「普通の人生を失いました」「でも、結婚や出産を諦めたわけではない」早稲田卒・元AV女優(22)が語る、引退後に感じた心の変化

「普通の人生を失いました」「でも、結婚や出産を諦めたわけではない」早稲田卒・元AV女優(22)が語る、引退後に感じた心の変化

「渡辺まお」改め「神野藍」

「『学歴を捨てた女』と言われて…」「今だったら大学名は公表しない」早稲田卒のAV女優は、なぜ突然引退したのか から続く

 早稲田大学在学中にAV女優としてデビューした渡辺まお(22)。2020年12月には「 文春オンライン 」でのインタビューにも応じ、AV女優としての意気込みを語っていた。しかし、今月突然の引退を発表し、名前も神野藍(じんのあい)に改名した。第一線で活躍してきた彼女はなぜAV女優をやめたのか――。

 AV女優をやめた経緯や家族との関係性、AV新法に思うことなど、詳しく話を聞いた。(全3回の2回目/ 続き を読む)

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■誰のためにやってるんだろうって思い始めて

――明るいイメージとふだんの自分とのギャップに悩んでいた時期もあったんですね。

神野 自分自身が商品として見られる職業なので、しょうがないとも思います。それにAV女優だけじゃなく、他の職業でも自分自身の気持ちとは切り離して、「人からこう見られなければいけない」とか「こうじゃないと出世できない」とか思う時って大なり小なりあると思うんです。

 自分は事務所にとって自慢の女優でありたかったし、現場でも「この子こんなこともできるなんてガッツがあるね」って思われたくて。やらなくてもいいことをやったり、力を入れ過ぎていました。でも、そんなことを続けるうちに誰のためにやってるんだろうって思い始めて。それが引退した一つのきっかけでもあります。

 今考えれば、もっと肩の力を抜いて、何も考えずにやれていれば自分の寿命はもっと伸びたのかなって思いますね。

――そういう悩みを相談できる場所はあったのでしょうか。

神野 事務所に言えたら良かったんですが、「悩んでいる」って言ったら捨てられると思っていたので、言えなかったです。特にデビューしたての売れるかわからない時期は、駆け出し中の悩んでいる子よりも、今売れている子だったり、ガッツのある子をフォローするじゃないですか。それはビジネスとして当たり前だと思うので。だから一人で抱え込んでいましたね。

 でも、AVだけに限らず、どこの業界にも悩みってあると思うんです。悩みがあることもなくしていかなきゃいけないと思うんですが、それよりも一人で抱え込まずに誰かに話せる場所が必要だなって思いますね。

――AV女優をやることで、ネガティブな影響はありましたか。

■良くも悪くも元AV女優という肩書きはずっと付いてくる

神野 人に対する興味がなくなりましたね。どんな人も私をAV女優の渡辺まおとして接してきたので、一回壁を作ってしまうようになりました。特に男性に関してはそうでした。飲み会に誘ってくるのも「AV女優をやっているからなのかな」って思ったり、何を言われても「私がAV女優をやっていたから」かなって思ってしまって。人をむやみに信用しなくなったので、騙されづらいとか、詐欺に遭いづらいとか、良いこともあるんですけどね。

 あとは普通の人生を失いました。というか、「普通の人生を失った」と思われ続けながら生きていく人生になったと思います。それはデビューした時から覚悟してましたけど、良くも悪くも元AV女優という肩書きはずっと付いてくるので。

 だからと言って結婚や出産、家庭を持つことを諦めたわけではないです。結婚願望もありますし、将来は子どもも欲しいと思っています。私のバックグラウンドも含めて全てを受け入れてくれる人がいるのであれば、そういう人生も歩んでみたいと思っています。結局自分自身で選択して生きていくので、どう生きるかは自分次第なのかなって思いますね。

――世間の思うAV業界と、中から見たAV業界にギャップはありましたか。

神野 私自身も最初は構えていたんですけど、思っていたほど怖い世界じゃないと思いました。AV新法の時もTwitterでいろんな意見が飛び交っていましたが、業界としてはかなりクリーンになってきていると思います。

 昔みたいに無理やり出演させられるってことも減っていると思いますし。ただ、どれだけ業界がクリーンになっても、やっぱり「セックスを撮って売っている」わけで、それをよく思わない人はたくさんいますし、もちろんAV業界の中にもまだまだ問題点はたくさんあるので。そういう偏見がなくなることはないのかなと思いますし、偏見があることはある意味健全だと思います。

――健全というのは?

■性被害を訴えても「そんな仕事してるからしょうがない」と

神野 AV女優になる道が緩やかではいけないと思っていて。AVで救われた人もいるけど、逆に救われなかった人もいて。もちろん業界自体はどんどん良くなってはいますけど、リスクが大きい仕事でもあるので。

 AVを始めた時は、「AV女優の偏見をなくしたい」と思っていましたけど、AV女優として働けば働くほど、不用意にはやってほしくないと思いますし、手放しに「おすすめだよ」とは言えなくなりました。

 それはAV業界が良くないという意味ではなくて、AV女優の意思決定権があまりにも個人に委ねられているからです。

――個人として事務所と渡り合ったり、現場で判断しなければならないということでしょうか。先ほどの、なかなか事務所に相談ができなかった、というお話につながりそうです。

神野 そうかもしれませんね。自由で良いといえばそれまでなんですが、まだ社会に出たこともなかったり、世の中のことをよく知らない子が安易に出てしまうのは、リスクが大きすぎると思います。だからこそ、一定の偏見は必要だと思うんです。

――働いている中で大変だったことはありますか。

神野 私は全ての仕事を双方の同意の元に行なっていたので、嫌な仕事を無理矢理させられるってことはなかったんですけど、例えば企画の中で「ビンタをします」と言われていた時に、どのくらいの痛さなのかってお互いに想定しているものが違うことがあるんです。

 思っていたよりもそのビンタが痛かったり、5分くらいだと思っていた行為が15分も続いていたり。でも、同意して現場に来ているので、何も言えなくて。難しいなと思いました。

 さらにいえば、AVの仕事は同意の元にやっているからいいんですけど、例えばAVの世界の外だと、「AV女優なら何してもいい、何を言ってもいい」と思っている人や「AV女優だから常時性欲が湧いている」「誰とでもセックスするだろう」という勘違いをしている方も多いです。

 私自身もそう見られることが多すぎて、笑って受け流すなど諦めていた部分がありました。だけど、私が黙って見過ごすことで同じような目に合う子が増えてしまうと思い、はっきりと自分の意思表示をするようになりました。

 でも、AV女優やセックスワーカーが性被害を訴えても「そんな仕事してるからしょうがない」と丸め込まれて泣き寝入りすることもあります。セックスワーカーの人権は下に見られているなと感じましたね。

――セックスワーカーの性被害の声は届きづらいと。

神野 仕事でパワハラを受けている人に「そんな会社に入ったのが悪いんだろ」とは言わないですよね。セックスワーカーも仕事としてやっているわけなので、嫌なことは嫌だと、性被害についてもきちんと取り扱って欲しいなと思いますね。

写真=石川啓次/文藝春秋

「演技だとわかっていても怖くて痛かった」「本番行為が絶対という現場もある」早稲田卒・元セクシー女優(22)が語る、撮影の裏側 へ続く

(「文春オンライン」編集部)

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