【元理事・AOKI幹部が揃って逮捕】菅前首相など大物には高級ステーキ、電通の部下は魚民 高橋治之・元五輪組織委理事の“意外”な金銭感覚「電通の部下はもともと言いなりですから…」

【元理事・AOKI幹部が揃って逮捕】菅前首相など大物には高級ステーキ、電通の部下は魚民 高橋治之・元五輪組織委理事の“意外”な金銭感覚「電通の部下はもともと言いなりですから…」

東京オリンピック組織委員会の元理事・高橋治之氏 ©?時事通信社

 8月17日、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の高橋治之元理事が、受託収賄の疑いで逮捕された。同時に賄賂を送ったとみられるAOKI側も、青木拡憲元会長など3人の幹部が逮捕されている。

 華々しいスポーツの祭典の裏で一体何が起きていたのか……。真相究明の一助となることを願い、当時の記事を再公開する(初出2022年8月1日 年齢、肩書等は当時のまま)。

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「オリンピックの顔と言うと、日本では『安倍マリオ』の安倍元首相や、組織委元会長の森元首相、JOC前会長の竹田恒和氏が思い浮かぶでしょうが、フランス語が公用語になるような欧米貴族中心の“五輪サロン”では、彼らは見向きもされません。その中で唯一サロンのトップに深く食い込み、資金集めや票集めに暗躍したのが高橋治之・組織委元理事でした。国際的に顔がきく日本随一のフィクサーでしょう」(組織委関係者)

 コロナ禍での1年延期に無観客開催など、異例づくしだった東京オリンピック・パラリンピック開催から1年。今、“オリンピック招致最大の功労者”と陰で囁かれた男に捜査の手が伸びている。

 東京地検特捜部は26日、大会組織委の高橋治之元理事(78)が、スポンサー選考の際にAOKIホールディングスから賄賂を受け取った疑いがあるとして強制捜査に乗り出した。高橋氏の世田谷区の自宅を皮切りに、高橋氏が顧問を勤めた電通本社や、AOKI創業者・青木拡憲前会長(83)宅などに連日、家宅捜索が入っている。全国紙の社会部記者が解説する。

「高橋氏は経営する『コモンズ』という会社を通して2017年9月にAOKIと契約を結び、約4年間で総額4500万円の“顧問料”を受け取った疑いが持たれています。問題は高橋氏が務めた組織委理事は『みなし公務員』だったこと。結果的にAOKIは大会スポンサーに選ばれましたが、高橋氏が立場を利用してスポンサーになれるように働きかけていた場合、収賄罪が適用されます」

■「スポンサー料が安ければAOKIがやると言っている」

 しかし東京オリンピックのスポンサー選びは、各社が立候補して争奪戦になったというよりは、むしろ難航していたという声も聞こえてくる。複数のアパレル企業に打診したもののスポンサー料が高いと断られ、行きついた結果がAOKIだったという。社会部記者が続ける。

「高橋氏側が『スポンサーにならないか』と青木氏に打診したようです。その後、スポンサー選定の責任者に『スポンサー料が安ければAOKIがやると言っている』と意向を伝えました。しかしAOKIが実際にスポンサーになる前から高橋氏は金を受け取っていたため、特捜部はこれが実質的に賄賂だったのではとみて捜査を開始。4日連続でこれだけ手広くガサに入るのも珍しく、特捜部の本気さが窺えます。一方の高橋氏は『スポーツビジネス全般の相談にのり報酬を受け取ったが、スポンサーになれるように働きかけたことはない』と完全否定しています」

 高橋氏と特捜部、食い違う両者の主張。さらにここにきて浮上した新たな疑惑を捜査関係者が説明する。

「AOKIはスポンサー料として約5億円を支払っていましたが、他にも約2億円を電通子会社に払っていたことが分かったのです。この2億円から、馬術とセーリングの競技団体に数千万円が渡りましたが、なんと約1億5000万ほどが高橋氏に“中抜き”されていたことがわかったのです。高橋氏は『お礼でもらった』『未払い分のコンサル料だった』などと説明していますが、青木氏は『騙された』と主張。金の一部は、高橋氏の会社の借入金返済に充てられていました」

 五輪マネーを巡ってはこれまでたびたび議論されてきたが、ついに賄賂という“黒いカネ”の追及に、特捜部が本腰を入れた格好だ。組織委員会の関係者は「オリンピックマネーはそもそも真っ黒だった」と証言する。

「東京オリンピック招致委員会が、五輪誘致の票を持つラミン・ディアク氏の息子の口座に2億3000万円を振り込んでいた事件はフランス検察庁が捜査を進め、国内外で大きな話題になりました。その時に提出された銀行口座の記録によって、招致委員会から高橋氏に約9億円もの大金が支払われたことも判明しており、これは票の根回しに使ったお金と見られています。オリンピックは“スポーツの祭典”とクリーンなイメージで語られることが多いですが、そもそもが真っ黒だという認識を持ったほうがいい」

