「ゼロコロナ」でロシア人、ウクライナ人のモデルが激減 中国で「AIモデル」が躍進する“納得の理由”

「ゼロコロナ」でロシア人、ウクライナ人のモデルが激減 中国で「AIモデル」が躍進する“納得の理由”

ロックダウンを受け、上海の街角からは人通りがなくなった ©iStock.com

 中国の各地で実質的ロックダウンがかかり、ツイッターなどを通して上海在住者から日々しんどい心のシャウトがありました。会社が動かない、モノが動かず届かず作れない。その状況たるや、心中お察しする以上のもやもや感やしんどさや焦りがあったとは思います。

 一方で僕が拠点としていた雲南省昆明の人々に話を聞けば、「なんも日々変わっとらん」という声もあれば、同じ雲南省でも160日ロックダウンしたという瑞麗という国境の町もあり、改めてよろずのことについて「中国とは〜」と一言でまとめることの難しさを感じます。

■コロナ対策の影響で、数少ない西洋人モデルが取り合いに

 中国各地で状況が異なることがままある中でも、ECセールは均等にやってきます。「618セール」というのがその一つで、日本でも報道される11月11日のECセール「ダブルイレブン(双十一、独身の日とも)」に続く中国のECセールです。

 アリババのECサイトに続く、2番手グループの「京東(JD、ジンドン)」が同社の設立記念日なのでセールを始めようとしたところ、アリババやその他ECサイトも「うちも負けられん」と始めたのがそのきっかけです。記録的な販売額のセールで盛り上がるだけでなく、このセールをトリガーに新しいサービスやテクノロジーを導入して使ってもらい、新サービスを一気に普及させようという動きも見られます。

 ところが、今年はこんな状況なのでモノが作れないわけです。困った。大手メーカーは体力があるのでまだいいですが、中小企業ともなると、モノづくりができない状態で、そうはいってもブランドの認知度がなくなるとまずいから、一応は商戦に参加して、在庫一掃セールを目指します。

 中国のECセールのコロナの影響は意外なところにも。外国人モデルが来れなくなってしまったのです。中国のECサイトのアパレル商品やマンション広告などさまざまな場面で西洋人がモデルとして登場しているのですが、中国のコロナ対策でものすごく入国のハードルをあげた結果、数少ない西洋人モデルの取り合いになってしまった。

■中国への航空券がかなりの値上げ

 中国向け商品に影響があるだけではありません。世界中の多くのモノが中国産となっている今、Amazonや越境ECサイトのAliExpressの商品をはじめとした世界各地に向けた広告で西洋人モデルが不足する事態となっています。クリスマス商戦とかブラックフライデーとか、それに向けて撮りたいけれどモデルが不在という状況に。

 新しいモデルを呼ぶのも簡単ではありません。なにせゼロコロナ政策の中国に行くのは大変になりましたからね。外国から訪中したところで2、3週間は隔離ホテルで待機せざるを得ず、片道の中国への航空券代がものすごく上がっています。トータルで中国に行くだけで数十万円かかるようになってしまい、庶民にはとても行けるような場所ではなくなりました。とほほ。

■多くの外国人モデルが中国で活躍

 実は中国各所で活躍する外国人モデルを国籍別でみると、ロシア人が36%でトップで、次いでウクライナ人が22%、さらにその後にはベラルーシが8%と続きます。これはコロナ前の2018年にアリババが発表した調査レポート「在華洋模特数拠報告」の数字ですが、ウクライナ戦争の当事国である3か国が、実はトップ3を独占しているのですね。ちなみにその後はカザフスタン(7%)、ブラジル(6%)、オーストラリア(4%)、アメリカ(3%)と続きます。

 欧米向け商品では小麦色の肌が好まれる傾向があることから、ラテンアメリカ系のモデルが増え、アジア市場向け商品では白人モデルが好まれるそうです。男女比では1:5で女性が圧倒的です。

 時給は1000〜3000元で、1日8時間前後の撮影時間で100着を超える服をかわるがわる着ては撮影しているそう。今のレートであれば単純に時給が2万〜6万円で8時間労働なので、1日で16〜48万円稼げてしまうわけですね。これを90日ビザで中国にいる間に行うわけです。本当かどうかわかりませんが、中国メディアは「中国でモデルとなり、帰国して御殿を建てた」なんて話をよく出しています。

