渋滞中の高速道路と下道はどっちが早い? 「先を急ぎたい」という気持ちが混雑の原因に? 意外と知らない“本当に有効な渋滞対策”のリアル

渋滞中の高速道路と下道はどっちが早い? 「先を急ぎたい」という気持ちが混雑の原因に? 意外と知らない“本当に有効な渋滞対策”のリアル

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 中央道相模湖インター付近で45kmの渋滞、通過に2時間以上――聞いているだけで気が滅入る、行楽シーズンの渋滞情報。実際にピークにハマろうものなら、楽しい夏の予定も台無しになりかねない。

 7月20日、各エリアの高速道路管理会社からお盆期間の渋滞予測が発表された。上の相模湖インターを筆頭に、東名秦野中井インター、東北道矢板北PAと、40km超えの予測が並ぶ。10km以上の渋滞発生回数は前年の4倍以上と、感染拡大以前の交通量が戻ってくる見通しだ。

 帰省や旅行において悩みの種となる渋滞だが、何か有効な対策はないのだろうか。

■渋滞多発区間とピーク時間を把握する

 当然ながら、最大の渋滞対策は「ピーク時間を避けること」である。渋滞の生じやすい時間帯と区間をあらかじめ見通し、スケジュールを調整しておくことが基本戦略になる。

 その際役立つのが「 渋滞予報ガイド 」など、高速道路管理会社によって提供される道路情報である。同ガイドではお盆期間中の1日ごとに、10km以上の渋滞が見込まれる区間と、時間帯別の渋滞距離を表示している。

 傾向としては、やはり連休の序盤は「朝から昼過ぎ」にかけて下り方面に大規模な渋滞が多発する。2022年のお盆期間は、連休初日となるケースも多いと見られる11日(祝)と、実際の盆入りとなる13日(土)に下り方面のピークが発生する見込み。可能であれば、前日の夜から早朝までに移動を済ませてしまいたいところだ。

 ただし、区間によっては「ピーク前日の夜から早朝」にかけても大規模な渋滞が生じうるため注意が必要だ。たとえば東名高速の秦野中井インター付近においては、10日の23時頃からすでに20km以上の渋滞が発生し、翌11日の16時頃まで30km以上の渋滞が続く見込み。その他の路線でも、朝5時頃の時点で20km〜30kmの渋滞が予測される区間が見られる。

 11日、13日ともに、ピークは17時頃には解消される見通しなので、いっそのこと連休初日は自宅や周辺施設で過ごし、夕方頃から出発する、というプランも検討しておくとよいかもしれない。

 一方、上りのピークは中日にあたる14日(日)と15日(月)であり、時間帯としてはいずれも「昼頃から22時頃」に交通量が増える見通し。せっかくの旅行や帰省なのだから、出先でゆっくりしたいところだが、渋滞回避のうえでは朝起きて早々に帰路につき、午前中のうちに渋滞ポイントを抜けてしまう形が理想的だ。

■渋滞中の高速道路、下道とどっちが早い?

 とはいえ当然、予測通りにいかないのが渋滞であり、計画通りにいかないのが旅行である。周到にスケジュールを練ったとしても、渋滞に巻き込まれてしまうこともあるだろう。

 高速道路で渋滞にハマってしまった場合、まず考えるのが「下道に降りる」という選択肢だが、実際のところこの策は有効なのか。

 一般論としては、渋滞していても「高速に乗ったままの方が早く着く」ケースが多いと言われている。理由としては、「渋滞していても、混んでいる一般道に比べれば平均車速は高くなる」ことが挙げられる。

 たとえば今年の渋滞予測を見ると、秦野中井インター付近で最大45km、通過に1時間50分かかるとされている。平均車速で考えると約24.5km/hであり、これは神奈川県の一般道路を昼間の混雑していない時間帯に走った場合の平均車速(24.2km/h)と同程度である。「渋滞45km」と聞くと絶望的だが、さほど混んでいない下道を45km走るのと変わらないわけだ。

 もちろん、区間や道路状況によって渋滞時の車速は異なる。たとえば14日の予測では、中央道の小仏トンネル付近で最大30kmの渋滞が見込まれ、通過時間は2時間。平均車速は15km/hだ。これは東京23区の一般道を混雑時に通った場合の車速(14.6km/h)と同等であり、ペースとしてはかなり遅い。

 その他、事故に起因する渋滞などの場合、平均車速が著しく落ちることも考えられる。このように「混雑した一般道よりも著しく速度が落ちる場合」には、下道も有効な選択肢になるだろう。

