〈生々しい〉「私は旦那ともう終わっているから、寂しくて」会費は7500円、平日の午前からお酒を飲み交わし…仮面夫婦が参加する“既婚者合コン”のリアル

〈生々しい〉「私は旦那ともう終わっているから、寂しくて」会費は7500円、平日の午前からお酒を飲み交わし…仮面夫婦が参加する“既婚者合コン”のリアル

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 平成初期と比べ、約10%も上昇している離婚率。2019年の厚生労働省の発表によると、3組に1組が離婚の危機に置かれているといわれるなど、惹かれ合って結婚したものの、「離婚」という選択をとる夫婦は少なくない。社会環境が変わる中、現代夫婦のあり方はどのように変わっているのか。

 ここでは、ジャーナリストの富岡悠希氏による『 妻が怖くて仕方ない 』(ポプラ新書)の一部を抜粋。取材として潜入した“既婚者合コン”の実態を紹介する。(全2回の1回目/ 後編 を読む)

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■記事で知った「既婚者街コン」

 仮面夫婦はどうガス抜きをするのだろうか。彼らの家庭内は砂漠だ。だとすると、家庭外に求めるのではないか。

 21年に入ったぐらいになると、僕はこんな仮説を立て始めた。

 アンテナを張ると、情報感度は高くなる。同年8月中旬、新婚女性が「既婚者アプリ」で浮気をしたという記事をクリックした。そこにはコロナ前、「『既婚者街コン』なるものも多く開かれていた」とあった。街おこし、地域交流で開く「街コン」は知っていた。ただし、それを既婚者限定で実施する「既婚者街コン」は、初耳だった。

■「美辞麗句ほど怪しい」綺麗な文言の勧誘文句で気になる

 未知の情報と接すると、Google 検索する癖がついている。実行すると、いろいろヒットした。「街コン・婚活パーティーの出会いポータルサイト」もあれば、「既婚者同士の飲み会」「既婚者サークルで合コン」の案内もあった。

 情報を目にした瞬間、ピンと来た。ここに「仮面夫婦」が集っていないか。妻だけ、夫だけとの関係から自由になりたい男女が憂さ晴らししているのではないか、と。

 複数のサイトをチェックすると、次のような勧誘文句が並んでいた。「これまでにない素敵な出会いを楽しみ、人生を豊かにするための集まり」(サイトA)。「日頃のストレスを持ちより、既婚者同士、非日常の中で楽しくおしゃべりして一緒にサークルのように盛り上がりましょう」(サイトB)。他を見ても、どうも綺麗な文言が並んでいる。「美辞麗句ほど怪しい」。ジャーナリストの習性で、ますます気になる。

 ちょうどコロナ第5波が来ていたことから、すぐには動きにくかった。自分の直感を信じ、「既婚者合コン」に「参戦」するタイミングを待つ。参加より参戦と表現するほうがしっくりくるほど、僕のテンションは高まっていた。

■「朝活」にいよいよ参戦

 緊急事態宣言が明けた21年11月、サイトCでおあつらえ向きの開催を見つけた。

 ネーミングは「朝活」で、「サクッと出会いたい方集まれ」。年齢は20代後半から40代半ばだから、何とかOK。会費は7500円、お酒を飲まないと500円引きだ。

 開催の1週間前に決断し、 「申し込みフォーム」を記入していく。必須項目は、名前・メールアドレス・電話番号・年齢など。任意で「名札に記入する名前」を書くようになっていた。「送信」ボタンを押すと、無事に自分のメアドに案内が届く。一度、返信をして予約を確定させる仕組みだった。

 こうして僕は、人生初の「既婚者合コン」に足を運ぶことになった。

■緊張で心臓がバクバク、質問が思いつかない

「アヤさんですか。ゆうきと申します。初めまして」

 平日午前10時45分、僕は都内雑居ビル地下1階の飲食店にいた。手元にはスパークリングワインが入ったグラス。そして、アクリル板の向こうには「アヤ」の名札をつけた女性が座っている。「ゆうき」の名札は、 申し込み時に記した通りに準備されていた。

 アヤさんは見たところ、30代前半というところ。クリーム色のニットセーターに、紺色の細身パンツという上下。薄ピンク色のネイルを施し、両耳にはゴールドのイヤリングがぶら下がっていた。派手すぎず、かつ地味すぎず。「感じがいい」というのが第一印象だ。

 1秒半で外見チェックを終えた僕に対し、返事が返ってきた。

「こんにちは。いや、おはようございます、ですかね。あはは、アヤです」

 お店に入った時から僕の心臓は、緊張でバクバク状態。いつもの取材と勝手が違いすぎて、質問が思い浮かばない。「さて、何を話したものだろうか」。第二声を出せずにいたところ、入口の主催者女性が通る声で呼びかけ始めた。

