「100万円単位のお金を稼げといわれて途方に暮れた」21歳の“地味な女子大生”が池袋でカラダを売り続ける“悲劇的な事情”

「100万円単位のお金を稼げといわれて途方に暮れた」21歳の“地味な女子大生”が池袋でカラダを売り続ける“悲劇的な事情”

写真はイメージです ©iStock.com

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 気鋭の作家、中村淳彦氏と花房観音氏のふたりが東京・池袋の“闇”を描いたノンフィクション『 ルポ池袋 アンダーワールド 』(大洋図書)が話題になっている。SDGsと再開発の裏で起きる怪異や殺人事件、路上の闇に立つ異常性愛者たちを綴った内容は、実話とは思えないほど“衝撃的”だ。

 ここでは、同書から一部を抜粋して紹介。中村淳彦氏が、池袋の風俗で働く女子大生を取材し、風俗嬢になった理由や大学生の“貧困事情”に迫る??。(全2回の2回目/ 1回目から続く )

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■池袋西口のコメダ珈琲で悩みを打ち明けるAV女優

 ずっと昔から、池袋は「埼玉県の首都」「埼玉県の植民地」と揶揄されている。

 実際に休日の西武百貨店、東武百貨店は埼玉県民だらけであり、池袋で石を投げれば埼玉県民にあたるのは事実だ。どうして池袋は埼玉県民だらけなのだろうか、鉄道の路線図を見ればあきらかだ。

 JR埼京線は池袋から浦和、大宮方面に、大宮から神奈川県大船までをつなぐJR湘南新宿ラインは赤羽と池袋が東京の玄関口となっている。池袋を始発駅とする西武池袋線は所沢を経由しながら、埼玉県の秘境といわれる西武秩父まで運行し、同じく池袋を始発駅とする東武東上線は川越を経由して、人口2万人台の小川町、人口3万人台の寄居まで路線がつながっている。

 池袋駅の主要路線だけで埼玉県の中心部、東部、秘境までを網羅している。直線的な路線のない越谷、春日部などの県西部も、もっとも近い東京副都心は池袋となっている。埼玉県全域から県民が集まっていることが、池袋が「埼玉県の首都」「埼玉県の植民地」と呼ばれている理由なのだ。

 ここまで「池袋=変態」という話が散々出てきた。そうなると、埼玉県民が変態という見方もできる。残念ながらそれはある程度事実で、埼京線が痴漢まみれというのは有名な話だ。1985年9月に開通した埼京線は、ラッシュ時の混雑が激しかった。埼京線は埼玉県のベッドタウンに居住するサラリーマンの東京圏への通勤が主な利用目的で、埼玉県民の変態男性が埼玉県民の女性に痴漢をしていることになる。

 当時、アダルトビデオ専門誌のライターだった筆者が埼京線の痴漢のすさまじさを聞いたのは90年代後半だった。変態まみれということを聞きつけた数々のAV監督が、埼京線のカリスマ痴漢のドキュメントや、埼京線での痴漢&本番撮影を決行した。いまでは考えられないが撮影隊は池袋に集合し、埼京線を根城とするカリスマ痴漢の指南を受けながら、埼京線車内で当たり前のように本番撮影していたのである。

 埼京線が痴漢まみれであるデータもあった。警視庁「卑わい行為等被害路線別検挙件数」(2004年)によると、埼京線の検挙件数は217件、東京の主要路線である山手線、中央線、総武線などを抑えてワースト1位となっている。JR東日本は痴漢天国となっている埼京線の健全化に着手し、巡回強化、車内防犯カメラ設置、女性専用車両の設置、SOSボタンの設置など対策を進めた。企業努力によって、いまは少しずつ痴漢検挙数を減らしている。

 本章では池袋にいる埼玉県民がどのような人々かを見ていくことにする。まず先日、埼玉県草加市在住のあるAV女優に池袋西口のコメダ珈琲に呼びだされ、「まったく稼げません……」という悩みを聞いたことがあった。

■大学生の彼女は池袋の風俗で性的行為を売り、盗撮AVに出演

 城田亜里沙さん(仮名・21)は中堅女子大4年生で、大学1年生から学費のために池袋のデリヘルで働いている。風俗だけでは必要なお金が稼げなくなり、最近プロダクションに所属してAV女優の仕事もはじめていた。池袋は一般的な利用客だけでなく、風俗嬢も風俗客も埼玉県民がメインとなっている。