 なお参考までに、日本道路交通情報センターによる定義では、一般道において平均車速が20km/h以下となる場合が「混雑」、10km/h以下が「渋滞」扱いとなる。高速に乗っていて、平均車速が20km/hを著しく下回るような長い渋滞がある場合には、下道を検討するとよいかもしれない。

■抜け道は「ハイリスクローリターン」

 しかし、たとえば「中央道を降りて甲州街道を進む」など、下道に降りても混雑した道路を使ってしまっては迂回する意味がない。

 たとえば中央道の大月から相模湖までであれば、山梨県道35号から神奈川県道517号、東名の大井松田から厚木までであれば神奈川県道77号から小田原厚木道路など、悪名高い渋滞区間には定番とされる迂回ルートがあり、情報もネット上に多く掲載されている。とはいえ絶対的に有効な抜け道というものはなく、渋滞の距離や通過までの時間によって、「どこからどこまでを下道で通るのがベストか」は絶えず変化する。

 抜け道を効果的に使うには、自身が通るルートの渋滞多発区間をチェックしたうえで、区間ごとの抜け道を調べ、さらにケース別に「抜け道をどう組み合わせるか」を整理しておく、という周到な用意が必要になるだろう。

 もちろんそこまで準備しても、渋滞した高速よりも早く抜けられる保証はない。スイスイ進める道があっても、少しの判断ミスにより混雑区間にブチ当たり、せっかくの創意が水泡に帰してしまうこともある。長時間の運転により判断力が低下した状況ではなおのこと、道を間違えたり、リカバリーに時間を要したりする可能性も高くなるだろう。

 そもそも「抜け道」には走行量が少ないだけの理由があり、険しい峠道や行き違いの困難な道なども多い。運転に慣れていないドライバーの場合はとくに、普通に渋滞を通過するよりも疲労が溜まってしまうケースもあるだろう。抜け道作戦を敢行する際には、疲れた状態で土地勘のない場所を走るリスクを十分考慮しておきたい。

 総じて、土地勘がない場所での抜け道は「ハイリスクローリターン」な選択肢である。それでもチャレンジしたい場合には、Googleマップの「マイマップ」機能(「Googleマップ」上で、お気に入りの地点を登録したり、オリジナルの経路を編集したりと、利用者自身がカスタマイズした地図を保存・共有できるサービス)を使うなど、複数のルートプランを保存し、すぐに確認できる環境を整えておきたい。

■途中で立ち寄れる施設を把握しておくことも重要

 渋滞に対する「抜け道」以外の対策としては、旅程に「プランB」を組み込んでおくことが挙げられる。渋滞多発区間の手前で長時間過ごせる施設を探したり、下道へと迂回した際に景観を楽しめるルートを探したりと、渋滞の待ち時間を「旅行の一環」へと転換できるプランを練っておきたいところだ。

 いずれにせよ、渋滞対策には事前の準備が大切である。そうでなければ、素直にナビの案内に従うのが望ましいだろう。とくにGoogleマップやYahoo!カーナビなど、混雑状況を考慮したルートを提案してくれるナビであれば、下手に人間がその場で判断するよりもスムーズに到着できることが多いはずだ。

 状況判断と意思決定に要する労力も馬鹿にならないので、安全運転の面でもルート管理は機械まかせにしてしまった方がいいのかもしれない。とはいえGoogleマップはとくに、過酷なルートを案内するケースも見られるため、同乗者がいるのであれば複数のナビでルートを見比べてもらうのも有効だ。

■渋滞にハマったときにどう過ごすか

 あるいは見方を変えて、「渋滞時のストレスを減らす」ための対策をしておくのもよいだろう。渋滞にハマったとき、時間のロスよりも「車内のギスギス感」に神経をすり減らされる、というケースは珍しくない。

 たとえば家族や友人など同乗者がいる場合には、「旅行プランの管理者とルートの管理者を明確にしておく」ことを推奨したい。決定権が曖昧な状態では、渋滞に巻き込まれた際に「失敗の責任」を互いに転嫁しようとする心理が働き、どうしても車内はトゲトゲしい空気になってしまう。

 いっそのこと、判断は一人に委ね、その他の乗員はルートに口を出さず、移動に時間を要しても文句を言わない、というルールを共有した方が、渋滞の際にも余計なストレスを感じにくいのではないか。

■最大のハードルは子どもへの対処か

 もちろん、小さな子どもがいる場合には、事情はまったく異なるだろう。車内でぐっすり眠れる子であれば、夜中のうちに移動を済ませてしまうことも考えられるが、そううまく事は運ばないものである。

