『「安倍川柳」大炎上に質問状 朝日新聞の言い分』とは…夕刊フジ、日刊ゲンダイが報じた“2つの炎上”

『「安倍川柳」大炎上に質問状 朝日新聞の言い分』とは…夕刊フジ、日刊ゲンダイが報じた“2つの炎上”

©JMPA

 夕方に駅のキオスクなどで見る「タブロイド紙」ってどんなイメージがありますか。日刊ゲンダイと夕刊フジのことです。

 おじさんが読むもの? 下世話? ゴシップだらけ?

 どれも当たっていると思いますが、あの刺激的で高カロリーな見出しや記事には今の世の中の雰囲気が反映されていると感じることもしばしば。なので意外と貴重な存在ではないかと私は考えます。

 それぞれのキャラを言うと夕刊フジは保守派で日刊ゲンダイはいつも政権にかみつきまくっている。対照的な2紙ですが、安倍晋三元首相が銃撃されて亡くなって以降はさらに両紙の興味は二分しているのです。

■フジ、ゲンダイの紙面を見てみると…

 たとえば7月20日の一面。この日はフジもゲンダイも「炎上」というキーワードを一面見出しに使っていた。こちらです。

〈『「国葬」発言炎上 自民幹部異論封殺』(日刊ゲンダイ)

『「安倍川柳」大炎上に質問状 朝日新聞の言い分』(夕刊フジ)〉

 同じ「炎上」でも興味を持つネタが全く違います。実はどちらも安倍氏の国葬関連というのは同じ。しかし「炎上」の内容が違うのだ。読み比べの醍醐味です。

 では内容を見ていきます。日刊ゲンダイの「自民幹部異論封殺」とは自民党の茂木敏充幹事長の発言を指している。茂木氏は国葬をめぐる国会審議について会見で問われ、「野党の主張は国民の声や認識とはかなりずれているのではないか」と発言。これにゲンダイは「反対している国民もいる」「国葬反対というと国民とは認めてもらえないのか」というSNSの声を紹介し「異論封殺」と書いたのだ。

 封殺かどうかはともかく、茂木氏の「国民」発言はたしかに大まかすぎて不思議だった。なので茂木氏の言う「国民」とは国民民主党の可能性もあると思い、念のために同党の玉木雄一郎代表のコメントも調べてみました。すると玉木代表は国葬について「国民に丁寧に説明することが必要だ」と言っていた。茂木氏の発言はいずれにせよ「国民」とずれていたのです。

 ではなぜこんなことを言ったのか? ゲンダイは茂木発言について「ポスト岸田を狙うため、安倍シンパにすり寄りも裏目」と書いていた。そういうとこが意地悪なんだよゲンダイは。

■夕刊フジが注目した炎上

 続いて夕刊フジの『「安倍川柳」大炎上に質問状』にいきます。これは朝日新聞が「安倍晋三元首相の事件や国葬を揶揄するような『川柳』を複数掲載して、ネット上で“大炎上”している」(夕刊フジ7月20日)ことについてです。

 夕刊フジ曰く、朝日新聞に掲載された7月16日の川柳は「疑惑あった人が国葬そんな国」など採用された7句すべてが安倍氏暗殺や国葬に関する内容だった。なので掲載の経緯などを聞く質問状を19日に出したという。

 これに対し朝日新聞は、川柳の選者は「元社員」で「様々な考え方や受け止めがあることを踏まえ、今後に生かしていきたい」などと回答してきた。

 私はてっきり朝日は「川柳に 質問状送ってくる 無粋」などと返して皮肉野郎の真骨頂をみせるのかと予想していたのですが、そこまでの意思と覚悟は朝日新聞には無かったよう。そんな程度なら川柳コーナーなんてやめちゃえば?

 ちなみに銃撃事件のあとに掲載された朝日川柳をすべて調べてみました。安倍氏に関する川柳は他にどんなものがあったのか? 事件翌日にまず次の3句があった。

〈「後ろから言論撃った卑怯者」

「政治テロ令和を昭和の世に戻し」

「民主主義危うくなってる世界中」〉

 7月12日にはこの句が。

〈「赤木さんも安倍さんも同じ一人」〉

 私がけしからんと思ったのが7月14日の次の一句です。

〈「評論家生前の距離自慢する」〉

 恥ずべき行為です。一体誰のことを指すのか。夕刊フジはこちらにも質問状を出したほうがいい。?

■両紙の見出しから見えてくるのは…

 さて、ここまでは両紙による7月20日の「炎上」記事の違いを見てきました。ここからは銃撃事件後からの両紙のおもな見出しを並べてみよう。違いが一目瞭然です。

〈夕刊フジ

『自公圧勝 安倍元首相に誓えるか 憲法改正 防衛力強化』(7月11日)

『岸田人事 保守反発も』(7月12日)

『国葬近く決断 官邸内に抵抗勢力も』(7月14日)

『平和ボケに喝 安倍元首相の遺言』(7月15日)

『「反安倍」大罪 抵抗勢力と全面対決を』(7月16日)〉

〈日刊ゲンダイ

『銃撃事件動機 統一教会接点』(7月12日)

『統一教会 安倍で加速 政界侵食』(7月13日)

『自民党政権と不気味な宗教団体の怪しい関係』(7月14日)

『統一教会 自民党親密議員リスト』(7月17日)

『統一教会 安倍派35議員 汚染リスト』(7月24日)〉

 いかがでしょうか。夕刊フジは安倍元首相の遺志を継げと言い、日刊ゲンダイは安倍氏と統一教会の関係に夢中です。どちらも世の中にある空気を体現しているのだと思う。

■タブロイド紙が「食いつくもの」とは?

 日刊ゲンダイは『大マスコミは見て見ぬふり 自民党と統一教会 戦慄する闇の深さ』(7月20日)とも書いています。逆に言えば政治と統一教会の関係を書くのは新聞系ではゲンダイが独走中なのだ。でもよく読めば既出の情報であるはずなのにゲンダイが独占しているように「見える」のも重要なポイントです。現在のマスコミ報道の姿がそこにあるのかも。ゲンダイがやたら目立つのは一般紙がまだそこまで踏み込んでいないことを象徴しているとも言える。

 タブロイド紙が何に食いつくか。それが「世の本音の反映」だとするならば今後も追いかけていきたいと思います。

(プチ鹿島)

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