 オリンピックを招致しようとする国にとって国際的な“根回し”は当然であり、“裏金”の噂は数えあげればキリがないという。組織委関係者が続ける。

「例えば、2016年の開催地招致を巡ってリオデジャネイロに負けた際も、東京に視察に来たIOCの委員に滞在費として現金入りの封筒を渡していたという話があります。また東京五輪開催が決まった2013年のブエノスアイレスでの総会の前に安倍元首相が中東諸国を訪問していますが、目的の1つは票集め。同行したある大企業の会長はビジネス的にウマ味が少ない中東への投資を決めたのですが、後で理由を聞くと『安倍さんに五輪票のためにやってくれと言われたら断れない。利益度外視でやらなきゃ仕方がない』と嘆いていました」

■「高橋氏の影響力は、森元首相や竹田前会長とは比較にならないぐらい大きい」

 そんな生き馬の目を抜くスポーツビジネスの世界で、高橋氏はいかに上り詰めたのか。背景には、赤字続きだったオリンピックの転換期に、勝ち得た信用があったのだという。全国紙運動部記者が解説する。

「1972年のミュンヘン五輪でパレスチナの武装組織『黒い九月』がイスラエル選手11人を殺害する事件が起きました。これにより1976年のモントリオール五輪では、市がカナダ軍を動員するなど警備費で多額の費用がかかり大赤字。転機となったのは1984年のロサンゼルス五輪です。アメリカ政府から見放された組織委員長のピーター・ユベロス氏に、当時世界最大の写真用品メーカーだったコダックを差し置いて、大口のスポンサーとして富士フィルムを紹介したのが当時電通にいた高橋氏でした」

 ロス五輪は“商業五輪”の始まりとも言われ、黒字化に成功。その後、高橋氏はIOCやFIFAのトップと関係を築きながら、電通社内でスポーツビジネスを大きな収益柱に育て上げていった。高橋氏は電通で専務や顧問を務めた後に2011年に退任したが、国内外のスポーツビジネス界では、変わらず絶大な発言力を持っていたようだ。全国紙運動部記者が話す。

「IOCにおける高橋氏の影響力は、森元首相や竹田JOC前会長とは比較にならないぐらい大きい。しかも『電通の元役員だから』というわけでもありません。電通はスポンサー選定などオリンピックにおいて大きな役割を任されていますが、それでもIOC上層部の思惑は電通のコントロール外。新聞記者がIOC幹部と接触したりすると、情報を仕入れたい電通のスポーツ局関係者からすぐに探りの連絡が来るくらい(笑)。そんな中でIOCトップにがっちり食い込んでいた高橋氏個人が、電通という会社以上に大きな影響力を持っていたんです」

 IOCトップなどへのパイプの太さから、電通のオリパラ関係者が頭が上がらなかったという高橋氏。その生活は“貴族”そのものだったという。政界関係者が話す。

「高橋さんは幼稚舎から入学した生粋の慶應ボーイで、世田谷区の自宅は数億円する豪邸です。愛車はおそらく1億円近いベンツの最高級車のマイバッハで、他にもベンツが3台あり、エプロンをつけたお手伝いさんの女性やお抱えの運転手も家には常駐しているという正真正銘の世田谷貴族です。六本木のアークヒルズで、最高級和牛を看板にした2万円のディナーコースがある高級ステーキ店を経営しており、菅前首相などの政界の大物や旧知の記者などを招き、よく会食をしていました」

■電通の部下を連れていったのは魚民

 有力者たちを相手には金に糸目をつけない生活をする一方で、部下からは「ドケチ」とも言われていたという。電通関係者が苦々しい表情でこう語る。

「10年ほど前、高橋さんと汐留の電通本社でばったり会い、『よし飯を食いに行こう!』と誘われて事業の責任者と当時30代ぐらいの中堅社員5人でついて行ったことがあります。汐留には電通の元社員が経営する店や、社員行きつけの高級店もたくさんあるのに、連れていかれた先はまさかの魚民。その後〆で連れていかれたのも富士そばでした。電通社員は1年めでも魚民にはまず行かないのでガッカリしましたよ」

「本当はお金ないんじゃないの?」と疑う社員もいたようだが、その電通関係者は高橋氏について無駄なお金をビタ一文払いたくないというタイプなのではと推測する。

「お金持ちの方はケチだと言いますが、高橋さんはまさにそういう感じでした。確かに電通の部下はもともと言いなりですから、高い食事をおごってもしょうがないのは事実。相手によって高級ステーキから魚民まで使い分けるとは、さすがフィクサーと言われるだけのことはありますね(笑)」

 開催から1年後に浮上した、オリンピックの“黒いカネ”疑惑。スポンサーの選定に、高橋氏の口利きはあったのだろうか。真相解明が待たれる。

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

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