《白昼の強盗殺人》「首にはうっすらと赤くなった手の痕が…」近所から慕われた高齢女性を素手で絞めた31歳容疑者の“狂気”と“短絡的な犯行理由”

《白昼の強盗殺人》「首にはうっすらと赤くなった手の痕が…」近所から慕われた高齢女性を素手で絞めた31歳容疑者の“狂気”と“短絡的な犯行理由”

事件を伝えるニュース番組 NHKNEWSWEBより

 住宅街の細い路地にサイレンを響かせて警察官が駆けつけたとき、男は何も持たず、じっと道に立ったままそれを待ち受けていた。夕刻が迫ってもまだ陽は高く、30度を超える気温の中、涼しい気配さえ漂わせながら。

「ここです。こっちです」

 おとなしく、落ち着いた素振りさえ見せるその様子に、声をかけられた警察官も面食らったことだろう。110番通報が入ってから、まだ5分ほどしか経っていない。「通報者ですか」という問いに、その男は「はい、通報したのは私です」と答えると、はっきりとした口調で名乗り、目の前にある一戸建てを指して言った。

「この家の久保さんを殺してしまいました」

■被害者の首にはうっすらと赤くなった指の痕が

 通報があったのは7月27日午後4時前、兵庫県南部・加古川市の住宅街からだった。JR加古川駅から2キロほど、国道と山陽新幹線に挟まれた昔からの民家が建ち並ぶ一帯では、住民同士の繋がりも色濃く残る。地元社会部記者が事件の経緯を語る。

「通報したのは浦一生(いっせい)容疑者(31)。事件を起こした本人によるものでした。内容は、隣に住んでいる久保千鶴子さん(87)の家に忍び込んで久保さんを殺したというものです。浦容疑者と久保さんの家は、隣というより路地を挟んではす向かいにありました。互いに顔も知っていたでしょう」

 実際に、駆けつけた警察官は家に入ってすぐ、その現場を目の当たりにした。1階の寝室で、仰向けに倒れたままの久保さんは既に意識もなく、脈も呼吸もなかった。首にはうっすらと赤くなった手の痕が残っていた。

■夫が2階で昼寝をしている間に浦容疑者が侵入

 ここで警察官は二度驚いただろう。2階から下りてきたのは、久保さんの夫(86)だった。

「昼寝をしていた夫は警察官の臨場で目を覚まし、その警察官から妻が襲われたことを知らされました。気の毒で、言葉もありません。昼寝は夫婦の日課だったようで、事件があった時に久保さんは1階で、夫は2階で昼寝をしていました。まさか午睡の間に向かいに住む若い男が入ってくるなど、思いもよらなかったでしょう。夫が久保さんを最後に見たのは寝る前の午前11時半ごろ。浦容疑者の侵入したのは、その後のことです」(同前)

 そもそも浦容疑者が久保さんの家に入ったのは、恨みでも殺害目的でもなかった。兵庫県警加古川警察署に任意同行を求められた浦容疑者は、こう供述したという。

「久保さんの家に入ったのは、カネを盗むためです。寝室やほかの部屋を物色していたが、見つかったので殺してしまった」

■あまりにも場当たり的な犯行だった

 浦容疑者が金目のものを探して家の中を引っかき回していた時、夫妻はどちらも寝ていた。だが戸棚や引き出しを開けて室内を物色するうち、物音に気づいた久保さんが起き出し、浦容疑者は焦った。近所同士、顔を見られれば、素性は分かる。「泥棒に入ったのがバレてしまう」と。

 我を失った浦容疑者は、後ろから久保さんの首を素手でつかむと、一気に絞めた。声を上げる間もなかっただろう。

「よりによって、なぜ自宅のすぐ前の家に入ったのか。今後の捜査で明らかにすることだが、それにしても考えなしがすぎる。堂々と昼間に侵入しておきながら、起きた被害者と鉢合わせていきなり絞め殺すという点も、あまりにも場当たり的だ」

 と、捜査関係者もあきれるほどの短絡的な行為だった。

 とはいえ、久保さんを手にかけた浦容疑者はさすがに動転したのか、一度向かいにある自宅に戻っている。

「通報したのは、自宅に帰ってからです。盗みに入ったことがバレないように殺したにもかかわらず『後から改めて考えてみたら怖くなった』とも供述しています。身勝手でもありますが、事件の発覚前に自分から通報しているので刑法上の自首が認められるでしょう。これは減刑の理由になりますが、被害者のことを思えば何ともいえません」(前出の記者)

■1人で暮らす家のポストには郵便物が溜まりがちだった

 久保さんと夫は、地域で慕われる夫婦だった。登下校で通りかかる子どもたちを見守り、優しく声をかけるのが日課だった。近隣住民の1人は「いつも元気で、穏やかな人だった。夫婦仲もとても良さそうで、間違ってもトラブルを抱えるような人ではない」と、その人柄を悼む。

 一方の浦容疑者は不在が多く、近所付き合いと呼べるものはほとんどなかった。1人で暮らす家のポストには郵便物が溜まりがちだったという。だが、兵庫県警の調べによると定職には就かず、仕事もしていなかった。その挙げ句、「カネがなくて困っていた」と起こした事件だった。

 加古川警察署で事情を聴かれ続けた浦容疑者は、日付が変わった28日未明に強盗殺人と住居侵入容疑で逮捕された。盗みに入るだけだったはずの行為は、一瞬の狂気により最高刑が死刑の罪になった。

 何より、誰からも親しまれ、何の落ち度もなく殺された被害者はもう二度と還らない。

(稲本 千晴/Webオリジナル(特集班))

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