」ワケ

森かつこ氏のツイート

《維新の国会議員からパワハラを受け、困っております。(中略)国会議員「A氏」(日本維新の会 兵庫10区)から、この度の参議院選挙の日本維新の会全国比例候補予定者「B氏」の選挙応援をするようにと命じられ、言う事を聞かないと日本維新の会の議員としてはこれでおしまいの旨、公認権を脅迫の手段として振りかざし、そして、弱みを利用して、思い通りに組織の命令と称し強要するパワハラを受けました》

 4月29日午前11時50分頃、日本維新の会代表の松井一郎氏のTwitterアカウントにパワハラ被害を訴えるメンションが届いた。メッセージの送り主は明石市市議会議員の森勝子氏だ。すぐさま松井氏は《藤田幹事長が対応する事になっていますので、藤田幹事長に連絡して下さい。》と返答。藤田氏からもダイレクトメッセージを送った旨のツイートがされている。

 市議会議員がSNS上で政党の代表にパワハラ被害を訴えるという異例の事態。その裏には、求心力を失いつつある維新の厳しい実情が隠れていた――。

■東京では維新の“神通力”は通用しない

「維新の会は様々な不祥事が報じられていますが、地元大阪からの支持は盤石と言って良いでしょう。選挙となれば市議、府議総出で応援をして組織力の強さを感じさせます。現職が強いので『どうせあの人が当選するんでしょ』とかえって選挙は盛り上がらない。多少の不祥事では動じない強さを感じさせますね」

 関西在住の社会部記者は、大阪の根強い維新支持をこう語る。しかし、大阪から遠く離れた東京では維新の“神通力”は通用しないようだ。

「東京の維新はお金もないし人材も不足しています。財政面の危機は相当深刻なようで、維新から選挙に出たとしても選挙費用はほとんど援助されないと言われています。人材も『政治家としてどうなんだろう』という人が何人もいます。幹事長のお友達というだけで政党入りしたり、テレビでの発言が炎上した元ミスター慶応が所属していたり。誰彼かまわず出馬しないかと声をかけているようにうかがえます」(大手新聞記者)

 東京維新の不祥事としては、一昨年公然わいせつで逮捕された港区議・赤坂大輔氏の事件も記憶に新しい。こういった一連の不祥事は党内が分裂を起こしているからだと前出の大手新聞記者が続ける。

「音喜多政務調査会長と柳ケ瀬総務会長の仲が悪く、内部で権力争いばかりしています。自分の“お友達”を擁立することに腐心して、党内のガバナンスが緩くなっているように見えますね。昨年の衆議院議員選挙でとある東京の候補者は、事務所開きの時に支援者たちに掛け時計を配っていました。公職選挙法では買収として禁止されている行為ですが、本人は無自覚だったようです。後日問題を指摘されて慌てて代金を徴収していました。こんな人でも擁立しないといけないんだな、と思いましたね」

■森かつ子氏がパワハラ被害を訴えたワケ

 しかし、維新の危機は東京だけではない。大阪から車で1時間半、同じ関西圏にも関わらず兵庫県でも維新の求心力が衰えているようだ。

 冒頭でパワハラ被害を訴えた森勝子氏が4月29日に投稿したツイートからは、足並みが揃わない党内の現状が垣間見える。一体兵庫で何が起こっていたのか。森氏に取材を試みると、森氏は事の経緯を語り出した。

「翌日に議会答弁を控えた3月24日のことでした。翌日の議会答弁の準備でバタバタしていたところに、兵庫10区支部長の堀井健智衆議院議員から電話があったんです。答弁のことでアドバイスがもらえるのかと思いきや、要件は7月の参院選で立候補予定の岸口みのる兵庫県議会議員の選挙応援への要請でした。

