《社内資料入手》知床遊覧船 隠していた“船首のヒヒ?”「もともと船体はボロボロだった」

《社内資料入手》知床遊覧船 隠していた“船首のヒヒ?”「もともと船体はボロボロだった」

カズワン 船首の傷隠し出航?

《社内資料入手》知床遊覧船 隠していた“船首のヒヒ?”「もともと船体はボロボロだった」

KAZUTの船内(HPより)

「事故を起こしたKAZUTは大きな“爆弾”を抱えていました。にもかかわらず、それを放置したまま今シーズンに突入してしまったのです。そのことを社長も認識していたはず」

 こう語るのは、知床遊覧船の元従業員Aさんである。

◆ ◆ ◆

■引き揚げた船体の現場検証で、船体に穴があったことを確認

 4月23日に北海道・知床沖で起きた観光船「KAZU?T」の沈没事故。5月31日現在で乗客14人が死亡、乗員乗客12人が行方不明となっている。

「5月28日には運航会社『知床遊覧船』の桂田精一社長(58)を立ち会わせ、引き揚げた船体の現場検証が行われた。行方不明者の手がかりはなかったが、船体に穴があったことが確認されている」(全国紙記者)

 同船は昨年5月15日に浮遊物と衝突し、乗客3名が打撲などのケガを負う事故を起こしていた。小誌はこの事故の経緯が記された同社の「船員名簿」を入手。その記録欄には代理船長B氏の名でこう書かれている。

■もともと船体はボロボロだった

〈干潮時に出現したであろう捨てられた漁網につかまる停船。その際、上部で展望していた乗客3名が軽く打ぼくしたと甲板員より報告を受ける。乗客の傷を確認。乗客の意志を確認。航行が継続できるのであれば続けて欲しいとの事。〉

〈艇には異常が無い事から航行を続行した。定刻通り入港。海上保安庁に入電。〉

〈全ての乗客に、即日連絡を取り、対応不要との事で継続、対応している。〉(すべて原文ママ)

 資料には「艇には異常が無い」と記録されているが、実際はダメージを負っていたと前出のAさんは語る。

「もともと船体はボロボロだったのですが、5月の事故で、一番波が当たる船首の部分に白い亀裂のようなヒビが入ったのです。しかし当時の船長がパテで応急処置をして、上から塗装を施したようで、傷は隠れて見えなくなりました」

■「杜撰な安全管理をしていた桂田社長の責任は大きい」

 同社は翌6月にも、現在行方不明となっている豊田徳幸船長が浅瀬で座礁事故を起こした。2度の事故を受け、7月5日と27日の2日間、国交省北海道運輸局の職員の立ちあいの下で船体の検査が行われた。

「修理箇所を確認して検査は合格しています。船体全体を確認して問題なかったと聞いております」(国土交通省担当者)

 だが――。事故当日まで豊田船長と連絡をとりあっていたAさんは、事故の前、船体の傷について聞くと、こう返されたという。

「いや、実は去年の5月にできた傷が直っていない。色を塗っただけ。あのケチ社長が直すわけないじゃん。社長が(船を)海におろせっていうからしょうがない」

 Aさんが語る。

「傷と事故との因果関係は分かりませんが、豊田船長が船体に不安を抱えたまま出航していったのは事実。さらに彼は『パソコンに保存してあった船首の傷の写真データも消されてしまって見られなくなった』と嘆いていました。こんな杜撰な安全管理をしていた桂田社長の責任は大きいと思う」

■会社の事業継続はほぼ不可能

 知床で宿泊事業などを手掛ける桂田氏は最近、会社関係者に仕事への意欲をこう語っているという。

「俺が社長じゃないとダメなんだよ。事故で亡くなった方の四十九日法要後にはホテルの予約を再開したい」

 事実関係を問うべく桂田氏の携帯を鳴らすも応答はなく、質問を記したメールにも回答はなかった。

 今後、賠償はどうなるのか。日本海事補佐人会元会長の田川俊一弁護士が語る。

「ご遺族に対しては2500万円程度の慰謝料に加え、亡くなった方の逸失利益が賠償金となります。運営会社が加入していた上限1億円の保険でほとんどが賄われると思いますが、若い方の場合は上限額を超える可能性がある。会社の事業継続はほぼ不可能でしょうから、上限を超えた分の回収は難しいと思います」

 桂田氏の刑事責任については、「業務上過失致死罪が成立するには、社長が事故を回避するために必要な措置を講じていなかったことを立証せねばならず、ハードルは高いでしょう」。

 せめて遺族には誠心誠意、対応してほしい。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2022年6月9日号)

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