「断り方も愛子さまはかなりお上手」成年会見に識者が“安心”した理由 眞子さん会見は“国民やマスコミへの不信感”が…

「断り方も愛子さまはかなりお上手」成年会見に識者が“安心”した理由 眞子さん会見は“国民やマスコミへの不信感”が…

ご成年にあたり記者会見をされる愛子さま 宮内庁提供

 世界は女王の時代へ。小田部雄次氏(歴史学者・静岡福祉大学名誉教授)、佐藤あさ子氏(皇室ジャーナリスト)、君塚直隆氏(関東学院大学教授)による座談会(「文藝春秋」2022年7月号)を全文転載します。(全2回の1回目/ 後編 に続く)

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■「これこそ本来の皇室の姿だ」

佐藤 3月17日に行われた成年会見での愛子さまは、本当にご立派でした。はじめて国民にお声を届けられる場だったので、一層注目されていたわけですが、堂々とした所作と穏やかな微笑み、そして柔らかなお話しぶりに多くの人々が胸打たれたことでしょう。

君塚 手元の原稿をほとんどご覧になることなくご自分の言葉でお話しされていたのもよかった。心からのお言葉をお聞きしているようで。

小田部 このところの皇室関係の会見にはガッカリすることも多かったのですが、今回は「これこそ本来の皇室の姿だ」という印象を非常に強く受けました。冒頭で、前夜に起きた東北地方での地震により亡くなられた方へのお悔やみを述べられるなど、約30分の会見全体を通して、常に国民を思い、一つひとつの質問に丁寧かつ正直にお答えなさったのが印象的でした。

佐藤 私は雑誌記者として約15年間、皇族のお出ましや節目の行事などを取材してきました。愛子さまは学習院初等科時代に通学が困難になったり、中等科時代に、急激なダイエットで激やせしてしまったこともありましたから、会見でのお姿には、「よくぞご立派に成長されて」としみじみとしてしまって。特に、雅子さまに対しての「『生んでくれてありがとう』と伝えたいと思います」というお言葉が素晴らしかった! 全国の母親も落涙ものだったと思います。20年前の会見で雅子さまが涙ながらにおっしゃった、「生まれてきてくれてありがとう」に呼応しているわけですから……思い出すだけでもうウルウルしちゃう。

君塚 小田部先生もおっしゃいましたが、最近の会見では昨年10月、小室圭さんと眞子さんが揃って出られたものが国民の記憶に新しいですからね。正直、あれは後味がよくなかった。質問を一切受け付けず、一方通行のイメージもありました。

小田部 質疑応答を無くした理由として、お2人は「誤った情報が事実であるかのような印象を与えかねない質問であると思います」とか、「口頭で質問にお答えすることは不可能であると思いました」としていましたね。

佐藤 国民やマスコミへの不信感、そこからくる敵対心がありありと見てとれました。

小田部 断り方ひとつをとっても、愛子さまはかなりお上手でしたね。眞子さんのご結婚について問われた際、「私から発言することは控えさせていただきたいと思います」と非常にやんわりとお断りされていた。ノブレス・オブリージュとは「高貴なる者の義務」と訳してよく使われる言葉ですが、愛子さまの今回の立ち居振る舞いからは、それが自然に身に付いていることが、はっきりとわかりました。

■なぜ「愛子天皇」を議論しないのか

――この成年会見以降、小誌編集部には「なぜ政府は『愛子天皇』の可能性をしっかり議論しないのか」というご意見が数多く寄せられています。小田部さんは、2012年に野田佳彦政権下で行なわれた皇室制度に関する有識者へのヒアリングにも招かれていますが、「愛子天皇」について以前から賛成意見を表明されていますね。

小田部 はい。悠仁さまが生まれる前から、愛子さまが天皇になられるのが一番いいと発言してきました。頑なに男子にこだわり、「女はだめだ」という議論が出てくるのであれば、私はむしろこの国の将来はどうなるのかと心配でした。

 しかし、今回の愛子さまの会見で風向きが変わったように思います。愛子さまの立派なお姿を見て、国民の多くが自然なかたちで「愛子さまを天皇に」と考えるようになったことを肌で感じます。

佐藤 私も会見を拝見していて、やはり天皇の長子が皇統を継ぐのが、理にかなっているとも思いました。いちばん近くで陛下のなさりようやお考えを学んできたからこそ、あの愛子さまがある。

