設定温度を下げるのは「最終手段」…猛暑を乗りきるエアコン節電術、意外と知らない“3つの裏ワザ”

設定温度を下げるのは「最終手段」…猛暑を乗りきるエアコン節電術、意外と知らない“3つの裏ワザ”

エアコン節電術 3つの裏ワザ

設定温度を下げるのは「最終手段」…猛暑を乗りきるエアコン節電術、意外と知らない“3つの裏ワザ”

©iStock.com

 ついに到来した本格的な夏。最高気温35℃を超える日もあり、熱中症防止のためにも“冷房”は欠かせない存在だ。しかし、現在日本は、火力発電所の休止や、電力需要の増加によって深刻な電力不足に陥りつつある。

 また、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、火力発電に使う天然ガスの調達が難しくなり、大手電力10社の電気料金は、この1年で約10〜30%も値上げしている。どうにか節電しなければ、家計も電力と同じように逼迫してしまう状況だ。

 とはいえ、エアコンの節電と熱中症対策は両立できるのだろうか。総合空調メーカーのダイキン工業株式会社広報・由井明日香さんに、酷暑のエアコン節電術を聞いた。

◆◆◆

「2013年に行われた資源エネルギー庁の調査では、一家庭における夏の日中(14時頃)の消費電力のうち、エアコンが全体の約6割を占めることが明らかになっています。ですので、夏の節電はエアコンを中心に行うのが、効果的な方法といえるのでははいでしょうか。

 ただ、闇雲に冷房を止めると日常生活に支障が出たり、熱中症を引き起こすリスクにつながったりすることも考えられるので得策とはいえません」(由井さん、以下同)?

 節電して熱中症で倒れるのは本末転倒。やはり、エアコンを使用しながら対策をとる必要がありそうだ。

■約25%の節電効果が期待できる

 由井さんいわく、まず最初に行ってほしいのが「フィルター掃除」だという。

「エアコンは、設定温度に到達するまでに多くの電力を消費します。冷房の場合は、室内機の上部から部屋の空気を吸い込んで熱い空気を冷やし、吹出口から冷気を出して室温を下げる。室内機が空気を吸うときに通る“フィルター”にホコリが詰まっていると、室内機を通る空気の量が減り、室内全体を冷やすのに時間と電力がかかってしまうのです」

 設定温度に達するまで時間がかかれば、その分、電力も消費する。過去にダイキンが『1年間フィルター掃除をしなかったエアコン』と『フィルター掃除をしたエアコン』の消費電力を比べたところ、前者は約25%も多く電力を消費していたという。汚れたフィルターは節電の天敵なのだ。

「2週間に一度、掃除機でフィルターのホコリを除去して目詰まりを解消しましょう。キッチンとエアコンが同じ空間にあるワンルームや、キッチンの近くにエアコンが設置されている部屋はフィルターに油も付着しやすいので、汚れがひどい場合は中性洗剤を溶いたぬるま湯で水洗いしてください」

 また、室内機の内部は、空気を冷やす際に発生した結露によって“カビ”が繁殖しやすい環境になっている。とくにカビは、嫌なニオイの原因になるという。?

「一般的なエアコンは、冷房運転や除湿運転の後に、自動で室内機内部を乾かしてカビやニオイの発生を抑える運転を行います。こうした運転を止めてしまわないようにご注意ください。それでも嫌なニオイがするときは、汚れがひどくなっているサイン。

 ただ、過去にユーザー自ら室内機の内部を洗浄して、火災が発生したという報告(*)もあり、セルフで洗浄するのは非常にキケン。トラブルを避けるためにも、エアコンのクリーニングは専門業者に依頼しましょう」?

(*)…参考:独立行政法人 製品評技術基盤機構 エアコン「4.内部に洗浄液がかかりトラッキング現象で発火」( https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/poster/kaden/1252.html )?