「AVをはじめたキッカケはデリヘルだけではお金が足りなくなっちゃったから。すぐに学費の支払いがあるから慌てて仕事を探していたとき、池袋のプロダクションを紹介された。それなりに稼げると思ったけど、まったくお金にならなかった。だから、いろいろ諦めました。AVのことはなにも知らなかったので、相場がわからなかった。いくらなんでも1本10万円くらいはもらえるんだろうな、と思っていました。けど、全然そんな金額にならなかった」

 城田さんは企画モデルである。仕事はヤラセ盗撮、ハメ撮りなどで、1現場3万円程度にしかならないという。AV女優になって2ヶ月が経ったが、月の稼ぎはずっと一桁万円なので頭を抱えていた。

「池袋は風俗の客層がすごく悪い。ほとんどの人が本番強要みたいことをしてくる。このままだと学費が払えないってなったから、触られない撮影会の仕事がいいかなって面接に行ったんです。そこでAV女優は?って聞かれて誘導された感じです。AVって聞いて家族にバレたくないと思ったけど、バレるどころか、まさかってほど稼げなかった」

 亜里沙さんは可もなく不可もなく、どこにでもいるどちらかというと地味でおとなしそうな女の子だった。プロダクションには出演者の名前が必要とされない細かい仕事をやらされていた。アダルトサイトにあふれている盗撮映像のほとんどはヤラセであり、彼女のような末端のAV女優が安価な対価で出演している。

 コメダ珈琲は大学生や若いカップルが多かった。みんな楽しそうに話して青春のひとときを満喫していた。同じ大学生の彼女は池袋の風俗で性的行為を売り、盗撮AVに出演し、それでもお金に追われる暗い青春を送っている。

 いま大学は貧困の巣窟であり、女子学生が学費のためにカラダを売るのは普通のこととなっている。でも、彼女はどうしてそうなってしまったのだろうか。

■亜里沙さんがカラダを売る理由

「風俗をはじめたのは大学1年のとき。母親が学歴にめちゃめちゃうるさい人で、国公立以外は認めないって突然騒ぎだした。私立進学だったら絶対にお金を出さないって。入試が終わった3月くらいに急にそうなって、ヤバイじゃんって風俗です」

 県立の進学校出身で、埼玉大学に落ちている。合格したのは共通テスト併用入試の中堅私立大学だけだった。その中堅私立大学はかなりの人気校で倍率は高い。入学手続きのとき、母親が中堅大学を罵りだし、初年度納入金は卒業後に母親に返済、在学中の経済的援助は一切しないといいだした。

 亜里沙さんはひとり親家庭、草加市で会社経営者の母親と祖母と3人で暮らしている。実家から1時間半をかけて大学に通学し、授業が終わった後は池袋のデリヘルに出勤する。終電近くまで働いて草加に帰る。土日は実家から池袋に出勤する。通勤経路は東武伊勢崎線で西新井駅まで行き、そこから池袋行のバスに乗る。新宿や渋谷など、他の繁華街で働くことは考えたことがない。理由を聞くと「人が多いから嫌かな」という。池袋も人は多いが、それは問題にならないようだった。

■「18歳、池袋のデリヘルで初めて……」

「母親は会社経営者なのでお金はあります。でも、とにかく大学のお金は絶対に払わないって。私大進学が決まって、これからは自分で全部やりなさいってなった。母親の出身校は慶應です。自分も私大なのに娘には私大に絶対に行かせたくない。だから、18歳で風俗嬢になりました」

 亜里沙さんは県立進学校で女子ソフトテニス部だった。アルバイト経験はない。突然、100万円単位のお金を稼げといわれて途方に暮れた。高額バイトを検索すると水商売や風俗が出てくる。北千住のキャバクラや西新井のガールズバーが目に留まった。未成年なのでお酒は飲めないので無理だろうと思った。選択肢は池袋のデリヘルしかなかった。

「どうやって稼ごうっていうのは悩みました。入学前からお金のことで頭がいっぱいで、冷静な判断ができる状況じゃなかった。入学してから大学に相談したら授業料はちょっとは待つけど、期限までに納入してもらわないと困るっていわれて、必要なのは4年間半年ごとに50万円。入学してからどうするかずっと悩んだけど、もうカラダを売って稼ぐしかないってなりました。まず、東口にある10代の同年代が多いオタク向けのヘルスに行った。コスプレとかして稼ぎました。撮影オプションとか多い店で、なんとか風俗でやっていけそうかなって思った」