 もともと岸口議員の活動には疑問を持っていたので、返答を渋っていると『これができないなら維新の議員としていらんということになる』と言われたんです」

 森氏が岸口氏の活動に疑問を持ったのは2019年の統一地方選挙の時、つまり森氏が初出馬した時からだったという。森氏は、岸口氏を含む日本維新の会の候補者数名で駅前に立ち選挙活動をしていた。

「岸口氏がいきなり怒鳴ってきたんです。どうやら岸口氏が長年“定位置”にしていたところに私が立ってしまったようで、『自分は何度この場所で駅立ちしていると思っているんだ。分かるだろ!』と。確かに、知らずに立ってしまった私にも落ち度がありますが、市民のいる前で怒鳴るなんて非常識です。この頃から、岸口氏の政治家としての在り方に疑問を抱いていました」

■「たこをもらいに行く」と他人の選挙カーで寄り道

 その後、たびたび岸口氏の言動に疑問を抱いてきたという森氏だったが、不信感が決定的になったのは2021年の兵庫県知事選挙でのことだった。

「当時、兵庫県知事候補だった齋藤元彦氏の選挙カーに齋藤氏、私、そして岸口氏が乗車していた時です。昼過ぎに岸口氏が誰かと電話で会話した後、いきなり『たこをもらいに行く』と12時50分に二見市民センターに寄るように運転手に指示したんです。

 市民センター近くに到着すると、10人前後の支持者が待っていて、齋藤氏が握手などの対応をしていました。そんな中、2〜3人の市民の方が倉庫らしき建物の中からいくつもの段ボールを持ち出してきました。岸口氏は彼らに段ボールを選挙カーの後部座席に入れるように指示しました。

 たこが6匹以上入っている箱1つに、明石海苔が入っている箱、ベビーカステラなどのお菓子が入っている箱などで計4個はありました」

 その後、選挙カーが目的の場所に到着すると、岸口氏はその段ボールとともに別の車に乗り換え、去っていったという。この岸口氏の行為について、森氏は公職選挙法違反の可能性を指摘するとともに、倫理的にも問題だと批判した。

「公職選挙法には支援者からの飲食物の贈与を禁止する条項があります。岸口氏は候補者ではありませんが、選挙期間中に選挙カーで『たこをもらいに行く』というのは違法行為ではないか。たとえ違法性がなかったとしても、他人の選挙活動中の行為として不適切であると思います。もちろん、岸口氏は旧民主党から維新に入った方で政治家としては大先輩です。しかし、この一件で同じ党内でも応援する気はなくなってしまいました。

 でも、堀井氏はそんな岸口氏を応援しないと私の政治生命は終わりだと言うんです。不安とストレスのあまり体調を崩してしまいました」

■堀井議員は「全部除名してきた」などと発言

 森氏は堀井氏からの電話を受けた直後から体調不良を理由に市議会を休み、心療内科で治療を受けることになったという。ただ、議会の様子は森氏の耳にも届いていた。

「4月3日、私がいない場でこんな発言があったと知人が録音データを提供してくれたんです。堀井議員が自分に歯向かってきたような人に対して、『僕の目の前におれへんようになった。要するに全部除名してきた』と。これを聞いて、3月の電話で『維新にいられなくなる』と言ったのは本気だったんだなと思いました」

 しかし、突然政党の代表にTwitterという、いわば公衆の面前でパワハラ被害を訴えるのは唐突な印象が否めない。この疑問に対し、森氏は「何度も政党内で被害を訴えたがまともに取り扱ってくれなかった」と明かすのだ。

「Twitterに投稿した時には維新という政党への期待はほとんど残っていませんでした。ただ、それでも最後の数パーセントの希望を持って、松井代表なら『これはアカンやろ』と言ってくれるのではないかと思っていました。日本維新の会が国政政党としてまともかどうか、試すような気持ちもありました」