■設定温度を下げるのは「最終手段」

 そして、エアコンを操作するリモコンも重要な節電ツールだ。まず、温度設定は「低すぎない温度」に定めるのが鉄則。

「設定温度を低くしすぎると、室温がその温度に達するまでに、多くの電力がかかってしまいます。環境省が推奨する“室温28℃”を目安にしつつ、温度計も見ながら自分が過ごしやすい設定温度を探ってみてください。そして風向は『上向き』や『水平』に設定して“温度ムラ”を解消しましょう」

 温度ムラとは、天井と足元の室温に差が出ている状況を指す。冷たい空気は暖かい空気に比べて重く、暖かい空気を天井に押し上げる性質があり、ひとつの部屋の中で温度にムラができてしまうのだ。

「風向を上向き・水平にすると、冷たい風が天井から比較的ゆっくり降りてくるので、お部屋全体の温度のムラが少なくなります。また、エアコンに加えて扇風機やサーキュレーターを併用するもおすすめです。エアコンの対角線上に扇風機を置いて天井の真ん中あたりに向けると、室内の空気がより撹拌されて温度ムラを抑制してくれます」

 部屋の環境によって条件は変わるが、設定温度を過度に下げるよりも、扇風機やサーキュレーターを併用するほうが節電効果が高いという。気になる風量設定は、どの設定がもっとも効率的なのだろうか。

「風量設定は『自動』が最適。初めは強めの風で一気に室温を下げ、その後弱風に切り替わって電力の消費を抑えてくれます。『常に弱風・微風に設定しておくと節電になる』と思っている方もおられますが、弱風では設定温度に達するまで時間がかかるので、自動設定よりも電気代がかかってしまいます。

 帰宅直後、すぐにでも涼を取りたいときは、風向を自分に向けるか、風量を強くするのも節電術のひとつ。まず、風を浴びて“体感温度”を下げると、設定温度を下げずに涼しさを感じられます」

 そして、長年続いていたエアコンのスイッチ“入れっぱなし派”と“こまめに入り切り派”、どちらが節電になるか論争にも、ひとつの答えが出ているという。

「当社が『冷房つけっぱなしの部屋』と『30分ごとにスイッチを入り切りした部屋』の消費電力を比較したところ、真夏の日中はつけっぱなしのほうが電力を抑えられるという結果が出ました。設定温度まで室温を下げる回数が多いと、電気代がかさむ傾向にあります。?

 ただ、外出する場合、何時間でもつけっぱなしのほうがいいというわけではありません。当社が検証を行った環境下では、35分以上使用しない場合は、エアコンを止めたほうが節電効果が高いという結果となりました。これを目安にしながら、その日の行動に合わせてスイッチの入り切りを決めましょう」

 長時間外出する場合はエアコンを切り、部屋からおおよそ30分以上出ない日はこまめに入り切りするよりもつけっぱなしにするのが最適解。ぜひ参考にしてほしい。

■エアコンの運転効率低下を防ぐおすすめアイテム?

 部屋の熱を外に出す「室外機」も、扱い方を間違えると消費電力が増える要因になるという。

「屋外にある『室外機』の周りに、鉢植えや段ボール箱などを置いている場合はすぐに撤去しましょう。室外機の吹出口がふさがっていると、そこから放出した熱を室外機が再び吸い込んで運転効率が低下してしまうので、室外機の周辺にはできるだけ何も置かないでください。

 また、直射日光が当たっていたり、アスファルトの照り返しにさらされていたりする室外機も、放熱する力が弱まっています。ご自身で無理に移動させると故障の原因になるので、室外機から1メートルほど離れたところに葦で作られた『よしず』を立てかけるなどの方法で室外機に日陰を作りましょう」

「よしず」は日除けになるだけでなく、風通しも良いので、適した場所に置けば吹出口を塞ぐ心配もないという。このよしずのように、エアコンの運転効率の低下を防ぐアイテムはほかにも。

「窓の外やバルコニーに『すだれ』を吊るすのも暑さ対策になります。カーテンやブラインドを閉めても太陽熱は遮断されますが、カーテンの色が暗いと熱を吸収してしまい、却って室内が暑くなるケースも。その点『すだれ』ならば、ある程度光を取り入れつつ、窓からの熱を遮れるというメリットがあります」

 昔から日本に馴染みがある工芸品を活用した、風流な酷暑対策だ。

■3つの裏ワザを組み合わせると…

「フィルターの掃除と、室外機の周りにものを置かない、すだれの活用……この3つを組み合わせた場合の消費電力を計測したところ、21.8%の節電効果が得られました。お部屋の環境にもよりますが、多くの家庭で20%前後の節電につながる可能性もあります。さまざまな方法を試して、自分にとってベストな節電術を見つけてみてください」

 複数の方法を駆使すれば、この夏も節電しながら快適に過ごせるかもしれない。

(清談社)

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