「市販薬を使うか」医師38人にアンケート “クイック系”頭痛薬に要注意の理由

「市販薬を使うか」医師38人にアンケート “クイック系”頭痛薬に要注意の理由

薬局には多くの市販薬が並ぶ(写真はイメージ) ©iStock.com

 手軽さのウラに潜む意外なリスクを知っておこう。「文藝春秋」2022年7月号より、医療ジャーナリストの長田昭二氏による「名医が飲んでる市販薬」を全文公開します。(全2回の1回目、 後編 に続く)

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■【かぜ薬】総合感冒薬は避けよう

 かぜ(感冒)が疑われる時、まずどうしたらいいのだろう。

「とるべき対処は、年齢などによって変わってきます」

 そう教えてくれたのは、国際医療福祉大学成田病院呼吸器内科部長の津島健司主任教授だ。

「免疫が十分にできていない乳幼児と、心疾患や腎疾患、呼吸器疾患、糖尿病などの基礎疾患を持つ高齢者は、すぐに医療機関を受診すべき。それ以外の年代の人は、自宅で十分な睡眠と休養、栄養を取ることで免疫力を高め、自然に治るのを待つことをお勧めします。通常の感冒なら3〜4日で回復傾向に転じるはず。1週間経ってもよくならないときは、何らかの原因が隠れているはずなので、そこで受診をしてほしい」

 では、市販薬はどのように活用すれば良いのだろうか。着目すべきポイントは「症状」だという。

「市販薬は上手に使わなくてはいけません。いわゆる“かぜ薬”は感冒そのものを治す薬ではなく、あくまで症状を抑える薬。いま出ているつらい症状を抑えることでラクに休養できるようにして、回復を早めることを目的とする薬です。したがって、高熱がつらいなら解熱薬、咳がつらいなら咳止め、鼻水がつらいなら抗ヒスタミン薬など、狙いを定めて選ぶ必要があるのです」

 つまり、症状に合わない薬を飲んでも、かぜを治す効果は期待できない、ということ。「前回かぜを引いたときは効いたから」という理由だけで、深く考えず同じ薬を選ぶべきではないのだ。これは医療機関でも同じことで、医師は患者の訴える症状に合わせた薬を処方している。決して「かぜを治す薬」を出しているわけではない、ということを知っておく必要があるだろう。

■38人中、18人の医師が「市販薬を使う」

 狙いを外した薬を飲んでしまうと、効き目がないどころか、逆効果になる恐れもある。

「全体の症状を一気に抑える、総合感冒薬というタイプの薬も多く市販されています。ただ、これは狙っていない症状にも作用するため、余計な副作用が出る危険性がある。特に腎機能や肝機能への副作用のリスクがあり、高齢者は避けたほうがいい。

 医家向けにも、PL顆粒という鼻、咳、のどの症状を網羅した一種の“総合感冒薬”がありますが、これを処方する場合、医師はかなり気を付けているはず。最近では、高齢者には処方しないケースも増えています。市販薬を探す際も、“総合”ではなく、鼻水用や咳用など“症状別”のかぜ薬を選ぶことをお勧めします」

 さらに、津島医師はこんなアドバイスもしてくれた。

「解熱鎮痛薬のアスピリンに代表されるエヌセイズ(非ステロイド性消炎鎮痛薬)には、ぜんそくを誘発させる成分が入っています。ロキソニンもエヌセイズの一種。ぜんそく持ちの人は避けたほうがいいでしょう」

 今回この記事を書くにあたり38人の医師に「市販薬を使うか」というアンケートを取ってみた。その結果、18人の医師が「使う」と答えた。回答を寄せてくれた、池袋大谷クリニック院長で呼吸器内科が専門の大谷義夫医師に話を聞いた。

■ぜんそく持ちなら申告は必須

「ぜんそくの基礎疾患を持つ人のなかに、数%の割合で“エヌセイズ過敏症”“アスピリンぜんそく”と呼ばれる人がいます。この人たちがエヌセイズを使うと、重篤なぜんそく発作を起こすことがわかっている。いつも使っている気管支拡張薬では歯が立たず、救急搬送が必要になります。そしてアドレナリンの注射やステロイドの大量投与といった処置を受けることで、どうにか落ち着きを取り戻すことができるのです」

 医療機関でも、ぜんそく持ちの人はそれを医師に申告することを忘れてはいけない。実際、患者がぜんそく持ちだと把握しないまま、医師がアスピリンやロキソニンを処方してしまうケースがあるという。

