「夫を殺してほしい」恨みを募らせた40代妻が利用した“恨み晴らし代行”の闇の実態「報酬は50万円」「腕っぷしの強い男を雇ってサバイバルナイフで…」

「夫を殺してほしい」恨みを募らせた40代妻が利用した“恨み晴らし代行”の闇の実態「報酬は50万円」「腕っぷしの強い男を雇ってサバイバルナイフで…」

※写真はイメージです ©iStock.com

「あなたの恨み晴らします」

 テレビアニメなどエンターテイメントの世界では、不遇に苦しむ人を助ける義賊のような存在として描かれる“恨み晴らし屋”。しかし、現実で起きる事件の依頼者と実行者の物語にあるのは身勝手な動機と残忍な犯行だ――。

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■Twitterで仲介...「恨み晴らし代行」とは

 事件はちょうど1年前、寝苦しい熱帯夜に突如起きた。

 2021年8月7日未明、東京都足立区のアパートに住む会社員の40代男性が、就寝中に突如侵入してきた男らに胸のあたりをサバイバルナイフで刺された。その後、男らは逃走。男性は全治1ヶ月の傷を負ったが、一命を取り留めた。後に警察が防犯カメラなどから犯人を特定し、男らは逮捕された。社会部記者が振り返る。

「襲撃時、アパートには被害男性のほか、40代の妻と長女(9)もいました。事件の一報が入った時、家族が無事で良かったと思ったのを覚えています。しかし襲撃犯のひとり、小西昴太被告(22)が逮捕されると衝撃の供述をしたのです」

「被害者の妻に頼まれた」

 小西被告はそう明かしたのだという。

「捜査を進めるなかで証言の裏を取った警視庁は、共犯として殺人未遂容疑で妻の滝田深雪被告も逮捕しました。妻には襲撃した男たちと面識はありませんでしたが、Twitter上で『恨み晴らし代行』で繋がっていたことが発覚したんです」(同前)

「恨み晴らし代行」とはどのようなもので、今回の事件の背景には何があったのか。小西被告の裁判で、その知られざる世界の一端が明らかにされた。司法担当記者が解説する。

「検察側冒頭陳述によると、キャバクラでスカウトをしていた小西被告は《#お金に困っています》とTwitterで検索をした。すると《裏裏》と名乗るアカウントが、特殊詐欺の受け子などといった“違法アルバイト”を紹介してきたようです。そのひとつが『恨み晴らし代行』だった。

 一方の深雪被告は、夫に内緒で昨年2月頃までに1000万円を超える借金をしていましたが、これがばれてしまい夫婦関係が悪化。そんな中で、Twitterで『恨み晴らし代行』を見つけて申し込んだのです」

 そうしてマッチングした2人はやりとりを重ねた。検察側によると、深雪被告は小西被告に対して、『夫が娘を虐待している』などと事実ではない主張もし、夫殺害の合意を取り付けたという。

「2人は7月ごろに『報酬50万円』で深雪被告の夫を殺害することで合意しています。深雪被告は小西被告に夫の写真を送り“ターゲット”を指示。小西被告は腕っ節の強い酒井亮太被告を誘い、サバイバルナイフや斧を購入し、準備を進めました」(同前)

■「今日の夜中、旦那が疲れているからできる」

 深雪被告から小西被告に“Xデー”の連絡があったのは8月6日だった。

「今日の夜中、旦那が疲れているからできる」

 連絡を受けた小西被告は、酒井被告に「報酬を受け取り、金を確認してから被害者を殺害する」といった話をした上で、事情を知らない別の知人の車で、深雪被告の待つアパートへと向かった。

■サバイバルナイフを依頼者の夫に突き刺し…

 翌7日未明、自宅に招き入れられた小西被告と酒井被告。深雪被告が寝ている被害者を指さすのを確認すると、報酬の確認をする前に、酒井被告がサバイバルナイフを被害者に突き刺した。しかしすぐに目覚めた被害者に抵抗され、2人は逃走。検察側冒頭陳述によると、後に小西被告は「俺も思いっきり斧でやっちゃえばよかった」などと酒井被告に話したという。

 裁判では、おおむね事実関係に争いはなかったが、罪に問われている殺人未遂事件について、小西被告側は無罪を主張。報酬をもらう前に酒井被告が刺したため、「50万円」で合意した殺人とは関係がないという趣旨の主張をしたのだ。

「しかし坂田威一郎裁判長は『(酒井被告は)事前共謀に基づく犯罪を先走って実行したに過ぎない』『報酬を受け取ればそのまま殺害を実行するのだから故意に欠けるところはない』と切り捨てました。

 検察側による『小西被告が被害者の口を押さえた』といった主張を認定しないなど、検察側の主張の満額回答ではありませんでしたが、坂田裁判長は『50万円の報酬ほしさから、SNSを通じて、見ず知らずの被害者の殺害を安易に引き受けた』として『動機に酌量すべき事情はなく、人命軽視の態度が甚だしい』と懲役8年を言い渡しました」(同前)

■SNSに溢れる“闇バイト”募集

 SNSには、いま“闇バイト”の募集が溢れている。

《コロナ禍お金に困った方が沢山 必ず生活支えます》

《リスクはかなり減ってます》

《日給5万から10万稼げます! 簡単内容ですので、すぐ始められます》

 小西被告はこうした甘言のなかで、手っ取り早く金を稼ごうと最も報酬の高い「恨み晴らし代行」を選んだのだ。しかし「50万円」と「人命」は明らかに釣り合わない。検察側によると、未明に寝込みを襲われた被害者は現在も心理的なトラウマに苦しめられているという。

 今後の裁判には、深雪被告が出廷する。夫への殺害依頼をした動機は明らかになるのだろうか。注目が集まる。

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

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