河瀬直美「東京五輪の公式映画」を賞賛する人たちの共通点とは…? 待望の公開初日、私が感じた「2つの異変」

河瀬直美「東京五輪の公式映画」を賞賛する人たちの共通点とは…? 待望の公開初日、私が感じた「2つの異変」

『東京2020オリンピック SIDE:A/SIDE:B』公式サイトより

 待ってました、河瀬直美総監督! 東京五輪の公式記録映画「東京2020オリンピック SIDE:A」がついに6月3日に公開されました。

 しかし、この映画の情報を追えば追うほど、私は「異変」を感じていたのです。まず一つ目。「初日舞台挨拶が無い!」。

 これにはびっくりしました。私は初日舞台挨拶を見に行くのが大好き。そもそもは「初日からこの映画に行くのはどんな人たちなのか?」という野次馬精神からでしたが、いつのまにか初日の華やいだ空間も好きになった。

■東宝に尋ねてみると…

 そう考えると五輪公式記録映画なんてまさにお祭りだ。初日舞台挨拶は大事なセレモニーだからマスコミも来て話題になるだろう。経験上、チケット争奪戦も激しいはず。なので私はかなり前から公式HPで情報をチェックしていた。しかし前日になっても初日舞台挨拶の情報が無い。日比谷、渋谷、新宿……どこの映画館にも。

 たまらずに公開前日に東宝に電話して尋ねました。すると「HPに情報が出てないなら(初日舞台挨拶は)無いのでは?」という答え。そう言われる前にこちらはHPをかなりチェックしていたので「やらない」ことを確信。

 しかし不思議です。5月23日には「完成披露試写会」を派手にやっているのです。あの森喜朗氏(東京五輪・パラリンピック組織委員会の前会長)も来場したという。日刊スポーツにはこんなくだりが。

《森氏はスクリーンに入場し、階段を上ると、客席から視線を一身に浴びた。すると「みんなが見てるじゃん」と口走り、会場を笑わせた。》(5月23日)

 ああ、楽しそう。森喜朗氏だけでなく橋本聖子、山下泰裕、川淵三郎、武藤敏郎氏ら大会関係者が足を運んだとある。この場で河瀬直美総監督は「コロナ禍の五輪、歴史が証明」と堂々と語った(デイリースポーツ5月23日)。

 さらに2日後の25日夜(現地時間)、河瀬氏はカンヌ国際映画祭に出席している。

『河瀬直美総監督の東京五輪映画、カンヌで上映…終演後は拍手浴び「戻ってこられてうれしい」』(読売新聞オンライン5月26日)

 いかがでしょうか。大会関係者の前では挨拶したり、カンヌに行ってまでスピーチしたりするのに、一般客が初めて入る大事な「初日」はスルー。かなり違和感がありました。

■初日舞台挨拶を避けた理由は?

 さらに調べてみると個別にマスコミ取材は受けている。たとえばスポーツニッポンには、公開2日前に『河瀬直美総監督 映画「東京2020オリンピック SIDE:A/SIDE:B」への思い』という記事があった。

 河瀬氏は「感無量です。昨年8月8日に閉会式があり、そこから編集のヤマがとても高かった。ようやく皆さんに見ていただける」と語っている。そう、こういう言葉を初日に直接聞きたかったのです。

 エライ人やマスコミには語るのに一般客の前には出てこない。こういうスタンスの映画監督って本当に不思議だ。もしかして出てくるのがイヤなのだろうか?

 たしかに河瀬直美総監督と東京五輪の公式記録映画には、これまでさまざまな報道があった。週刊文春では、河瀬氏が映画『朝が来る』撮影中にスタッフの腹を蹴り上げるなどの暴力行為をはたらいたと報道されていた。

 昨年末に放送されたNHKの番組「河瀬直美が見つめた東京五輪」では、五輪反対デモの参加者が金銭をもらって動員されたとする偽りの内容の字幕が流された問題があった。まだ真相はあやふやなまま。5月23日の完成披露試写会では「会場外には反対派が横断幕」(日刊スポーツ)とも報道されていた。

 いろいろ事情は抱えているとはいえ、五輪の「公式」記録映画を任せられたのである。すべて引き受ける覚悟はなかったのだろうか。一般客の前に出てこないのはあり得ない。もっと言えば河瀬氏が「誰」のほうを向いているのかわかってしまうではないか。

■私が感じた、もう一つの「異変」

 さて、この映画に感じたもう一つの「異変」。それは「驚くほど客が入っていない!」こと。

 先ほど初日舞台挨拶のチケット争奪戦は激しいという経験を書きましたが今回はびっくり。公開前日の時点で東京の映画館の販売状況を見たら、各回「数人」程度なのである。えええええ!

 これは初日当日も同じだった。でも「客が入っていない」と簡単に言ってしまうのはどうかと思ったのでツイッターで各地の情報を求めたら、寄せられる情報はどこも同じような状況。ひどいのは「0人」という劇場もあった。劇的にチケットが売れていないのである。無観客開催とは言わないが、五輪映画も「バブル方式」なんでしょうか。

 私は初日6月3日(金)のTOHOシネマズ渋谷「14時40分」の回を観たのですが、この回の客は「18人」だった。各地の情報と比べるとかなり健闘していたようにも思える。

 では、どんな人が観ているのか? 私が観た回だけでは「客層」はわからない。そのあと河瀬氏のツイッターを見たらヒントのようなものがあった(というかツイッターは熱心にやってるんかい)。

■賞賛コメントの“共通点”

 河瀬氏は映画を褒めたツイートをリツイートしているのだが、そのツイートに結構共通しているのが「藤井風」というキーワードだった。今回、藤井風さんが音楽を担当しているのでファンは駆けつけているのだ。そうそう、初日や公開直後ってこんな雰囲気がある。

 ということはもし藤井風がこの映画に関係していなかったら……。動員はもっとマズい結果になったような。

 さて、肝心の映画ですが冒頭から森喜朗氏のどアップでした。カメラは森氏の背中越しに密着という構図。「森センセイ、ようこそ」というどこかのおじさん達の出迎えを映していた。日本オリンピック委員会の山下泰裕会長へのインタビューシーンもすごかった。こちらもどアップで山下氏の顔が半分しか映っていないほど。これは一体なんなのだ。権力者に近すぎないか?

 ……「SIDE:B」(今月24日公開)に期待します。河瀬さん、次回は初日舞台挨拶をして一般客にも言葉を述べたほうがいいですよ。

 というわけで、私は「河瀬直美が見つめた東京五輪」ならぬ「河瀬直美を見つめる東京五輪映画」を続けます。

(プチ鹿島)

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