小田部 おっしゃる通りです。それは愛子さまのお言葉にもよく表れていましたね。「皇室は、国民の幸福を常に願い、国民と苦楽を共にしながら務めを果たす、ということが基本であり、最も大切にすべき精神であると、私は認識しております」と。これは上皇陛下や天皇陛下が続けてこられた、国民に支持されてきた象徴天皇のスタイルを受け継いでいくという宣言です。この言葉を聞いて、愛子さまに天皇になっていただくのが安心ではないかと多くの国民も考えたのではないでしょうか。

佐藤 思い返せば、両陛下は愛子さまのご自覚が芽生えるまで、じっと待ってこられたのだと思います。幼少の頃は駅頭で大勢の国民に囲まれて名前を呼ばれると、「どうして私はこんなに見られるの?」と愛子さまは戸惑っているような感じで、ぎこちなく手を振っていました。それでも両陛下は横からガミガミ言うのではなく、ご自身の姿を見せることでそれとなく促していた。雅子さまはご体調が優れないときにも、半蔵門を通る時はいつも窓を開け、沿道の人々に手を振ってらっしゃいました。

■英王室では幼少から公務に帯同

小田部 自分も同じように振る舞うことが両親を助けることになる、それが皇族の責務であると、ご両親を見て理解されたのだと思います。両陛下と愛子さまのお三方の間にしっかりとした信頼関係が築けているからこそ、親の言葉を娘が聞けるし、逆もまた然りなのでしょう。

君塚 私は長年、英国王室を研究していますが、イギリスでも同じことが言えます。たとえば、ウィリアム王子とキャサリン妃の子どもであるジョージ王子とシャーロット王女は、2017年、それぞれがまだ4歳と2歳の時に、両親に連れられドイツとポーランドを訪れています。ブレグジットをスムーズに進めるための公務でしたが、聞いたことのない言葉と大勢の大人たちに囲まれ、ベルリン空港に着いたジョージ王子は泣き出してしまったのです。

 それくらい小さな時から、王室とはどのようなものなのかを身をもって経験させていくんですよね。ちなみにこの時は、大好きなヘリコプターの操縦席に乗せてもらい、王子はすっかり機嫌を直したそうです。

佐藤 可愛らしい(笑)。まだほんの子どもですもんね。

君塚 エリザベス女王なんて、10歳のときに突然、将来は女王になることが決められてしまう。伯父であるエドワード8世が国中から反対された相手と結婚したためです。

佐藤 世に言う「王冠を賭けた恋」ですね。

君塚 そうです。そんなエリザベス女王も、今年プラチナ・ジュビリー(在位70周年)を迎えました。幼いころから両親、場合によっては祖父母や曾祖父母の背中を近くで見て学んでいくことが重要なのだと彼女の存在が証明しています。今年96歳を迎えましたが、彼女がヴィクトリア女王の玄孫、つまり「女系」の女性であるという理由でバカにされていますか? あれだけ偉大な女王はいない、と国内のみならず世界中から支持され、尊敬を集めているんです。

佐藤 一方で、天皇は人気投票で決まるわけではありませんよね。上皇上皇后両陛下や天皇皇后両陛下が国民に寄り添い、公務に取り組まれるご様子を1番近くでご覧になり、皇太子殿下のご長女として育てられた愛子さまには、どうしても「次期天皇に」と期待する声が多いのも頷けるのですが……。個人的には愛子さまにも悠仁さまにも酷なお話のようにも思います。

■愛子さま世代は「女王の時代」

小田部 ただ、世界的には「長子優先」が潮流ですよね?

君塚 はい。ヨーロッパでは「絶対的長子相続制」が当たり前になっています。性別に関係なく第1子を優先する継承のあり方です。中世以来、キリスト教の世界の中では、一夫一妻制かつ、現在の日本と同じように、男系男子にこだわる法律が根強くありました。その結果、18世紀にはスペインやオーストリアで王位継承戦争が勃発するという大変な惨事を経験しています。北米でも局地戦があったのです。

 そうした紆余曲折を経て、1979年にはスウェーデンで、2009年にはデンマークで法改正がなされ、性別を問わず第1子を継承者にする、つまり、女子も王位を継承できるようになったのです。いまではオランダ、ベルギー、ノルウェー、イギリスなどほとんどの国で、長子が後を継ぐことが当たり前という感覚になっています。