 お気に入りのDVDやおもちゃは当然として、2歳の子を持つ筆者は、ポケットWi-Fiをレンタルしてみる予定だ。1日500円前後の利用料と往復の送料1000円程度で、1日3GBほど使えるから、YouTubeを720pで4時間程度は見られる計算だ。

 一方、スマホのデータ容量追加は1GBあたり1000円程度。旅程中の視聴が合計2〜3時間で済むのであれば、こちらの方が経済的かつ手間も少ないだろう。移動時間やネットコンテンツへの依存度に応じて最適な選択肢は異なる。

 その他、既存のおもちゃに加えて、筆者は新しいトミカをいくつかグローブボックスに忍ばせておくつもりだ。とはいえやはり、「子どもが気に入るか」「すぐに飽きないか」は見通せないから、バクチ要素の強い試みにはなるのだが……。他に有効な手があれば、是非ご教示願いたいところである。

 もちろん、トイレ対策も必須である。凝固剤入りの携帯用トイレは、嘔吐の際にも利用でき、防災面でも有用なので是非とも車載しておきたい。バケツや段ボールなど、袋の受け皿になる容器も用意しておくとよいだろう。

 実際の走行時には、サービスエリアの空き状況と渋滞情報を随時確認しながら、早めのタイミングで空いているパーキングに立ち寄ることが大切だ。ある程度連続して走行したら、「入れるところで入っておく」ことが鉄則である。

■「我先に」の気持ちが渋滞につながる

 最後に、大きな視点としての渋滞対策についても触れておきたい。目の前の渋滞が消えてなくなるわけではないが、個々のドライバーが次のような意識を持つことで、全体としての渋滞抑制につながるはずである。

 重要なのは、「車速を一定に保つこと」と「車間距離を十分に保つこと」の2点だ。 

 渋滞が生じる要因の1つに、「サグ部(道路上で、下り坂から上り坂へと切り替わる「窪み」にあたる箇所)」における車速の低下が挙げられる。ここで傾斜の変化に気づかず自然にスピードが落ちてしまうと、後続車の不要なブレーキを引き起こし、次へ次へと伝播していく。

 こう書くと「運転が下手なドライバーが原因」と思われてしまうが、視覚情報の変化に乏しい高速道路ではとくに、緩やかな傾斜の変化に気づけない場合も多い。高速道路において、サグ部には「速度低下注意」「ここから上り勾配」といった注意看板が設置されているので、そうした場所では意識的にアクセルを踏み込んでいこう。

 もう一点の「車間距離を十分に保つこと」についてだが、これは以前から東京大学先端科学技術研究センターの西成活裕(にしなりかつひろ)教授らのチームによる研究を通じて、渋滞を緩和する効果が認められている。

 ここで提案されている「渋滞吸収理論」の概要は、次のようなものだ。すなわち、渋滞時にある車両(渋滞吸収車両)が車間距離を広く保ち、ブレーキ頻度を減らしつつ、なるべく一定の速度で走行することにより、後続車の速度も一定に保たれ、渋滞が解消に向かっていくというのである。

 実際に、同研究チームとJAFが小仏トンネル付近の渋滞で行った実証実験においては、渋滞吸収車両の通過前後で一般車両の平均車速が回復するという結果が得られている。実験車両は4台のみであったにもかかわらず、顕著な効果が見られたのだ。

 ポイントは「渋滞ポイントに差しかかる前から少しずつ速度を落とすこと」「割り込まれても車間距離を再度確保すること」「低速時にもなるべく一定の流れを維持すること」にある。渋滞時には「なるべく早く先に進みたい」「隣のレーンの車に入られたくない」といった心理から、車間が近くなりがちだが、周囲に惑わされない走行が、結果的に多くの人にとって益となる運転になるわけである。

 反対に、車間距離を詰める行為や、頻繁な車線変更は、不要なブレーキを引き起こすことから、渋滞の原因となりうることが知られている。いずれの行為も、到着時間にほとんど影響せず、メリットは「苛立ちがわずかに解消される」というごく個人的なものに過ぎない。にもかかわらず、生じさせるデメリットは道路利用者全体に及ぶ。

 高速道路の渋滞においては、「自分だけ先に行きたい」という気持ちがかえって状況を悪化させてしまう。少しでも早く着きたい気持ちは当然だが、あくまで視野を広く保ち、冷静な判断のもと安全運転に努めたい。

(鹿間 羊市)

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