「40代の女性患者さんから『ぜんそく発作で苦しい。いますぐ受診したい』と連絡をいただいたことがあります。電話で状況を伺うと、生理痛で受診した婦人科でエヌセイズを処方され、それを1時間前に飲んだところ発作が生じたとのこと。電話越しでもかなりの喘鳴と呼吸困難が伝わってきました。彼女がいる場所を聞くと、私のクリニックよりも近くに中核病院があったので、そこのER(救急救命室)に駆け込むことを勧めました。幸いにも点滴治療などで回復されたそうですが、非常に危険な状況だったのは確かです」

 エヌセイズには内服薬だけでなく貼付剤、つまり「湿布薬」もある。大谷医師によると、こうした湿布をぜんそく持ちの人が張ると、エヌセイズであるロキソプロフェンやジクロフェナク、イブプロフェンといった成分が皮膚から浸透し、ぜんそく発作を引き起こすことがあるという。

「腰痛で市販の湿布を使用したところ、1〜2時間後に『気道が狭くなった』と感じたという50代のぜんそく患者さんがおられました。そのときも電話で相談を受けたので、『すぐに湿布を剥がして来院してください』とお伝えしました。湿布をはがしたことで、受診時にはかなり落ち着きを取り戻していましたが、それでもステロイド薬の投与が必要になりました」

 湿布はドラッグストアで簡単に手に入れられるメジャーな薬だけに、十分に気を付けたいところだ。

■かぜなのか、細菌感染なのか

 前出の津島医師が、抗菌剤や抗生物質についても言及する。

「かぜはウイルス感染症が主ですが、かぜの原因ウイルスに効く薬は存在しません。自分の免疫力で治すしかないのです。なかには抗菌剤や抗生物質を出す医師がいるようですが、これは意味がないだけでなく副作用の危険があります。出されても飲むべきではありません。百日咳やマイコプラズマ感染症のような細菌感染には抗菌剤が有効だし、2次感染が疑われる場合は抗菌剤の投与が必要となりますが、これをかぜと混同するのは危険です」

 その症状がかぜなのか、細菌感染なのかは医療機関を受診しなければ分からない。1週間の自宅待機で治ればかぜ、そうでなければ別の病気。その1週間は、症状に合った市販薬で症状を抑える――これが大事な流れ、ということなのだ。

■【頭痛薬】「クイック系」にご用心

 医師にも「頭痛持ち」はいる。アンケートで「市販薬を使う」と答えた18人の医師のうち4人が「市販の頭痛薬を使うことがある」と答えている。商品名としてはセデス、ロキソニン、バファリン、イブ、タイレノールなどが挙がった。

 医師は市販の頭痛薬とどう付き合っているのか。獨協医科大学副学長の平田幸一医師に聞いてみた。

「片頭痛や群発頭痛の場合は、医療機関で検査を受けたうえで処方薬を使うべきですが、肩や首の緊張感が引き起こす緊張型頭痛の場合、市販薬で対応できることも多いです」

 頭痛を対象とした市販薬は200種類を超え、自分に合った薬を見つけるのは意外に大変だという。

「純粋な緊張型頭痛の人は、しっかりと首周りのストレッチで筋肉をほぐしたり、適度な運動をすることで症状が治まっていくのが一般的です。しかし、パソコンに齧りついていなければならない職務形態など、適度な運動ができない人の中には『市販のアスピリンが効く』と言う人を見かけることがあります」

 当然、副作用のリスクもある。

「空腹時にロキソニンなどのエヌセイズを飲むと、胃にダメージが及ぶ危険性があります」

 市販薬選びの注意点として平田医師が指摘するのが、効果の「立ち上がり」だ。薬の立ち上がりがいい、つまり飲んでから効果が素早く出てくるというのは、頭痛に悩む人にとってたしかに魅力的だろう。「すぐ効く」などとセールスポイントとして強調された商品もあり、ついつい手を伸ばしてしまいがちだが……。

「これらの薬にはカフェインなどが配合されており、即効性がある半面、依存性への影響も懸念されます。商品名に『クイック』などの言葉が使われている薬はこれに該当します。飲んでよくないわけではないし、市販薬で凌げるならそれでいいと思う。ただ、使用過多にならないように注意する必要はあります」

 平田医師は「どの商品にも同じことが言えるのですが」と前置きしつつ、最後にこう指摘する。

「月に10回以上薬を使わなければならない場合は、薬の使用過多や薬物乱用性の頭痛の可能性もある。そうなると上手に断薬をしていく必要があるので、一度医療機関を受診してほしい」

「市販薬を使うか」医師38人にアンケート “なんでも正露丸”は止めよう へ続く

(長田 昭二/文藝春秋 2022年7月号)

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