■男性3人が30分ずつ回り、会話をするスタイル

「○○(サイトCの名前)の『朝活』へ、ようこそ。平日の午前中ですが、飲める方はお酒を、飲めない方はソフトドリンクで、リラックスしたひと時をお楽しみください」

「男性陣は30分ぐらいで、お席を替わって、別のテーブルに行って頂きます。お料理は後ほど、皆さんのテーブルに順次、お店の方が運びますね」

「連絡先の交換は、お席を移る前でお願いします。本日は2時間で終了で、フリータイムはありません。女性の皆さん、連絡先の交換を申し込まれても、嫌だったら断って平気ですよ。男性の皆さんは、絶対にしつこく申し込まないでください」

「では、前置きが長くなりましたが、いよいよ、乾杯に移らせて頂きます。本日、○○の朝活にお集まりの紳士、淑女の方々、グラスを持ってください。では、参りますよ~。カンパーイ!」

 システムを説明しよう。この「朝活」に参加したのは、男女共に12人ずつ。それを男3人の4グループ、女3人の4グループに分ける。女性陣は4テーブルの壁際に横一列に座る。そのテーブルを、グループとなった男性3人が30分ずつ、順繰りに回る。会話をして、ドリンクを飲んで、食事をして楽しみましょう、という流れだ。

■彼女が欲しい夫、彼を探す妻

 先ほど描写したアヤさんの両隣にも女性がいた。右側が20代後半と見られるサチさん。左側が、アヤさんと一緒に参加したというメグミさん。アヤさんとメグミさんは、ちょいちょいふたりで話している。

 そして、僕の両隣にも男性がいる。右隣のタカシさんは、40代前半とのこと。白Yシャツにネクタイを締めたスーツ姿だった。都内にある大学の職員で、午後からオフィスに行くらしい。そのため、お酒は控えていた。

 左隣にいたのは、30代後半のユウイチさん。紺色セーターに黒パンツとラフな印象。会場となった飲食店近くにある出版社で営業職をしていると自己紹介した。身長180センチ超のスリム体形で、イケメンの部類に入る。彼はいわゆる常連さん。今回の参加経緯をこう話した。

「さっき会社にいたら、主催女性から電話があって。『男性が足りない。ぜひ、来てください』って。仕事は午後からでも、どうにかなるから、いっちょ抜けてきた」

■「ぶっちゃけ、俺は彼女が欲しいから」

 常連のユウイチさんが、適度に仕切る形で男女6人での会話が進んだ。

 アヤさんは、専業主婦で子どもは小学生の女児ひとり。その娘と韓国男性グループのBTSにはまっている。住まいは千葉。コロナ禍でずっと巣ごもりしていて、久しぶりに羽を伸ばしに来たそうだ。

 隣に座っている学生時代からの友人メグミさんが、数年前から既婚者合コンに参加。そしてアヤさんを誘うようになった。他のサイトを含めて、アヤさんはもう5、6回、こうした場に来ている。道理で初参加の僕よりも余裕がある。

 こんなことを聞き出していると、ユウイチさんが、テーブルの全員に声を掛けた。

「みんな結婚しているのに、今日参加している理由、言い合おうよ。ぶっちゃけ、俺は彼女が欲しいから。ここで出会えたこともあるし」

■パートナー探し熱は高め

 さすがに常連だけあり、割り切り方が潔い。メグミさんは「アタシは少し前に彼氏と別れて、また探している。前の彼ともこういう会で会ったから」。こちらも、数年来の経験者だけのことはある。アヤさんは「私は旦那ともう終わっているから、寂しくて。メグミの話を聞いて、参加するだけならいいんじゃないかと。とは言っても、いい人がいたらどうかな。お互いの気持ち次第かな」。

 残る女性のサチさんは「最近、旦那と子どもだけの世界だから、つまらなくて。女性だと500円で、お酒も飲めて、ご飯も食べられる。彼とかは、まあ、ゼロじゃないけど、お得なランチという感じかな」。

 スーツ姿のタカシさんは、「まずは飲み友達が欲しい。彼女とか贅沢は言わないから」。僕は「取材」と言う訳にはいかず、「タカシさんと同じ感じ」と逃げた。

 やはりパートナー探し熱は高めだった。サイトでは「人生を豊かにする集まり」などとうたうが、実態はもっと生々しい。

「教育のこと、妻に任せてみるか…」子育て観の違いに思い悩んだ“昭和型価値観”の夫が肩の荷を下ろした“意外なきっかけ” へ続く

(富岡 悠希)

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