 18歳、池袋のデリヘルで初めてフェラチオや口内射精を経験した。中年男性相手に性的行為をする日々、嫌で気持ち悪かったのは最初の2、3日だけですぐに慣れた。夏休みになる頃には池袋にあるラブホテルは、すべて制覇した。

「高校までの経験人数は2人くらい。本番強要でストレスが溜まるくらいで、風俗自体は大丈夫でした。働いているとお客さんに『どうして風俗はじめたの?』って聞かれる。ずっと学費のため、親が払ってくれないって正直に話していたら、あるお客さんがポンッてお金をくれた。50万円。そのお金をもらってから余裕ができて、なんとか4年まで在学することができました。そのときはすごいって思った」

 亜里沙さんが風俗嬢になったのは制度が使えなかったからだ。母親の収入が高く、日本学生支援機構の奨学金の利用ができなかった。世帯収入、資産は第一種も第二種も受給条件を余裕で超えていた。

 現在の日本ではあらゆる制度に、世帯収入の高い親が子どもへの学費給付を拒絶するという想定がない。亜里沙さんは高所得家庭の娘という扱いとなる。いま団塊ジュニア世代の親が経済的支援を拒絶して、娘が風俗嬢になるというケースは激増している。亜里沙さんは池袋で中年男性の精液を浴び、本番強要される日々となったが、草加で悠々自適に暮らす母親は見て見ぬふりをしているという。

 亜里沙さんの悲劇は、それだけでは終わらなかった。

「風俗以外に選択肢がないから、風俗はこれまで3年間やらざるを得なかった。でも、結局、卒業できないことになりました。実は3ヶ月前に4年後期の最後の学費分の預金を一緒に住んでいる祖母に使われてしまいました。預金は120万円くらいあったけど、ゼロになっていた。びっくりしました。祖母は私が物心ついた頃からパチンコ依存症で、朝早く起きて草加だけじゃなくて八潮とか越谷とかまでパチンコしに遠征している。全部お金がなくなりました」

■あとは就職活動するだけだったがすべてが水の泡に

 120万円は池袋の風俗で中年男性にカラダを売って、精液を浴び続けて貯めたお金だった。9月に最後の学費50万円を納入して、夏以降は風俗勤務を減らして就職活動する予定だった。すぐに大学に連絡した。

「祖母に返してといえなくて、母親にも相談できない。どうにもならない。大学に連絡してお金が払えなくなりましたっていったら、休学か退学かっていわれた。それで一発逆転できないかなってAV女優になったんです。仕事がなくて。あっても盗撮とか汚いおじさんを相手にしたハメ撮りとかで、120万円どころか月7、8万円にしかならない。結局納入期限にお金を用意できなくて退学しました」

 退学届けを提出したのはひと月前という。亜里沙さんは卒業単位をほとんど取得していて、あとは就職活動するだけだったがすべてが水の泡となった。草加の祖母は孫が絶望的な状況になっても、平然と朝早く起きてパチンコ屋に出かけていくという。

「無理ですね。母親はこわいし、祖母にはなにもいえない。家族は全員こわい。ずっと虐待されていたんです。小学生のときはちょっと成績が悪いとお風呂の水に沈められたり、画鋲でカラダを刺されまくったり。だから、お金を返してほしいとかいえない。だからお金を盗られても、どうにもなりません。本当は金融か広告系に就職して、家を出て結婚とかしたかった。でも、全部ダメになりました」

 いまは日が暮れて、池袋が活気を見せる夜18時30分。西口の繁華街の入口にあるコメダ珈琲も、入店待ちの人が並んでいる。亜里沙さんは母親と祖母と顔を合わせたくないので、22時くらいまで池袋で時間を潰して帰るという。

 池袋にいると安心する。AV女優は諦めて風俗嬢に戻るつもりだが、客層が悪いことがわかっていても池袋で探すと決めている。気分が落ち込むのはバスで西新井駅まで行って東武伊勢崎線に乗ってから。竹ノ塚を越えて埼玉県に入ると、母親と祖母の顔が浮かんで気分が落ち込む。帰りたくない。でも、帰る場所はそこしかない。

(中村 淳彦,花房 観音)

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