■“パワハラ問題は二の次”という姿勢

 その後、松井氏の指示により藤田幹事長がパワハラ問題の担当者に任命され、5月12日に社労士を交えた森氏へのヒアリングが行われる。その様子を森氏はこう振り返る。

「堀井氏の電話の録音を聞かせると、パワハラにあたらないと社労士の先生はおっしゃいました。逆に、私が音声データの公開に言及すると、『あなたが党を脅迫していることになりますよ』とまで言われたんです。私は納得できずに『政治家の発言は市民にも知る権利があるはずです。それを公表することがなぜ脅迫になるんですか』と問いました。そもそもパワハラに当たらないのであれば、公表しても問題はないはずです。これに対する答えはなく、藤田幹事長も黙ったままでした。この時、この政党にはこれ以上の対応は望めないな、と諦めました」

 堀井氏への処分などは現在に至るまでなにもない。国会答弁でも登壇をしている。党の対応に不満を感じている森氏は、そもそも日本維新の会にパワハラ相談窓口がないのもおかしいと主張する。

「自民党や立憲民主党にはパワハラ相談窓口が設けられています。しかし、日本維新の会にはそういった窓口は存在しない。『作ってください』と要望しても、『夏の参院選後に検討』という答えでした。“パワハラ問題は二の次”という姿勢は時代に逆行していますよ」

 森氏は今の維新には“維新スピリッツ”が感じられないとも批判を展開した。

「私が維新に入ったのは『古い日本の政治慣習を改革し、国民目線のクリーンな政治を目指す』という維新スピリッツに共感したからです。でも、3年間市議会議員として活動して感じたのは、そういった維新スピリッツをもった議員が少ないという事。組織が拡大してしまった弊害か、選挙が第一という議員が増えてしまったのだと思います。今回のパワハラの件で『市民のために』というのは上辺だけのきれいごとでしかないんだと気づきました」

 堀井氏と岸口氏に事実確認を行ったところ、両者から文書で回答が寄せられた。

■森氏の証言と食い違う堀井氏と岸口氏

 まずは堀井氏の回答だ。森氏に対し、岸口氏への選挙応援を依頼し、それを拒めば「維新の議員としてはいられない」と発言したことについて以下のように回答した。

《兵庫維新の会組織強化本部長である私が、その職務の一環として森勝子議員に対し、参院選における岸口みのる氏候補への選挙応援を依頼したことは事実です。

 しかしながら、かかる応援要請は、兵庫維新の会に所属するすべての特別党員に対し行ったものであり、その性質は業務上の依頼の域を出ません。このことは、森勝子議員にたいしても同様です。

 (発言については)ご指摘のような発言はしておりません》

 4月3日に堀井氏が「(自分に歯向かってきたやつは)僕の目の前におれへんようになった。要するに全部除名してきた」と発言したという森氏の主張に対しては「ご指摘のような発言はしておりません」。

 森議員がパワハラ被害を訴えていることに対し見解を聞くと、こう回答した。

《同議員ご指摘の発言があったとの認識は、一切ございません。

 同議員の事実誤認に基づく不当な非難であり、議員としての成長を長年側で支え苦楽をともにしてきたことを振り返り、非常に残念に思っております。

 本件につきましては、現在、日本維新の会が事実関係を正式の調査しており、その調査結果は近日中に公表されると聞いております。

 同議員の個人情報、プライバシーにも係わる事柄ですので、現時点で私ができるコメントは以上が限界であること、ご理解ください》

 岸口氏にも、2019年の統一地方選挙で森氏に怒鳴ったこと、2021年の県知事選挙でタコなどが入った段ボール箱を市民から受け取ったこと、および森議員がパワハラ被害を訴えていることの見解を聞いたところ、《ご指摘のような事実はありません》と回答した。

 また、岸口氏の回答には下記のような一文が添えられていた。

《選挙を控えた大切な時期にあまりにも唐突で事実ではないご指摘に加え質問の意図が理解できず、大変困惑しております。正確な情報収集、取材をされますよう期待します》

 森氏はパワハラ被害を訴えるものの、堀井氏・岸口氏との間には大きな見解の違いがあるようだ。

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

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