 何より現実として、あと30年もすればヨーロッパのほとんどの国々が、「女王陛下の時代」を迎えるのです。ベルギーでは初の王位継承権を持つエリザベート王女(20)がいらっしゃり、オランダにはカタリナ=アマリア王女(18)が、スペインにはレオノール王女(16)も次期国王という立場です。国民も、それを受け入れています。

佐藤 “愛子さま世代”が次々に成人されて国王への道を歩んでいるのですね。カタリナ=アマリア王女といえば、オランダご静養で愛子さまと一緒に馬車に乗って手を振っている姿が可愛らしく印象的でした。

小田部 2006年、愛子さまはまだ4歳でした。愛子さまにとって初めての海外訪問でしたね。

佐藤 同じ水色のワンピースに身を包んだお2人のプリンセスと両陛下、現国王夫妻が並んだ様は、両国の絆の証として多くの人々に歓迎されました。

君塚 愛子さまと同じように、欧州のプリンセスたちも王位継承者としてしっかりと覚悟を決めています。ベルギーのエリザベート王女は、18歳から1年間、王立陸軍士官学校で兵士としての教育や訓練を受けています。匍匐ほふく前進をして、銃や大砲を撃っていたんですよ! 昨年からはオックスフォード大学に3年間の予定で留学しています。

佐藤 まあ、すごい!

君塚 カタリナ=アマリア王女も素晴らしく、18歳を迎えた際、支給される予定だった年間2億円の王室手当を受け取ることを固辞しました。自ら首相に手書きの手紙を送り、《私は手当に見合うことをしていません。他の学生たちは特にコロナ禍の影響で厳しい時期を過ごしています。手当を受け取ることは心苦しいことです》と。これにオランダ国民は心からの拍手を送ったのです。

■憲法改正は必要ない

小田部 世界では続々と女王が生まれていくわけですよね。そんな中で日本だけが男子にこだわり続ける理由って何なのでしょう。愛子さまを本当に天皇に、ということなら、日本でも早く準備を進めなければならないと思います。

佐藤 でも、皇室典範改正は簡単なことではないでしょう? そうした具体的なプロセスも見えにくいというか……。

小田部 皇室典範の改正には国会での審議と決議が必要になりますから、自民党内に男系派が多い以上、たしかに簡単なことではありません。ただ、手続きに限って言えば、「愛子天皇」の実現は考えられているほど現実離れしたものでもない。

 皇室典範は、第1条の「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」を「皇位は、皇統に属する子女が、これを継承する」と変えれば十分です。ほかの条文では、「兄弟」とあるのを「兄弟姉妹」とするなど、女子を男子と同等にする文言に変えればいい。こういった子細についてはすでに小泉純一郎政権下での有識者会議で議論が尽くされています。悠仁さまがお生まれになる前の2005年に実施された会議で、約1年をかけて「女性、女系天皇を認める。皇位継承は長子優先」とする、最も進んだ報告書が提出されました。

佐藤 悠仁さまの誕生が翌06年9月。そこまでは「愛子天皇」誕生という機運だったわけですよね。

小田部 はい。このときの有識者会議は、私よりも上の世代の学者たちが男系女系を問わず大勢呼ばれてヒアリングに応じた。その上で出された優れた結論だと私は考えます。

君塚 憲法改正は不要ですか?

小田部 はい。混同されがちですが、憲法には「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」としかありませんから、天皇の性別は規定していないのです。女性天皇を認めるために改正する必要はありません。

佐藤 あくまで他の法律と同じ審議の手続きを踏めばいいんですね。

小田部 その通りです。さらに、皇族2名や首相、最高裁判事、宮内庁長官ら10人で構成される「皇室会議」というのがありますが、ここでの審議も不要です。これは男性皇族の結婚相手についての認否など、特定の皇族の身分が変わる場合に開かれるものですから。重要なのは国民の声。それをしっかり受け止めて、国会が全うに審議するということなのです。天皇は「国民統合の象徴」ですからね。

秋篠宮ご夫妻と悠仁さまは卒業式で報道陣を一瞥することもなく…識者が注目している愛子さまの“意味深なひと言” へ続く

(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2022年7月号)

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