■キッズモデルは国を問わず大変

 また別の2018年の記事によると、外国人モデルは通常4〜8時間から予約可能で、モデルによって1時間1000元、1500元、2000元、2000元以上と幅があるそうです。モデルは等しく人気で仕事があるかというと残酷な実力主義で、毎日注文があるモデルと、休日出勤のモデルと、ほとんど注文が来ないモデルが3分の1ずつで、誰もがじゃぶじゃぶ稼げるわけではありません。さらにコロナ禍の2022年の記事によれば、コロナ以降は保証金制度があり、よい案件だと1か月5000ドルという条件でできるそう。

 よろずの商品の中には子ども向けもありまして、キッズモデルが着ているアパレル商品もあります。報道されている限りではハーフの子どもがモデルとなり、そばで中国人親の叱咤激励を受けながら撮影するケースがあるようです。子どもだけに総撮影時間は大人より短いものの、けっこうな金額を稼いでいます。キッズモデルは国を問わず大変です。

 撮る商品は服だけでなく、パーティグッズのかぶりものなど多岐にわたります。例えばうんこのかぶりものも着て撮るわけですよ。ウクライナやロシアからやってきたのに、うんこのかぶりものを着けて世界デビューとは……。うーん、この仕事も金次第。

■アリババがバーチャルモデルサービスをリリース

 さて、コロナ時代が到来し、外国人モデルがいない! 高い! 商品画像が出せない! という状況になりました。逆に中国のECサイトでも、中国人モデルが増えたなあと思います。

 CCTVによれば、外国向けアパレル商品を扱う業者は「撮影価格は値上がりが続いてて参ってるよ。最近は値段が倍になってて、アパレル儲からなくてしんどい」とコメントしてます。「今年はとにかくモデルが少ないんですわ。外国人モデル1人で700〜800元はかかるんだけど、これで1年分の服の写真を一気に撮ろうとすると100万元はかかるんですよ」「ファッションで突然ブームが来て、急いでビッグウェーブに乗ろうとしてもモデルがいなくて乗れないのです」との嘆きの声も。

 そうした中でアリババが「タージ」(英語名はTarget Face)というバーチャルモデルサービスをリリースしました。それもリアルさを追求したバーチャルモデルです。服のデザインを表裏アップして、モデルの顔やポーズなどを選ぶだけで、リアルなCGモデルが1日で出てくるというものです。しかも平らなデザインの服の画像を、システムにアップロードすることで、人の体に着用したような自然な感じにAIが修正してくれる。

 モデルをいつでも使えて、人件費は削減、人不足も解消できるというソリューションなわけですよ。アリババいわく、「モデル写真が他所で勝手に使われる海賊版問題も減るという副次的な効果もあるし、モデルをアリババに任せて本物さながらのCGモデルをさくっと作るので、本業に精力をそそいでください」とのこと。

■AIによる労働者削減はこんなところにも

 これを取り上げるニュースでは、業者や多くの外国人がそれを見た後に「えっ、これCGなんですか? リアルですねえ!」と驚き絶賛するのですが、そこは中国でも他の国でも新しいサービスができたニュースでは絶賛するもの。100%鵜呑みにするわけにはいかないですが、とはいえなかなかのアイディアも生成された画像クオリティもよさそうです。

 今後はさらにニーズをくみ取り、大型モデルや高齢者モデルやマッチョな人のモデルなど、さまざまなバーチャルキャラクターを用意するという検討も。これが普及するとなると、外国人モデルは一部のニーズを残して不要になってしまうわけで、AIによる労働者削減はこんなところにも。しかもウクライナにロシアですよ。

 中国は危機に際してITで対策を講じるのが素早いです。これも今まで研究開発の蓄積があったから、じゃあ困った状況に一石投じるサービスを導入しようとなるわけです。IT大国のアメリカとは別の道を歩みつつ、蓄積があるので北朝鮮やロシアのようにはならないわけですね。それにしても、ここまでリアルなCGが生成される時代となると、もうウクライナ人だろうが日本人だろうが、世界的に単純なモデル業だけでは仕事にならない時代が近づいてきているかもしれません。

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(山谷 剛史)

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